畜生道に堕ちたと思ったら五条悟の飼い猫になった件   作:鳳飛鳥

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猫と呪術師、新生活に向けてのすり合わせ

「え!? 仏様も地獄も実在してるのマジで!?」

 

 五条の……いや俺も今は既に五条ポチとなったのだから、彼の事は悟、もしくは御主人とでも呼ぶべきだろう。

 

 俺が人に近しい知恵を持つと判断した御主人は、寮の部屋へとキャリーケースを持ち込むと、まずは人間の言葉が通じているのかを確かめる為か色々と質問を投げかけて来た。

 

 本当に人間の言葉が分かっているのか、はいなら1回、いいえなら2回鳴き声を上げろ……と言う知的な異種族との交流を描いた漫画や小説でよく見る手法を試みた訳だ。

 

 本当に俺の言ってる事分かってる? にゃー。 人間と敵対する気は無い? にゃー。 俺の飼い猫になる事に文句は無い? にゃー。 野良生活に戻りたい? にゃーにゃー。これからも呪霊を狩る任務やってくれる? にゃー。 餌は自活でいい? にゃーにゃー。

 

 最後質問に対するノーは割と食い気味&絶叫に近い否定の声を上げたのは、仕方の無い事だと思いたい。

 

 都内でも山奥に有ると設定されている高専の敷地内ならば獲物はいくらでも居るのだろうが、人間の味覚を保ったままで血抜きもされてない生肉はノーセンキューなのだ。

 

 あの婆さんから貰ってた餌まで行くと贅沢かもしれないが、せめてちょっとお高めのカリカリと猫缶くらいは欲しい、前世(まえ)に試しに味見をした事が有るのだが、キャットフードの類は人間の味覚でも割と食えるモノだったりする……塩気は足りないが。

 

「で、ぶっちゃけさ、お前……何者?」

 

 そんな質疑応答を繰り返し、俺に知能が有ると確信した御主人は唐突にそんな質問を投げかけて来た。

 

 当然YESNOで答えられない質問なので、どう返答するか少し迷ったが、机の上に置きっぱなしになった俺からすると昔懐かしいガラケーを見つけソレに飛び掛かる。

 

「あ、ちょ! ソレ未だ買ったばかり……って……えぇ……マジかよ?」

 

 メモ帳を開き、ボタン入力でポチポチと文章を打ち込んでいくと、御主人はドン引きと絶望に興味を一匙加えた様な、なんとも言えない表情でそんな声を漏らす。

 

『自分は天寿を真っ当した元人間で、生前の罪を贖う為に阿弥陀如来の計らいで畜生道へと堕ちた者です。呪術やら術式やらはもしかしたら阿弥陀様の思し召しかもしれないが、偶然の可能性も十分有ると思われます』

 

 この文章に対する反応が冒頭に記した御主人のセリフである。

 

「畜生道に堕ちる罪かぁ……何やらかしたのかは聞かないけど、阿弥陀如来の計らいってのと今生でのお前の行動を見る限り、まぁ大体想像は付くよなー」

 

『呪術を使って呪霊を狩り人を救う事で徳を積み、阿弥陀様のブートキャンプに参加するのが今生での目標なので、任務は積極的に受けたいと思ってます』

 

 ガラケーだと文字の入力がどうしても遅くなるが、日本有数の金持ちである筈の五条家当主が持っているのがガラケーなんだから、恐らくスマホは未だ発売前か日本に上陸前なんだろう。

 

「んー、流石に猫が言った事を丸っと信じるのもなー……うし、一応は主従関係になる訳だし縛りを結ぶか。あ、縛りって分かるか? 呪力を使った約束、破れば割と重い(ばつ)いや(ばち)が当たるの方がお前的には通りが良いのか?」

 

 完全に俺の説明を鵜呑みにした訳では無いのだろうが、猫の言う事と鼻で笑う事無くそれなりに咀嚼しようとしてくれる態度には好感が持てる。

 

 ……つかこの時期の五条ってもっと切れたナイフの様な刺々しい奴だった気がするんだが、まぁ俺が居る時点で原作との差異は生まれるだろうし、バタフライエフェクトの類が起こっていても不思議は無いか。

 

 そんな事を考えながらも、にゃーと一声鳴いて縛りに関して理解して居る事を告げる。

 

「よし、俺はお前の飼い主として食餌と住処の面倒を見る、対してお前は俺の……俺が指示を出せない時には夜蛾センの指示に従い任務に当たり、無辜の人間を傷つけず嘘を吐かない……この縛りに同意にするなら一声鳴け、拒否なら二回鳴け」

 

 出された対価に対してこっちの縛りが重い様にも思えるが、コレは最初に重めの提案をしてNOと言わせ、後から譲歩した提案に見せかけた本来の落とし所を飲ませる『ドア・イン・ザ・フェイス』と呼ばれる交渉法を狙ってのモノだろうか? 

