2.5話。
ワルプルギスの夜が来るまで、あと数日。といっても、俺にできることは意外と少なかった。いや、正確に言えば。
「暇だ」
「......そう」
「暇すぎる」
「...そうね」
「お前さん、もうちょっとなんか言えよ」
「何を言えばいいのよ」
「例えば『早稲、訓練しましょう』とか」
「嫌よ」
「...。即答かよ」
「作戦はもう決めたでしょ?」
「そうだが。...ほむらだよりだもんな。」
俺と暁美ほむらは、ファストフード店の隅に座っていた。窓の外では、いつもと変わらない街並みが広がっている。学生が歩いている。買い物袋を持った主婦が歩いている。自転車が通り過ぎる。車が走る。
後数日したらこの街にワルプルギスの夜が来るなんて知らないだろう。世間では台風が来るとだけ。まぁそれなりの危機意識しかないのだろうな。
俺たちが今、世界の命運を左右するような計画を立てていることを。そして何より。この街に住んでいる人間の大半が、そんな未来を知ることなく普通に生活していることを。
「...なんか変な感じだ。」
「......何が?」
「ワルプルギスの夜が近いのに、誰も気にしてない」
「当たり前でしょう」
ほむらはストローを指で弄びながら答える。
「誰も知らないもの」
「そりゃそうなんだけどさ」
俺は窓の外を見る。魔法少女でも知る奴は少ないのではないのだろうか。少なくともほむらは知っている。あと知ってそうなのは...わかんねぇな。
コーヒーを啜りながらボヤく。
「こういう時って、映画とか漫画だと街中がパニックになってるじゃんねぇのかね。」
「...あなた、そういう話ばかりね」
「仕方ないだろ。前の世界だと、線状降水帯とか大地震でパニックだってのに。」
「前の世界ね」
ほむらがこちらを見る。少しだけ目が細くなった。
「あなた、本当に不思議な人ね」
「そうか?......褒めてる?」
「褒めてないわ」
「知ってる」
俺は笑った。ほむらも小さくため息をついた。最近、このやり取りが増えた。俺の冗談にも何とか着いてきてくれるようになった。まぁ、最初に会った時は銃を向けられたし。真面目に不真面目かいけつゾロリやって来たかいがある。とは言え、何度か銃を向けられた。今でもたまに銃を向けられるし。.....まあ撃たないだけだいぶ改善したと言えるだろう。
「そういえば」
「何?」
「お前さん、学校は?」
今日は平日。普通なら学校、ここにたむろしてる時点で俺もほむらも不良少女と言うわけだ。
「それは貴方もでしょ。」
「俺は一応家出少女。親とちょっとばかし喧嘩別れって感じよ。その延長で学校に行かないだけ。」
それを聞くとほむらはどこか呆れたようにため息をつく。あまり俺を舐めないでほしい。ハッタリ、嘘、デタラメ、たとえそれが生みの親だろうと世界の危機なら騙そう。
「.....。」
「学校。まどかの事、見となくて良いのかよ。」
「...。この世界のまどかはすでに魔法少女よ。」
「なら何で時間遡行しないんだい?」
「貴方の話に乗ってるだけよ。」
「ほんとかねぇ。本心はまどかと一緒に遊びたいくせに。」
目線を下にしているほむら。本来遊び盛りの年頃、こんなクソデカ少女inおっさん魂なんかよりもまどかと幸せに過ごしたいはずだ。見た目は少女、頭脳はおっさん!その名は、......何だろな。
「一応学校には行ってるわ。」
「嘘つけ。」
「......。」
「その顔は図星だな」
一度睨見つけてきたほむらだか、気まずいのか目をそらした。後ろめたいものがあるのだろう。
「今はそれどころじゃないもの」
「それでいいのかよ」
「いいのよ」
「よくねぇだろ」
「あなたに言われたくないわ」
と、まぁこんな感じで話題を逸らす。...この世界はどうなるか分からない。分からないからこそ、友も大切にしてほしいというのは迷惑な話なのだろう。でも言う、...あえて言おう、カ...やめよう。とにかく言うか。
「俺は前の世界ではちゃんと学校行ってたぞ。」
「今の世界では?」
「......。」
「ほら」
「...ワルプルギスの夜対策が忙しいから、そういう事で。」
「一般人のあなたが出来ることなんて限られてるわ。」
「そうでもないさ、体鍛えたりするし。たださぼってるわけじゃないもの。」
「あなたも人のことを言えないじゃない。」
「ぐうの音も出ねぇ。」
俺はハンバーガーを一口かじった。味はおいしいがジャンクフードの域は超えない。ほむらはポテトを一本摘まむ。
しばらく無言になる。妙に静かだった。店内はほむらと俺だけではないというのに。
「...なぁ」
「何?」
「お前さん、こういうことしてたのか?」
「こういうこと?」
「誰かと飯食ったり、会話したり。まぁその...人同士の何かだよ。」
「......。」
「時間を繰り返す前からそんなんなのか?」
ほむらの手が止まった。時間を繰り返す前、最初のほむらはそんなガンギマリじゃなかった。ただ時間を止められるだけのか細い少女。力がないからこそ現代兵器に頼った。そして一人じゃ非力だからマミやまどかと動いた。そんな過去、あったはずだが。
「...覚えてないわ」
「そうか」
「何よ」
「いや」
俺は窓の外を見る。話したくない、ほむらがまどかを忘れるなんてあり得ない。そう思う。けどそう思うのは1人のまどマギ視聴者としてからかも知れない。ただひたすらに求める答えを探すうちに、原点以外の過程を忘れるなんて話もあり得るかも知れない。
「なんとなく聞いただけ」
「……そう」
けど、それ以上は聞かなかった。聞けば答えてくれたかもしれない。だが、聞かない方がいいこともある。少なくとも俺には、それくらい分かった。
暫くして。
