あれから数日後。またこうして集まった俺たちは適当な店に入った。よくある安いチェーン店のお店。ほむら達と比べて離れた場所に住んでいる俺からしたら移動費だけでキツイところがある。にしても、実に女子高生らしい。
注文をして、料理が運ばれて、そして。
「いただきます!」
杏子が物凄い勢いで食べ始めた。
「ちょっと杏子ちゃん! そんなに急いで食べなくても...!」
「腹減ってんだから仕方ねぇだろ!」
「誰かこの人止めて!」
「無理じゃない?」
さやかが笑う。
「私も手伝おうか?」
「マミさんまで!?」
テーブルの上は一瞬で騒がしくなった。
俺はその光景を眺めながら、ドリンクバーから注いできたアイスコーヒーを一口飲む。なお3杯目だ。
「...うまい」
「早稲さん、さっきからコーヒーばっかり飲んでません?」
まどかが不思議そうに聞く。
「大人の嗜みだ」
「中学生が何言ってるのよ」
ほむらが即座に突っ込んだ。
「ぬっ!」
正論。しかし前世と合わせたら大人以上の歳を重ねてる。黙れ小僧!!貴様にまどかが救えるか!!っとジブリデカワンコも叫んでるはずだ。
「.....まぁいいだろ」
「よくないわ」
「厳しいなぁ、ほむら。」
「誰のせいだと思っているの?」
「俺?」
「あなた以外に誰がいるのよ」
そう言いながらも。ほむらは少しあきれていたしかし顔は穏やかだった。その顔を見て俺は少しだけ安心した。
世界は、少しずつ変化していった。
とはいっても、何かが派手に変わるわけではなかった。ニュースを見ても、いきなり世界が大騒ぎするようなことはない。知ってるのは多分俺たちだけ。
街も普通、学校も普通、人々も普通。それまで魔女や魔法少女という異常な存在があった世界だったはずなのに、その痕跡はまるで最初から存在しなかったかのように薄れていった。とはいえ事件は起こるのだけど...。
会話は平和で優しいものだった。
中学校はどうだったとか、その中学でこんな事があったとか。まどか達は学校へ行ってるみたいだ。
マミは受験生だから大変だと言う、魔法少女としての仕事をしてたらより大変で済むかわからないと珍しく愚痴を零していた。あまり愚痴を言うイメージがない。原作でも優しい彼女にしては意外なような気がする。
杏子は...まあ、相変わらず自由だった。不良少女を続けてるようだ。魔法が使えなくなった分暮らしづらくなったが、それでも生きて行けてるから良いやと語る。たまぁに俺の家にまで来てたかりに来るのは何とかしてほしいが、まぁ......ええか。
そしてほむらは。
「...まだ慣れないわ」
「何に?」
コーヒーを啜る俺に言う。特にまどかに聞こえないように。
「朝起きて、何もする必要がないのよ。」
そう言ってほむらは窓の外を見る。
「今までは、いつ何が起きてもいいように準備していた。寝る間も惜しんで、まどかを救うために。」
「そうだったな」
「でも、もう必要ないのよね。」
「あぁ。...で、これからどうする?」
「...。...分からない」
ほむらは少しだけ困ったように真顔で答えた。ほむらもほむらで飲み物を飲みながら答える。
「何をしたらいいのか分からないことなんて...今まで確かにあったけど、それはまどかを救うため。自分のことになると全くわからない。」
「それは良いことなんじゃないか?」
「そう?」
「人生なんて分からないことだらけだろ、これからいっぱいあるぜ。高校の進路に大学か就職するかどうか。大学は自分で学びたいの選ばねぇといけねぇし、就職なら就職で無茶苦茶大変だ。その後だって人生は続くんだぜ。結婚相手を選ぶとか、どこに住むことか、その住む家をどうするかとか。そりゃもうたくさんよ。」
俺は椅子に座りながら言った。
「まぁ、言ってしまえば未来が決まってないから好きなことができる。魔女になる未来なんてねぇんだからよ、もっと好きなことしたらどうだ?特に友達を超えた親友と遊ぶなんて、大人になると年1回出来るかどうかだぞ。」
「...好きなこと...ね。」
「そう」
ほむらはしばらく黙っていた、やがて。
「...それも、悪くないわね」
そう言った。
マミは一人で食事をすることが減った。
「みんなで食べた方がおいしいもの」
そう言って、何かと俺たち後輩を誘うようになった。まぁ、俺は近場じゃないから早々行けん。けど、さやかとまどか、そしてたまぁにほむらが付き合ってると言う。
さやかは相変わらず元気だった。以前よりもずっとよく笑うようになった気がする。好きな子もいたらしい。バイオリンを引くあの子だろうなと俺は思ったが、告白はしないと言う。と言うのも、本人曰く好きなのは確かだがライクだと言う、ラブではない。友達としてこれからも演奏会には行くつもりだが、友情以上の発展は無いと語った。
今回の世界線で魔女化しなかったのはそうな裏話があったからなのかもしれない。
杏子は。
「食い物を奢れ」
が口癖になった。
「お前なぁ...。」
なにせ俺の住んでる所にまで来て集るときた。
「いいじゃねぇか!」
「人の財布を何だと思ってるんだ」
「友達の財布?」
「お前...」
「冗談だよ」
そんなくだらない会話をして笑う。打ち解けた度合いで言うならほむら以上かもしれない。え?ほむらはビジネスでの関係の延長線だって?まぁ、...そうかもしれない。そんな日々が続いていった。
