畜生道に堕ちたと思ったら五条悟の飼い猫になった件   作:鳳飛鳥

44 / 45
玉折……猫の嫁探しと特級術師

「夏油先輩! それにポチさんも! 今日はお休みですか!?」

 

「灰原、声が大きいよ。ポチさん達、猫は人間より耳が良いんだ。彼等の近くであまり大きい声を出しては駄目だよ」

 

 猫の身体では有るが俺の耳は人間と同程度の性能しか無い事は夏油も知っている筈である、けれども他の猫が居る時の事を考えてそう言ったのだろう……天元が俺の術式を継承出来る様に総監部に要請した事で内々ではあるが嫁探しが始まっているらしいしな。

 

 俺の嫁探しに対して求められている条件は幾つか有るが……先ず第一に『言葉が話せる猫』であること、次に『普通の猫と比べて多い呪力を持つ猫』であること、最後に『俺の子を産む事に同意している雌』である事の3つが最低条件である。

 

 ぶっちゃけ俺の意思はどーなのかと言う話も有るが、まぁぬいぐるみい相手にマウンティングを定期的に行う程度には、雄としては健康体な訳で雌猫を性の対象として見れるかどうかは別次元の話だ。

 

 なんなら俺が普段そうしているように人間女性のポルノ画像でも見ながら、ぬいぐるみの代わりに雌猫に種を蒔けば済むだけの事なのである……少なくとも総監部の認識としては。

 

「やぁ若人達、どんな女がタイプかな?」

 

 と、唐突に姿を現したのは日本人とは思えない長い金髪──染めているとも思い辛い自然な色合いだ──の、モデルだと言われたらそうとしか見えない程のスタイルを誇る女性……九十九由基だった。

 

「どちら様ですか?」

 

「自分は沢山食べる()が好きです!」

 

「灰原、だから声が大きいよ。そんなに叫ばなくても聞こえるから、もう少し声を落しなさい。ここはジムじゃないんだから」

 

「あははははっ素直で良いねぇ、で夏油君とそっちの猫さんは答えてくれないのかな?」

 

「……先ずはそちらが答えて下さいよ、どちら様ですか?」

 

「夏油、質問に質問を返すのはよろしくない、彼女は恐らくもう一人の特級術師、九十九由基だ」

 

「へぇ……猫さんは私の事知ってるんだぁ」

 

「ああ、御主人から聞いている。特級のクセに任務を受けずぶらぶらしているロクデナシ……とな」

 

「……ポチさんにしては珍しくトゲの有る物言いだね、呪詛師以外の人間を相手にそんな風に威嚇するのは初めてじゃないかい?」

 

「あーアタシ高専ってキライなのよねー。ここの任務って全部対症療法でしょ? 呪霊をただ祓うだけじゃなくて、アタシは原因療法で呪霊が居ない世界を作りた……かったんだけどねぇ、猫さんが出てきた事で大前提が覆っちゃった」

 

「大前提……ですか?」

 

「そ、呪霊は人間の負の感情が呪力となってソレが集まって産まれるモノ、但し呪術師は自身の呪力をコントロール出来るから呪術師から呪霊は産まれない……てね。でも猫さんが居る以上は、動物たちの負の感情からも呪霊は産まれる可能性が有るって事よね?」

 

「まぁ、昨年の国会で『知恵ある動物達の法的人格権に関する法律』なんてモノが制定されたくらいですから、猫に限らず知的動物はそれ相応にいる事は間違いないでしょうし、そうした者達から呪霊が産まれる可能性は0ではないでしょうね」

 

「……皆さん難しい事考えてるんですね! 俺は受けた任務を一つひとつきっちり熟す事しか考えてません! バカだから!」

 

「灰原……考えるのを止めたら頭は何の為にあるんだって事になるよ?」

 

「でもジムの先生も言ってるじゃないですか『そーいうむずかしい事はブッコロしてから考えるヨ!』って」

 

「あー、先生のそう言う所は見習わない方が良い……強い人なのは間違いないが、考え無しにやり過ぎた所為でリングから干された上に自国に居場所が無くなって、日本のジムでトレーナーしてる人だからね」

 

「……大丈夫二人とも? そんな考えない人に教わって身に付くの?」

 

 灰原と夏油の言葉にドン引きした様子の九十九特級が思わずと言った感じでそんな言葉を口にする。

 

「言語化して教えるのはほぼ無理ですけれども、身体で覚える分には素晴らしい先生ですよ。あーほら、某球団の終身名誉監督みたいなモンです」

 

「ガッと殴ってグッと掴んでドカッと蹴るネ! とかそんな感じですもんね実際!」

 

「寧ろ私としてはあの人が多少訛りはあるとは言え、日本語を覚える事が出来た事の方が驚きだけどね」

 

「あとは先生が割と料理上手なのも知ると、ちょっと印象変わりますよね! 先生の作るガオマンガイとカオニャオ・マムアンは幾らでも食べられます!」

 

