畜生道に堕ちたと思ったら五条悟の飼い猫になった件 作:鳳飛鳥
「ふぅ……食った食った。んじゃ胸糞悪い話の方から先に片付けるかぁ」
この人数で食べても食べ切れるか怪しいと思っていた料理は、殆ど残る事無く食卓の上から消え去っていた。
天与呪縛のフィジカルギフテッドって奴は、どうやら胃袋も頑丈に出来ている様で、パパ黒と禪院真希がかなりの量を食べていたのだ。
御主人と禪院直哉も結構な量を食っていたが、何方も年頃の青年ならまぁソレくらい食うよなーという量だったのに対して、真希は明らかに小学生女子としては奇怪しい言える御主人達と同じくらい食っていた。
パパ黒に至ってはもはやフードファイターとしてテレビに出れるんじゃないか? と思う量を普通に平らげていたのである。
「……普段からこの量を食うなら、食費もそうだが料理を作るだけでも大変だな」
「ん? ああ、今日は特別だ特別、別に俺ぁ食わないなら食わないでも暫く我慢する事も出来るからな。折角の祝い料理を残すのは勿体ねぇだろ? 兎に角、禪院家絡みの話を先に済ませてからウチの猫とそこの化け猫の縁談を詰めるぞ?」
「ああ、ソレで構わねーよ。禪院に限らず呪術の名家なんて何処も色々アレなのが普通だからなー。ウチだって俺が力尽くで色々改革してやっと多少マトモになったかなー? くらいだもん」
「んで、直哉はこいつ等をどーしたい訳よ?」
「先ずは真希ちゃんの天与呪縛をどーにかして甚爾君とおんなじ状態に出来ひんかなー思うねん。さっきの悟君の話やとソレがどーにかなったら真衣ちゃんの呪力の方もなんとかなるっぽいやん?」
「んー、言っとくが俺は飽く迄も天与呪縛を持って産まれたってだけで、天与呪縛の専門家とかそ~いうモンじゃねぇからな? まぁこいつ等の件ならなんとなく分かるがよ。五条のボンが言った通り1卵生の双子なのが問題なんだろ、呪術的には同一人物だからな」
そう言いながらド近眼の者が眼鏡なしで頑張って遠くを見る時の様に、目を細め眉間にシワを寄せなんとか見えない物を見ようとするパパ黒。
「やっぱそうだわ。こいつ等の魂が繋がってやがる、コレの所為で呪力を持たないと言う呪縛が中途半端に成ってんだろうな。コレを解決するとしたらどっちか殺すか、魂をなんかの方法でスパッと斬るしかねぇわな」
酷使した目をいたわる様に眉間をもみながら目頭を揉みながらそう言うパパ黒。
「……天与呪縛のフィジカルギフテッドって魂まで見えるモンなの? 六眼を持ってる俺ですら魂を見る事なんて出来ないのに?」
対して御主人がそんな疑問を呈する。
「ハッキリと視覚的に見える訳じゃねぇぞ? 呪霊や呪力もそうだが常人よりも極めて優れた五感を総動員して、そこにある物やそこに居る者を感じ取ってるって方が正確なんじゃね? 要は気配や殺気なんかと一緒だわな。まぁ常人の感覚を俺は知らんけど」
どうやら完全なる天与の暴君でも呪霊を明確に視認出来る訳では無く、それっぽいモノがソコに居る……とぼんやり理解出来ると言うのが事実らしい。
「取り敢えず俺の目で分かるのは、2人の間に呪力的な繋がりが有って真衣ちゃん? から真希ちゃん? に呪力が流れてるってのはハッキリ断言出来るぞ」
御主人の六眼は術式と呪力を読み解く事に関しては間違いなく最高の能力を持つ特異体質である。
「殺すんは本末転倒もええ所やから無しとして……魂を斬る方法なんてあるん?」
2人の意見を聞いてそんな事を言いだした禪院直哉、此処まで自分達の事なのに少女達は口を挟む様子は無い、余程禪院家で厳しい
「一応俺が持ってる呪具の一つでヤッて出来なくは無いが……魂を斬るなんて真似をすれば痛いじゃ済まねぇぞ?」
原作でもパパ黒のメインウェポンだったと言う釈魂刀は、どうやら今も無事彼の折伏した収納呪霊の中にある様だ。
「そこはほら、ウチのポチなら死んで直ぐなら復活させれるし?」
拡張術式『泰山府君の祭』は既に高専関係者には周知の事実で有り、御主人も今更秘匿する必要性は感じていなかったのだろう。
「「「「は!?」」」」
しかし此処でパパ黒と禪院直哉だけで無く、双子までもが驚きの声を上げた。
「アレ? そこまで禪院には未だ情報行ってなかった? コイツの拡張術式で死んでも死体さえ有れば運が良ければ復活出来んだよ。え? 禪院でコイツの世話に成ったヤツ一人も居ないの? うわぁ……五条嫌いも大概にしないとヤベーじゃん」
……言われて見たら確かに、高専所属や五条家所属にフリーの呪術師に対しては泰山府君の祭を使ったり、使おうにも間に合わなかった案件は幾つも有ったが、禪院家や加茂家の者が俺に頼って来た記憶は無いな。
総監部にはちゃんと拡張術式に関する報告なんかは上げているので、加茂は情報を持っては居るが使う機会が無かったと言うだけだろう、実際光子さんは知っていた訳だし……。
しかし禪院の方は五条嫌いを拗らせ過ぎて助かる筈の命まで溝に捨てていたらしい……正直ドン引きである。
「はぁ……誰や! 誰が情報止めとんのや! 父ちゃんか? いや父ちゃんなら情報は流した上で好きにせぇ言うやろ? ほな誰や!? 死なんでええヤツ死んだちゅーんは流石にライン超えやろ!」
