畜生道に堕ちたと思ったら五条悟の飼い猫になった件 作:鳳飛鳥
「うわ!? でっけぇ呪霊……」
「マジで大きいね、距離感バグってんじゃない?」
「大きさもそうだけれども、呪力も凄まじいな……コレを相手にするのは自殺行為じゃないか?」
「大概の呪霊は俺がコストを消費し超必殺技を叩き込めば何とかなる……と高を括っていたが、正直アレを祓い切れるとは思えんな」
「電波は通じてる、結界も閉じてねぇ……取り敢えず食われなければ逃げられそうだ。どうです五条の御当主様、何か見えましたか?」
慎重な操船をしながらこの船どころか、大型タンカーやシロナガスクジラすら簡単に飲み込むであろう巨大過ぎる呪霊を見つめる御主人に、磯野の御当主がそんな声を掛ける。
「ああ、奴の術式は六眼で読み解いた……ぶっちゃけクソ面倒臭い奴だ。食ったモノを呪力に変換し蓄える、ただソレだけの術式だけど呪力量がアホみたいだ。こんなモンに何の策も無く真正面からぶつかるのはバカのする事だわ」
原作に出てくる様々な特級呪霊に比べれば決して厄介な術式と言う訳では無いが、観測された最初が壇ノ浦の戦いの後と言っていたが、レヴィアタン……旧約聖書のリヴァイアサンと同一の存在だとすれば紀元前から存在している呪霊と言う事になる。
御主人が読み解いた『食ったモノを呪力として蓄える』と言う術式の効果で2000年以上の時を生きて来たのであれば、あの怪物が莫大な呪力を持つのは当然と言えば当然の事だろう。
「こいは一族ば挙げて討たねばならねぇ化け物だ……腹に抱えらいる者達には悪いが、先ずは戦力ば集めねぇと話にならん」
恐らくは単純な呪力量だけならば原作に出てくるどの呪霊よりも強力な存在だろう……ソレこそ『呪いの女王:特級過呪怨霊:祈本里香』や『呪いの王;両面宿儺』すら足元に及ばない筈だ。
ただ、ぱっと見た感じ結界内に入ったこちらに対して何らかのリアクションを見せる様な事も無い辺り、恐らくは知恵の様なモノもないに違いない。
そう言う意味では両者がコレと闘った場合、勝つのは間違いなく原作最高峰の呪力を持つ2体の女王と王だろう、
呪いの王:両面宿儺が作中で最強にして最高峰の存在として描かれていたのは、呪力の量もそうだがソレ以上に術式への理解度や、飽くなき闘争心とソレに根ざした戦闘センスの高さにこそ有るのだと俺は見ている。
しかし目の前に居るワダツミノオオクチナワは、体内と言う生得領域に取り込んだモノを呪力に変換し蓄積すると言うだけの術式しか持たず、その呪力をどう使うと言う知能がない。
恐らくこんな呪霊が2000年以上もの間祓われる事が無かったのは、その巨体を小さな結界の中へと隠し広大な海を彷徨う存在だったからだろう。
少々不謹慎ながらゲーム的な表現をお許し頂けるならば、呪術師や呪詛師それから受肉体と言った存在は肉体と言うHPとかLP等と表現されるモノが有り、反転術式を用いなければソレを早急に回復する手段はない。
対して呪力はMPとかSP等と言われる数値が近いだろう、ソレを消費する事で術式を回し身体強化等を行い呪術師達は呪術を使う。
では呪霊にとっての呪力とは何か、MP等である事は間違いない等級の高い呪霊は生得術式を持つモノもいるし、呪力の強さがそのまま肉体の強さや頑強さに繋がっていると言う点では呪術師と同じだ。
違いがあるとすれば呪霊は呪力がHPも兼務して居るという事だ、奴らは呪力さえ有れば四肢がもげようと身体の大半を焼き尽くされようと殆ど一瞬と言って良い時間で復活する事が出来る。
一応、人や動物に近しい形をした呪霊の場合、頭部が完全に破壊されると呪力が残っていても消滅を余儀なくされる場合も有るが、特級の更に上の方ともなると頭部すらも呪力が残ってりゃ再生する事もあるらしいので絶対の弱点と言う訳では無い。
結局の所、確実に呪霊を祓い切るには兎にも角にも呪力を削り切るしかないと言う訳だ。
