Fate/Sacrifice   作:The phone

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注意書き:この作品は作者による拡大解釈が存分に盛られています。ご注意ください。

今回からが本編となります。どうぞお楽しみください。


1.聖杯戦争/三宙町は今日も平和です。

「おにーちゃーん。早く起きてー。朝ご飯できたよー」

 

「はぁ゛〜い゛…あ〜ねむ…」

 

未城家の朝は早い。

料理当番が朝の五時半ピッタリに起き、朝食を作って、もう1人を起こす。学校まで少し遠いので、仕方のないことだ。

 

「よく寝たよく寝た。おはよう、梨奈」

 

「うん、おはよう。お兄ちゃん」

 

彼らの名前は未城桐矢(みのしろ とうや)未城梨奈(みのしろ りな)。ここ、三宙(みそら)町の外れ、今の時期だと紅葉が映える山の麓にあるお屋敷、未城亭に二人暮らしをしている兄妹である。

 

「お兄ちゃん今日ぐっすりだったね。昨日なんかあった?」

 

「いやそれがさ、最近ちょっとオカ研に付け狙われててさぁ…」

 

「え?それ大丈夫?まさかバレてないよね?私たちが()()使()()ってこと」

 

「ダイジョブダイジョブ、単に部員足りてないだけっぽいから」

 

そしてこの兄妹、魔術協会に属さない魔術使いでもある。もっとも、魔術が使えるだけで対して何もしてはいないのだが。

 

朝食も食べ終わり、着替えや歯磨きといった準備を一通り終わらせる。

 

「お待たせ、お兄ちゃん」

 

「よし、じゃあ行こうか」

 

予定がない時は、大抵は二人で登校する。山麓の屋敷から居住区にある中学校までは、徒歩で約30分、高校までは約45分もかかる。登校している本人達からしたら迷惑な話だ。

この屋敷が建ったのは曽祖父の代と聞くが、何を意図してこんな場所に決めたのやら。

 

「おーっす、桐矢。お、きょうは梨奈ちゃんも一緒か。おはよ」

 

「今朝も早いな。真面目なのは良いことだが、体を壊すなよ?」

 

「武彦、怜次。おはよう。今日は早いな、何かあったか?」

 

猿飛武彦(さるとび たけひこ)熊澤怜次(くまざわ れいじ)。桐矢のクラスメイトかつ友人である。

 

「そうそう、あともう少しで三宙収穫祭始まんじゃん。オレらその準備を手伝わされててさぁ」

 

「ほーん…それで?何をしてほしいと?」

 

「装飾が完成しそうにないので手伝ってください!!後生ですからぁ〜ッ!」

 

「なんて情けない…ま、そういうことだ。悪いが、手伝ってくれるか?」

 

「わかった。朝は特に予定ないし。それじゃ、梨奈」

 

「うん、わかってる。お兄ちゃんはいっつもそうだもんね。いってらっしゃい」

 

いってきます、と返事を返し、桐矢は高校へ歩き出した。

 

❐❏❐❏❐❏

 

「終わったーーー!!」

 

「ふぅ、何とかなったな…ありがとう、桐矢」

 

「いいんだよ、僕がやりたくてやってるんだし」

 

校舎についた桐矢達は、収穫祭の装飾を無事に完成させていた。

 

三宙明星(みょうじょう)高等学校。桐矢達が通う、三宙町の町立高校である。三宙町は近年過疎化が少しずつ進んでおり、地域の活性化を目指して様々な町内行事に協力している。

 

「今年は何日からだっけ?収穫祭」

 

「22日から。今日は8日だから、ちょうど2週間後だな」

 

「さて、そろそろ生徒もやってくる時間だ。早いところ片付けるぞ」

 

そういわれ、作った装飾を片付け始める。

去年は色々と忙しかったため参加できなかったが、今年は梨奈でも誘って行ってみようか。

桐矢がそんな事を考えているうちに、気付けば授業は終わり、夕暮れ時になっていた。

 

「ちょっと遅れちゃったな。まさかオカ研の連中があそこまで俊敏だとは…手伝ってやりたいのは山々だけど、オカルト関連は神秘の秘匿がちょっとなぁ…」

 

