畜生道に堕ちたと思ったら五条悟の飼い猫になった件 作:鳳飛鳥
2010年6月7日22:30……東京都新宿区信濃町駅上空。
「……面妖な呪具を身の内に組み込んだ異国人よ。如何なる理由で拙僧を結界に取り込んだ!?」
「任務遂行の邪魔になると判断した、貴様は日本政府指揮下のサイキッカーではない。排除を躊躇する理由は無い」
『Ready』
結界内に響き渡る両者共に聞き慣れた無機質な声。
「ふむ、なれば降りかかる火の粉は払わせて貰おう。安心せよ命までは取らぬ……まぁ真っ当に生きている様には見えんがな!」
「戦闘モード起動、未登録サイキッカーを排除する」
『Go!』
その声と共に間合いを詰めようと前方へとダッシュする
追うゲイツと逃げる玄真と言う構図と成ったが、ソレを見越してか玄真は逃げながら呪符を結界内へと散布する。
空中に留まった呪符は青白い……鬼を想起する炎を放ち、ゲイツの行手を阻むが左腕を前へと突き出すと黄色に近い比較的低温の電撃を撃ち出し、炎に込められた呪力を相殺した……‥が、ソレは明確な隙だった。
電撃を放つ為に動きを止めたゲイツに対し玄真は手にした独鈷杵を投げたのだ。
ソレが当たった瞬間、ゲイツは自身が現在の科学では解明出来ない謎の力場に囚われた事を察知する。
「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前……爆発!」
動く事の出来ないゲイツを前に丁寧に手印を組んで九字を並べれば……ダイナマイトを起爆した以上の威力で爆発が起こる。
「……くっ!? 損傷率……65% 戦闘行動……反撃を開始する」
機械化人ゲイツは機械の身体で有るが故に破損率が100%まで行かなければ、各パーツの動作状況は別として戦闘行動そのものは取り続ける事が可能なのだ。
普通の人間ならば例え呪術師だったとしても、傷を負えば痛みと言う危険信号が身体を蝕み集中力を損ね、血を流せば時間と共に体力はどんどん消耗していくモノである。
そう言う意味では機械化人と言うのは軍事目的ならば画期的な技術と言えるだろう……1体作るのに必要となる呪具や呪物と言ったモノを用意するコスト面に目を潰ればだが。
「ぬぅ!? 呪縛殺を受けて未だ動けるか!? 流石は人の身を捨て機械と化しただけの事は有ると言う事か!?」
勝利を確信したにも拘らず、未だ動く機械化人に驚きを隠せぬ玄真のソレは、改造手術を受けたとは言え歴戦の軍人であるゲイツの前では晒しては行けない隙である。
右腕に取り付けられた呪具化した機関銃から非実体の銃弾を連射しつつ、背中のブースターを吹かして間合いを詰めに掛かった。
玄真にとっての不幸、ゲイツにとっての幸運は、玄真が結界の外壁その天井と壁近くの角に居たと言う事である。
日本人とは比べるべくも無い大柄な黒人男性が、更に機械化した事で増した重量を武器に繰り出す右の拳を、玄真は何とか往なすが続いて繰り出された左のボディブローを捌く事が出来ず結界の外壁へと叩き付けられた。
その隙を狙って更に繰り出されたのは胸部装甲を開いた内から放たれる呪力を束ねた謎の光弾……ソレは玄真がゲイツに仕掛けた呪縛殺と同様に相手の動きを一時的に阻害する機構である。
動きを止めた玄真に対しゲイツは右の拳……が腕から打ち出されたロケットパンチ! 轟音を上げて飛び出したソレは玄真を殴り付けるのでは無くその体を掴み捕り、ワイヤーを一気に巻き上げる事で一撃必中の間合いへと呼び込んでいく。
そうして繰り出されるのは一撃必殺の大技『パイルバンカー』だ。
鋭く太い金属の杭が玄真の腹を貫き通し、間違いなく放って置けば直に死に至るだろう大怪我。
