畜生道に堕ちたと思ったら五条悟の飼い猫になった件   作:鳳飛鳥

66 / 67
警察と高専の情報交換

 呪詛師達が利用する懸賞金登録サイト、ソレは通常のブラウザではアクセス出来ず、専用のソフトが入ったパソコンでしか閲覧出来ない所謂『ダークウェブ』上に存在するホームページだ。

 

 ……ちなみに呪術師達が使う高専からの通達やお知らせ、それから呪詛師の情報何かを閲覧出来るサイトも専用のブラウザで無ければアクセス出来ないダークウェブ上のサイトである。

 

 例の墜落死しかけていた呪詛師はソコで見た賞金首と、偶々あの近くで遭遇しその首にかけらた懸賞金を得る為にその人物を殺めようとしたと言う。

 

 しかし相手は空を飛ぶ術式を持っている上に、空中戦を強制する様な結界術まで使い抵抗し、結果返り討ちに合って上空から落下し地面へと叩き付けられる羽目になったのだそうだ。

 

 対象はエミリオ・ミハイロフと言うロシア出身の推定14歳の少年で、ウラジオストク近郊の町を一つ消し飛ばした犯人として、ロシア政府からその首に日本円にして約3000万と言う奇しくも天内少女に掛けられていたのと同等の額面が掛けられていた。

 

 どう言う経緯で町を滅ぼしたのかなんかの詳細は、残念ながら呪術総監部も掴んでおらず、情報として記載された日時にその場所で大規模な呪術的災害が発生したと言う事実だけは記録されている。

 

 海外での呪術的災害は多くの場合、現地へと入った呪詛師に依るモノが大半を占めるが、極めて稀なケースではあるが特級呪霊が出現し多くの被害を出す場合も有る為、現地政府からの要請が無くと高専の呪術師が海外出張任務として確認に赴くのだ。

 

 結果、残穢の性質などから特級呪霊の発生では無く未登録の呪詛師案件と言う事に成っていたが、まさかロシア政府が呪詛師達に向けて懸賞金を掛ける様な真似をしているとは総監部の誰も考えていなかったらしい。

 

 懸賞金は全てがロシア国民の血税と言う訳では無く、被害者遺族達の出した金銭等なども総合計して約3000万円だ。

 

 その少年を狙った呪詛師は彼を呪詛師だと言っていたが、日本国内で呪術を使って犯罪を犯した訳では無い為、総監部の認識としては呪詛師では無く飽く迄も『未登録の未成年呪術師』である。

 

 呪術総監部の行う呪詛師認定は──原作での恣意的なモノは別として──明確に一つのルールに縛られている、ソレは『日本国内で呪術を用いて犯罪を行ったか否か』だ。

 

 そもそもとして呪術総監部は建前としては日本政府の管轄下にある日本政府内の組織である──その本質は御三家を始めとした古参呪術家系の既得権益だとしても──飽く迄もその権限は日本国内の問題に留まる。

 

 諸外国の呪術的災害に対して自主的に人員を派遣し特級呪霊案件か否かを確かめるのは、その特級呪霊が多くの憎しみや悲しみを糧にさらなる力を付けて日本へと上陸する可能性を少しでも減らす為で、該当地域政府の要請も無しにその国の為に命を張る理由は無い。

 

 故に国外出張で現地を訪れた呪術師が『未登録呪詛師の犯行』と結論付けた場合には、その人員は追跡などは何もせず素直に帰国の途に就く事になる訳だ。

 

 兎角、今回の事件は『懸賞金に目が眩んだ呪詛師が未登録の未成年呪術師(建前上は一般人)を襲って返り討ちに合い、無様な遺体を公衆の面前に晒した』と結論付けられた。

 

 寧ろ可能ならばそのエミリオなる少年を勧誘し、来年度から高専の生徒に! と言う過激な意見すら出ていると言う。

 

 この当時は未だ『強きソ連よ再び!』と言う様な強権的で強引な政治を行う人物が大統領の座には付いては居ないが、ソレでも多少なりとも国家予算から出された懸賞金の掛かった賞金首を高専所属の呪術師とするのは、国際問題にも成りかねない危険な手である。

