Fate/Sacrifice   作:The phone

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注意書き:この作品は作者による拡大解釈が存分に盛られています。ご注意ください。

初戦からまさかの魔術使い動員。聖杯戦争は普通じゃないのが普通だから…


3.顕現/この世で最も悍ましい赤

「『雷槍・三連(サラース・コル)』ッ!」

 

三本の稲妻が、ヴリトラもかくやといった様子でアーチャーに迫る。

 

「うぉっ!?…っと、こちとら弓兵だぞ。火力はさして重視してないんだ、よッ!」

 

キャットウォークへ梨奈を置き、地面に飛び降りながら文句ついでに矢を放つ。

不思議なもので、着弾したそばから矢は爆発する。魔術の類だろうか。

 

「…クッソ、何が起きてるんだよ…!」

 

先程から、脳裏に見覚えのない風景がチラつく。

場所はこの結界内であろう。見えるのは天井で、少し視線を傾けると、地面に血が広がっている。

奇妙な既視感があるが、このような経験を僕(・)は(・)知らない。

 

…十中八九、あの謎の声の仕業だろう。事が済んだらそちらの調査もしなければ。

そう考えながら、アーチャーに次なる一撃を叩き込む。

 

『人間相手に何を手間取っている?さっさと仕留めろ、アーチャー』

 

「…ッ!何ッ!?」

 

地面を強く踏み込んだタイミングで、思わず体勢が崩れる。

それもそのはずだ、なんせ、自(・)分(・)の(・)重(・)力(・)だ(・)け(・)が(・)途(・)端(・)に(・)反(・)転(・)し(・)た(・)のだから。

 

「これが固有結界の能力か?!」

 

天井に身体が落ちていくという未知の現象に、対応が遅れてしまう。

 

「へーへー、あんたも小煩いな、マスター」

 

飄々と言いながら、連続で何本もの矢を正確に放ってくる。

うまく回避もできないため、多少の矢を受けながら、致命傷のみを避けていく。

僅かに焦りを滲ませながら、梨奈の位置を確認する。

 

キャットウォークの上、変わらぬ位置で、梨奈はぐったりと力無く倒れていた。

典位相当の実力を持つ梨奈がここまで堂々とやられているのはどうも不自然だ。

マスターが色位以上の魔術師か、或いはアーチャーの能力によるものか。

 

「梨奈!しっかりしろ!!梨奈!!」

 

大声で、何度も梨奈の名前を呼び続ける。

 

「ぅん…あと五分…」

 

「とっくに寝坊だ!いいから起きろ!」

 

惚けた調子で目覚めた梨奈に対して、呆れながらも安心を覚える。

目覚めた梨奈を回収しようと、足に力を込めて、

 

「油断、したな?」

 

身体が、ピタリと静止した。

自発的に止まったわけではない。木にでも括り付けられたように、その場に固定されてしまった。

魔眼であれば可能だろうが、そうならここまで使わない理由はない。ならば…

 

「宝具!」

 

「汝、傲慢に溺れよ。その驕りが我が剣と成る」

 

小さな、しかし確かな声で、アーチャーが言葉を紡ぐ。間違いようもなく、宝具の詠唱であった。

 

「我が名は語るに値せず、然して受けよ!」

 

 

「宝具限定解放、『我流弓術・黎き森(アーツ・オブ・ネームレス)!』」

 

 

動くこともできない桐矢に、慈悲なく奥義が飛来する。

 

(なんとか魔術の詠唱を…いやだめだ、照準が合わせられないし、そもそも僕のレベルじゃ英霊に対抗なんてできない。…クソ、どうする、どうする!)

 

思考を加速していく最中にも、空気を引き裂きながら矢が迫り来る。

魔力によってその速度は大凡時速1000km。拳銃の弾と同じ速度だ。その速度で矢が着撃すれば、死は免れない。

 

(これは、本当にヤバっ…!)

 

矢との距離およそ2km。到達まで、あと約4秒。

 

❐❏❐❏❐❏

 

「…ッ!お兄ちゃん!」

 

目が覚めて、まず視界に入ってきたのはお兄ちゃんの姿だった。

私の方に来ようとしていたのだろう。体だけはこちらを向いている。

問題だったのは、その視線の向き。見知らぬ男が弓を構えて、何やらブツブツと呟いている。

 

…戦闘の苛烈さを見れば、魔術協会の厄介払いというわけでは無さそうだ。

そうならば、相手はお兄ちゃんを殺すつもりで攻撃をしているということで…

 

モタモタしているうちに、凄まじい速度で矢が放たれた。

距離的にも、お兄ちゃんならギリギリ避けられるスピードだ。

それを確認して、安心しようとして、次の瞬間には戦慄せざるを得なくなった。

 

お兄ちゃんが欠片も動かないのだ。恐らく、魔術か何かによる、相当高位の拘束。

不味い。非常に不味い。

あの威力の攻撃を喰らえば、お兄ちゃんの、人間の肉体では耐えられない。

 

死。

死。死。死。死。死。

 

嫌な言葉が脳内で反芻する。

 

嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。

 

お兄ちゃんが死ぬなんて嫌だ。私とお兄ちゃんは家族なんだ。二人で守り合うんだ。

だから、今は私が守る。

お兄ちゃんが守ってくれた分、私が守る。そうしなくてはならない。

だから。

 

「―――来て、私のサーヴァント―――!」

 

❐❏❐❏❐❏

 

詠唱は行われなかった。

 

正式な手順を踏まない、無理な手段を用いた無茶苦茶な召喚。

 

それでも、彼の英霊は呼び声に応えた。

 

触媒は、梨奈(かのじょ)自身の魔術の性質と、家族を愛す心のみ。

 

細々とした縁を辿り、その英霊は弓兵の一撃を薙ぎ払った。

 

大剣を振り下ろした彼(・)女(・)は激しく剣を地面に突き、高らかに宣言した。

 

「サーヴァント、セイバー!呼び声(しょうかん)に応じ参上した!!」

 

マントをバサリとはためかせ、梨奈に対して言葉を放つ。

 

 

 

「問おう、汝が私のマスターか!!」

 

 

 

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