今回相手にしようとしているワダツミノオオクチナワはその呪力がバカでかい。
恐らく原作の術式反転を身に着けた後の御主人ならば、虚式を連打する事で削り切る事も可能だろうが、残念ながら俺の介入でパパ黒との戦いで反転術式を身に付ける事が出来ず、その機会も今の所は巡って来ていない状況だ。
では特級呪術師である夏油ならばどうかと言えば、現在抱えている千を少し超える呪霊を全て放出したとしても、ワダツミノオオクチナワのアホみたいな呪力を削り切るのは難しいだろう。
「……こうなったら申し訳ねぇ。五条の御当主様と御学友の皆様には一刻も早くこの地ば離れて頂きてぇ、乾坤一擲の博打にお客様ば付き合わせる訳には行かねぇ。無線で迎えば呼ぶがらわんつか待ってけさまい」
恐らくは一族の者を呼び集めての人海戦術に打って出るのか、はたまた自殺の縛りでも結んで特攻でも仕掛けようと言うのか、色々と覚悟を決め過ぎた
「なーに言ってんのよお父つぁん! こんな面白そうな戦いから俺達に逃げろって? こちとら1級と特級だぜ? 一当てもせずにケツ捲くるなんて恥ずかしい真似出来るわけねーじゃん!」
「……失礼ながら悟の言う通り、私にも現在2名しか居ない特級の内の一人としての矜持はありますので、磯野の御当主殿を置いて逃げろと言う申し出は受け入れる事が出来ませんね。ただ非戦闘員である硝子を港に帰らせるのは賛成します」
「ちょっと、勝手に人のこと決めないでよ! まぁ私は前衛じゃないから港まで帰るのは仕方ないにせよ完全撤退はしないよ。あんなバケモン相手にするなら怪我じゃ済まない人も出るでしょうし、人死には一人でも少ない方が良いのは当然だものね」
「……御主人、俺はどうするべきだ? 死人を減らす為に回復要員に徹するべきか、それとも攻撃要員として戦うべきか」
一応は1級の肩書と法的人格を持つ俺は一匹の猫では無く、一人の呪術師としてカウントされる存在に成ってはいるが、両方が出来るが故に中々に判断が難しいのだ。
「すんませんお父つぁん、無線で第一の方に乗ってるメンツと連絡取れます? 可能なら向こうに乗ってる組屋って奴に持ってきてる呪具を確認して欲しいんですよ」
「息子にほの子の事は聞いてる、優れた呪具師だんだどね。ほの子が持ってら呪具でこの状況ば打破出来そうな物があるのかな?」
「ええ『
伊地知と燃焼爆銃の組み合わせに何か有るのだろうか?
……うん、社会的な小狡い事を考える分には未だ亀の甲より年の功を見せる事が出来るが、呪術師としての戦闘の事だとやはり御主人の知恵回りには敵わない。
まぁ俺のソレはずる賢いとか狡いと言う様な方向性の物で、御主人が持つ戦略や戦術と言った視点でのセンスとはちょっと違うのだろう。
「……ああ、あの結界とあの呪具を組み合わせるんだね? うん、今回みたいな純粋な削りあいならばアリかもしれないな」
どうやら夏油は御主人の考えている作戦が読めている様で、ニヤリと額に縫い目がありそうな悪い笑みを浮かべる。
「呪具は船には持ち込んどらんが屋敷には有るらしい、へて伊地知おめどと一緒に戦えるんだば命ば賭けても構わんそうだ」
「うわぁ……後輩からの信頼が重いねぇ夏油特級術師殿?」
「作戦を考えたのは君だろう五条家当主殿?」
「勝算は有るんだな? ならほの作戦ばワイにもしかへでくれ。必要な物は全て用意させる。この船はあの呪霊ば監視する為に移動させる事は出来ねぇ。迎えの船が来たらお嬢さんはそっちに乗り換えて港さ戻ってくれ」
ワダツミノオオクチナワはその存在を隠す結界ごと世界中を彷徨い続けた存在だ、可能な限り奴から付かず離れずで監視を続けなければ逃げられる可能性は極めて高い。
当然御主人達もその事は理解して居る為、御当主殿の言葉を否定する様な事は無く、3人は揃って頷き肯定の意を示すのだった。