 

 故に今回の一件は飽く迄も『呪術師として正当防衛の範疇』としてお咎め無し、今後彼が明確な呪術規定違反を犯す様ならば改めて呪詛師認定を下すかの裁定を行う……と言う所で決着したそうだ。

 

「……以上が総監部としての公式見解であり、今回の事件に関しての処理となるそうだ。なお今年度末までに件の少年が呪詛師に掛かっていた懸賞金を受け取りに来なかった場合、警視庁を通して捜査0係の皆さんに特別賞与と言う形で還元されるそうだ」

 

 翌日、高専と総監部の決定を持って捜査0係を訪れた俺は、彼等にも許された範囲で情報共有を行っていた。

 

 今まで捜査0係は総監部の要請で動く事は有れど、事件のその後や背景情報等が共有される事は無かったらしい。

 

 つーか、総監部も高専も俺が表向き捜査0係所属の警察猫だと言う事を利用し、丁度良いから連絡係にしよう……としている節がある。

 

 夜蛾学長としては学長の席に座る以前から、捜査0係に対してはある程度の情報共有を行うべきだと思ってはいたのだが、当時の学長の手前勝手な真似をする事も出来ず、生徒の為と言う建前も使えない事から半ば諦めていたらしい。

 

 しかし今現在は俺と言うある意味『両属』に近い立場の者がいるのだから便利に使ってしまおうと言う感じの様だ。

 

 ちなみに上記した特別賞与は飽く迄も捜査0係の刑事さん達へのモノで、俺に対する分配は無い。

 

 まぁ俺は普段の任務で彼等とは比べ物にならん程の報酬を得ているから、こう言う時の特別賞与から俺へ分配したりすれば、彼等の士気が下がる可能性もあるし文句は無いがね。

 

「あ、そーだ。こっちからもちょっと報告上げとく内容が有ったんだわ。一応は管轄外の情報なんだけどね、シャフト・エンタープライズが去年から外国人社員を世界中から入れてるみたいなのよ。んでほら有ったでしょ盤星教! あの本部買っちゃったのよね」

 

 盤星教 時の器の会……天内少女の暗殺を企んだ宗教組織だが、身元不明の少女をリンチで殺害したと言う表向きの事件で最高指導者を含めた幹部と、本部に居た多数の信者が逮捕された。

 

 ソレだけならば未だしも本来ならば有った筈だと言う教団の財産を、ごそっと幹部達が使い込んでいたと言う疑惑も発覚し、宗教法人としては半ば崩壊したと言っても間違いない状況だったと言う。

 

 都内に有ったその本部が競売に掛けられ、ソレを買い取ったのがシャフト・エンタープライズ・ジャパンだったのだ。

 

「ゲームメーカーは宗教団体の本部を買い取るメリットが分かんないのよねー。まぁ一等地とは言い難いけど中々に交通の便は良い立地だったし、あの建物でゲーム開発しますって言われても、エキセントリックなゲーム会社だからなぁ……で済んじゃいそうだわね」

 

 にやりと笑いながら、そう言う後藤警部補。

 

「でもまぁ今の段階では何の違法性も無い不確定情報でしか無いのよね警察としては、ただ総監部はシャフト・エンタープライズを監視対象企業として見れるんでしょ? じゃぁ一応情報共有って事で上にあげておいてね」

 

 情報ソースは捜査0係の面々では無く、警視庁内にいる後藤警部補と仲の良い同僚達だと言う。

 

「それと、禪院……いや今は伏黒だっけ? 『伝説のカモ』とか『奴と同じ馬券は買うな』とか言われてた彼、最近けっこうな勢いで馬券当ててるみたいなのよ。おじさんなーんか悪い予感がするんだよねー。まぁ競艇や競輪なんかは何時も通りみたいだけれど」

 

 実は伏黒甚爾は公営ギャンブル界隈では割と有名人で、馬鹿みたいな金額を突っ込んでは外して、当たり券の配当を増やしてくれる上に彼が買っている目はかなりの確率で外れる為、消し目がわかり易くなる……とボーナスキャラ扱いなのだと言う。