と、歩きながら、道路の真ん中に誰かが佇んでいることに気がつく。

外套を羽織っているようで、姿はよく見えない。

 

「あの、そこの人。このへんは交通量少ないですけど、たまに車通るんで危ないですよ」

 

声はきちんと届いたはずだが、一向に動く気配がない。…おかしい、何か異常だ。

そうも思っていた矢先、謎の人影が振り返る。

 

爛々と輝いている、溢れんばかりに剥き出された目。

骨が剥き出しになってしまったような相貌に、獣の如き鋭い牙。

顔の横から生えた、山羊の物に近い角。

実際に見たことはなかったか、悍ましいその姿を見れば、正体は一目瞭然だった。

 

幻想悪魔(デーモン)…!?」

 

その名を呼んだ瞬間、人影が蠢き、メキメキと形を変えてゆく。

伝承に名高い、蝙蝠の翼と上へと伸びた巨大な角。

閑静な街の片隅で、文字通りの悪魔が顕現していた。

 

Ggyaaaaaa!!!!

 

「何で幻想種がこんな辺境に…!そもそも変身能力なんて…あぁもう!取り敢えず戦うしかないか!」

 

唸り声を上げながら、悪魔が狂ったように飛び出した。

 

前哨戦

〈突 発 性 幻 想 種〉

使 徒(サボーディネート)

幻想悪魔(Demon)

 

❒❑❒❑❒❑

 

Gyyaaoo!!!

 

デーモンの攻撃は思っていたより単純なものであり、単純な殴打と魔力弾くらいなものだった。

―――もっとも、その威力は人が生身で受けられるものではなかったが。

 

「あっぶな!どんな怪力だよ!」

 

隠し持っていた魔術礼装のナイフで、何とか攻撃を躱す。

このような田舎町で何もせず暮らしてはいるが、桐矢には封印指定執行者になりうる素質がある。

事実、魔術の才がある妹と共に、魔術協会から熱烈な勧誘がかかっている。まぁ、断っているが。

強化魔術を駆使しながら、攻撃の機会を伺い続ける。しかし、なかなか攻勢に移れない。

 

(参ったな。近距離戦闘が主なせいで、魔術を使う隙がない。せめて一瞬でも拘束できれば…)

 

「―――Stilee(静止せよ)!」

 

Ggu!?

 

瞬間、デーモンの動きが僅かに止まる。

これ幸いと一撃を叩き込み、すぐさま距離を取る。

 

「お兄ちゃん!大丈夫!?」

 

「梨奈!すまん、助かった!」

 

駆けつけた支援者は、当然だが梨奈であった。その手には、布に包まれた長柄の何かがある。

 

「それ、わざわざ持ってきたのか?重かったろ」

 

「全然!この程度、強化魔術と飛行魔術でチョチョイと」

 

「…全く、うちの妹は本当に天才だな」

 

呆れ半分に呟き、その武器を手に取る。

同時に、デーモンが魔術の拘束を解いた。

 

Grrrrraaaauuu!!

 

「おっと、待たされてご立腹みたいだ。―――ならば、こちらも全力を出す」

 

はらり、と布が剥がされる。

出てきた武具は、一見すればハルバードの様に見えた。

槍の部分は刃物であったが、どうやら斧に当たる部分は違う。

幻想種か何かの骨を加工して取り付けた、完全な殴打用の武器。

取り付けられた大きな宝石が、煌々と輝きを放つ。

 

Gyaaaaauuuu!!!!

 

「贋作につき真名解放はできないが、そこはご容赦いただこう」

 

飛躍。

人ではありえない膂力を以て、再びデーモンに接近する。

大きく振りかぶった戦棍が、特大の重力によって振り下ろされる。

 

 

「『降雷(バルク)ッ!

 

 

魔力が雷へ変質し、灼熱を持った打撃を与える。

 

Gyaaaaaa!!!!

 

圧倒的質量とエネルギー量によって、デーモンの右腕が弾け飛ぶ。 

苦悶の叫びを上げつつも、残った腕で再度攻撃を仕掛けてくる。

 

「君もしつこいねぇ…梨奈」

 

「了解、準備できてるよ」

 

そう言って、小さな針で指先を刺す。たらりと血が垂れ、地面に一滴滴ったら。

 

Blut Zündung(血潮よ燃えよ)

 

地面に滴った血が燃え、小さな蛇のようにうねる。『降雷(バルク)』によって切断された腕の断面に触れる。

 

 

Iss das(喰らい尽くせ)!」

 

 

Goooooaaaaaaaa!!!!Aaaaa!!!