「あなたは」
「ん?」
「前の世界ではどんな人だったの?」
「俺?」
「ええ」
ほむらがこちらを見る。その目には疑問と言うよりも、興味と言う風に見えた。
「今のあなたとは、かなり違うのでしょう?」
「........まぁな。」
俺は少し考えた。どう話すか考えたのもあるが、前世との変わりようは凄まじい。そもそも魔法少女なんてやってない、けどほむらはそう思ってる。自分と似て非なる能力。違いは時間遡行しても魔法少女なのか、そうじゃないのか。ほむら視点の話だが。
「普通だよ」
「普通?」
「普通の魔法少女」
ハンバーガーを置く。
「人を殴ったことなんてなかったし、喧嘩なんて怖かった。運動も今ほどしてなかった。普通に学校行って、普通に働...バイトして、普通に趣味を楽しんで...そんな人生。キューベイと契約しても、まぁ、うーん、1人のんびり魔女退治って感じよ。」
「それが、どうして今はこうなったの?」
「知らん」
「知らないの?」
「知らん」
俺は苦笑する。実際そうだ、少なくこんなに暴力的になった理由は真面目に不明だ。
「この世界に来てから、なんか身体を鍛えるのが楽しくなった。強くなって、強い奴に挑んで、勝って...それが妙に楽しくなった。」
「危険な趣味ね、理解できないわ。」
「否定はしない。」
「......それでワルプルギスの夜にまで挑むの?」
「まあな。」
「怖くないの?」
「怖いぞ。」
即答した。ほむらが少し驚いた顔をする。そう、怖い、自分よりも体格がいい男子高校生なんかを集団で相手したときは正直肝が冷えた。それでも勝ったが、気持ちよさが覚めたあとには鳥肌、そこには恐怖があった。いや、あの時、ずっと鳥肌が立っぱなしだった。格上を相手にするというのは怖い。怖いが、それでも挑む。なぜなら勝ったときの快感が凄まじいからだ。
思わずにやけてしまう。快感を思い出したからか、それともほむらの話がおかしいからか、案外その両方かも知れない。
「......あなた怖いの?」
「そりゃ怖いだろ」
「いつも楽しそうじゃない。」
「それとこれとは別だ」
俺は自分の手を見る。ゴツゴツで豆だらけの手、とても青春真っ盛りの女子中学生の手に見えない。
「怖いからこそ、燃えるんだよ。」
「...。......理解できないわ。」
「だろうな。」
「でも。」
ほむらは少しだけ目を伏せた。その仕草が少し気になって俺はほむらを見つめる。泣いているわけではないが、悲しみを感じた。
「......少し羨ましい」
「...何が?」
「怖い......そう言えること。」
その言葉だけは、妙に重かった。俺は何も言わなかった。ほむらは自分の感情を、何度も何度も押し殺してきた。失敗して、やり直して、また失敗して、そしてまたやり直す。たった1つのルートを見つけるために、何度も何度も繰り返し。
それを考えれば。怖いなんて言っている暇すら、なくなっていたのかもしれない。いや、怖いとわかっていても立ち向かえる心の強さに嫉妬しているのか?そう考えると、ほむらは俺が羨ましい...かもしれない。
「.....ほむら」
「何?」
「俺が言えたもんじゃねぇがよ。...お前さん、もう少し自分を大事にしろよ。」
「無理よ。」
「即答すんな。」
「私が自分を優先したら、あの子が死ぬ。」
「...。」
「だから出来ないわ。」
ほむらは淡々と言った。
「そっか。」
まるで、それが当たり前であるかのように。
「だったらせめて」
俺は続けて言う。ほむらに伝えなくてはならない。人よりも長く生きてる、いや、ほむらの方が長いか?いや、そうじゃなくて、大人として、元大人として言わなくてはならない。
「自分を大事にしながら、あいつも助けろ。」
「そんな都合のいいこと。」
「出来るか出来ないかじゃない。」
俺は笑った。
「やるんだよ。...ほむら、出来るさ。」
「......。」
「まぁ、俺はそれをやるためにここにいる。あんたがこれ以上頑張らなくて良いように協力する。けど、こんだけ格好つけといてなぁ。魔法少女じゃない今の俺はほむらに頼りっきりって感じなんだがなぁ。」
ほむらが黙る。そして。
「......変な人」
「おいおい、変人になった覚えはないぞ。」
「本当に変、変人。似合ってるじゃない?変人。」
「二回言うな」
ほむらが、ほんの少しだけ笑った。この世界で初めて見た。それを見て、俺も笑った。そんな時間が、少しずつ増えていけばいい。この世界が救われた後の話だ。ほむらが俺とだけでなく、まどか達とも話せるように。...幸せと安らぎの時間が増えたらいいよな。
後日談やIFルートとして追加して欲しい話。2回目(1回目と同じ投票先でも構いません。自由に投票お願いします。)
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オリ主と暁美ほむらの話。
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オリ主とキュゥべえの話。
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各ルートのその後の話。
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オリ主がすでに魔法少女だったIFの話
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要望は特にない。
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新作を書いて欲しい。