畜生道に堕ちたと思ったら五条悟の飼い猫になった件   作:鳳飛鳥

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玉折……季節は巡り春

 天元初期化任務を無事に終えた後、夏の繁忙期を無事に終え、実りの秋には御主人達はンマイものを鱈腹喰らい、冬休みには再び御主人は甲賀へ、夏油は古巣のジムへと向かい己の体術の基礎を高めていた。

 

 その際、武の重要性を説いた御主人の影響も有ってか、七海は短刀術を学ぶ為にシン・陰流ではなく新陰流に入門し、灰原は夏油と同じジムへと入門したと言う。

 

 合わせて五条家経由で総監部に対して陰高野から齎されてる『術式持ちの子ども』の情報に関する事を問い合わせた所『亡くなった総監部メンバーの一人が管理していた』事が発覚する。

 

 陰高野から送られていた文は全てしっかりと開封され、時系列ごとに整理もされ保管してあった事から、加茂家をバックボーンとするその人物の意図的なサボタージュと見做され、新たに総監部に入った加茂家の者が肩身の狭い思いをして居ると言う。

 

 とは言えその情報を元に高専の補助官達が早速スカウトへと向かった事で、新年度の高専入学者は伊地知潔高以外に四人居て計五人と中々に豊作だった言えるだろう。

 

 今後も原作世界線では呪詛師に堕ちたかもしれない人物が、何人も高専に来るかもしれないと考えると、呪術界の未来は割と明るいかもしれない……新入生の中に『組屋鞣造』が居なければ。

 

 アィエェェェェ! ハンガーラック! ハンガーラック=サン!? ナンデェェェ! と、昨年同様に新入生を御主人達と共に屋根の上から見下ろしていた俺がパニックを起こし掛けたのは当然と言えば当然だっただろう。

 

「いやー今年は豊作だねぇ、5人の内4人はそこそこの呪力を持ってるし術式持ちだ。一人は術式も無いし呪力も心許ないけど名簿を見る限りあの伊地知ニ級の息子さんだろ? なら鍛え方次第で十分呪術師としてやっていけるだろうさ」

 

「君の目で見た感じで、無下限を突破出来そうな術式の子は居るのかい?」

 

「んー、一人居るかな? ただアレの術式を十全に活かすのは中々に難しそうだな。つか良く今まで呪詛師にならずに成長してきたなー」

 

「呪詛師にならず……ってそんな物騒な術式なのかい?」

 

「ああ、呪力を持ったモノを加工する術式、錬鉄呪法の派生術式だろうな。あいつが持ってるのは呪力を持った生き物を呪具として加工する為の素材にする術式だよ」

 

「……ソレは、確かに今まで呪詛師にならなかったのが不思議になる様なモノだね。量の多少に拘らなければ一般人だって呪力はあるんだ……幼少期からサイコキラーに成っていた可能性は十分にある」

 

「まぁその点ここなら秘匿死刑や公開死刑になった呪詛師や、ポチの術式で増やした呪術師の肉人形なんかを素材にさせるようにすれば、民間への被害無くあいつの術式を活かしてやる事も出来るだろうな」

 

「ソレで血に酔ったり、精神を病む様な事が無い様に、先輩である私達が注意してあげないと行けないね」

 

「そうそう、ちゃんとした気晴らしは大事だよな夏油特級術師殿? 昨日もあのお嬢ちゃんとデートしてきたんだろ? そろそろ初めてのちゅーは済ませたのか?」

 

「あの子とは理子ちゃんとは未だそう言う関係では無いよ、何よりも彼女は未だ中学生だ。私に向ける好意だって麻疹の様なモノだろう。黒井さんが結婚した事で心細くなったのを私で埋めてるだけさ」

 

 そう、あの事件の後、黒井女史は天内少女との再会を喜んだが、同時に天元の初期化も成功したと言う事で、呪術師家系の実家から役目は終わったと判断され半ば強引に見合い婚をしたのだ。

 

 幸いだったのは夫となった呪術師が一般家庭出身の一級呪術師で、星漿体の重要性をある程度把握しており、今後も天内少女の面倒を見ていきたいと願った黒井女史の意見を尊重してくれたことだろう。

 

 爆破されたマンションは当然引き払い、今度は家族向けの比較的大きな一軒家へと引っ越したのだが、新婚夫婦の居る家庭は年頃の娘には少々居づらいらしい。

 

 更には星漿体として身を謹んで、安全の為にも可能な限り家での生活をしていたのが、その必要が無くなった事で一人では無く友人達と一緒ならば外出もある程度認められる様になり、それ相応の青春を謳歌する様に成ったということだ。

 

 独り歩きは未だ禁止されている事もあって、休日なんかに友人達と予定が合わない時なんかは、夏油が護衛兼荷物持ちとして呼び出されて街歩きを楽しんでいると言うのだが、ソレは彼の言う通り麻疹の様なモノか、ソレとも本気なのかは分からない。

 

「……夏油よ、前世で娘を持った事がある身として言わせて貰うが、女の成長は男が思っているよりも大分早いぞ? 彼女の事を少しでも想っているなら、その時が来た時に彼女に恥をかかせる様な事のない様に覚悟はしておくんだな」

 

 俺が死んだ頃合いでは性同意年齢は17歳以上と引き上げられたが、この頃は未だ14歳以上であればそう言う行為に及んでも犯罪では無い。

 

 まぁ青少年保護条例に引っかかると言う事もあるだろうが、当年取っても18歳と15歳なら決して眉を顰められる様な年齢差では無いだろう。

 

