俺とリムルの名付けにより、
シオンはリムルの専属秘書にして、リムルと俺の護衛役だ。シオン自らが志願したらしい。見た目からしてぴったりの役職だった。
俺もいつかは専属秘書が欲しいとは思う程だ。
ソウエイはスキル『分身』、『影移動』を駆使し、外の偵察や見回りなどをしている。正直言って忍だよ。ソウエイにはあのライダーの候補に当て嵌めていいかもしれない。
クロベエはカイジンさんと共に武具の製作や互いの技術について語り合ったりしていた。
ベニマルは鬼人達の長を務め、町の見回りなどをしている。
シュナはガルムさんやドルドさん達と共に衣類の製作などを手伝っている。
そしてハクロウはと言うと………。
「ハァッ!セイッ!」
ルインが木刀を片手に持ち、斬りかかる相手はハクロウだ。彼はルインの攻撃を軽く受け流す。
「ほっほ、動きがだいぶ良くなってきましたなルイン様。しかし、まだまだ甘いですぞ、フッ!」
躱され、受け流され、木刀を弾かれ、喉元に突き放たれる。ルインは木刀の刀身で何とか受け流す。
「グッ!………流石ベニマル達を指導していた事はある!純粋な剣術なら“先生”が1番強いですね」
「そんな事はありませんぞ。独学で身につけただけあって筋は中々宜しいですぞ。ルイン様も鍛練を積めばわし以上の剣士となりましょう」
「そうなれる様精進致します!」
ルインは町から少し離れた広場で、ハクロウから剣の指南を受けている。ハクロウがベニマル達に戦いの指南をしていると知り、ルインはハクロウに指導を頼んだのだ。戦いを指南してくれる人材が欲しいと思っていたルインにとっては有難かった。
オーク達の事が終わるまでこうやって指導してもらっている。
ゴブタやその部下達も剣を教えてもらいたいとハクロウに頼んだものの、彼の指導はそんなに甘くなく、所々ボロボロで少し離れた場所で二人の打ち合いをながめていた。
「す、すげぇなルイン様、ハクロウさんについて行ける上、あんな打ち合えるなんて……」
「ああ……」
「二人揃って化け物っすか……」
「ゴスゥ……」
ゴブタ達はもはや実践的なやり合いに引いていた。その中でも二人は打ち合いを続ける。そして互いに距離を取るとルインの姿が消えた。
「(もらった!)」
ハクロウの背後に現れたルインは木刀を振るうがいとも簡単に躱され、頭に一本打ち込まれた。本来ならかなり痛い一撃だが、ルインはスキル『物理攻撃耐性』があるため、痛みはそこまでは無い……それでも、痛いものは痛いが。
「ほっほ、驚きましたぞ。まさか瞬動法を会得されているとは…しかし、気配の消し方がまだ甘かった様ですな」
「あはは、上手くいったと思ったんだが……まだ先生の様に魔力感知を掻い潜る事は出来なかったか……」
リムルに聞いたが、俺が来る直前、先生はリムルの魔力感知を掻い潜り、背後に回っていたそうだ。「もしお前が来なかったら腕を切り飛ばされていた」と言う程だったから相当なものだと窺える。
「ルイン様、今日はここまでにして、休憩にお入りくだされ」
「大変勉強になりました」
「ホッホッホ、ルイン様の相手は骨が折れますわい。お陰で有意義な稽古ができましたぞ」
「そう言ってもらえると助かります。先生、ゴブタ達の指導もよろしく」
「お任せくだされ……お主ら、いつまで休憩してるつもりじゃ?続きをはじめるぞ!」
ルインは持っていた木刀を次元収納の空間にしまい、街に向けて歩きはじめる。不意に振り向くと、めった打ちにやられているゴブタ達の姿が見えた。その指導は鬼教官と言わざるを得ない、鬼だけに…。
「(死なないよう頑張れよ、みんな……)」
ルインはゴブタ達に祈る様にこの場から去った。
「(ふぅ、先生のおかげで手応えを感じる。今まで一人でやっていたのが嘘みたいだな)」
ルインはハクロウとの稽古を振り返りながら町に戻っていると、
「ルイン様、報告がございます」
影の中からソウエイが突如現れた。
「(『影移動』を見事に使いこなしているな)どうした?何かあったのか?」
「はっ、リザードマンの一行を目撃しました。湿地帯を拠点とする彼らがこんな所まで出向くのは異常ですので、取り急ぎご報告を……」
「リザードマン?何故こんな森に?」
「何やら近くのゴブリン村で交渉に及んでいる様でした。ここにもいずれ来るかもしれません」
「そうか、報告ありがとな。リムルにリザードマンの事は……」
「既に報告は済んでおります」
「仕事が早いな。よし、キリがいいところで休憩に入れ。休む事も大事だからな」
「御意!」
ソウエイは『影移動』でその場から離れた。
「さて、俺は町を見て回ってから飯にするか……」
ルインは再び足を動かし、町へと戻るのだった。
「ふへぇ、綺麗なもんだなぁ」
「これが絹糸で織った『反物』ってやつかい、シュナちゃん」
「はい、原料に使っている
「なるほど、防御力も期待できるってことかい」
「これ染色液いるかな?」「うー!うー!」
一つの作業場で、ガルム達はシュナが織った織物を感心しながら見つめていた。
