この世界が残酷なあの世界だと知ったのは齢14。それまで2回目の人生を気楽に謳歌していた俺にとって衝撃的な出来事だった。女に生まれ変わり、男の勲章を失い、絶望するあの時よりも壮絶な壮絶な出来事だった。
それまでただひたすらに遊び、ただひたすら自由に、ただひたすらに鍛えていた。
前世ではやらなかった運動、人を殴るなんて死んでもしなかった俺は力を求めた。何故かはわからない、だが運動するのに、特に実力差がある相手に挑み勝つ下剋上に興奮した。中学生2年と言う体には似つかわない身長体格体重。190cm、大人の女性でも平均40cm弱の肩幅は48.5cmある、さらに体重は100キロ。こんだけ鍛えてればその実力を振るいたくなる。その矛先は、狩りだった。裏路地に屯する人間をひたすらに殴る。学校一のヤンキーにあえて喧嘩を売って完勝する。ボクシングに出て、3つ4つ上の先輩を叩き潰す。特に格上を倒すのは気持ちがいい、自分がつよいと実感できる。その瞬間はドーパミンとか良くない物質がドバドバでる。前世の俺では考えられない変わりようだ。
これが今までの人生、そしてここからが衝撃的な人生。
「僕と契約して魔法少女になってよ。」
何度も聞いた、天使のような悪魔のセリフ。可愛らしいマスコットが地獄のような言葉を吐いた。今までの夢物語が一気に冷える。
俺は早急に動いた。見滝原市、ネットはそれほど普及してない時代とは言え、図書館の地図なりで探したら簡単に見つかった。そこに訪れた。見たことあるような、ないような風景、だがあの学校もあった。さらにいた、ピンク髪の女子、この世界の主人公。黄色い先輩と青い同級生、3人並んで帰る姿を見た。
ふと思う、この世界線はどの世界線だろうかと。まどマギこと『魔法少女まどか★マギカ』には数え切れないほどのIFルートがある。本編でも無数にあり、ゲーム作品、漫画、小説などを含めればその数は数え切れないほどだ。
たった1つの正解ルート、最終回にまどかがありとあらゆる魔法少女を過去未来世界問わず全員救う願い。アレが正解ルートだとするのなら、この世界線は詰んでいた。何故か?彼女はもう魔法少女になっていた。ならばこの世界線はワルプルギスの夜にやられるか、ワルプルギスの夜を倒したまどかが魔女化した存在に滅ぼされる。
絶望した。今さら新入り魔法少女1人程度増えた程度でワルプルギスの夜に全員生き残って勝てるとは思えない。1人なら尚更無理だろう、まどか達抜き倒せる分けない。まどか達と協力できたとしても、まどか達が魔女になったらいみがない。なんせ俺個人では魔女化したまどかを倒せるとは思えない。
だが立ち止まらなかった。
「キューベイ。」
「キュ?」
「俺の願いって最大何が出来る?」
「...君の願いなら、うーん、そうだね...特殊な願いでも叶うと思うよ。」
「特殊な願い...ね。例えば過去に行きたいとかあり?」
「うーん、出来なくはないけどお勧めはしないよ。」
「なんで?」
「効力が低いからさ。君の力からして、叶ったとして1日1回1時間が限度かなぁ。なにより相性が悪い。脳筋で挑戦的な君にその魔法は付属として付く可能性が高い。本来の力とは異なる力故に出力も効率も悪いはずだよ。強くなりたいという純粋な願いとして過去に戻る力を手に入れない限り、やっぱり1日1回1時間が限度だよ。」
無数にある力からそれを選ぶ...無理だ。この世界線の事を考えるとなおさら無理。誰かに頼ろうにも...仲間がいない。......いや、いるか?試すだけ試してみよう。
「キューベイ。暁美ほむらに合わせてくれ。」
「暁美ほむら?うーん、まぁ、一応いるにはいるけど、お勧めはしないよ。」
「自然にポップした魔法少女だからか?」
「うん、......ってあれ?その事を君に話したかい?」
「......契約しないのに魔法少女になった子がいるって言ってたろ。俺も独自で調べてんの、キューベイ頼り切りってわけじゃないんだよ。」
口が滑った。それらしい理由並べて言い訳したが苦しい。キューベイは特に追求してくるわけでもなく淡々と受け入れたが少し不安だ。そしてキューベイ案内のもと暁美ほむらに合うことが出来た。
第1印象は最悪だった。
ダンダンダン!!
