悪魔ほむほむの世界で激重感情を向けられながら過ごす自称一般人オリ主のお話 作:匿名希望な奴
よく、ある夢を見る。
内容は全く覚えてない。だけど、妙にリアルでまるで“実際に見てきたみたい“な、そんな夢だった。
辛うじて覚えているものといえば、5人の恐らく少女達が怪物の様なナニカと戦っている事。そして、夢の最後はほぼ必ずと言って良いほど黒い何かに夢の中の全てが塗りつぶされてしまう。
その光景を最後に俺の目は覚めてしまう。
夢なのだからハッキリとした内容なんて覚えてないのは当たり前だし、夢なのだから気にする事なく忘れてしまえば良いと最初は思った。
だけど、何故だろう。
その夢、特に5人の少女達については絶対に忘れてはいけない。そんな気がしてならない。
俺は彼女達の顔も名前も何もかも分からないかど、それだけは間違いないと何故か思っている。
〇〇〇〇〇〇
「ん……んぅ」
いつも通り最後は黒い何かに何もかも塗りつぶされたところで、俺は目を覚ます。
寝室のカーテンの隙間から差し込む陽の光が目元に当たっていたのだろう。眩しさを感じそれから逃れる様に身体を起こす。
「…また何も分からなかったな」
もう何度目か分からないあの夢からの目覚め。
いつも何も掴めずに終わってしまい、起きてから考えようとしてもその時には夢の内容はほぼ忘れてしまい、思い出せてもかなり朧げになってしまう。
因みに夢が終わる瞬間は前までは思わず飛び起きてしまったが、今となっては慣れてしまい意外と落ち着いて起きられる事が増えてきた。
けれどもまるで目に見えない何かが、俺にその夢の全容を見られ知られてしまうのを嫌がってるかの様なこの状態は、そんな訳ない筈だとは思うが頭は妙にモヤモヤするし、何処となく気持ち悪さみたいなものを感じたりもする。
別に知らなくても何がどうなるというわけでは無いとは思うが、ここまで気になってしまうのだからどうしてもあの夢が何なのか知りたい。
だけどそんな俺の思いとは正反対の結果ばかり。一体どうしたらあの夢の全容を知る事ができるのか、最近の俺の細やかな悩みの種となっていた。
「……とりあえず、着替えるか」
夢の内容が分かろうが分かるまいが、俺は子供で学生だ。二度寝など許される時間でも無いし、何より親にはあまり面倒はかけたく無いしな。
「そんじゃ行ってきます」
「おう行ってらっしゃい。おっとそうだ、“アスカ“。学校帰りに寄り道するのは構わないが」
「暗くなる前には絶対に帰ってこい、だろ?分かってるよ。」
俺の朝なんてものは特に語る事もない平穏なものである。
普通に起きて“見滝原中学“の制服に着替えて、そして朝飯を食ったら親父に見送られながら学校へ行く。
そんな何の変哲もないありふれた毎日を俺は送っている。
まぁ、普通でない事を挙げるとすれば。
「おはようアスカ。今日も元気そうで良かったわ」
「……」
“コイツ“の存在である。
家を出て少し歩いたところで、今日もあいつはまるで俺の動きなど全て把握してるかの様に通学路の途中で立っていた。
俺と同じ見滝原中学の女子の方の制服を着た黒く長い髪に“赤いリボン“をまるでカチューシャの様に頭に結んだ少女。
暁美ほむら。
俺と同じ中学で、クラスメイトの女子なのだが…。
「あら?どうしたの。私の顔に何か付いてるかしら?」
「…いや、何でもない。ちょっと寝ぼけてただけだ、おはよう」
「あらそう。夜更かしでもしたのかしら?ちゃんと眠らなくちゃだめよ」
「ああ」
…俺はコイツが苦手だ。
別に嫌ってる訳ではない。コイツは見た目もそうだがとても同年代とは思えない大人っぽい雰囲気なども合わさりクラスだけどなく学校でもそれなりに人気がある。まぁ本人のどこか近づき難い雰囲気か、または何故か目が据わってる様にも見えるからか積極的に話しかけようとしたり関わろうとする奴は少ないが。
それでもこんな美少女と一緒に居られるだけで大抵のやつなら浮かれる可能性が高い。
では何故俺がコイツに苦手意識を持ってるのかと言えば色々ある。
例えば、俺とコイツは中学2年に上がってからの付き合いの筈だが、まるで何年も一緒に過ごしてきたかの様に接してくる。
それだけならまあ特に気にする事ではないのだが、何故かほむらは俺の趣味や好みだけでなく俺の家族構成まで把握していた。だからなのかほむらは俺の親父とも既に接触しており、親父の中では既に俺の友達という認識で固定されてしまっていた。
