畜生道に堕ちたと思ったら五条悟の飼い猫になった件 作:鳳飛鳥
幕間……呪いが産まれた場所
未確認飛行物体……所謂UFOの目撃談は世界中に存在している。
ここアメリカ空軍ネリス試験訓練場はその秘匿施設はUFOが発着する場所で、UFO所有する宇宙人との接触場所である……そんな陰謀論がまことしやかに囁かれている場所だ。
噂は所詮噂に過ぎずUFOなど存在しない、あるのは様々な手段で世界中から確保した
しかし無知は恐怖を呼び、恐怖と言う負の感情は吹き溜まれば実体を持った呪霊となる……日本の呪術界では常識とも言える事ではあるが、アメリカの科学者達はそんな当たり前すら知らない。
そしてここの設備の大半は内側の脅威を閉じ込める為に設計されており、外に直接湧いた呪霊には全く無力だった。
「サイキックパワー増大! クソ! 何が起きている!?」
「サイキッカーらしき者の姿はカメラでは確認出来ず! オルトマン軍曹! 現場では何が見える!?」
『UFOだ! エイリアンがUFOで攻めて来た! FU
突如襲来したUFOに翻弄される現場の下級軍人達がソレに向かって銃弾を放つが、丸でそこには何も居ないかの様にそれ等はただただ虚しく空を切る。
「UFOだ? こちらの映像には何も映って無いぞ? どう言う事だ? サイキッカーに依る集団催眠かなにかか?」
「いえ、恐らくは
「な!? 正気かミズ・イタドリ! 奴らは我々の制御下に無い! どう考えても危険しか無い!」
「でもこのままじゃぁどうせ外に湧いた
「……そうだな、我々とデータさえ残れば研究は再開出来る。総員必要なデータのバックアップと脱出の準備だ! その後、被験者共を外の
イタドリと呼ばれた額に縫い目の有る女の言葉に、この研究施設の責任者は、アジア人如きに従うのは癪だが……と一瞬考えるが、一理あると判断し撤収準備の指示を出す。
「データは29パームズの第二研究所に送れ、無論クリティカルな情報はオンラインを通さずSSDごと直接持って行け! 必ず複数のバックアップを用意しろ! 準備が出来次第避難用のジェットで29パームズへ向かえ!」
施設外では未だに下級軍人達が呪霊に蹂躙されているが、その被害さえも大事な実験データを持ち出す為には必要な犠牲だと考えている辺り、やはりこの司令官も呪術師と別ベクトルで狂っている。
「「「「サーイエッサー!」」」
そしてその言葉に素直に従い撤収準備を始めるエリートに分類される軍人と科学者達も同様に狂った存在だろう。
外に出現している呪霊は間違いなく日本の基準ならば特級相当の呪霊であり、今この研究所にいる被験者達では祓う事が出来たとしても多大な被害を出すのは間違いない。
「ミズ・イタドリ! 何をしている! 貴様もさっさと撤収の準備をしないか! 巻き込まれて死にたいのか!?」
正直に言えば主の教えに跪かないアジアの猿が一匹死んだ所で、何ら心痛を覚える様な事は無いが、研究者としての彼女の実績は次の研究施設でも必要な人材だと確信しているが故に、信条を曲げて彼女に避難の指示を出す。
「ああ、私は自力で脱出するから大丈夫よ。被検体達に多少の手解きをしてあげないと……
……待て、今この女は何を言った? 被検体達に手解きをする? まさか
「待てミズ・イタドリ……君はただの
ここに呪術の心得がある猫が居たならば恐らく『君の様な感の良い軍人はキライだよ』とでも言ったかもしれない……しかしイタドリと呼ばれた女は何も答えず軽く微笑むだけだ。
「ちぃ! そうと分かっていれば貴様自身を検体して色々な研究が出来ただろうに! いや、貴様まさかジャップのスパイか!?」
懐から拳銃を取り出し問答無用で弾が切れるまで発砲する、手を伸ばせば届く程の距離だ、狙いは当然の事ながら顔面である。
しかしその銃弾は彼女に届くことは無い、銃弾の軌道上にあるとある一点に丸で高重力の惑星でもあるかの様に吸い寄せられ、一瞬の後全ての弾丸が地面へと落ちたのだ。
