畜生道に堕ちたと思ったら五条悟の飼い猫になった件 作:鳳飛鳥
この世界が呪術廻戦の世界観だけで無く、ラーメン赤猫の世界でもある可能性に思い至ってから、俺はインターネットを使って『
あの漫画を知っている人ならば、その言葉を当然知っている筈だ。
ラーメン屋と言う飲食店を猫たちが営業できる秘訣、ソレが『気合で毛を落とさない忍術』なのだから。
そんな訳でラーメン赤猫のニンジャマスター猫『丑三丸』さん自身が何処に居るかを調べるのは難しいとは思ったが、彼が唯一無二の忍猫の末裔では無い筈だ……とググって見れば割とあっさり見つかった。
伊賀忍者博物館で活動して居ると言う『忍犬保存会』に対抗する組織として、甲賀忍者村と言うテーマパークで『忍猫保存会』と言う団体が『忍猫ショー』をやっているのだと言う。
他にも忍者つながりで言えば都内にある『私立忍ノ者高校』や京都府内に学び舎を持つ戦国時代からの伝統校『忍術学園』なんてのもある……らしい。
いやこの世界マジでどーなってんだ!? 前者は古き良き名作『流石の猿飛』の舞台となる高校だし、後者は『落第忍者乱』或いは『忍たま乱太郎』の舞台じゃねぇか!
つか原作でもパパ黒こと伏黒甚爾が行っていた競艇場では、『モンキーターン』と言うサンデー漫画の主人公とそのライバルのレースが行われて居た筈だ。
ジャンプ系だけで無くサンデー系まで世界観が広がるなら、中国の奥地にソコで溺れると色々な動物(人間含む)になる呪われた泉が湧く地が有っても驚かんぞ……もう。
まぁこの世界ならそう言う術式を持った呪霊だの、
……等と割とどーでも良い事を考えつつ、呪霊被害が比較的少ない冬の間にでも忍猫保存会に接触する事が出来ないかを考えてみる。
一応今のままでも呪霊を相手にするのに然程困ってはいないが、ソレも『呪術は人間だけのモノ』と言う常識と『呪霊は人間しか襲わない』と言う常識に助けられている部分がかなり強い。
俺が呪霊の討伐任務に行った場合、帳で炙り出された呪霊たちからも襲いかかるべき対象外扱いされるので、準一級までの呪霊ならば一方的に猫ロケットパンチをブチ込むだけで祓えてしまうのだ。
一級でも『今生の間、右前足を自身の反転術式で再生しない』と言う縛りを掛けて威力を上げたごっつい猫ロケットパンチで大体は祓える。
今の所、マトモに戦ったと言える様な任務は特級仮想怨霊:鷹ヶ森の権太を祓いに行った時だけなのだ。
その戦いはお世辞にもスマートだったとは言い難い。
ごっつい猫ロケットパンチ一発で祓うのは難しいと判断したが故に、ほぼ確実に先手を取れると言うアドバンテージを活かす事無く、猫ロケットパンチを連射し相手がこちらを敵と認識してからも猫ロケットパンチを逃げ撃ちし続けた。
向こうの生得術式は実体のある幻影を生み出す……と言う感じのモノで、水木しげる先生の妖怪図鑑に出てくる様な物を召喚し攻撃して来たが、呪胎から孵化したばかりで経験値が足りない所為かその攻撃は荒く、避けなくてもマトモに食らうモノの方が少なかった。
その上、然程も経たない内に攻撃が当たらない事に痺れを切らして速攻領域展開を仕掛けて来たのだが、御存知の通り俺は必中必殺を一回食らっても残機が一つ減るだけで済む。
対して相手は術式が焼き付いて暫くは呪力に依る身体強化くらいしか出来る事は無くなる訳だ。
術式を使っても攻撃を当てれない様な雑な行動しか出来ないのだから、幾ら特級とは言え負ける訳が無い、猫ロケットパンチでダメージが通るなら後はひたすら遠距離からちまちまちまちま削ってK.O.! である。
うん……マトモに戦って無いし、戦いの経験を積んだとも言い難い。
呪術師の基本は体術だ! と原作でも五条先生か夜蛾先生が言っていたとは思うが、格闘技が趣味・特技の夏油と、ソレを相手に切磋琢磨している御主人は兎も角、俺には『猫用の体術』を教えてくれる様なモノが居ないのだ。
ラーメン赤猫に出てきた忍猫の丑三丸さんは、尻尾で水の入ったラーメン丼を持ち、ソレを零すこと無くキャットタワーの上まで登って見せる……と言う素晴らしい身体操作能力を披露していた。
ソレが直接戦闘能力の向上に繋がるかどうかは不明瞭ではあるが、戦国時代辺りにも諜報活動に従事していたと言う忍猫に戦闘技術が全く無いと言うのも不自然ではあるし、恐らくは赤猫メンバーが取得していないだけで技術自体はある……と思いたい。
「なぁ御主人、冬休み辺りでも良いからここへ連れて行ってくれないか?」