身内が情報を止めたと考えたらしい直哉がブチ切れ、
「腐った家だとは思ってたが、ソコまで腐り果ててんのかよ……いや叔父貴は比較的マシだと思ってっから今でも付き合い続けてんだぞ? 誰か叔父貴にすらその情報入らねぇ様に弄ってる奴が居るんじゃねぇか?」
パパ黒が呆れ混じりの推測を口にした。
「アカンわ……帰ったら父ちゃんにこの話きっちり報告して情報止めた馬鹿を吊し上げなアカンやろ。猫の呪術師ってな情報も大概やけど、ソレ以上に死んでも助かる可能性があるなんて洒落にならん情報隠蔽しとったんは大罪やわ」
原作の直哉ならば『雑魚は幾ら死んでもええねん所詮は雑魚、代わりは幾らでもおるし』くらいの事を言いそうなモンだが、随分と意識改革が進んでいる様子である。
「つか、ソレがあるからコイツの子孫を繁栄させて術式を引き継いだ仔猫を一匹でも多く確保したいんだよね。此処数年、高専回りの呪術師の殉職率と離職率が右肩下がりになってんのコイツのお陰だからな?」
パパ黒はソコまで知らずに俺に縁談を斡旋しようとしたのか……いや、彼は俺が元人間だと言う事を知っている一人だし、雌猫と致すと言う行為が嫌がらせの類になるとでも考えたのかもしれない。
「いや、手足が取れても治る程の反転術式だってのは聞いてたが……死者蘇生まで出来んのか……流石にデタラメ過ぎんだろ、幾ら呪術ってもよぉ」
天内理子暗殺の一件で俺が彼に反転術式を行使して居るので、その効果の程は身を持って知っているだろうし、その時に欠損の回復の話もした覚えがあるような無いような?
「流石に無制限に死者を蘇らせる事が出来る訳では無い、医学的な死から早ければ5分、長い場合には24時間程度の間、魂は肉体のそばに留まるんだ。その間ならば魂が残っているから肉体を再生して魂を身体に戻せると言うだけだ」
兎角、無制限の死者蘇生と勘違いされても困るので、事実を事実として訂正しておく。
「ソレかて十分に破格やんか! 最近京都校で反転術式のアウトプットになる呪具が手に入って、ソレで殉職率が下がったってな話は聞いとったけど、俺が知ってるんはソコまでやぞ!?」
「あー黒皮かぁ……アレってコイツの肉体をコピーしてソレを呪具にしたモンだから、京都校だけじゃなく五条家にも1本あるし、総監部や加茂家にも1本ずつ寄贈されてる筈だぞ?」
俺と組屋の手で材料は呪術高専東京校の忌庫に山程あるのだが、ソレを呪具に加工できる者の手が足りないのだ……組屋? アイツはアイツで別の呪具の開発に忙しいんだよ。
「はぁ!? 反転使える呪具が量産効くんか!? 何やねん! 何やねん! 何処まで腐ってんのやウチは!」
その情報すら入って居なかったようで、直哉は更にヒートアップする。
「いや、此処まで行くと禪院家の問題と言うよりは意図的な情報封鎖の可能性もあるぞ? 禪院が五条を嫌っている様に、五条にも禪院を嫌っている勢力は居るんだろう?」
ソコに一旦鎮火の為に冷水を浴びせる様に俺が口を挟む。
「……ああ、居るな。俺の親父がモロにソレだ。特別2級程度の実力しかねーのに俺の父親だってだけで、家の中でデカい面してる奴だわ。うん、アイツなら禪院に情報が行かない様に邪魔しても不思議は無ぇ」
顔に手を当てあちゃーと言いたげな御主人。
「ソレにしたって総監部にゃ禪院の人間も居るだろ? ソイツの口まで止める程頭回んのかボンの親父ってのは」
呆れも怒りも通り越し、一周回って冷静になった様子でそういうパパ黒。
「んにゃ、親父自身はそんな事ぁ出来やしねぇよ? でも加茂家もつい最近まで当主がお飾りで総監部に出てた長老連中が家を仕切ってたの再掌握出来て無かったらしいからなぁ。今の総監部に虫が一匹も居ないって考える方が難しいんじゃね?」
確かにシャフト・エンタープライズと言う表の力を手にしたメロンパンが、再び総監部に手を伸ばしている可能性は決して低くは無いだろう。
「はぁ……せやな、ウチだけの問題とちゃうか……。ほなええ機会や、俺と悟君との間にだけでもホットライン作らへん? まぁ言うて携帯の連絡先交換するだけやけど」
「後からソッチの御当主にも俺の連絡先教えて、一本連絡貰える様にするんならOKだぜ? 禪院嫌いのこのおっさんがマシって言うなら、本当にマシな人なんだろうしな」
「……上から下まで腐りきって腐臭しかしねぇ家だが、叔父貴は確かに多少はマシな人間だとは思うぜ? 本当に多少だけどな」
五条と禪院の間には慶長時代の御前試合以来300年以上に渡った確執があるが、今此処でソレに一穴が穿たれようとしているらしい。
「なぁ御主人、大分話が逸れたと思うんだが? 後もう一つ付け加えるならこの娘達の魂の繋がりは俺にはハッキリ見えてるぞ? 泰山府君の祭は魂を視認するのが大前提の拡張術式だからな」
禪院と五条の間で新たな関係が取り交わされようとしているのは良いが、大分本筋からズレていると判断した俺がそう言うと、
「「「ソレ先に言え!」」」
3人から総ツッコミを受けたのだった。