畜生道に堕ちたと思ったら五条悟の飼い猫になった件   作:鳳飛鳥

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北へ。……①

 呪術高専に修学旅行と言う行事は無い、敢えてソレに近いモノを探すとすれば京都校との交流戦だが、基本的に前年度の勝利校側へ敗北校が向かうと言うルールがあるので、必ずしも在校中に旅行が行われるとは限らない。

 

 任務で遠出をする事も有るが、ソコで一々観光なんぞする余裕が有るのは原作において『呪術界最強』の存在と成っていた『五条先生』くらいなモノだろう。

 

 そんな訳で高専の生徒が纏まって旅行するなんて事は、生徒達が自発的に企画でもしなければ有り得ない事な訳だ。

 

 何故こんな話をしているかと言えば、この冬休みの頭に先日の合同体術訓練の際に磯野が提案した、青森県大間町へ先生を除くあの場に居た全員で向かう事に成ったからである。

 

 冬休みの初日は皆高専から地元へと帰ったりする為、最寄り駅までは補助官の運転する自動車で送って貰えるが、例年はそこで解散しバラバラになる所を一纏めに電車へと乗り、先ずは東京駅へと向かう。

 

 そこで東北新幹線へと乗り換え八戸駅までは一直線だ。

 

 ここで俺という法的人格を持つ猫がケージに入れられる事無く乗車出来る出来ないで、一度揉めそうになるがこう言う状況を想定し、法的人格を得た動物には身分証明証が発行されている。

 

 自動車免許にも似たソレは厚生労働省管轄の新設された知的動物監督所の許認可を受け、地域の公安委員会が発行する正式な身分証明証だ。

 

 出された当初はソレの存在を知らなかったらしい駅員と少し揉めそうにも成ったが、運良く近場に居合わせた弁護士さんが間に入ってくれた事で、無事に俺は乗客として認められグリーン車の1席を占有する事が出来た訳である。

 

 一応は団体行動と言う事もあって、人間は全員が高専の制服を身に着けているので、端から見れば時期的に卒業を控えた学生たちが一足早い卒業旅行に向かっている様にも見えると思う、ソコに赤ちゃんちゃんこの大猫が混ざって居なければ……だが。

 

 兎角無事に乗車した新幹線での移動は3時間弱、その間は皆で携帯ゲーム機版の狩りゲー2作目で盛り上がる。

 

 一年生5人に2年生が2人、3年生は3人1匹で4年生は庵が唯一の参加者で、合計11人と一匹。

 

 4人で組みに成ってマルチプレイをするならば3パーティー組めるので、丁度良い人数と言えるだろう。

 

 そんな感じで青森県八戸市にある八戸駅で新幹線を降車し、ここからは在来線での移動である。

 

 そうして本州最北端の駅『下北駅』へと到着したら、ここからはバスの旅……磯野一人ならば地元のバス会社である下北交通が運行する路線バスで実家へと向かう所なのだが、今回は御三家の一角五条家当主を迎えると言う事で磯野家が貸切バスを用意してくれていた。

 

「「「「「「「「「寒っ!」」」」」」」」」

 

 電車を降り、バスへと乗り換える少しの間、北国の風に晒されただけで、地元民である磯野と生来の毛皮を持つ俺以外の全員が口を揃えて寒さを訴える。

 

「今日はこの時期にしては割と温かいほうですよ? 年明け辺りに海に出ればこんなモンじゃ無いですしねー」

 

 そう言ってからからと笑う磯野を他所に、他のメンツは我先にとバスへ乗り込んでいく。

 

 用意されていたバスは普通の修学旅行なんかでも使われる様な、極々普通の観光用貸し切りバスである。

 

「この度は下北交通ばご利用頂き誠に有難うございます。我が社は磯野家にも懇意にして貰っていますして、到着まんで皆様ご自由にお寛ぎけさまい」

 

 我々が全員乗り込むと初老の運転手がわざわざ磯野家の名を出して挨拶をした。

 

 コレはまず間違いなく『自分は呪術の存在を知っている者なので、呪術の秘匿など気にせずに会話して良い』と言うアピールだろう。

 

「では目的地まんでは1時間半程度の予定です、出発しますして座席にお座りけさまい」

 

 運転手がそう言うとバスは静かに発進する。

 

「それにしても磯野ん家(ち)、こんな人数で泊まれる程大きいのか? 他に宿とか予約してねーんだろ?」

 

 都内の極々普通の一般家庭で育った剛田が、一度に12人と言う人数が泊まれる住宅がイメージ出来ない様でそんな疑問を口にする。

 

「磯野家は祖先を辿れば敦実親王に辿り着く由緒正しい宇多源氏の家系だよ。どんな理由で天元の浄界の端っこまで流れてったかまでは知らないけど、現代まで呪術師の家系として血を繋いで来たんだ。土地の名士としてそれ相応の家屋敷くらい持ってるよ……ね?」

 

 ソレに答えたのは磯野本人では無く、ここに居る者の中で最も呪術界の情報に精通しているであろう御主人だ。

 

「大間に移ったのは明治初期の頃だそうですね、陰陽寮が解体される直前に北海道開拓使の設置で北の地が荒れ、ソコで産まれた呪霊が本土を襲う可能性に対して、水際の防衛力として我が磯野家がこの地に配置された……と聞いてます」

