畜生道に堕ちたと思ったら五条悟の飼い猫になった件   作:鳳飛鳥

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野良猫捕獲大作戦……こんな簡単じゃねぇぞ!?

 吾輩は猫である名前は五条ポチ……はい、なんやかんや有って無事に五条悟の飼い猫と言う立場に収まりました。

 

 俺が産まれた場所から然程離れて居ない中華街の裏路地で、お婆さんに餌を貰っている時に姿を現したのは制服にグラサン姿の若五条で、その格好から推測するに今は懐玉・玉折編辺りの時代らしい。

 

 五条悟と夜蛾正道という、呪術廻戦全体を通して見ても善人寄りの人間が保護しに来てくれたのを見て、俺は賭けに勝ったと確信した。

 

 呪術を一般人から秘匿する為に使われる帳を下ろす事無く、見掛けた呪霊を片っ端から祓い、呪霊に襲われ怪我をした人間を反転術式で治療する……コレは作中に言われて居た呪術規定を思いっきり破るモノだ。

 

 一応は人助けだし、この身が人間ならば未登録術師がちょっとイキった程度で、即座に秘匿死刑にされる所までは行かないだろうがなんせ猫の身だ、下手な術師に見つかれば呪霊扱いで即座に祓われていた可能性は十分にある。

 

 ヤベー呪詛師に見つかれば、反転術式のアウトプット──それもかなり強力な──を目当てに無理やり捕獲されるのも目に見えていた。

 

 まぁ生得術式の関係で自身への反転術式は殆ど呪力を消費せずに行う事は出来るし、残機をストック出来る術式の関係上、真っ当な術師相手なら1回殺された上で、復活位置を調整して逃げる事は十分に可能だと思う。

 

 呪詛師が相手ならば『自殺の縛り』で呪力を強化し暴走させて自爆すりゃ、こっちは命のストックを一個消費するだけで、相手が人間なら原作に出てきた四人の特級術師相当の手練れでも無い限りは仕留める事は出来る筈だ。

 

 原作で冥冥と言う呪術師が黒鳥操術で操ったカラスに『自殺の縛りを押し付ける』事で特級呪霊にも痛手を与える事が出来る神風(バードストライク)と言う技を使っていたが、押し付けられた自殺ですらソレなのだから自発的なソレならば十分な威力が出ると思う。

 

 ……まぁ今の所は特級クラスとは遭遇していないので未だソレは試しては居ないけどな。

 

 ちなみに俺が産まれたのは前世でアメフト観戦の為に何度か来た事のある横浜スタジアムから少し離れた住宅街だった。

 

 あの家から然程離れていない場所の駅に見覚えがあったので、電車にタダ乗りして石川町駅まで移動し、そこから中華街へと拠点を移す事にした。

 

 横浜中華街は飲食店が多数軒を連ねる観光地なので、残飯漁りで食事を得るには効率が良い場所だと考えたのだ。

 

 そこで『むやみにゴミ袋を破かれ残飯漁りをされるくらいなら、最初から野良猫に餌をやったほうが良い』等という前世のNPO職員的にはアウトな理由で餌やりをして居る、餌やりお婆さんと遭遇出来たのは想定外だったがね。

 

 そんな訳で中華街を縄張りとする他の野良猫達に混ざって餌を貰いつつ、昼間はそこらの路地裏で寝て夜には呪霊を祓う日々を凡そ一ヶ月程続けた訳だ。

 

 偶に術師と思わしき人間が呪霊と戦っている所に乱入して祓ったりもしたので、そうそう遠からず高専か総監部の手の者から接触があるとは思ったが、本格的に接触してきたのが五条悟と夜蛾正道だったのは本当に運が良かった。

 

 ちなみに野良猫の縄張り争いの様なモノにはあまり巻き込まれる事はなかったのは、恐らく俺が持つ呪力を気性の荒い他の野良猫達も本能的に感じ取り、手を出したらヤバいと判断してたからだと思う。

 

「失礼、お婆さん、わたくし達は野良猫の保護活動をしているNPO法人の者で、野良猫が無秩序に増えるのを止める為に、猫を一度保護し去勢してから改めて地域猫として元いた場所に戻すと言う活動を行っております」

 

 何時もの様に婆さんから餌──キャットフードの様な上等なモノでは無く、背後にある店から出るクズ肉や野菜クズと多少のご飯を混ぜたモノ──を食っていると、極々普通のビジネススーツに身を包んだ夜蛾と、青い繋ぎの作業服を着た五条が現れたのだ。

 

 ちなみに五条が手に持ってるのは夏休みに小学生が虫取りに使う様な網だけだ、ぶっちゃけ原作を知らず保護猫活動家としての視点だけで言うなら、猫の捕獲舐めんな! とブチ切れたいが……まぁ五条悟だしなぁ。

