「リムル、今後『毒霧吐息』は使いどころを考えよう。想像よりえげつないスキルだぞ……」
「そ、そうだな『毒霧吐息』は封印しようと思う…」
「それで、このトカゲも捕食するのか?」
「あ、ああ!もちろん!」
現在、零斗改めルイン・テンペストはスライムのリムル・テンペストと共に洞窟の外へと向かっていた。
俺達は魔物を倒しながら洞窟を進み、いくつかのスキルも獲得した。この時、リムルは捕食者のスキルで捕食した魔物に擬態できるようになったんだ。その結果、嵐蛇テンペストサーペントへ擬態したリムルが毒霧吐息を使用して、襲ってきたこの甲殻トカゲをもはやモザイクが必要なレベルの姿へと変えてしまった。
俺はゆっくりトカゲに手を合わせるのだった。
《スキル・『身体装甲』を獲得》
《ユニークスキル:『魂之絆』発動。スキル:『身体装甲』を獲得開始……成功しました》
こんな感じで、俺たちが倒した魔物をリムルが捕食し、魔物のスキルを魂之絆で共有出来ている。ただし先程の『毒霧吐息』など、一部は獲得出来ていないスキルもある。
ここまで魔物を倒した中でも俺が倒したブラックスパイダーをリムルが捕食し、頂いた『粘糸』と『鋼糸』は結構便利だ。正直言って俺達はスパイダーマンもどきになってしまった。性質もなんか似てるし。
リムルと共に崖と崖の間を飛び越えるときに「「ア〜〜〜アア〜〜〜」」とばかりにターザンごっこをしたのはいい思い出だ。一度はやってみたかったから仕方ないだろ?
『粘糸』は粘着力が強くで相手の動きを封じることができ、強度の強い『鋼糸』は相手を斬ることが出来る。
俺達は揃って「「えぐっ…」」って呟いてた。だって蜘蛛の糸で相手を斬り殺せるんだよ?
「リムル、動きは止めたぞ…」
「ああ、ありがとう。水刃!」
そしてブラックスパイダーのスキル『粘糸』を使い俺がジャイアントバットを拘束し、リムルが水刃でコウモリを斬り裂いた。そしてこの馬鹿でかいコウモリもリムルは捕食する。今後使いこなせる様に習得したスキルの力を使いながら魔物を倒していく。
《スキル・『吸血』と『超音波』を獲得》
《ユニークスキル・『魂之絆』発動。個体名リムル・テンペストが獲得したスキル、『吸血』と『超音波』を獲得開始……成功しました》
そして、リムルはスキル・超音波を利用した発声練習に勤しんだ。俺は現在リムルを頭に乗せ、会話を交えながら出口を目指している。
「なぁ、ルインのスキルの魂之絆で繋がれた時に仮面之戦士ってスキルも俺も習得したんだけど…どんな内容なんだ?」
「そうだったな、リムルとの探検が楽しくてすっかりほったらかしてたな」
「や、やめろよ照れ臭い」
「本当のことを言っただけだ。仮面之戦士は仮面ライダーへの変身が可能になるスキルだな」
「マジで⁉︎俺変身出来んの⁉︎」
「おっ?その様子だとリムルも仮面ライダーは見ていた方か?」
「ああ!ただシリーズを全部見てるわけじゃないが見てたよ!大賢者、そのスキルって俺は使えるのか?」
《現在は不可能です》
「やっぱりスライムの身体じゃ無理か……ルイン、どうやら現在は不可能らしい」
「リムル…今、《現在は》って言ったよな?何か条件を満たせば変身は出来るのか?」
「あっ、そっか。大賢者…仮面之戦士を使える条件ってなんだ?」
《解、個体名リムル・テンペストが、人型の姿に擬態出来るようになれば変身が可能。ただし個体名ルイン・テンペストの様に全ての仮面ライダーに変身出来るわけではありません》
「人型か、リムル…お前の場合俺みたいな人型の魔物か人間を捕食しないと変身は無理みたいだ」
「そうみたいだな、俺、人なんて食べたくもないし、スライムのままでもいいかな……」
しかしリムルとルインは知らなかった。そんな遠くない未来でリムルが人の姿を手にすることになることを
そして数日が経ち…
今も俺達は魔物を倒しながら、リムルが獲得したスキルを『繋がりし者』で共有していった。『水圧推進』,『水流移動』,『水刃』の三つを得たことで、三つのスキルが統合進化し、エクストラスキル『水操作』を得た。『熱源感知』、『身体装甲』、『粘糸』、『鋼糸』『吸血』、『超音波』……。
リムルは《超音波》のスキルを利用し、ようやく喋れるようになった。
こんな感じに
「ワレワレハ、ウチュウジンデアル」
遂にリムルは声を発することに成功した。因みにリムルは俺の頭の上に乗っかっている。感触がとても心地が良い。休んでいた際、リムルを誤って枕にしてしまい眠ってしまったが、よい寝心地だった。
