畜生道に堕ちたと思ったら五条悟の飼い猫になった件 作:鳳飛鳥
法学部は文系学部の中では比較的忙しい部類だと言われている。
別段出なければならない講義が多いとか、進級に必要な単位が他の学部と比較して多いとかそう言う訳では無い。
では何故忙しいのか……法学部生は期末試験の点数だけが全てであり、更に言うならば司法試験予備試験を在学中に合格しようと思えば、並大抵の学習では追いつかない位に覚えなければならない事が多々あるからだ。
故に講義と講義の間が開くならばその時間を利用し大学構内の図書館で自主勉強し、そもそも講義が無い日には自宅学習を余儀なくされる。
……ソレでも今年大学受験を控えた彼女の家庭教師を定期的にする程度の余暇は作っている──3年間途切れずアタックを受け続けた結果無事彼の理性は陥落していた。
今日も午後の講義を終えた後は天内理子が暮らしている葛城一級術師の家へとお邪魔して、彼女の家庭教師をする予定である。
そんな訳で電車を乗り継ぎ葛城邸へと向かっていたのだが、都庁近くの空で本来ならばあって行けないモノを目撃してしまった……影高野の呪術師達が呪詛師と戦う為に張る結界だ。
それは相棒である五条も使えるし、何なら自分も張る事が出来るので、見間違う事はまずあり得ない。
しかし影高野の連中は例え呪詛師を補足しても決して人目に付く場所、時間帯にソレを仕掛ける事は無い、彼等は総監部の定めた呪術規定の『呪術の秘匿』を遵守するからだ。
にも拘らず、未だ日も落ちきらぬ時間帯に東京都庁の目の前と言う、多くの人間が居る場所でソレを張って戦う者が居ると言うのは明らかな異常事態である。
夏油は電車が次の駅に着くとソコが目的の駅では無い事を承知で途中下車し、走り出しながら携帯電話を取り出す。
「もしもし理子ちゃん? ごめん、緊急の任務が入った。今日はちょっと行けそうにない。うん、必ず埋め合わせはするよ、じゃぁ急ぐから」
特級術師に持ち込まれる緊急案件は、放置すれば下手をしなくても大災害級の被害が出る事態だと天内も理解している為、ワガママを言う事無くただ『気を付けて、無事に帰って来てね』という言葉だけで了承を得る。
足早に改札を抜け、直ぐにイケダと呼ばれる元痴漢呪詛師の呪霊と虹龍と呼ばれる白い東洋龍型の呪霊を呼び出すと、イケダの認識阻害術式を纏い虹龍に乗って空へと舞い上がった。
一直線に目指すのは当然ながら都庁側、2つの展望台の間に展開された結界だ。
近づくにつれて中にで戦う者達の姿がはっきりと見えてくる、光の翼を背に生やした14,5歳位の少年と、身体の各所に金属質の部品が埋め込まれている様に見える大柄な黒人男性である。
「ろ……ロケットパンチ!? ポチさんじゃないんだぞ?」
黒人男性が放った手首から先を切り離し打ち出した拳を見て、夏油は思わずそんな声を上げた。
恐らくは術式に依るモノなのだろう……と思ったが、拳と腕の間にはワイヤーらしきモノが見える事からアレは呪術的な攻撃では無く、機械的な構造で放ったモノと理解出来る。
更に黒人男性は腕に仕込まれていた
対する光の翼の少年も何の抵抗もしないと言う訳では無く、光を弓矢の様にして撃ち出したり、ロケットパンチをバリア状に展開した結界で弾いたりしてる。
物理障壁にもなる様な結界が張られているからこそ、流れ弾で周囲に被害は出ていないが、万が一にも結界の許容量を超える様な攻撃をどちらかが繰り出せば、一大観光地である東京都庁展望台の直ぐ側だ、大惨事は免れない。
そう判断した夏油は結界へと接触し内部に入り、2人の間に割って入る事が出来ないかと試みる。
内部からの攻撃に対しては物理障壁として機能するらしい結界だったが、外からの干渉は自由な様ですんなりと中へと入る事が出来た。
しかしソレと同時に『HERE COMES A NEW CHALLENGER!』と言う声が何処かから響き渡り、翼の少年が結界から弾き出されてしまう。
このままではあの少年が呪術の秘匿違反で呪詛師と成ってしまう! と一瞬慌てるが、彼は外へと飛び出すと同時に素早く結界術を発動していたので恐らく大丈夫だろう。