 

デーモンの全身が炎上する。炎を必死に消そうとのたうち回るが、まるで皮膚に張り付いたように炎は止まらない。

 

Ga,aAaa.a…

 

力無く呻き、やがてデーモンは炭と化した。

 

「相変わらずえげつないな…流石は典位上位レベルの魔術使い」

 

「そっちこそね、執行者候補殿」

 

「そのスカウトは受けないって言っただろ。…さて、それで、このデーモンだが」

 

「うん。どう考えてもおかしいよね。このへんは大した霊脈もなかったはずなんだけど…」

 

「取り敢えず、しばらく調査してみるか。魔術使いとしても、三宙町民としても、この問題を見過ごすわけには行かないしな」

 

「おっけー。ま、とりあえず家帰ろうよ。ご飯作ってあるから」

 

―――思えば、この日からだった。

 

 

平穏な日常が壊れて、戻らなくなってしまったのは。

 

 

❐❏❐❏❐❏

 

今日もいつものように朝を迎えた。今日の料理当番は僕なので、5時半に起き朝食を作り始める。

 

まず、卵を4個を使ってゆで卵を作る。沸かしたお湯におおよそ十分。

次にゆで卵の皮を剥いて潰し、マヨネーズ大さじ4、塩胡椒を少々。ざっくりとかき混ぜていく。

ここでたまごサラダが完成だ。

レンジで食パンを焼いて半分に切る。うちは四角く切るスタイルなのだ。

パンにバターを塗っておき、その上にたっぷりとたまごサラダを乗せて挟めば…

 

未城桐矢の自信作・ふわふわ食感のたまごサンドの完成だ。

 

今日のは相当上手く言った。これは梨奈の反応が楽しみだ。

 

「梨奈〜。朝ご飯できたぞ〜。そろそろ起きろ〜」

 

「はぁ゛〜い゛…あ〜ねむ…」

 

と、女子中学生の喉から出てはいけない音を出しながら梨奈は目を覚ました。

全く、誰に似たんだか。

 

「おはよぉ〜おにぃちゃん…ふゎぁ〜」

 

「おはよ。ほら、今日はお兄ちゃん自慢のたまごサンドだ。たぁんとお食べ」

 

「わぁ〜い!いただきまーす」

 

「いただきます」

 

食卓を二人で囲み、両手を合わせたたまごサンドを食べ始める。

梨奈の表情がふわぁっと明るくなった。くぅっこれこれ!これだから料理は辞められないぜ!

 

「ところでお兄ちゃん、ちょっと良い?」

 

「ん?どうした。昨日のデーモンの件か?」

 

「それもそうだけど、ちょっと見てほしいのがあって」

 

そう言って、梨奈は左手の甲を差し出した。そこにあるものを見て、背筋が凍る。

 

「今朝から急に出てきて。痣?にしてはなんか変だし、それに魔力も感じる。お兄ちゃん協会の人からなんか聞いてたりしない?」

 

「…………知ってる。魔術協会の連中じゃなくて、ちょうど1年くらい前に、旅の魔術師から聞いた話だけど」

 

「あぁ、あの人ね。それで、結局何なのさ」

 

「―――いいか、驚かないで聞いてくれ。それは―――」

 

 

「それの名前は『()()』。日本の冬木という街で行われる殺し合い(まじゅつぎしき)、聖杯戦争の参加者の証だ」

 

 

いつだ!?一体いつ刻まれた!?

本当に今朝なら良い。聖杯戦争は令呪が行き渡った状態じゃないと開始できない。

だが、昨日はデーモンの件もあって梨奈の魔力消費が激しかった。いつもよりも寝るのが早かった!

寝ている間に、知らぬ間に付与されていたとしたら。

 

「――――――――――――」

 

思わず絶句する。

まずい。本当にまずい。仮に僕の仮説があっているのなら。

 

聖杯戦争は、既に始まっている…!

 

 

1日目・朝

 

 

続く

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