 

 ちゃんと拒否権を与えてる当たり、どちらかと言えば俺が縛りと言うモノを本当に理解しているのかを試している感じも有るな……当然ここはにゃーにゃーとニ回鳴いて拒否する。

 

「だよなー、ちゃんと理解してるならこっちが出す対価が少ないと分かるよな。んじゃ食餌と住処に加えてお前が熟した任務の報酬はちゃんとお前のモノとして、欲しいモノがあればソコから俺が買ってきてやる。五条家の当主をパシリに使えるんだぜ、贅沢だろ?」

 

 そこまで行けば高専に所属する普通の呪術師とほぼ同等の扱いと言えそうだし、今度は一声鳴いて縛りを受け入れた。

 

「うし、んじゃもう一回確認するが、お前が畜生道に堕ちた元人間っで死後に阿弥陀如来に会ったってのは事実なんだな?」

 

 嘘を吐かないと言う縛りをわざわざ結んだ上で改めてソレを聞くと言う事は、その部分に関して疑惑を持っていると言う事なのだろう。

 

「にゃー」

 

 一声鳴いて肯定すると、御主人は自身の名前の通り悟った様な笑み(アルカイック・スマイル)を浮かべ、

 

「呪詛師相手に地獄に堕ちろと言った事は何度か有るが、うん、地獄が実在して居ると分かるとなんか感慨深いモノがあるなぁ……つか呪術師も一般家庭出身の連中は兎も角、古い家系の連中は地獄まで行かずとも修羅道やら畜生道に堕ちてるのは多そうだなぁ」

 

 等と言う感想を口にした、どうやら御主人は六道輪廻に関して俺より詳しい知識を持っている様である。

 

「つか資料で見た限りだと領域展開の時の印相とか割と仏教に由来するモノが多いみたいだし、領域展開って実は御仏の加護込みだったりする? でもソレだと呪霊が領域展開出来るのは奇怪しいよなぁ……いや逆か? 呪術の方が先でソレが仏教に取り込まれた?」

 

 ぶつぶつと自分の思考にのめり込んでいる様子の御主人を放って置いて、携帯電話のボタンを押して次の文章を入力していく。

 

『お釈迦様も他の仏様も太古の術師なんじゃぁ無いか? というか仏教の仏様って大概はバラモン教の神様達だし、それらが呪術師だった可能性もあるんじゃない?』

 

 にゃーと一声鳴いて思考の海に沈んでいた御主人の気を引き携帯電話の画面を示す。

 

「あーソレは有るかもしんない、俺のご先祖様の菅原道真だって死後祀られて神様に成ってる訳だしなー、だとすると割と世界中の色んな神話に出てくる神々って古代の術師だったりしても可怪しくは無いわな」

 

 確か原作でも堕ちた土地神が呪霊化した存在なんてモノも居たが、その土地神信仰自体がその地に昔居た呪術師や、呪霊を祀る事で神に転化し被害を少しでも減らそうと言う試みだった可能性も有るだろう。

 

 日本の神道に限らず古代宗教の多くが自然現象──特に災害を神とし『祀るから祟らないください!』と言う感じのモノだった筈だ。

 

 となると一般人から見た呪術師だって呪術規定なんてモノで縛られなければ、災害の様なモノと見做されても何ら不思議は無い。

 

 実際、原作に出てきた呪詛師は呪術界最強の存在である御主人が産まれてから、ある程度大人しく身を潜める様になったと言う様な描写が有った……様な気がするが、コレは二次創作系の設定だっただろうか? 

 

 少なくとも呪術廻戦と言う作品の中で起こる呪霊被害以外の不幸は、殆ど全てがあのメロンパンの暗躍に依るモノだし、倫理に縛られない呪詛師が災害なのは間違いない。

 

「つか畜生道に堕ちるなんて事が有るなら、呪霊の発生源である呪力が人間のパンピーだけって方が無理有るんじゃね? でも畜生道に堕ちた人間が転生した動物から出る呪力はやっぱ人間由来って事になるのか?」

 

 色々と考えているウチに今度は鶏が先か卵が先かのパラドックスに陥った様だ。

 

「あー駄目だ、これ以上考えても色々とヤバい事しか思い浮かばねぇ。うし、切り替えて買い物行くぞ、お前の新生活に必要なモノ色々有るもんな、キャットフードとか猫トイレとか……ほら行くから携帯返せ」

 

 そう言って立ち上がる御主人様に俺は『トイレは人間用のを使うから猫砂は要らない』と打ち込んでから携帯を投げ渡すのだった。

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