「...いきなりキューベイ殺すとか、マジで荒れてんなぁ。」
なんせいきなりキューベイを撃ったのだから。ホムホムが構える銃から微かに白い煙が立ち登る。...その銃口がいつ俺に向くかわからない。あまり近づかず話そう。
「......別に、あなたには関係ない事よ。それより私になにようかしら。」
「単刀直入に聞く、今何回目だ?俺はあんたを初めて見てから2回目の人生だ。」
嘘はついてない。事実2回目の人生。嘘を見破る魔法が万が一あってもこの質問なら答えてくれるはずだ。いつの世界線かはわからないが、魔法とやらは何でもできる設定だったような。クトゥルフの心理学的な事されていてもおかしくない。
「.........,。あなた魔法少女?」
「契約前だ。」
「...キュゥべえの仲間?」
「願いとやらでなんとか挽回出来ないかと藻掻いてる一般人だよ。今の所だけど。」
相変わらず銃口は向いたまんまだが、話は出来ている。ホムホムも話を聞かずに処刑とかするのにはまだ早いと思っているのだろうか?ぜひそう思って話を聞いてほしい。
「.....貴方、どうして魔法少女になってないの。」
「知らん。1回目の次の2回目だ、そう言ったぞ。」
「.....前の世界での私たちの関係は?」
「その様子だと俺とは初対面か?」
「質問してるのはこっちよ。」
俺と面識があるように匂わせつつも事実を下に下駄を履かせて伝える。そしてなんとなくだが嘘がどうかは見極められてない、少なくとも魔法の類でだが。こっちがボロをこぼさない限り行ける...か?
「まぁ、なんと言うかな。あんたがアレしてるの見ただけだ。たった1人の女の子救うのに何度も何度も奮闘してるのを。」
「そんなの見せた覚えないのだけど。」
「それはこの世界線の話だろ。」
ここは原作知識とハッタリで行く。さぁ、ある意味下剋上、警戒心強めな強敵魔法少女を崩せ。そしてあの作戦を実行させる。どの世界にでもおける共通のラスボス。さぁ、言葉による殴り合いの時間だ。
「ある結末では魔女化したピンク髪によって滅んだ。お前が放置した場所から追っかけてきた。それだけよ。」
ホムホムの銃口が下がった。やっと対等に話せそうだ。ほっとなで下ろす。
「それが1回目?」
「俺が覚えている限りだがな。何度も聞いて悪いが初対面か?」
「......そう、だと思うわ。少なくとも私が行ってきた場所では見かけなかったわ。味方としては絶対いた事ないわ。敵対した場合もおそらく。」
ホムホムは手を顎に当てて思い出すように話す。
「そっか、そうかぁ。もうひとつ聞く、あの子がアレになってもここにいるのはまだあの子を救いたいからか?」
「.........。...。...ええ。」
「願いを叶えてああなったなら、俺の願いで相殺する事は可能だと思うか。」
「......。分からないわ。」
「なら、知ってる奴に聞くか...キューベイ。いるんでしょ、出てこい。」
だが十秒ほどたっても返事はない。
「...。」
「出てこないと契約しないぞ」
そう言うとやっと白いマスコットが現れた。少し不機嫌そうだが俺のそばにポフっとはねて近づく。
「まったく、君は。お望み通り出てきてあげたけど?」
「いるなら最初から出てきなさいよキューベイ、で、さっきのって出来る出来ないどっち?」
そう言うとキューベイは自分の死体を捕食しながら答える。
「願いの相殺。いや、君たちの話から察するに、魔法少女を元の人間に戻す話だよね。うーん、行けなくはないけど意味ないと思うよ。」
「どう言う意味よ、インキュベータ。」
俺はなんとなくわかった。多分出来るんだろう、魔法少女を元の人間に戻す願いは確かに出来る。しかしだ。
「あー、なるほど。お前さんらもう一度願いを叶えて魔法少女にさせる気だな。悪い事考えるなぁ。」
「それもあるけど、何かの拍子にまた魔法少女に戻る可能もあるね。そうなったら無駄骨、お勧めしないさ。」
「ふーん。やがて来るワルプルギスの夜を使って無理矢理魔法少女だろ。そんなに宇宙延命が大事か?」
「......。」
俺とキューベイの会話をホムホムは黙って聞いてた。警戒の色はつよい。
「まぁね。僕も宇宙延命のためにやってる事だから理解して欲しいよ。それに今の君ならもっと大きな願いも叶うよ。」
「大きな願い、ね。例えばだが『過去現在未来、すべての宇宙、すべて魔女を生まれる前に消し去りたい』っていたら?」
「そこまで大きな願いまず叶わないさ。仮に叶ったとして、その願いを叶えた魔法少女は魔法少女ですらなくなる。そう言う世界の理、運命の歯車の一部となって永遠の時間魔法少女達を救済し続けるさ。やがて誰からも忘れられてそう言う仕組みってなるね。そしてその反発のエネルギーも極大、僕らの宇宙、いいやありとあらゆる世界線、まだ見ぬ果ての宇宙もすべて消し去るね。まぁ例外だよ。」
だが俺はその例外を知っている。暁美ほむらが辿り着くであろう世界線。ワルプルギスの夜どころかすべての魔女の存在そのものを消し去った。思わず笑った、こんなキューベイよりも知ってる事がある。なんと言うかそれだけでなんかマウントが取れる。