甲賀忍者村の公式ホームページの中から、忍猫ショーの詳細を開いたままで、ベッドに寝転んだままで漫画を読む御主人にそう声を掛ける。
ちなみに御主人が読んでいるのはNARUTOである、忍者絡みに話題を振ろうとしていた所で何ともタイムリーな作品だ。
「ん? なに? 珍しいじゃんお前がおねだりとか……忍猫ショー? 日光さる軍団的な奴? 猫のサーカスって芸をしなくても猫だから仕方ない……的なネタじゃなかったっけ
?」
「正確にはサーカスの虎やライオンが猛獣使いの言う事を聞かずに芸をしなかった事を酷評する慣用句としてDead Catと言う言葉有るだけだな。猫が綱渡り等の曲芸をするサーカスは実在しているぞ」
人間の言葉を理解していると言う確証が無く、寧ろ人間を召使か何かだと思っていたであろう
ましてや人間の言葉を割と当たり前に理解し、何ならラーメンをスープから自作する様な猫までいるこちらの世界の猫が、芸を覚えられない筈が無い……まぁ猫だからやりたくない事はやらないんだろうけどな。
「あー、そーいや喋る猫はそれなりに居るんだっけか、もしかしたら喋る犬とか新選組の局長やってるゴリラが居ても不思議は無い……のか?」
新選組の局長はゴリラでは無く、記録に残っているだけでも正妻の他に五人もの妾を囲った艶福家で、残されている当時の写真も昭和の二枚目俳優を思わせる整った顔立ちの男前だった筈だ。
歴史の中でも幕末辺りはあまり詳しい方では無く、精々が前世で一時期『維新の嵐~幕末志士伝』と言うゲームにハマっていたくらいである。
……今気がついたが、あのゲームはダウンロード販売が当たり前に成った頃合いでも、何故か配信されず遊ぼうと思えば、PC版のディスクを手に入れるか、初代プレイステーション版をやるしか無かったが、今なら未だプレミアが付く前に買えるんじゃないか?
PS版は色々とオミットされた要素も多く、俺的にはやるならばPC版一択である。
「まぁ、冬場は呪霊共も大人しいし呪詛師連中が余計な事さえしなけりゃ、こう言うテーマパークとか遊びに行くのも有りかもね。にしても忍猫ショーねぇ……もしかしてこの写真に写ってるのって可愛い雌猫だったり?」
「いや、猫に欲情するのは猫好きを通り越して変態の域だろう。俺は真っ当に嫁さん貰って真っ当に子どもをもうけて、真っ当に社会人やって真っ当にくたばったんだ。まぁガキの頃のやらかしが原因で畜生道には堕ちたがね」
ゲスい笑みを浮かべながらそんな事を言う御主人に、俺はため息一つ吐いて正論を口にする……猫吸いとかは性的な行為じゃないしセーフだよな? と一瞬脳裏をかすめるが、まぁ猫好きでソレを許してくれる猫が居るなら大概の者はやってる行為だろう。
「で、次はなんで通販サイトで歴史ゲー買おうとしてるわけ? いや、その程度ならお前の稼ぎで十分買える範囲だし文句をは言わないけどさ」
「俺の稼ぎと言えば、俺が受けている任務は基本的に御主人に回されたモノの中から、御主人と補助官の判断で俺に回されているだけで、報酬は御主人の口座に振り込まれてる訳だろう? 明細とか一々取ってるのか?」
「あー、話した事無かったっけ? 俺への報酬って全部俺個人の口座に直接振り込まれる訳じゃないんだよね。ソレやると税金がバカみたいな額になるらしくてさ、五条家の資産を管理する会社が有ってソコに振り込まれる様になってんのよ」
資産管理会社って普通は事業活動はほぼせず、不動産や株式なんかを管理し家賃収入や配当金なんかが主な収入になる会社……の筈なんだが、どうやら一級術師ともなると個人所得として受け取るには多過ぎるだけの報酬が入るらしい。
「んで、俺に必要なモノは基本的には五条家の金で買うし、小遣いだって引き出し放題! そういう面では当主になって良かったと思うよねー。まぁ財産食い潰すボンボンみたいな金の使い方する程アホじゃないけどね」
ケラケラと笑いながら藍色に輝く分厚いクロコダイル皮の札入れを振って見せる……俺の記憶が確かならアレは三十万近くする財布で学生が持つような代物じゃ無いし、前世で一端の社会人してた俺だって財布一つにソコまでの金を掛けた事は無い。
一万ちょっとで買える英国ブランドのブライドルレザーの二つ折り財布を、死ぬまで丁寧に手入れをして長い事愛用していた……財布は値段じゃぁ無いが……うん……。
御主人のソレは産まれた時から『持っている側』の人間だったと理解はして居るし、前世の自分の努力や人生が駄目だったとも思わないが……男として色々と負けた気分で、なんとなく打ちひしがれたのだった。