しかし玄真も一度は死んだ身とは言え歴戦の呪術師である、この程度で簡単にくたばる様ならば今までの呪詛師討伐で何度死んでいたか分かったモノでは無い。
更なる追撃を防ぐために玄真は懐から大量の呪符を取り出しソレをばら撒く……とまるでソレ等が誘導弾の様にゲイツを追尾し殺到する。
符護術と名付けられた影高野秘伝の符術であり、歴史上多くの呪詛師を屠って来た隠し玉の一つだ。
勝利を確信した相手に殺到する10枚の呪符は、その一枚一枚に相応の呪力が込められており、生半可の呪詛師ならばその一枚だけでも命を落しかねない強力な呪いである。
何せこの札を使うと言う事はその時点で、大きな痛手を負っていると言う事であり、逆説的に言えば『大きな負傷が無ければ使えない呪符』と言う縛りでもあるのだ。
「損傷率……70……‥75……80……85……90%……目標の沈黙を確認……されど作戦続行は困難と判断、帰投許可を願う……エラー……通信妨害の可能性……帰投許可再申請……エラー……」
玄真の放った最後っ屁とでも言うべき呪符は残念ながらゲイツを打ち倒すには至らなかった。
しかしあと一歩の所まで追い詰められた彼は、作戦を続けても成功の目は無いと判断し、司令部へと帰投許可を得るために無線通信を試みる。
だがソレに司令部が返事をする事は無かった、機械的なモノか呪術的なモノかまではゲイツの知識では判断出来なかったが、通信を妨害する何かが今この場所に発生していたのは間違いない。
「結界の消失を確認、司令部……帰投許可を願う……エラー……自己判断にて通信制限区域をりだt……」
基地に出現したUFO型の
それも一重に呪霊に依って失われた仲間達と、呪霊が暴れた事で基地内部に隔離されていた
けれども運命……いや彼を呪具機械人間化した呪詛師と科学者は、彼のそんな思いを踏みにじる選択を取っていた、彼に組み込んだ呪具や呪物の呪力をより効率的に運用する為に、彼の知性を大きく劣化させると言う『縛り』を組み込んでいたのである。
普通の軍人としての知性が有れば玄真を仕留めた時点で、通信に応答が無ければ自己判断で身を隠す程度の事は当たり前に出来ただろう。
だがしかしゲイツに組み込まれた機械と縛りは最低3回は司令部の指示を仰がねば、自己判断での行動を禁止していたのだ。
……そして本拠地の上空でそんな戦闘が行われて居れば、ノアの超能力者が様子を見に来ない筈が無い。
既にボロボロで一当てされるだけでも撃墜されるであろうゲイツを、再び戦闘結界が取り囲む。
「……見覚えの有る顔ですね。あの基地に居た軍人ですか……しかし酷い姿だ……可哀想に恐らくは貴方もあの外道達の被害者なのでしょう。せめて僕の手で一旦終わらせてあげますよ」
「……脱走兵カルロ・ベルフロンドを確認……戦闘行動を続行する……」
本来ならば損傷率90%と言う状況であれば戦闘行動を続行したとしても勝ち目など無い、ソレは軍事の素人だとしてもそう判断するだろう数値だ。
『Ready』
……ゲイツの身体に刻まれた機械と縛りはそんな当たり前の判断すら行うことを許さず戦いを強要する。
深夜と言うには未だ少し早い時間、一人の呪術師の命を奪った機械化人はその傷を癒やす事すら許されず、絶望的と言って間違いない状況での戦闘を余儀なくされた。
『Go!』
合図の声が響き渡ると殆ど同時に打ち出された水流に飲まれ、機械化人は全ての機能を停止したのだった。
本来原作ゲームではあり得ない挙動が一部有ります
小説としての体裁を保つ為の事です、サイキックフォースファンの皆様にはご不快かもしれませんがご容赦ください