 

 しかも彼は無意識なのか勝馬投票券なんかを買う際に、自分の買い目をブツブツと呟くクセがあるそうで、会場で彼を見かけたら取り敢えず彼の買い目を回避する……と言うのが公営ギャンブルファンの間では定着していたそうだ。

 

 けれどもココ数年は奥さんと思わしき女性と子ども2人を連れて競馬場へと現れ、結構な確率で馬券を当てる様に成っていると言う。

 

「……そうか、馬券か! 考えてみたら俺も高専を卒業したんだからそっち方面の遊びに手を出す事も出来るのか!?」

 

 そんな後藤警部補の言葉を聞いて俺は、明後日の方向から頭を殴られた様な衝撃を受けた。

 

 法的人格を持つ動物はその実年齢に拘らず、成人した一人の人間と同等の権利と義務を有する、つまり名目上は学生だった頃は兎も角、今現在は立派な社会猫な訳で馬券を買うのも合法と言う事になる。

 

 前世でも競馬、競輪、競艇と言った公営ギャンブルにはそこそこの頻度で金を使っていたが、飽く迄も月々の小遣い銭の中から使い、偶に当てては多少増えた小遣いで次の勝負を挑むと言う様なサイクルだった。

 

「猫のクセに博打を打つのか貴様! 辞めておけ、ろくな大人にならんぞ!」

 

 ソレに反発するのは、自身を模範的なお巡りさんだと思っているであろう警視庁二大問題お巡りさんの一人である大田巡査長だ。

 

「いや、猫の5歳ならもうとっくに成猫だろ? ただ同じ博打なら公営よりもパチンコの方が儲かる確率は高いって聞くぜ? まぁどっちにせよ博打なんざぁ胴元が一番儲かる様に出来てんだ。遊ぶなら買い切りのゲームの方が賢いってもんだぜ」

 

 対して利回り効率で言うならば公営よりもパチンコの方が上だと言う篠原巡査、彼はギャンブルをするくらいならばその時間でコンシューマゲームやPCゲームをやりたい派らしい。

 

「まぁ元盤星教の箱とか曰く付きの建物を、総監部の監視対象であるシャフトが買ったってのは、なんか意味深な理由が有りそうだし、ちゃんと夜蛾学長に伝えておいてね。んじゃそろそろ定時だし俺は新橋辺りの赤ちょうちんで一杯引っ掛けて帰るわ」

 

 じゃぁねぇ~と軽い調子で後ろ手で手を振り捜査0係室を後にする後藤警部補。

 

「後藤さんってさ、大田さんより幾つか上だよな? まだ独身なのかね?」

 

「いや、お前達が配属される前に聞いた話だが、前の部署に居た頃には奥さん居たらしいぞ……ただ呪詛師に殺されたそうだから、その辺の話はあんまりほじくるな」

 

 好奇心でそんな言葉を口にした篠原巡査に、普段は少し違う静かな物言いでそんな言葉を返す大田巡査長。

 

「俺やお前の様に、身内に何の被害も無くココに来ている者の方が珍しいんだ。大半は呪霊や呪詛師に身内を害された経験が有る者ばかりだ。有る意味で疵物(キズモノ)の吹き溜まりなんだよ捜査0係(ここ)は」

 

 そう言う大田巡査長も、血縁と言う意味での身内に被害者は居ないが、機動隊時代の同僚が呪詛師の被害には遭っていると言う。

 

「……被害、なくなると良いっすね」

 

「其の為には呪術師の皆さんに頑張って貰える様に俺達がしっかり後ろを支える必要があるんだ……と、よし定時だ! 一応緊急出動が無いとは限らんからな、飲むなとは言わんが動けなく成る程飲む様な真似はするなよ? じゃぁな」

 

「うし、お疲れ様でした!」

 

 こうして今日も一日、比較的平和な時間を過ごし、俺はタクシーを拾って御主人が借りているペット同居OKなマンションへと帰るのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。