畜生道に堕ちたと思ったら五条悟の飼い猫になった件 作:鳳飛鳥
リリちゃんが6匹の仔を産み、1匹が残念な結果と成った夜から凡そ2週間少々の時が過ぎた。
その間、俺は伏黒さん
無論、俺は紳士な老人なので彼女たちが着替えるだのなんだのする時にはちゃんと席を外していたぞ?
さて……この仔達に術式が有るならそろそろの筈なのだが……。
一応リリちゃんには仔猫達がエグい事になるが、俺が居れば直ぐに治るから大丈夫だと伝えては有るが……以前の仔猫達の死と、産まれる事の出来なかった1匹に対しての
ちなみに無事だった5匹だが俺と同じ黒猫は1匹も居らず、三毛の短足マンチカンミックスが1匹、リリちゃんと同じクリーム色の長毛種で手足の長さも耳折れも無い仔が2匹、同じくクリーム色の耳折れのみの仔が1匹に、短足茶トラマンチカンミックスが1匹だ。
マンチカンのブリーディングでは短足同士の掛け合わせは禁忌であり、基本的に普通の脚を持つマンチカンの血筋の猫と短足の猫を掛け合わせて次世代を作る。
その際に短足の仔が出る確率は凡そ1/4程度と言われていた筈だ。
今回の配合は何方も完全なミックス同士の配合なので、確率を論ずるに値しないとは思うのだが、短足のマンチカンミックスが2匹も出たと言うのは割と運が良い方だろう。
更に耳折れのスコティッシュフォールドミックスが1匹産まれ、ソレ等の複合が一匹も出なかったと言うのは割と奇跡に近い幸運だと思われる。
耳折れと短足がセットになると遺伝子疾患の可能性がかなり高くなるらしいからな。
呪力に関しては5匹全員が呪力持ちと言って良い量の呪力を持つが、三毛の仔は比較的呪力が少なく術式が無ければ極々普通に伏黒さん家の飼い猫ルートが順当なんじゃないかなー? と思う。
逆に茶トラの仔は俺より少しばかり多い呪力を今の段階で感じられるので、術式次第では何としてでも猫の呪術師になる様に育てたいと思うレベルだ。
クリーム色の3匹も呪力量はまちまちで弱中強と言う表現がしっくり来る感じの中、耳折れの仔が強めの呪力を持っている。
「ねーオジサマ? この仔達……本当に頭バーンってなっちゃうの?」
子ども達が学校に言っている間は、基本的にはリリちゃんと俺に仔猫達だけがこの部屋に居る状態なのだが、人間の新婚夫婦の様に甘々のイチャイチャ生活と言う感じにはならない。
まぁ俺も精神的にも肉体的にもいい歳だし、そう言うモノを求めちゃ居ないがね?
「俺が腕を生え変わらせる様に、普通の猫や人間には使えない特殊な
厳密に言えば『泰山府君の祭』での復活は『一回死んで今生は終わっている』状態なので、死んではいるのだが……仔猫を失う事に関して
ペロペロと心配そうに仔猫を舐めるリリちゃんと、そんな母猫の気持ちも知らず取り敢えず乳に吸い付き腹を満たそうとする仔猫達。
出産の際に使った段ボール箱とは別に用意された育児用の段ボール箱の中でそんな姿を見せる彼女たちを、俺は津美紀嬢の学習机の上に香箱座りして見下ろしている。
そんな感じで昼間を過ごしていると一階の方が騒がしく成って来た、子ども達が学校から帰って来たのだ。
無論ソレまでもパパ黒や奥さんに望嬢達の生活音や泣き声なんかは普通に聞こえて来ていたが、小学生が4人も増えりゃそりゃ騒がしいと表現したくもなる。
「ただいま! リリちゃんの子ども達まだだいじょ(パン! パンパン! パン!)」
oh……と言いたくなる程のタイミングの悪さ……津美紀嬢を先頭に扉を開けて部屋へと3人の少女達が入って来てそう言いかけた瞬間、4回拳銃の発砲音に良く似た音が響き渡った。
「見るな! 直ぐに処置する! 拡張術式『泰山府君の祭』? 4!」
ストックを4つ消費し仔猫達の遺体を即座に修復し、抜けかけた魂を身体の中へと押し戻す。
「……話にゃ聞いてたが、ガチで拳銃と似たような音じゃねぇか。コレ絶対近所で通報されてるよな? 化け猫、お前確か表向きは警察関係者って事に成ってんだろ? 警察への説明は任せるぞ?」
音を聞きつけダッシュで来たらしいパパ黒が、極めて面倒臭いと言いたげにそんな言葉を口にする。