「お生憎様、私は日本政府とも自衛隊とも関係無いわ。日本の呪術界ともつい先日縁が切れてますから、今の私はここ以外に縛られる物は何も無いただのフリーランスの研究者ですよ」
護身用の小口径の拳銃とは言え、こうも簡単に銃弾を無効化されたならば、自身が想定する超能力者軍団が完成すればアメリカの覇権はより強固なモノとなるだろう。
なんなら実力で愚民どもを黙らせ、自身が大統領としてステイツを掌握し、未だステイツに敵意を向け続けている共産主義者共に目にもの見せてやるのも素晴らしい。
「っち! 嘘は無いな? 仕方が無い、研究者としての貴様が有用なのは既に証明されている。自力で脱出すると言うならばコレを持って29パームズまで来い。来なければ貴様はやはりスパイだったとして全世界に手配を回すからな!」
恐らくは軍隊内で使われる身分証の様なモノなのだろう、パスポートにも良く似た手帳を一冊、軍人は彼女に投げ渡す。
「天下の米軍から軍事機密を盗み出したスパイとも成れば、一体幾らの懸賞金が掛けられるのかしらね? まぁCIAと追いかけっこがしたい訳じゃぁ無いから、ここが片付いたら直ぐに向かうわ。貴方達と違って陸路だから多少時間は掛かるでしょうけれど」
クスクスと笑いながらそう言う彼女に、軍人は今更ながらに自分が研究しているモノが、本当に触れて良いモノなのか一瞬恐怖を抱くが、野心に酔った彼の脳は都合良くソレをあっという間に棚上げしてしまう。
「大佐! 撤収準備が整いました!」
イタドリと呼ばれた女性から視線を外し、敬礼し彼へと報告を上げる軍人に目をやると
「よし、順次撤収せよ! 被検体はミズ・イタドリが面倒を見てくれるそうだ! 貴様らは無事に29パームズへ辿り着く事だけを考えろ!」
「「「サーイエッサー!」」」
荷物を背負いバタバタと駆け出して行く軍人と研究者達、残るのは大佐と呼ばれた軍人とイタドリと呼ばれた女性だけだ。
「では後は任せる。必ず29パームズに来い。大口を叩いた以上は絶対にくたばるなよ!」
たった今自分の手で殺そうとした相手に向けてくたばるなとは……イタドリと呼ばれた女は腹の底から湧き出る笑いを噛み殺しながら、外部から伝わる破壊音に怯える被験者……
「安心しなさいチカラを持った子どもたち、貴方達が協力すれば決して負けないわ。貴方達のチカラで自由を手に入れなさい。弱いモノは強いモノに食われるのがこの世の定め、弱いままでは何も守れない……けれども貴方達にはチカラがあるのよ」
戸惑い、困惑、疑念……当然だろう、彼女は今日まで自分達をモルモットかなにかの様に扱って来た科学者達の側の存在だ。
自由を手に入れろと言われてもそれ自体が罠の可能性もある。
何ならココを出ようとした時点で、銃弾の雨霰であっという間に蜂の巣にされる可能性だってあるのだ。
「貴方達のチカラは銃如きに負けはしない、流石に核ミサイルとかだと厳しいけれども、少なくとも普通の軍人が持てる程度の武器には負けないチカラがあるわ……時間がないから駆け足だけれども、その使い方を教えて上げるわ」
施設の外に現れたUFO型の呪霊はその場に居る軍人達を追い回し、一人ひとりなぶり殺しにするのが楽しいのか、まだこちらの施設まで被害が出る状況では無い。
「さぁ貴方達が本来持っている
ココに居る者達の術式は決して悪いモノでは無いが、科学のチカラで底上げされた呪力を鑑みても、特級であろうUFO呪霊を祓うまでにどれほどの被害が出るかは分からない。
もしかしたら誰一人残らず呪霊に呪い殺される可能性もある。
そうなった時にはあの軍人に周辺に被害を出さない為と言った手前、仕方が無いから自らの手で祓ってやろう。
けれども数多く居る被検体の中で数人ではあるがアレを祓い切る可能性が有りそうなモノは居るのだ。
コレも人間の持つ可能性を試す絶好の機会だ、ソレをアリーナ席で見届けるチャンスを捨てた彼奴等は研究者としての覚悟が足りて無い。
そんなことを考えつつ彼女は研究施設に残された冷蔵庫から缶ビールを取り出しながら、未だ卵でしか無い