更に今日もそうだが、俺が朝通学する時間などまで把握してるのかいつも通学路の途中で待っていた。しかも俺が学校に遅刻しそうな時も気分を変えて朝早くに登校しようとしてる時なども絶対にだ。
流石にそこまでいけば俺だって一種の恐怖に似た何かを感じる。
だけど誰に相談してもまともに取り合ってなどくれない。それは友人である“さやか“達でも同様だった。
多分見た目は美少女のほむらだから思春期にありがちな勘違いをしてしまってるからだろう。
そしてある日、俺はほむらに何故俺の事に関してそこまで詳しいのかや、何が目的なのかをそれとなく尋ねてみた。
見方によっては中ニ病なイタイ奴としか思われないが、それでも気になってしまったし今後の俺の生活に支障を出す可能性があるのならこれは聞かなければいけないと思ったのだ。
しかし返ってきた答えは「貴方のことは何でも知ってるわ、ずっと前から」や「目的なんて何も無いわよ。ただ、貴方が幸せでいて欲しいだけ」など、答えになってる様でなってない返事が返ってきたのだ。
それ以降も何度か同じ様な質問をしたが、結果は変わらなかった。
幸い今のところ実害らしい実害は出てないので、俺に出来ることは、ほむらをなるべく刺激しない様にただただこの毎日を過ごしていく事だけだった。
「それにしても今日も良い天気ね」
「…そうだな」
「こんなに天気が良いなら、貴方が好きな昼寝もとても気持ちよく出来ちゃうかもね。
けど授業中には寝ない様に注意しなくちゃダメよ?」
「分かってる。流石にそこまで節操なしじゃないからな」
俺が昼寝好きなのは事実だし、今回みたいな天気のいい日には思わず寝落ちしそうになり睡魔と戦うのなんて日常茶飯事だ。
しかし当然これに関してもほむらに教えた事は一度も無いのに、出会った当初から何故か知られていた。
ほんと、さやかの奴が前にほむらの事を不思議ちゃんと呼んでいたが最早そのレベルでは無いと思う。
「そう、なら良いわ。
それに今日は“転校生“が来るらしいから、初めて会うその子にだらしない印象を与える訳にはいかないものね」
「へぇ、この時期に転校生なんて来るのか」
今って確か季節的に大分中途半端なのに転校生か。けどまぁこんな事もあるか。
それより俺が気になるのはやっぱ転校生が男か女かや、どんな性格をしてるのかだ。
男女云々に関してはどちらでも良いにしても性格などはやはり大事だろう。“以前のほむらみたいに“見た目はクールビューティな正統派ヒロインなのに蓋を開けてみたらどんな問題もスラスラ解き、体育の授業で抜群の運動神経を見せるなら兎も角、初対面で変な事を言う不思議ちゃん属性は勘弁してほし……………
「……は?」
俺今、何を考えてた?
以前のほむらみたいに?どう言う事だ?そもそもコイツは転校生じゃない。
それに、初対面で変な事を言われたのは間違いないが、何だ?何かがズレてる様な…。
「どうしたの?」
「⁉︎」
そんな事を考えてると、俺の様子を不審に思ったほむらがこちらの顔を覗き込んでくる。
「……いや、大した事じゃないよ。
ただうちの担任どうせまたフラれた話ぶちまけて来るだろうから、それにその転校生が巻き込まれないか気になってな。
ほら早乙女先生生徒毎回呪いだの予言だの言い出してそれが日に日に酷くなってるだろ?」
「ああ、成程。転校生の子が初めてアレを見たら確かに驚きそうね」
「だろ?だから流石にフォローするべきかどうか考えちまってな」
とにかく今思い浮かんだ事はほむらには内緒にしといた方が良いな。
何でかは分からないけどコイツにだけは今悟られてはいけない気がする。
そうやってなんとか話題を逸らしつつ、突然頭の中に浮かんだ違和感を抱えながら通学路を歩いて行く。
だが、この時の俺は知る由もなかった。
「(やっぱり“今回も“この話題に反応したわね。でも大丈夫。今度こそ上手く立ち回ってみせる。
“まどか“、アスカ。貴方達の幸せの為に)」
暁美ほむらという“悪魔“が、既にこの光景を体験した事があり、俺がこの時点でこの世界に対しての違和感を感じてる事を悟ってる事を。
その妖艶な笑みの下に、誰にも分かるはずのない執念を宿している事を。