畜生道に堕ちたと思ったら五条悟の飼い猫になった件 作:鳳飛鳥
「で、実際お前には2人の状態がどー見えてんだよ?」
「ああ、彼女達は2本の腕の他にもう一本第三の腕とでも言う様な物生えていて、ソレがお互いの手をガッチリと繋いでいると言う感じだな。その腕を斬ると言うのも選択肢では有るが、彼女達が自ら望んでその手を離せば済む事だと思うぞ?」
「ほんな事言うても魂なんて自分で弄れるモンとちゃうやろ、真希ちゃん真衣ちゃんがそないな事に成ってる分かっても、ソレをどーしたら手を離せるちゅー話やんの」
「いや、出来るだろ、縛りだよ。縛りは呪力を介して行われるが、実際に縛られんのは魂だ。呪力から完全に解脱した存在であるおっさんが縛りに縛られんのはおっさんも魂は普通の人間と変わんねぇって事じゃね?」
「ああ、俺が考えているのもその手だ。コレは推測に過ぎないが、恐らくは強い存在として姉として産まれた真希嬢は、弱い妹を守らねばならないと、その為には自分が更に強くなる必要があると思っているのではないが?」
俺の言葉が図星だったのかビクリと肩を震わせつつも此方を威嚇する様に睨む禪院真希。
「対して妹の真衣嬢は、圧倒的な力を持つ姉ですら禪院と言う家の中では弱い立場の存在で、呪力を持ち術式を持つとは言え弱い自分は姉の負担にしかならない、けれども姉は何時でも自分を助けてくれる……と甘えているのではないかな?」
こちらも図星だった様で同じ様に肩を震わせた後は叱られた仔猫の様に身を縮ませる。
「こう言う言い方が正しいのかどうかは分からんが、彼女達はある種の共依存とも言える状態にあると俺は見る。真希嬢は妹の為に強くなると考え、真衣嬢はいつも最期は姉がどうにかしてくれる……とな」
この辺の考察は当然と言えば当然の事ながら原作知識ありきのモノで、俺自身が彼女達を一目見てそう看破したわけでは無い。
「流石は年の功って奴だな化け猫、実際の年齢じゃぁ俺の倍以上なんだっけか? つまりコイツ等のこの状態は、双子だからってよりは互いにそういう関係だと自縄自縛に成っているが故って事か。んじゃぁ後は自発的にその縛りを何とかすりゃいいんだな」
「……成る程ね。呪術界じゃぁ双子は呪術的に同一人物だとか、色々言われてるけどコレもポチの存在とおんなじで定説の方が間違ってたパターンか。まぁ双子の間だけ通じるテレパシー的なモノが有ったりとかの話も聞くから完全な間違いじゃないんだろうけど」
「なぁ真衣ちゃんや、禪院の家に術式と呪力を持って産まれた以上、お前さんはどんな弱くても呪術師やらなアカンねん。ソレを拒否するってーなら女の子やさかいに身体がもうちっと出来たら躯倶留隊の連中のおもちゃやで?」
直哉の言葉に禪院真衣は先程よりも強く肩を震わせ、幼いながらもその末路を想像したのか小刻みに身体を震わせ続けている。
「真希ちゃんは呪力も術式ももっとらんが女の子やさかい、甚爾君とおんなじ扱いはされへんやろけど、やっぱり良くて躯倶留隊のおもちゃ、下手すりゃ呪具も無しに特級任務に放り込まれて『そんな子は居らへんよ?』やろなぁ」
「いや、俺のガキが2人続けて結構な呪力持ちだったからな、叔父貴も天与呪縛の子はその反動で呪力が多くなる可能性が有るって言ってたろ? 抹殺処分は無ぇだろ……まぁ強くならねーと孕み袋扱いは有るかもしれねぇがな」
未だ思春期にも入らぬ少女になんつー事を言うんだと突っ込みたいが、そう言う事をするのが禪院家と言う家なのだろう。
「真希ちゃんは強う成りたいんやったら真衣ちゃんを理由にしたらアカン、自分自身の為に強くなるんや。そして真衣ちゃんはいつまでもお姉ちゃんに頼ったらアカン、禪院の呪術師としてきっちり自分の足で立つんよ。ソレをお互いにきっちり宣言し縛りを結びや」
禪院直哉と言う男は『強さ』と言う一点に置いては極めて真摯な男なのだろう、男尊女卑の家風が強い禪院家の中で『強さ』を求めるならばソコに男女の別は無い……と今の時点では思っている様に見える。
恐らくは原作の直哉は甚爾と言う『憧れ』すらもあっさりと『現代最強』の前には命を落したと知って、その絶望感でより深い禪院家の闇にその精神を沈み込ませたのではなかろうか?