「なんでその言葉?」
「ナントナクダヨ」
「あっそう……」
そしていつも通り会話を交えていくと、俺とリムルは洞窟の出口と思われる扉を見つけた。
「やっと着いた!…はいいけど、簡単に開きそうにないな。どうする?」
「う~ん、『水刃』で切り刻むか、それとも『捕食者』で食うか」
「いや、破壊はやめたほうがいい。そんなことしたら、洞窟内の魔物が外に出るし、外で誰かが管理しているかもしれないしな」
「ああ、それもそっか」
どうにかして扉を開けられないかと探っていると、突然扉が開き始めた。
扉が動いた瞬間、頭にリムルを乗せたまま、俺は近くの岩場に隠れて様子を窺った。扉からは装備を身につけた三人の人間が現れた。
「ふぅ、やっと開きやしたぜ。鍵穴まで錆びついちまってんだから」
「まぁ仕方ないさ。300年も手入れもされず、誰も入ったことないんだろ?」
「行き成り襲われたりしないですよね?まぁ、いざとなったらエスケープで逃げれますけど」
現れたのは、中年の男性二人と杖を持った若い少女だった。
「(あの三人、恰好からして冒険者か?)」
「(この世界のことを考えると有り得るな。剣とか背負ってる人もいるし、女の子の方は魔法の杖のような物も持ってるしな)」
二人は三人に気づかれないように、脳内で会話し、様子を窺う。
「(てか、俺達言葉が分かるけどなんでだ?)」
「(言われてみれば…確かに)」
《解。意志が込められている音波は『魔力感知』の応用で理解できる言葉へと変換されます。逆に思念を乗せて発声すれば会話も可能です》
「(なるほど。よかった、俺英語苦手だったんだよね)」
「(俺は英字を書くのだけは苦手なんだよな…)」
「(ああ、いるよな。言葉や文字はわかっていても字が書けないパターン…)」
そんなことを語り合いながら、三人を見やる。俺達と同じ転生者って訳じゃなさそうだけど、この世界で初めて出会う人間だ。
「(どうするリムル、あの三人に話しかけてみるか?)」
「(そうはしたいところだが、俺スライムだしな。出て行った瞬間、攻撃されても困るし…………)」
「(だったら俺が話しかけてみるか?見た目は人間と変わりないし…)」
「(でも、300年誰も入ったこともない場所っぽいぞ。そっから出てきて『アヤシイモノデハアリマセーン』っつって信じてもらえるか?)」
「(それもそうか、今は止めておくか?)」
「(賛成)」
二人で話し合い、この場は様子見することにした。
「それではお二人とも、あっしの近くに。隠密アーツを発動させやす」
バンダナを付けた男性がそう言うと、二人が近づき、次の瞬間、三人の姿が消えた。
「(今の聞こえたか?)」
「(ああ。隠密アーツって聞こえた)」
「(あの様子だとスキルじゃなくて純粋な技術の類っぽいな)」
そんなことを言い合いながら、先程の三人を確認する。
「(三人は奥へと向かうみたいだな、今のうちに)」
「(ああ、頼むぞ!)」
三人が奥に向かうのを確認し、リムルを抱え急いで扉から外に出る。
外に出た瞬間、背後で扉が閉まった。だが、そんなことも気にならなかった。扉を出た瞬間。あまりの眩しさに目を手で覆う。
緑が目の前の景色を覆い、陽の光も慣れた今では心地よく感じる。
「洞窟と違って空気が美味しい……陽の光が懐かしく感じるな」
「わぁー久しぶりのシャバだ!空気がうまい!味覚ないけど」
「あははは……とりあえず外には出れたけど、ここからどうする?」
「そうだな。取り敢えずゆっくり歩いて散策したいかな。ヴェルドラに次会った時 、笑って話せる面白おかしいエピソード沢山用意しておいてやろう」
「わかった……ここから俺達の物語が始まるんだな……」
「ああ!俺達の始まりの第一歩だ!」
久々の外を堪能しつつリムルを頭に乗せ森を散策する。
そして、散策して僅か数十分後………
俺達の目の前には30人ほどの緑色の肌をした人間によく似た魔物が現れた。
「(なぁ、リムル……あの魔物ってもしかして)」
「(ああ、ゴブリンで間違いないな、あれは…)」
リムルに聞きながら、ゴブリンたちを見る。ボロ布の服に、錆びた剣やボロボロの防具を装備している。
「(襲いに来たって感じじゃなさそうだな)」
「(ああ、どっちかというと…俺達をかなり警戒してるな)」
「つ、強き者達よ……この先に何か用事がおありですか?」
一人、頭にバンダナを身につけたゴブリンが問いかけた。
二人の運命の歯車は……着実に動き始めた。