「凄いな、織物がもうこんなに出来てるのか……それにしても綺麗だ」
四人が視線を向けると、完成している織物を手に持ち、じっくり見ているルインがいた。
「ルインさん!いらしてくださったのですね!」
「見回りついでにな、それにしてもすごいな。あまり知識がない俺でも精巧に出来てるのがよくわかるよ」
「はい、カイジン様が作ってくださった織り機はとても使いやすいです」
「そうか……」
シュナは鬼人に進化した事により、『解析者』というスキルを獲得していた。リムルと俺が共有している大賢者や仮面之賢者に準ずる能力で、様々な試みを短期間で進める事が出来るらしい。
元々裁縫が得意とは聞いていたが、流石の俺もここまでとは思ってもみなかった。
「シュナ、早速頼みがあるんだが、構わないか?」
「はい!勿論です!」
ルインはテーブルにあった板に服の絵を描く。その服は生前の衣服と似た様なものだった。
「こんな服を作って欲しいんだ。普段着と、仕事着に分けてな。後、リムルにも……」
「お任せくださいルインさん、きっと素晴らしい服を用意して見せます!」
「皆もよろしく頼みます」
「おうよ!任せな」
これほどの衣服製作者がいると心強い。この調子だと生前と着ていた服も再び着る事ができるだろう。
「あの、ルインさん、お食事はもう済まされておりますか?」
「食事?いや、まだだが……」
「その、宜しければ、私が作るので食べていただけませんか?」
「シュナが?構わないけど、大丈夫か?」
「平気です!お任せください!(ルインさんがシオンの犠牲になるのだけは避けなければ!リムル様の悲劇は繰り返させません!!)」
そして休憩小屋に向かうと丁度街を見回っていたリムルとシオンと合流し休憩小屋に着くと、クロベエを除く鬼人達が揃っていた。
「ああ、これはリムル様、ルイン様も」
「お食事ですかな?」
「ああ。ルインはシュナに、俺こはシオンに手料理をいただくよ」
「「「うっ………!?」」」
「(?シオンの時の反応がおかしいな…)」
リムルはそう言うと、ベニマル達は、顔を青ざめルインはその反応に違和感を持つ。
「お前達も一緒にどうだ?」
「いや………俺は今、腹が減ってなくて………」
「ええ。お茶だけで」
「わ、私は………村の周囲を、偵察に行って参ります!」
ソウエイは分身し、そのまま仕事に戻っていってしまう。ベニマルは冷や汗を流しまくり、ハクロウは気配を消し始めた。リムルがベニマル達の反応に首を傾げる中、シオンとシュナは料理を取りに行く。
すると、シュナが先にやってくる。
「お待たせしました」
そう言って、俺の目の前に置いたのは、鶏肉の肉団子と野菜がたっぷり入ったすまし汁だった。普通に美味そう。
「それじゃあ、いただきます」
「はい!」
俺は箸を取り、一口食べる。
「美味しい!」
「ありがとうございます!」
普通に美味い。と言うか、懐かしい味だ。故郷の味ってやつかな…
「へぇぇ………美味そうだな」
すると、シオンがやって来て。
「お待たせしました。さっ、召し上がれ」
「……………」
「なぁ…シュナ。シオンってもしかして」
「………はい。お察しの通り、シオンの手料理は、酷いのです」
「(いや…料理以前のレベルだろあれは⁉︎)」
何か魔物か怨念の類と言っていいほど危機感を感じる物だった。もはやシオンの料理は、料理と言っていいのか分からない代物だ。
それを見たシュナ達は口を抑えていた。すると、リムルから思念伝達ではなく、魂之絆からの会話が来て。
「(助けてくれ!ルイン!!)」
「(リムル………すまない)」
「(そ、そんな!?)」
リムルからの助けを断った。ていうか、あんなもん食ったら無事で済まないだろ。と言うか死ぬ未来しない。
俺は、シュナの作ってくれたすまし汁を食べる。シオンの料理から、食材の怨念みたいなのが聞こえてくる中、ゴブタとゴブゾウが入ってくる。
「ああ〜腹減ったっす〜」
そんな風に話していた。すると、何を思ったのか、リムルは目を閉じて、スプーンを右斜め後方に突き出す。そこには、先程入ってきたゴブタの姿が。
ゴブタは、スプーンを咥えると、顔を青ざめる。
「むぐっ………!?」
「あ……」
「むぐっ………?」
「うっ、うぐっ………!ぐわぁぁ!!」
すると、ゴブタは震えて、首を抑えながら床に倒れる。しかも、口からは泡が出ており緑色の肌が紫色になっていく。
「ああっ………」
「うぐぐ………!」
「「「「……………」」」」
それを見ていた俺たちは唖然となり、シュナ、ベニマル、ハクロウは顔を青ざめ、口を抑えていた。いや、俺もそんな感じだった。
しばらくすると、ゴブタの天に伸ばした手が、床に力無く倒れる。この場は、静寂が包まれる。
「…………あれっ?」
「シオン」
「は………はい!」
「今後、人に出す飲食物を作る時は、ベニマルの許可を得てからするように!」
しれっと、ベニマルが巻き込まれた。本当に、あれは酷い。一人の仲間が犠牲となってしまった。
「(ゴブタ…お前の犠牲は無駄にはしない。どうか安らかに)」