ヨキですが、静かに生きたいだけなんです。   作:千遇万歩

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第三章 結束

 

 車は。

 

 ヨキの運転でひた走る。

 

 窓の外には。

 

 穏やかな景色が流れている。

 

「どう。」

 

「近づいてる?」

 

 私は静かに口を開く。

 

「ええ。」

 

 ヨキが呟く。

 

「ホーエンハイム氏への反応は。」

 

「徐々に強くなっています。」

 

「ならよかった。」

 

 私は小さく息を吐く。

 

「姉さん。」

 

「風呂に入れねぇと。」

 

「機嫌が悪くなるからな。」

 

 後部座席から弟が笑う。

 

「しつこい。」

 

「何回その話するの。」

 

 私は弟を咎める。

 

 ヨキも思わず吹き出した。

 

「確かに。」

 

「何度も聞きましたね。」

 

「だろ?」

 

 弟も笑う。

 

 車内は一瞬だけ和やかな空気になる。

 

 しかし。

 

「あれ?」

 

「どうした兄者。」

 

「静けぇじゃねぇか。」

 

 兄は静かに答える。

 

「いや。」

 

「ダブリスへ向かった奴ら。」

 

「大丈夫かと思ってな。」

 

 私は迷わず答えた。

 

「大丈夫よ。」

 

「グリードは。」

 

「誰よりも先に外へ出た。」

 

「誰よりも。」

 

「人と接してきた。」

 

 静かに微笑む。

 

「あれだけ。」

 

「慕ってくれる人達がいる。」

 

「強欲だからこそ。」

 

「誰よりも。」

 

「人の心に敏感なの。」

 

「きっと。」

 

「上手くやってくれる。」

 

「私も。」

 

「そう思います。」

 

 ヨキが頷く。

 

「短い時間でしたが。」

 

「本当に。」

 

「素晴らしい方でした。」

 

 ラストは小さく笑った。

 

「ふふ。」

 

 弟が褒められて。

 

 悪い気はしなかった。

 

◇

 

「あいててて!」

 

「ギブ!」

 

「ギブ!」

 

 ダブリス。

 

 精肉店近くの建物で。

 

 男の悲鳴が響き渡る。

 

 床には。

 

 何人もの男達が転がっていた。

 

 その中心で。

 

 人と犬の合成獣、ドルチェットが肩を押さえている。

 

「強ぇ……。」

 

「強すぎる……。」

 

 人と蛇の合成獣、マーテルが笑った。

 

「アハハ。」

 

「フーおじさん。」

 

「強すぎ。」

 

 人と牛の合成獣、ロアも肩で息をする。

 

「全くだ。」

 

「あの細身で。」

 

「何故押し負ける。」

 

 フーは静かに息を整える。

 

「お主達ハ。」

 

「力に頼り過ぎテイル。」

 

「流れを理解してオラン。」

 

「だから。」

 

「無駄が多イ。」

 

「力の掛け方も。」

 

「正しくナイ。」

 

 三人は真剣に聞いていた。

 

 その時。

 

 扉が開く。

 

「おーおー。」

 

「派手にやられてんな。」

 

 グリードだった。

 

「グリードさん!」

 

 ドルチェットが情けない声を上げる。

 

「とんでもない人。」

 

「連れて来すぎですよ!」

 

「ガハハ。」

 

「幸運だと思え。」

 

 グリードは冷えた飲み物を机へ置く。

 

「フー爺さんが。」

 

「残るって言ってくれた。」

 

「強くなる。」

 

「いい機会じゃねぇか。」

 

 ロアは飲み物を受け取り。

 

 一気に飲み干す。

 

 空瓶を置き。

 

 フーの前へ立った。

 

「もう一本。」

 

「お願いします。」

 

 フーも静かに構える。

 

「ン。」

 

「来イ。」

 

 ドルチェットとマーテルは顔を見合わせる。

 

 嫌ではない。

 

 むしろ。

 

 こんな日々も悪くない。

 

◇

 

 東方。

 

 グラマン中将宅。

 

 応接室へ案内され。

 

 俺達は一人の老人と向き合っていた。

 

「おーおー。」

 

「マスタング君。」

 

「時間を取って欲しいとは。」

 

「珍しいじゃないか。」

 

 老人は俺達を見る。

 

「それに。」

 

「軍人以外まで連れて来るとは。」

 

「実は。」

 

 マスタングが口を開いた。

 

 その瞬間だった。

 

「若!」

 

 ランファンの声が響く。

 

「ああ!」

 

 俺も反応する。

 

 気配。

 

 間違いない。

 

 俺は勢いよく扉を開けた。

 

 扉の先には。

 

 一人の女中。

 

 目が合う。

 

「そいつハ!」

 

「ホムンクル――」

 

 言い終える前に。

 

 パンッ!

 

 パンッ!

 

 二発。

 

 ホークアイ中尉の拳銃が火を噴く。

 

 弾丸は。

 

 正確に女中の頭を撃ち抜いた。

 

 それでも。

 

 女中は倒れない。

 

「……チっ。」

 

 女中は小さく呟き。

 

 窓へ走る。

 

 女中の身体も徐々に変質している。

 

 そして。

 

 ガラスを突き破り。

 

 姿を消した。

 

「中尉。」

 

「はっ!」

 

「ランファンも行ってクレ!」

 

 女性士官とランファンが跡を追う。

 

 部屋が静まり返る。

 

 割れた窓から。

 

 風だけが吹き込む。

 

「……マスタング君。」

 

 グラマン中将が口を開く。

 

「今のは。」

 

「何者だ。」

 

 マスタングは軍帽を被り直した。

 

「ホムンクルスです。」

 

 静寂が続く。

 

「簡潔に申し上げます。」

 

「軍は。」

 

「真っ黒です。」

 

 グラマン中将が黙ってマスタングを見る。

 

「我々が立ち上がらなければなりません。」

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