どうやら彼の背中の翼は伊達では無く、飛行能力が有る様でそのまま結界を纏い飛び去っていく。
「……
日本語と英語が同時に発声される奇妙な発音で、そう言う黒人男性。
「自分はアメリカ空軍所属、ゲイツ・オルトマン軍曹である。秘匿任務の為、対象と戦闘行動を行っていた。貴国の主権範囲で戦闘を行ったのは申し訳無いが、アレは我が国からの脱走兵の様なモノでしてな。次回が有れば邪魔をしないで頂きたい」
流暢な日本語でそう言うゲイツ軍曹、未だ結界が崩れていない所を見るに、この戦闘結界は彼が張っているモノなのだろう。
だがその割には彼自身から呪力は殆ど感じられない、どうやら彼の身体の各所に取り付けられた機械部品の中に呪具、或いは呪物が封入されているらしく、ソレを使った外付けの呪術師モドキと言った存在の様である。
「貴方の仰る通り私は日本呪術総監部所属、特級術師夏油傑だ。日本には呪術規定と呼ばれる術者を縛る法がある。貴方が米軍の所属だとしても日本国内でソレを犯せば呪詛師として討伐対象になる事もある。貴方の任務とやらは日本政府もご承知で?」
幾ら同盟国とは言え……逆に同盟国だからこそ、他国の主権範囲内で軍事行動を行うなんてのは以ての外だ。
在日米軍だってほぼ全ての訓練行動に付いてスケジュールは、日本政府や自衛隊との共有が行われている。
「自分のセキュリティ・クリアランスには、そこまでの権限は与えられていない。現在は在日アメリカ軍の指示で脱走兵の捕縛任務を行っていると言うのが現状だ。コレ以上の事は自分の権限では話す事が出来ない。情報が必要ならば政府を通して軍に問い合わせを」
そう言い返すゲイツ軍曹の言葉に夏油は思わずため息を吐く、軍事の知識には余り明るく無いが軍曹と言うのは決してそんなに高い立場では無かったと言う程度の事は知っていた。
恐らくは本当に彼は指示された任務を熟すだけの立場であり、これ以上の情報を口外する権限を持たないのだろう。
「取り敢えずはそちらとしては、私と戦闘を行う意思は無いと言う判断で間違いないですか?」
「肯定する、自分が戦うのは飽く迄も軍から逃げ出した個体だけだ。但しそちらが実力行使でこちらを排除しようとする場合にはその限りでは無い」
つまり呪詛師認定して呪術師をけしかけたならば、それ等を排除する為の戦闘は行うと言う事である。
「貴方には貴方の任務があるとしても、ここは日本であり日本には日本の法と規定がある。ソレに抵触する様なやり方は出来れば避けてほしいモノですね」
「自分個人としては善処するとしか言えない。正式に政府を通して軍に抗議して貰いたい。ソレで作戦規定が変われば、自分としてもソレに合わせて行動するだけだ」
「貴方が個人の意思で任務上の規定を変更出来ない事は理解しました。では正式な抗議を入れさせてもらうとしましょう。彼を追うとしてもそのゴツい機械の身体は日本では目立ち過ぎますのでご注意を」
「問題無い、この身体には幾つもの対サイキッカー用の機構が組み込まれている。その中には一般人に対する認識阻害を行う機能も含まれている……これ以上は軍事機密に当たるので発言を差し控えさせてもらう……失礼通信だ……了解した一度帰投する」
そう言うとゲイツ軍曹は、身を翻し背中に取り付けられたバーニアらしき機械を吹かし結構な速度でその場を離脱していく。
方角的に考えて恐らくは横田飛行場へと向かうのだろう、一応は人間の身体の範疇に留まる大きさでそれほどの燃料を搭載出来るとは思えないのだが、恐らくはその身に取り付けられた呪具が何等かの作用でソレを助けているのだと思われる。
「にしても……米軍が呪術を用いたサイボーグを開発していたとは……コレは早急に上に報告を上げなきゃ行けない案件だね」
呪術を用いた戦闘への介入と言う意味では比較的穏便に済んだと言えるが、この後に残る報告書の作成を考えると少し頭が痛いと思いながら、夏油は自宅マンションへと向けて虹龍を飛ばすのだった。
筆者は英語が苦手です、英文はGoogle翻訳を使った適当なモノなので文法等の間違いはご容赦下さい