 

「猫にとって野良での生活は過酷です、どうしても人との生活が難しい様な子は兎も角、人馴れした子は人間と暮らした方が間違いなく良い生活が出来ます。この中の何頭かは一般家庭へ譲渡する事もあるでしょうが……ご理解頂けませんか?」

 

 ぶっちゃけくっそ強面でマッシブな夜蛾がスーツを着て来ると、保護猫活動家では無くヤ◯ザにしか見えない。

 

「別にアタシが飼ってる訳じゃぁ無いよ、腹減らしたままで残飯漁りでゴミ散らかされちゃたまったもんじゃないからね。残飯を食える様にしてくれてやるだけで少しでも散らかされない様にしてるだけさね」

 

 気圧された様な様子も無く蓮っ葉にそう返す婆さんだったが、確かに材料は店では出せない様な端材ばかりだろうが、塩を全く使わず出汁だけで味を付けた餌は猫の健康に配慮した物で間違いないだろう。

 

 保護猫喫茶を開く際に手作り系の猫おやつに関する書籍なんかを読み漁り、実際にソレを作り自分でも食って確かめた事があるのでまず間違いない。

 

 まぁこの婆さん自身が作っているのか、店の料理人で猫好きの者が作っているのかは分からないが、少なくとも婆さん自身も猫が嫌いと言う事は無いだろう。

 

「幸いどの子もお婆さんのお掛けで割と人馴れして居る様ですから、きっと多くの子に貰い手が付くでしょう。ですが全ての猫に貰い手が付くわけではなく何頭かはここに戻す事もお許し願いたい」

 

 呪術高専として俺を保護する為のカバーストーリーだとは思うが、作中最大の善人でありあのパンダの生みの親で可愛らしいと言って間違い無い呪骸の作り手である夜蛾の事だ、俺以外の猫達も無碍にする様な事は無いと思う。

 

 なんなら割と強権を行使出来る高専の事だ、本当に保護猫活動をして居るNPOとしっかり渡りを付けた上での行動の可能性もある。

 

「はーい、可愛い猫ちゃん達はしまっちゃおうねー」

 

「ぎゃにゃにゃー! ふしゃー!」

 

 なんて言う不穏な言葉を吐きながら五条が虫取り網を一回降る度にその場に居た野良猫が一匹網の中へと捕まって行く。

 

 どんな原理か知らんが猫が逃げる方行を先読みして網を降って捕まえている様で、網からハードキャリーケースへ移すのも殆ど流れ作業の様に熟していた。

 

 アレ多分無下限呪術で発生させた無限を利用して猫を拘束しながら網からケースに移してるな、前世(まえ)に野良猫を保護する現場には何度も行った事が有るが、多少人馴れしてるとしても猫をケースに入れると言うのは中々の難作業なのだ。

 

 そもそもとしての話だが人間と言うのは道具を使う事に特化した生き物で、身体能力や感覚器官等を総合的に見れば犬や猫よりも弱い部類の生き物である。

 

 なので普通の人間は野良猫を捕獲するならば長期間餌付けし、十分に油断した所を大き目のネットなどを使って捕獲するか、中型動物用の捕獲罠を使って捕えるモノで、あんな虫取り網一本でヒョイヒョイ捕まえれる様なモンじゃぁ無い。

 

 ソレをああも簡単にやれるとは……流石は原作最強の男、大抵の事は何でも出来ると明言されるだけは有る。

 

 まぁ、異能バトル漫画のキャラクターがそこらの野良猫に遅れを取る様じゃぁ話にならんと言えばソレまでだが。

 

「さーて、後はお前さんだけぞ……ってアレ? 逃げる素振りすら無し? え? もしかしてお前、この状況分かってる? えぇ……」

 

 他の野良猫達がケースに入れられ、本命である俺に五条が向かって来たのを見て、こちらは何もせずそのまま猫座りを維持すると、困惑した様な表情でそんな声を上げる。

 

「にゃー」

 

 原作でも見た事の無いその顔が面白かったので、俺は一声鳴いてから自分が詰め込まれる筈だったケースに自ら入ってやった。

 

「うわ、マジかよ……え? 猫が呪術使えるってだけでも厄ネタなのに、完全に知恵まで持ってるとかヤベー奴じゃん……」

 

 こうして俺は夜蛾と五条に捕獲され、他の猫達とは別送で呪術高専へと運ばれる事になり、ソコで五条から

 

「んじゃ今日からお前は俺の飼い猫ね、名前は……タマじゃぁありきたりだし、クロは見た目そのまんまでつまんねーし……んー、じゃぁポチだ! 猫のポチなら捻りも効いてて良いだろ」

 

 と、言う言葉と共に五条ポチという名を賜ったのだった。

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