世界は何事もなかったように回り続けた。
戦争も、事故も、災害も、地震も、人間同士の喧嘩も。起きる。悲しいことも無論。けど嬉しいこともその分だけ起きる。
世界は完璧にはならなかった。俺の願いは、世界から不幸を消すことではない。ただ、宇宙が終わることを前提とした仕組みを終わらせた。
言ってしまえば、それだけだ。だから人間は相変わらず間違える。
泣くわ、笑うわ、かと思えば喧嘩して、仲直りする。矛盾しているようで矛盾ではない。恋をするし夢も見る。実にいいことだ。
そして、明日を迎える。
それでいい、俺はそう思った。
その日の夕方、俺たちはマミさんの家に集まっていた。マミさんはもちろん、まどか、ほむら、さやか、杏子、そして俺。
「そういえば」
まどかが言った。
「早稲さんって、結局あの力...全部なくなったんだよね?」
「まぁな」
俺は自分の手を見る。
「魔法少女の力は完全になくなったよ」
「...ちょっと残念?」
「......いや。」
俺は笑う。残念と言えば残念。魔力があればもっと楽しい事も出来たのも事実だろう。だが、だからと言って悲観すべきことでは無い。
「全然。」
拳を握る。
「俺は元々、普通に生きたかったんだ。」
「ほんとかよ。」
杏子が突っ込むし、ほむらのジトッとした睨みが刺さる。
「あくまで俺の普通だ。みんなにもあるだろ普通、と言うか日常だな。うん。」
魔法少女の願いを使ってワルプルギスの夜と戦った。その結果、世界を変えたし宇宙を救った。
そんな大事件を経験した。
「日常?」
「そ、寝て食って学校行って楽しい事する。そんな日常よ。」
「なんか早稲がいうと、不健康に見える。」
まどかの繰り返しに俺は淡々と答えた。その答えを聞いてさやかはどこか微妙に感じる。とは言え、欲しかったものは。
「普通の明日だよ」
みんなが黙った。
「朝起きて」
指を1本立てる。
「飯食って」
2本。
「学校行って」
3本。
「友達と喋って」
4本。
「くだらないことで笑って」
5本。
「夜になったら寝る」
拳を開く。そんでもんってもう片方の拳も開いて。
「ついでに幸せに過ごせたらなおの事よし!」
パンッと叩く!みんなが見つめる。
「とは言え欲張り過ぎはあんまり良くない、普通で十分だよ。俺はね。」
まどかが微笑む。
「うん」
ほむらも。
「...そうね」
さやかが笑う。
「なんか、早稲らしいね」
「どういう意味だよ」
「そのまんまの意味」
マミも笑った。
杏子は。
「なぁ、そろそろオヤツにしようぜ。」
「お前そればっかりだな!」
全員が笑った。その瞬間俺は窓の空を見た。夕焼けだ、赤く染まった空。雲の隙間から光が差し込んでいる。昔ならこの景色を見ても。何も感じなかった。
でも、今は違う。何も起こらない、少なくとも魔女による被害はない。
今はただ夕方が来ただけだ。
「......キューベイ」
小さく呟いた。無論返事はない。もうあいつの姿を見ることもできない。でもどこかで世界を観測しているのだろう。もしかして今も俺たちを観測したりしているとか?...なんか気持ち悪いな...うん。
まぁでも、新しい役割を与えられた存在として宇宙の終わりを防ぐためではなく。ただ、世界を見つめ続けるためにいる。
「元気でやってるかな」
「誰の話?」
まどかが聞く。
「いや」
俺は笑った。
「独り言」
「頭でも打ったんじゃない。」
「うるせぇ」
ほむらが吐き捨てるように言う、思わず笑う。
そして俺はもう一度、空を見る。宇宙も、地球も、そこにいる人間も、俺たちも続く。
明日もきっと普通にやってくる。
「...これでいいよ」
小さく呟いた。世界を救った英雄になるつもりなんてない。歴史に名前を残すなんてこと言うつもりもない。とは言え、また格上とやりたい。まぁ、出来たらチャンピオンベルトぐらい賭けた試合を、もう世界を運命背負うのは遠慮したい。
あの5人が、大切な人たちが生きている。それだけで俺は十分だった。
6人でくだらない話をしながら、笑いながら茶を啜りケーキを頬張る。なんだかケーキを食べるのは特別な気がする。けど続く、明日へ向かって。
「明日は何しようかねぇ。」
そんな事を考え、今日という日を楽しんだ。
後日談やIFルートとして追加して欲しい話。2回目(1回目と同じ投票先でも構いません。自由に投票お願いします。)
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オリ主と暁美ほむらの話。
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オリ主とキュゥべえの話。
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各ルートのその後の話。
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オリ主がすでに魔法少女だったIFの話
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要望は特にない。
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新作を書いて欲しい。