ヨキですが、静かに生きたいだけなんです。   作:千遇万歩

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幕間 それぞれの評価

 

 リオールを後にした二人の少年は、街道を歩いていた。

 

「なあ、アル。」

 

「なに、兄さん。」

 

「ヨキって人さ。」

 

「すげぇ人だったな。」

 

 アルフォンスは静かに頷く。

 

「うん。」

 

「ロゼさん、すごく感謝してた。」

 

「命を助けてもらったって。」

 

「ああ。」

 

 エドワードは少しだけ空を見上げる。

 

「どこにでもいそうな、気の弱そうなおっさんって感じだったけどな。」

 

 アルフォンスはくすっと笑う。

 

「うん。」

 

「でも。」

 

「ヨキさん、意識を失って倒れてたのに。」

 

「ロゼさんを抱きしめるように庇ってた。」

 

「きっと、困っている人を放っておけない人なんだね。」

 

「……そうかもな。」

 

 二人の背中を、夕日が長く照らしていた。

 

 

 東方司令部。

 

 マスタングは読み終えた報告書を静かに机へ置いた。

 

「面白い男がいる。」

 

 机の向かいに立つリザが静かに口を開く。

 

「ヨキ中尉の報告書ですね。」

 

「ああ。」

 

「ユースウェルでは炭鉱町を立て直し。」

 

「リオールでは、会話だけで教主コーネロを追い詰めた。」

 

「普通の軍人にはできん芸当だ。」

 

 リザは報告書へ視線を落とした。

 

「確かに。」

 

「しかも最後は、少女を庇って重傷を負っています。」

 

「ですが、それだけで特別な人物と判断するのは早計かと。」

 

 マスタングは小さく笑う。

 

「私が気になっているのは、そこではない。」

 

「何でしょう。」

 

「蛇の道は蛇、ということだ。」

 

「悪を暴く者は、悪の思考を理解していなければならん。」

 

「つまり。」

 

「あの男が炭鉱町で見せていた俗物ぶり。」

 

「あれすら、相手を油断させるための演技だった可能性がある。」

 

 数秒、静寂が流れる。

 

 やがてリザは小さく息をついた。

 

「……大佐。」

 

「少々、考えすぎではありませんか。」

 

「実際に会ってみれば、ただのお人好しかもしれません。」

 

 マスタングは苦笑した。

 

「そうかもしれんな。」

 

「だが。」

 

「あの男は、相手が隠したいことを見抜く術を知っている。」

 

「会話だけで教主をあそこまで追い詰めたのが、その証拠だ。」

 

 リザは静かに頷く。

 

「そこは私も認めます。」

 

「少なくとも、優秀な観察眼を持っている人物なのでしょう。」

 

 マスタングは窓の外へ目を向けた。

 

「一度、会ってみたい男ではある。」

 

「ええ。」

 

「私も、少し興味があります。」

 

 その頃。

 

 当の本人は病院のベッドの上で、

 

「また左遷かぁ……。」

 

 と頭を抱えていたことを、この二人はまだ知らない。

 

 こうして本人の知らぬところで。

 

 ヨキという男への評価だけが、少しずつ積み重なっていくのだった

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