「灰原は食べ過ぎ……と言いたい所だけれども、君の場合はアレぐらい食べないと逆にガレるんだろうね」

 

 ガレると言うのは一般的には競馬用語で、疲労や食欲不振などが原因でやせ細ってしまう事を指すが、恐らくは格闘技の世界でも同じ様な意味合いで使われているのだろう。

 

「へぇガオマンガイとカオニャオ・マムアンねぇ……君たちはもしかしてムエタイのジムに通ってるのかな?」

 

 流石は世界中を旅して回っていると言うだけあって、料理名を聞いただけでソレが何処で食べられているモノなのかを把握し、そこから彼等の通う格闘技の流派に思い至ったらしい。

 

「一応、看板はキックボクシングのジムですが、ある程度以上の実力がある希望者にはムエタイを経由して古式ムエタイも教えて貰えるんですよ。まぁ試合では使えない技術のオンパレードなんで希望する者は本当に稀ですけどね」

 

「へぇ……古式ムエタイかぁ……流派は?」

 

「ムエ・ロッブリーです!」

 

「わぉ、ガチで実戦向けの奴じゃん!」

 

「……よくご存知ですね?」

 

「伊達に世界中を旅して回ってた訳じゃないわ。現地の試合だって観た事あるしね」

 

「ところで……高専がお嫌いな貴女が、どうした理由でわざわざ高専まで?」

 

「ああ、本題を忘れてたわ、若い子と話すのが楽しくて。一つはアタシ以外に特級認定を受けたもう一人の特級を見に来たんだけど……ソレはもう済んだね。もう一つはそっちの猫さんに用事があったのよ」

 

「ん? 俺に用事? ああ、貴女の目的だった呪霊の居ない世界とやらの前提をひっくり返した文句を言いにきたのかな?」

 

「逆だよ、お礼が言いたかったんだ。君のお陰で後輩が犠牲にならず、しかも天元がきっちり初期化されたらしいじゃない。しかも次の時に君の子孫が術式を持っていれば、もう犠牲は出なくて済む……本当にありがとう」

 

 九十九特級はわざわざ一度立ち上がり、俺へと向き直るとそう言ってから、深々と頭を下げる。

 

「頭を上げてくれ九十九特級、俺は俺で出来る事をしただけだ、ソレに俺はハッピーエンド至上主義者でね、目の前にあるバッドエンドやビターエンドは否定したくなるだけのヲタク猫さ。自分の信条を貫いた事は礼を言われる様な事じゃぁない」

 

「聞いてた通りの人柄……猫柄? みたいだね猫さんは、うん高専の任務を引き受けるのは業腹だったけど、君のお嫁さん探しの任務はやっぱり受けておこう。世界中を巡って対象に成り得る猫を探すのはストレスにはならなそうだしね」

 

「前言撤回、やはり礼となるモノを置いていって貰おう。灰原、組屋は今日は高専に居るか? 居るなら直ぐに呼んで来い、特級術師の遺体を素材に呪具を作れるぞ、と言えば飛んでくるだろう。と言う訳で九十九特級の肉体をコピーさせてくれ、で礼は終わりだ」

 

 俺が態度を変えた事でアレぇ……と言った表情(かお)に成った九十九特級だったが、

 

「血の一滴で良いんだよね? あ、でもコレを使ってアタシを呪う様な真似はしないって縛りを結んで貰うよ? 勿論、アタシの身体を使って呪具を作るって子にもね。あ、後はエッチな事にも使わない様にね!」

 

「安心したまえ、俺の好みの女性はどちらかと言えば九十九特級とは真逆だ。小柄で可愛らしく、自分よりも猫を愛する男でも受け入れてくれる女性だ」

 

 前世の妻が本当にそう言うタイプだった、結婚した当初は合法ロリに手を出しただの、ロリ婚カッコガチだの散々言われたモンだ。

 

「へぇ……君、猫のクセに人間の美醜を気にするんだ。話す猫は他にも会った事あるけど、雄も雌も大体は見た目よりも強さが価値基準だったけどねぇ……ふーん成る程ねー」

 

 再び表情を変え、今度は色々と察した様な下卑た笑みを浮かべる。

 

「ああ、アタシのコピー体を作るのは、呪具師の子が来るのを待つとして……夏油君にも言っておきたい事があったんだ、アタシの後輩を泣かす様な真似をしたら物理的に潰すからね?」

 

 今度は全ての表情が抜け落ちた様な真顔になって夏油へと、特級術師の名に相応しい呪力を迸らせて明確な脅し文句を口にした。

 

「つ、九十九特級の後輩さんと言うのが、良く分からないのですが?」

 

「天内理子だっけ? あの子とよろしくやってるんでしょ? アタシも星漿体だったのよ、タイミング次第ではアタシが贄に成ってたんでしょうね。だから同じ星漿体の天内はアタシの後輩って訳。そんな訳で泣かすような真似すれば……ね?」

 

 それから暫し、灰原が組屋を呼んで来るまでの間、夏油は九十九に威圧され続けたのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。