対してこの世界の彼は憧れが憧れのままに生き、殺し合いでは無いとは言え自分の眼の前で呪術界最強に打ち勝って見せた。
そして何処かで『生まれ持った強さを努力で得た強さが凌駕する可能性』を知ったのだろう。
だからこそ彼は真摯に双子に対して『強さを掴み取る為に、お互いの依存心を捨てろ』と言い切れるのだ。
「……真衣、アタシは強くなる強くなりたい。あの腐った家でもアタシの家だ、強さで天辺取って腐った家を綺麗な家にする。コレはアタシの決断だ、真衣の為じゃぁ無い」
先に吹っ切ったのは、やはり原作でも自分の道は自分で決めると言う精神的な強さを持っていた真希の方だ。
「お姉ちゃん……ううん、真希……私も逃げれないなら、自分の足で立つ。何時までも真希の負担になんかならない。私は私で禪院の呪術師になる」
戸惑いながらもそう言い切った真衣、原作では死の間際ですら出来なかった姉への依存と甘えを捨てると断言する。
「「コレは縛り、
2人が手を取り合いそう宣言した瞬間、真希の存在感とでも言うべきモノが厚みを増し、真衣の呪力が頑張って3級程度の量から一気に無茶しなけりゃ準1級の量へと跳ね上がった。
「無事に2人の魂は分かたれた様だな、俺の目からみてもさっきまで有った3本目の腕は消失している」
「言われんでも此処まで2人の様子が変わったんやから成功したに決まってるやんの。取り敢えず父ちゃんには報告するとして……扇の叔父さんにゃどう説明するんがええかなぁ?」
「真希と真衣だったな。取り敢えず暫くはウチに置いてやる、真希は身体の扱いかたからなんから殆ど別になるだろうから、その辺の調整をしっかり教えてやる。真衣はウチの恵と一緒に呪力の扱いを1からやり直しだ、そんだけ呪力量変わったら制御も大変だろよ」
「え? 呪力操作とかおっさんが教えんのどーやって?」
「親戚に元準1級が居てソイツが恵の先生してくれてんだよ、ああ、猫の見合い終わったら恵も混ぜてヤッてみるか? 呪術ベーゴマ」
「じゅじゅつベーゴマ! なにそれウケる、いやでももしかしてマジで呪力制御の練習にはなるやつなのか? ちょっと興味あるわ」
「直哉、取り敢えず叔父貴にゃ俺から連絡入れとくぞ? お前等、晩飯も食ってけ、女房の実家から送って貰ったジンギスカンが有るからな。五条のボンは兎も角直哉は飯食ってから京都まで帰るのもたるいだろ、恵の部屋に布団を敷いてやるから泊まってけ」
言いながら携帯を取り出し何処かへと……おそらくは彼の叔父であり禪院家の現当主である禪院直毘人だろう……に電話を掛ける。
「叔父貴、今少し電話大丈夫か? ああ、直哉と一緒にウチに来てんぞ、詳しい事は帰ってから直哉に説明させっけど、真希と真衣だっけ? この二人暫くウチで預かるわ。真希の方はガチで俺の弟子として鍛えてみてえんだわ。真衣の方も心配すんな、ああ」
「弟子? アタシがオジさんの?」
「真希ちゃん、甚爾君は俺等の従兄やで、オジさんは失礼やろ」
「構わねぇよ。自分のガキと同じ年頃のガキからすりゃ三十路過ぎりゃおっさんだろ。二十代の頃なら未だお兄さんだって無理やりでも訂正させただろうけどな。さっきの縛りでお前は俺と同じ完全なフィジカルギフテッドに成ったみたいだからな、鍛えてみてえ」
その目は興味も有るがソレ以上に『良き師は弟子を育て、良き弟子は師を育てる』と言う言葉の通り、自身のさらなる成長の糧にしようと言うのが透けて見える。
……同時に自分の娘と同い年の娘さんに対する心配も相応にあるのだろう。
「うし、禪院家絡みの件はコレで片付いたな。んじゃ早速本題だ、ウチの猫とこの化け猫の縁談話を詰めようぜ? コイツの術式を引き継いだ仔が出たら1億、他の術式なら最低千万、術式無しで呪力のみなら百万、ただの仔猫ならウチで飼うってのでどーだ?」
「ポチの術式ならその倍だすよ。その代わりソッチが引き取る場合でも血筋の流出は無し、雌でも雄でもきっちり避妊手術をするのが条件だね」
「かぁ2億たぁ豪儀だね! 良しその条件飲んだ! コレは縛りだぞ?」
「よくもまぁ軽々と他人と縛る気になるなぁ……まぁこんだけ条件がハッキリしてる奴なら縛っても構わないんだけどね。同意するよ」
……俺の仔で博打すんじゃねぇ! と声を大にして言いたかったが、まぁこうじゃないとパパ黒じゃねぇよなぁ……とも思ったので、まぁ良しとしよう。
「んじゃ津美紀の部屋に行くか。ああ、先に言っとくわ、ウチの猫、野良時代に一回は出産してんだけど、仔猫……全滅したんだとよ。子育てもろくに出来ねぇ駄目な雌猫って割と凹んでっからそのへんを上手く慰めて口説くと良いぜ?」
……流石は原作に置いてプロヒモやってたと言われる男だ、小学生女児が2人も居る前でなんつー事を言うんだ。
そしてソレに対して『参考になります』みたいな面してんじゃねぇ御主人と直哉!
兎にも角にも、猫の交尾の決定権は雌の側に有る、雌が発情していたならば雄はアプローチする権利は有っても、自分と番う雄を選ぶ事が出来るのは雌の方なのだ。
なんとか無事に今回も乗り切れる様に祈りつつ、俺はパパ黒以外の4人を置いてその場を後にするのだった。