畜生道に堕ちたと思ったら五条悟の飼い猫になった件 作:鳳飛鳥
8匹全員が呪力持ちでその内4匹が術式持ちと言うのは割と快挙なのではなかろうか?
原作に置ける加茂先輩と思しき中学生くらいの少年に、我が子を託すと言う判断は当然と言えば当然だが、御主人と加茂の御当主殿の判断だ。
どうやら加茂家はやはりメロンパンが裏から色々と手を回していた様で、御当主殿は名目上は当主と言う事には成っていたが、実権は総監部のトップを長年務めていた長老達に握られていたらしい。
しかし俺の件で色々と知ってしまった件の長老衆のウチの2人は、多分メロンパンに情報を横流ししようとして縛りに引っ掛かったらしく天寿を待たずしてあの世へと招かれて行ったと言う。
縛りを破った事に依る制裁と言うのは残穢等でも確認する事は出来ず、その結果が今回の様に致命的な物になる可能性を鑑みれば、早々簡単に他者との縛りを結ぶのは極めて危険な行為と言えるだろう。
恐らくは俺の齎した『猫の呪術師』か或いは『六道輪廻』及び『地獄』の実在辺りをメロンパンに自己判断で御注進しようとしたのか、それとも総監部で見知った情報を奴に流す様に事前に縛られており結果的に縛りを破る事になったのか。
その全容は明らかになっては居ないが、原作において渋谷事変の後現在の御当主殿が殺され、あっさりと加茂家がメロンパンの手に落ちた事を鑑みるに総監部及び加茂家の上層部……長老衆とやらの大半はメロンパンに掌握されていたのだろう。
けれどもトップが亡くなり地獄落ちを恐れたメンツが、私財を投げ売って慈善活動に励む様に成ったり、出家して寺へと入り他者の為に祈る日々を送る様に成った事で加茂家に蔓延っていたメロンパンの手管が緩んだのかもしれない。
兎角、加茂先輩の父はフリーハンドを得てクリーンな加茂家を目指し、加茂先輩は俺の仔を相棒として赤血操術のさらなる研鑽に挑む……と。
「なぁポチ……あの茶トラの術式はどーすんべ。アレをただの猫に持たせておくのは割とヤベーし、だからって猫の呪術師として扱うにはちょっと戦力不足なんだよなぁ」
今回産まれた4匹の術式持ちの内、黒猫は想像していた通り俺の術式である『救急九命』を引き継いでいたし、三毛の2匹は揃って『溶血呪術』を持っていた。
最期の一匹は茶トラとか赤猫とか言われる毛色の猫で、その術式は『自身の呪力を火に変える』と言う、超能力戦争での戦いで未だ氷漬けのままに成っているバーンの持つ『鳳燃呪法』の下位互換だ。
飼い猫らしく適当に快適な生活さえさせておけば、早々問題にはならない様にも思うが、逆に言えば猫らしく思った通り適当に術式を使って飼い主の家を火事にしかねないんだよなぁ。
仮称:赤猫呪術(赤猫は放火の隠語)とでも名付けるべきその術式は、御主人曰く『ゴミ術式』らしい。
なんせ効果はただ火を付けると言うだけで、術式の拡張次第でどう化けるかまでは分からないが、現状では呪力を燃料としたライター程度の物でしか無いのだそうだ。
とは言え『マッチ一本火事の元』な訳で、ただの猫として扱うには危険過ぎるし、かと言って猫の呪術師として育てるには文字通り火力不足な訳である。
そも俺が猫の呪術師として1級と言う立場でやって行けてるのは、救急九命と言う術式が流石は転生特典と言わんばかりに強力な術式だからだ。
そしてもう一つの問題は生得術式と言う物は脳に刻み込まれた物であり『生得術式を持つ者は本能的にソレを使いたい』と言う欲求を持つと言う事だろう。
高専や名家で呪術師とならなかった者の多くが呪詛師に身を落とすのは、その身に刻まれた術式を十全に使いたいと言う欲求に突き動かされたが故だと言う話だし、この仔も放って置けば火災を振りまく呪詛師猫に成ってしまう可能性は高い。
となるとやはり重要になるのは躾と言う事になる、猫の躾は犬と比べると難しいが不可能では無い。
壁や柱で爪研ぎをさせず用意した爪研ぎ用の道具だけで済ませる様に躾けたり、トイレはちゃんと猫砂の入った決まった場所でする様に躾けたりするのは、猫を飼うならば当然の様に行う躾である。
術式を無闇矢鱈に使う事なく、術式の行使に火を必要とするような相性の良い呪術師とバディを組ませ、単独で任務を行わせるのではなく相棒と共に戦う事で、術式を使いたいと言う欲求を満たす……と言うのが理想だろうか。
「三毛の仔達同様に相性の良い呪術師を探しバディを組ませるのが最良では無いか? 丁度良い術式を持つ者が居なければ、俺や御主人が適当な任務へ連れて行って呪霊を焼かせるのも手ではあるがな」
「術式の構成を見た感じ、火を出すよりも呪力で身体強化して殴る方が強いっぽいんだよなー」
ソレはなんというか本当に火付けにしか役に立たん駄目術式と言う事ではなかろうか?