「ところがどっこい、叶えたやつを一応見たんだよ。しかも存続し続けた宇宙を。」
「誰だいそんなすごい可能性を秘めた子は。」
「そこの暁美ほむらのお友達さ。」
「まさか君が?」
と、突然足元に弾丸がとんでくる。バンバンと躊躇なく撃ってきた。当たらなかったのは本当に幸運だ。
「バッキャロー!打つなタワケ!!今の今知り合った同士友達とかどんな陽キャだ!いるだろ、暁美ほむら。」
「......まさか、あの子...う、うそよ。だってあの子はもう願いを叶えてる!まさか再度願いを叶えさせるつもり!?!?」
「ちげぇよ!!」
このホムホム、天然と言うか素直だわ。良くも悪くも。にしても、話すかどうするか。君たちの世界がアニメですなんて通じないよな、少し盛る...かな。
「はぁ~。まぁ、あぁーん、...えーと、俺の前の世界での魔法少女パワーの話になるけどよ。俺いろんな世界をアニメーションとか漫画で見てきたんだわ。魔法少女がそもそも存在しない世界だったり、宇宙が滅ぶ心配ない世界だったりね。
で、暁美ほむら、あんたがいずれ行き着くハッピーとは言えないもののビターエンドの話だよ。あんたのダチが最後の最後で魔法少女になるときの願いさ。」
「......。あの子、そんなの、そんなの救われないじゃない!!人は愚か、概念になって、誰からも忘れられて。認めないわ!そんな世界認めてなるものですか!!」
「.....余談だが、暁美ほむら。その世界線だと、あんたは概念となった友達を救うべく、研鑽を重ねた力で概念から人へと無理やり戻すんだが。まぁ、そんな事したらどんな悪影響あるか、分かりきった事だよな。」
「.........。」
ホムホムは何とも言えない顔をしていた。当たり前だと言いたそうだが、自分1人が世界を滅ぼす。しかも友達の願いを壊して、その心情は複雑だろうな。
「世界、いや全時空の宇宙と1人の人間天稟に賭ける事態そもそもおかしい。どう見ても前者の方が大事じゃないか。」
「黙りなさい、一生考えても貴方には分かり得ないことよ。」
カチャとまた銃を構えた。狙いはキューベイ、しかし狙われた本人は毛づくろいしてる。肝据わってること。
「手厳しいなぁ、で、キューベイさんよ。あんたある世界線でこんな事言ってたんだぜ、時間を繰り返すたびに運命の力が強くなるって、多分そんな感じなことを。」
「......なるほど、言いたいことはわかるよ。誰かは知らないけど、時間遡行をする度にほむらの友達が強くなる。その理論で行けば君が言ったすべての魔女を消滅させる事は可能だろう、理論上だけどね。でもそれには途方もない繰り返しが必要なはずさ。君は2回目みたいだけど暁美ほむら、君は何回目だい?いいや、こうとも言える、何回君の友達を見殺しにしてきたんだい。」
ホムホムの手がカタカタと震え、物凄い形相となる。そんな姿を見て俺は一喝した。
「キューベイの話、まともに聞くなよ。」
それを聞くと、ホムホムはフーッと一息深呼吸をして落ち着く。しかし顔は相変わらず眼光を飛ばす。
「耳の痛い話だろうけど事実さ、君らは失敗したから過去に遡って繰り返すわけだろ?ならばその過程にいくつもの失敗があるはずさ。僕らと何も変わらない、1つの目的のためにひたすら作業する。」
「貴方と私が同じですって!!!」
「そう怒らないでくれ、さっきも言ったけど事実だよ。君の話が本当なら、宇宙を崩壊させても1人を守りたいようにほむらの目的。宇宙を崩壊させないように1人、また1人と犠牲にしていく僕たち。確かにやってる事は違うけど、手段を選ばないという点では同じさ。」
これ以上話をしても意味がない。俺はパンパンと手を叩くと、2人共俺に顔を向けて来た。殺伐具合はある程度収まったが、それでも空気は悪い。
「...キューベイ、お前さんには愛がないな。例え家畜のような扱いをされても、当人が愛情を感じてるかいないかで雲泥の差さ。だから暁美ほむら、コイツと一緒なわけないさ。」
「...。」
「で、こっからが本題、俺の提案するプランの話。」
そう、こっからが本番。俺はギュッと気持ちの帯を締めて言い放つ。より壮大なハッタリをかます。
この物語の結末は?
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ハッピーエンド
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ノーマルエンド
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ビターエンド
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バットエンド
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アブノーマルエンド