前回の加茂家では呪術御三家の敷地での事であり、発砲音が有った位じゃァ警察が動く理由にはならなかったが、今回は表向きは極々普通の一般家庭と言う事に成っている家での事だ……当然騒ぎになる可能性は有るだろう。
「高専経由で警察には既に事情を説明してあるし、そろそろだと言う話もしてある。恐らくは大丈夫だろう」
大丈夫だ……とは言ったが、警察という組織はシステムであり、本来なら個人の判断や現場の判断でどうこうして良い組織では無い。
通報が有ったならば一応はお巡りさんを出動させ、ソレっぽい痕跡が有るか無いかを調べる位の事はやらなきゃならないのだ。
……まぁさっきの弾けた音も子どもの居る家庭ならば「子どもがかんしゃく玉で遊んでた」位の言い訳で通じる気もするがね。
拳銃の発砲音と言うのはアニメの様な「ズキューン!」と言う様な音では無く、本当に運動会のスタートピストルのソレと変わらない様な音でしか無いので、素人が『アレは拳銃の音だ』と断定するのは中々に難しい。
「取り敢えず先ずは御主人を呼んで、今頭が弾けた4匹の術式を確認してもらわないとな。まぁ伏黒殿には申し訳無いがどうやら俺の術式を引き継いだ仔は居なかった様だがね」
スマホを確認し御主人の今の予定をチェックするとどうやらこの時間は未だ講義中の様である。
「どうやら御主人は今の時間は授業を受けている様だが……今日はコレが最期の授業のようだからメールを入れて置けば終わったら直ぐに来るだろう」
泰山府君の祭がキャンセルされなかったと言う事は、自力で復活出来た仔は居なかったと言う事は間違いない。
3匹と交尾した結果トータルで19匹が産まれその内8匹が何等かの術式持ち、その中のたった1匹だけが今の所、俺の生得術式である救急九命を引き継いだ事になる。
「ちなみに術式を持っていなかった仔は、三毛の仔で一番呪力が少なかった仔だ。この仔ならば普通に飼っても問題は殆ど無いんじゃないか?」
「ほー、だとよ津美紀、良かったじゃねぇか。ウチで仔猫飼えるってよ」
「ちょっとお父さん黙ってて! リリちゃん! リリちゃんは大丈夫なの!?」
……子ども達には見るなと言って箱の中を覗かせていないが、確かに眼の前で仔猫達の頭が破裂するシーンを見てしまった彼女の様子は心配だ。
「……大丈夫、大丈夫だよ……オジサマが直ぐに治してくれたから……でも……ちょっと……辛い……かな?」
そう言って箱の中から姿を表したリリちゃんは、当然と言えば当然ながら仔猫たちの頭が弾けた際に出た血で汚れていた。
「……直ぐに洗って上げるからね! ポチさんはその間仔猫たちをお願いします!」
仔猫が粗相をしても良い様にこの部屋にはペットシーツや雑巾に大き目のタオルなんかが常備されている。
その中からタオルを取り出した津美紀嬢は、リリちゃんを優しく包み込むとグッと腰を使って彼女を持ち上げる……喋る猫は大体大きく小学生が抱き上げるには少々キツイ重さなのだ。
「ごめんねオジサマ……リリ……覚悟してたけど……やっぱり……辛かった……」
「いや、仕方ない事だ。余程の覚悟が無けりゃ、仔猫が死ぬのを目の当たりにしてショックを受けない方が奇怪しいんだ」
今まで番った2匹は割とその辺ドライな感じだったが、リリちゃんは既に一度仔猫達を全滅させており、その時の
「津美紀、重いだろ? 抱っこはアタシが代わるからこっち寄越せ」
「私、先にお風呂場行って湯沸かし器のスイッチ入れてくる」
この惨状に津美紀とリリちゃんを心配して素早く動く禪院姉妹……彼女たちの方は奥さんもいるしある程度は任せて大丈夫だと思う。
「ふぅ……こりゃリリちゃんにもう一回ってのは無しだな。伏黒殿、この仔達の離乳が済んだらリリちゃんは避妊処理をした方が良いと思うぞ? 俺以外の相手でも同様の事が起こる可能性は0では無いからな」
「……ああ、ありゃ流石にキツそうだ。あれに金の為だと無理させるのは俺の実家以上の外道だわな」
「取り敢えず、血で汚れた段ボールは変えた方が良いだろう、準備を頼めるか?」
「りょーかい。んじゃ箱変えてる間お前は仔猫たちを頼むぞ?」
そうして俺達は手分けをして仔猫たちを箱から出し、新しい箱にペットシーツを敷き直しつつ、御主人の到着を待つのだった。