 

 成る程、飛行機なんてモノが未だ無い時代ならば、北海道で産まれた呪霊や呪詛師が本土へと攻め入るならば当然海を渡る事になる。

 

 その際に津軽海峡の防衛力として海の生き物を操る『海鮮操術』を相伝術式として持つ磯野家が、本州最北端のこの地に配置されたのは当然と言えば当然の事だったのだろう。

 

「それにウチは他の古参呪術師の家系と違って親類縁者を一箇所に纏めず、日本全国津々浦々に広げる様にしてるんですよ。日本は海に囲まれた島国ですからね、何処の海に呪霊や呪詛師が出ても可能な限り早く現地で対応出来る様にしてるんです!」

 

 曰く、海に面した一定以上の人口を持つ市町村には、必ずと言って良い程に磯野家の相伝術式を持つ親戚が居るのだそうだ。

 

 ソコまで広げてしまっては相伝術式の意味があるのかと疑問にも思えるのだが、磯野の分家は大間の磯野家を本家として立て、分家は分家で各地の守護者としての立場に誇りを持って任務に当たっていると言う。

 

「そこまで行くとホント別世界の話みたいになってくんなー。俺なんかポチの協力が無けりゃ自分の術式を使おうと思った時点で呪詛師確定だぜ? いや、ガキの頃にゃアリとかカエルとかで術式試した事くらいはあるけどよぉ」

 

 ちなみにその時のアリとカエルは『アリの巣潰し』と『カエル爆弾』と言う呪具になったらしい。

 

 前者は元通りのアリの形の呪具で巣へと戻ると呪いを振りまいてアリの巣を丸っと一つ全滅させるモノ。

 

 後者は生きたカエルの尻にストローを刺して膨らませパンパンに成ったソレを投げて爆発させるという割とグロい古(いにしえ)の遊びを元にした呪具で、推定3級程度の呪霊は一発で祓えると言う代物だと言う。

 

「いや……組屋は本当に高専のスカウトが間に合って良かったよ。放置されてたら下手しなくても呪詛師に堕ちてただろう……術式を持った呪術師は術式を使うのが当たり前と本能に刻まれているらしいからね」

 

 生得術式と言うモノは脳に刻み込まれている以上は生物としての機能の一部と言えなくも無いので、ソレを持って産まれソレを使う事の出来る呪力があるならば、使いたいと思うのが生き物として当然の事だというのが夏油の言だ。

 

「あー、ぶっちゃけ俺自身でもポチの身体を初めてバラした時、自分でも不思議なくらいふつーにヤれたもんなぁ。いやカエルの解剖くらいは中学の生物部でやったけど、術式使ってなかったからかあん時はグロっ! て思ったんだがなー」

 

 どうやら組屋の生得術式は術式を使っている状態とそうでは無い状態で、精神状態も変わる様でグロ耐性もそうだが、女性の肉体をバラす時に不埒な感情も涌かなくなるらしい。

 

「あー、ソレで私らのコピー体を手に入れても変な気を起こさない訳ね。由基さんのコピー体を真顔でバラしてたとか聞いた時は、組屋ってインポなの? とか疑ったけど、術式の効果なわけかー」

 

「歌姫先輩、そう言う際どい話は止めましょうよ。嫌ですよ私は……野郎どものシモの事情とか聞きたく無いです」

 

 割とあけすけに組屋の下半身を心配する言葉を吐く庵に対して、もう少し慎みを持ちましょうと顔に書いてある家入と、無言で同意する様に首を縦に振る赤城。

 

 世間一般からすれば綺麗な顔と言って間違いの無い庵が『インポ』等と言うどストレートな下ネタを口にした事に、逆に野郎どもはドン引きした様子で驚きの表情を隠せていない。

 

「……歌姫って俺の事ノンデリだのデリカシーが無いだの散々言うけどさ、歌姫自身割とノンデリじゃね?」

 

 ドン引きしていた野郎どもの沈黙を破ったのは、普段散々歌姫を弱者扱いして誂ってきた御主人だ。

 

 歌姫バットを手にしてからは彼女もまた『強くなる努力をしている術師』として、本人には言わずとも認めたのか、以前の様に『歌姫は弱い』と言う様な事を言わなく成っていたのだが、ここでまた要らん一言を口にした。

 

「あにおー! お前は正真正銘デリカシーの無い男じゃないの! 私はただちょーっと、男社会の呪術界に適応し過ぎて慎みってやつが剥がれちゃっただけなのよ! 文句ある!?」

 

 文句あると言った時点で傍らに置いてあったバットケース(2代目歌姫バット&予備の歌姫バット入り)に手を伸ばしている時点で、文句を言えば物理的に潰すと宣言しているようなモンである。

 

 ちなみに歌姫バットを持った庵と御主人が戦えば当然御主人が勝つが、チャンステーマ中の黒閃は『何故か』無下限の無限を貫く事が確認出来ているので、御主人としては割とやり合いたく無い相手の一人に成っていたりするのだ。

 

 そんな感じで盛り上がりながら、バスは一路本州の最北端を目指し走り続けるのだった。

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