「ちなみに俺の娘が初めて彼氏を家につれてきたのは小6の時だったぞ、相手の男の子の方は未だそう言う事を良く理解していなかった様だが、最終的にはきっちり結婚し孫まで見せてくれたんだ……年頃の女は狩人だと思った方が良い」

 

「にしても傑に先を越されたのは俺としてはちょっと痛えなー。世界で2番目の特級呪術師の看板は俺が取ると思ってたのになー」

 

 伏黒甚爾との戦いで反転術式に目覚める事の無かった御主人は、未だ一級術師のままで『単独で国家転覆が可能な戦力』とは見做されて居ない。

 

 対して夏油はその身に取り込んだ呪霊の質も量も圧倒的な事から、特級相当と総監部から判断され正式に特級認定を受けている状態である。

 

「私の特級認定は飽く迄も保有する呪霊の量に依るモノで、言わば外付けの特級認定だからね。未だに悟の無下限を抜く事が出来る術式を持った呪霊は手に入ってないし、体術縛りでも今じゃぁ五分五分程度だからねぇ……誇れる様なモノでは無いよ」

 

「五分五分で思い出した、機会が有ったら猿飛のじーちゃんが『一丁揉んでやるから儂の身体が動く内に顔をだせ』って言ってたぞ」

 

「呪力無しでやり合って、今の悟で五分五分より少し悪いんだっけ?」

 

「んにゃ、忍体術だけならそーだけど、この間の冬休みには忍術系等の技術を交えてきたから、ソレでまた2割未満まで勝率落ちた」

 

「今の悟相手に勝率8割以上って……猿飛の翁は本当に人間なのかい?」

 

「身体能力で劣るモノが強者に抗うために研鑽するのが武術らしいからな、そんだけじーちゃんの武が研ぎ澄まされてるってこったろ、まぁ忍術系の騙しの類は卑怯だと思うけどなー」

 

「……戦場に卑怯卑劣なんて言葉は無い、有るとしたらソレは死体が呟く寝言に過ぎん。と、前世でなんかの漫画か小説で読んだ記憶があるな」

 

「武者は犬ともいへ、畜生ともいへ、勝つことが本にて候……なんて言葉も有るし、武士も忍者も呪術師もどんな手を使ってでも勝てば良いんだろうね。うん、自分が使うかどうかは兎も角、卑怯な手段に対する対抗策を練る為にも近い内にお邪魔しておこうかな?」

 

「で、御主人他の三人の術式に見るべきモノは無いのか?」

 

「んー、取り敢えず無下限を抜けそうな術式は無いなー。さっきの組屋だっけ? あいつは造る呪具次第では抜けるかもしれない程度だわ。でもまぁ組屋と同学年って事は今年は呪具使いが増える可能性もあるから先輩面するなら油断は出来ねーわな」

 

「その辺を七海と灰原にも言っておかないとね、後輩に舐められる様な呪術師じゃぁ其の内命を落とすことになるぞ……って、特に灰原は私と同じジムに入ったんだ、二重の意味で後輩だし発破を掛けておかないとな」

 

「にしても今年は5人かぁ……多分来年も同じくらいか、もっと多くの新入生が来るんだろうから、ここも賑やかになりそうだなー」

 

 原作に登場した呪詛師が高専に入学し、真っ当な呪術師を目指すという一例目が目の前に居るのだ、他にも同様の事例は出てくるかもしれない。

 

 伊地知潔高の他に原作で五条の2個下の後輩は誰一人として語られていなかったが、ソレは彼が一人だけの入学者だった事を示すモノでは無い、総監部が原作通りの腐ったミカンならば学生が任務中に殉職する事は決して珍しい事では無かったのだ。

 

 その世代では伊地知潔高が運良く生き残っただけ……と言う可能性は十分に考えられる。

 

 まぁ今の総監部は原作と比べればある程度クリーンな組織に成っているし、俺と家入の頑張りで呪術師の殉職率も大分下がっているので、余程運が悪く無ければ無事に卒業まで生き残る事が出来るだろう……多分。

 

「人が増えるなら、もう少し自販機のラインナップも増やして貰いたいね。伊藤園が悪いとは言わないが、せめてコカ・コーラとサントリーの自販機は欲しいな」

 

「コカとサントリーって、高専内でコーラ戦争でも起こしたいのかよ。まぁ自販機増やす事自体は不可能じゃねぇと思うぞ、本当に生徒が増えて需要が伸びればなー」

 

「そこは五条家の財力でなんとかしてくれる所じゃないのかい?」

 

「採算が取れねー事業に金出すと会計係がうるさいんだよ、事務方敵に回すと兵站に支障を来すってのは昔からよく有る話だからな。五条家で俺に文句を言える数少ない人間が会計係の連中だ。小遣い減らすって言われたら流石に俺もお手上げなわけよ」

 

 御主人が五条家当主としての判断で使える金は莫大と言って間違いないが、個人的に使える金はお小遣い制(ソレでも月100万とかだが)らしい。

 

「呪術界最強と呼ばれる存在でも小遣いを握られてる相手には勝てないのか……なんとも世知辛いね」

 

「貨幣経済の中で生きる以上はしゃーないでしょ、んじゃ新入生たちも校舎に入った事だしそろそろ下に降りるとするかね」

 

 そう言って校舎の上に座って新入生を眺めていた御主人達と俺は、普通の人間ならば自殺としか思えない高さから飛び降りるのだった。

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