いやまぁ生得術式の大半は初代だと拡張術式が殆ど構築されておらず、そうそう便利使い出来る様な物では無く、殆どの呪術名家が持つ相伝術式も代を重ね拡張を繰り返し、縛りを結びやっと今の形に成ったと言う話だしな。
特に分かり易いのは加茂家の持つ赤血操術で、初期の頃はソレこそ赤鱗躍動と呼ばれる血液を介した身体強化の上位技しか無かったのが、代を重ね多くの犠牲を払い、輸血パックと言う外付けの道具を使う事でやっと原作レベルになったのだ。
恐らくは御主人の無下限呪術や、禪院古来の相伝である十種影法術も現在の形になるまでには、それ相応創意工夫を何代も重ねた結果出来上がった物の筈である。
八握剣異戒神将魔虚羅とか何の工夫も無く、突然ソレがポンと湧き出るとか絶対に有り得ない話だしな。
「まぁ何にせよ生後4ヶ月を過ぎるまでは猫の加茂家にその身柄を預けておくんだ、光子さんが母猫として上手く躾けてくれる可能性も無くは無いしな」
「そーいや、ポチって九十九さん
「いや……なんとなく? ナスちゃんは普通に元気の良い女の子って感じだが、光子さんは良家お嬢様って感じでちゃん付けは違う気がしてな……」
俺から見ればどっちも年下の……人間換算で俺は20代後半から30代前後で、彼女達は身体がある程度出来て発情期をそう何度も迎えた訳では無い初産の猫だった事を考えると10代半ばからギリギリ20歳未満……人間ならば完全に事案である。
その上でナスちゃんは感覚的に言えば体育会系の柔道部に所属する元気なボーイッシュ少女と言う感じで、光子さんは良家の箱入りのお嬢様で穢しちゃアカン奴だけど実際致すとかなり興奮する相手と言う感じだった。
……うん、正直下衆い感想だと俺自身でも思うが、猫には結婚と言う概念も一夫一婦と言う制度も無いのだから許して欲しい。
視覚情報から興奮を得る事が出来ないのだから、彼女達の声を聞いてソレをベースに人間の姿を妄想する事でスタンバイするのは仕方が無い事なんだ。
「うーん、ポチもいい感じに悲しい雄の性に染まってきたねぇ。俺も彼女ほしーなー」
お? 御主人の口からその手の欲求に関する話が出たのは初めてでは無かろうか?
「そーいえば、今年の9月から正式にあの娘が高専に留学してくるんだったか?」
あの娘と言うのは超能力戦争事件で知り合ったオーストラリア人の呪術師≒超能力者であるウェンディー・ライアンだ。
大規模な呪詛師案件に関わったとしてシャフト・エンタープライズには捜査の手が入ったのだが、日本支社は本当にただの窓口として使われただけで違法行為も、呪術規定違反を犯した者も全く居らず無罪放免と相成った。
ただし首謀者であるリチャード・ウォンに関しては完全に呪詛師として指名手配、更に表側でも大規模テロの首謀者としてインターポールを通じて国際指名手配犯とする事に成功したらしい。
結果、シャフト・エンタープライズ本社は犯罪者を代表にし続ける訳には行かないと、リチャード・ウォンの持ち株とその権利を停止し、残った株主達の選出でカオリ・イタドリと言う人物が新たなCEOとなった。
……うん、完全にメロンパンに乗っ取られたなシャフト・エンタープライズ。
ただソレで分かった事がもう一つある、加茂家や総監部に持っていた伝手を潰されたメロンパンは、どうやら海外に拠点を移したらしいと言う事だ。
シャフト・エンタープライズはここ10年で急成長を遂げた国際企業で、世界中で様々な業種をM&Aで取り込んで来た事で、金銭的な面でもそうだが技術的な面でも割と大きな能力を得ていると言える。
メロンパンとシャフトの財力と技術が結び付いた事で厄介な事が起きなければ良いんだが……。
「べ、別に俺はあの娘の事を彼女にしたいとか言った訳じゃねーし!」
思春期の小中学生か貴様は……と言いたくなる様な見苦しい言い訳をする御主人を他所に、俺はメロンパンの動向を案じてため息を一つ吐いたのだった。