畜生道に堕ちたと思ったら五条悟の飼い猫になった件 作:鳳飛鳥
新たな世界と初めての縁談
あの戦いから暫しが経って呪術高専東京校は例年通り夏の繁忙期に突入した。
戦いの中で氷漬けと成ったバーンは未だに冷凍人間状態であり、日本の夏の暑さでも溶ける事無く未だ氷柱の中で眠っている。
死んでいる訳で無く肉体的な欠損は全く無い状態の彼は、現状では反転術式を用いて回復する事は出来ず、外から呪力を使ってどうこうしようとすればその呪力が氷を厚くすると言う悪循環。
けれども御主人の六眼で診れば、僅かずつでは有るがバーン自身の呪力が氷を溶かしているそうで、解凍に特化した術式や呪具でも無い限りは時間が解決するのを待つしか無いと言う見立てである。
現在は氷が溶けて直ぐに治療出来る様に……と言う建前で医務室に置かれており、僅かながら高専の冷房代を例年より抑える効果が期待されていたりするのだ。
と、そんな事をグダグダ語っている俺はと言えば、今日はこの時期には珍しく任務が入って居らず自宅でダラダラモードである。
普段ならダラダラしてる暇が有れば警視庁の公安部捜査0係に行って、警察との情報交換兼暇つぶしをするのだが、流石は呪霊祭りの夏の繁忙期だけ有って今日は皆出払っているので行っても誰も居ない筈なのだ。
そんな訳で自宅(御主人と同居)のパソコンでネコネコ動画を漁っているのだが、その中に気になるタイトルの動画が有った『踊る猫』である。
もしかしてラーメン赤猫の登場
コレは……恐らく
薄いオレンジの地毛に濃い茶色の縞が入ったその猫は、所謂『茶トラ』と呼ばれる色合いの猫だ。
その猫が部屋に有った金魚が泳ぐ割と大きな水槽の端に乗り、コレまた大きく育った金魚を狙って前脚を水へと伸ばし……滑って水へとドボン。
慌てて暴れてなんとか水槽から脱出した茶トラは全身を震わせ水気を弾き飛ばすと、何故か二足歩行に成って踊りながら画面外へと去っていった。
……今の踊り前世にみた記憶があるぞ? あ!? コレ小林まこと先生の迷作ギャグ漫画『ホワッツマイケル?』じゃねぇか!
え? でもアニメじゃなく実写だったと言う事はまさかとは思うがこの世界は小林漫画の世界まで混ざっているのか!?
慌ててウィキペディアでオリンピックの柔道歴代代表を調べたら……居たよ『三五十五』1992年のバルセロナ五輪で71kg以下級代表として出場、一回戦であっさり敗退したがその後相手選手が勝ち進んだ為に敗者復活戦へと参戦したらしい。
ソコで勝ち上がる事で銅メダルを獲得したと書かれている辺り、俺が知る漫画の彼とは少しだけ結末が違っている様だ。
柔道に調べたついでにバルセロナの代表選手を調べたが猪熊柔の名前は無かった……少し残念である。
あと小林漫画と言えば俺が知ってるのはプロレス漫画なんだが……うん居るな伝説のプロレスラー東 三四郎……ただ既に引退済みな上に現在は一般人として生活して居る様で、ウィキペディアには赤城 欣市との伝説の試合を最期に引退したとだけ書かれていた。
にしてもこの世界は呪術廻戦がベースなんだろうからジャンプ系が混ざるのはまぁ分かるとして、サンデーもモンキーターンが原作時点でネタを拾われてるから理解は出来る。
しかし他の色々は余りにもチャンポン過ぎないか? 小林まこと先生と言えば講談社の作家だ。
ジャンプの集英社、サンデーの小学館と合わせて3大漫画出版社をコンプリートしてるじゃないか……。
等とネットサーフィンを楽しんでいたら唐突にスマホが鳴った、掛けてきたのは呪術総監部の代表番号?
「はい、五条ポチ1級術師です?」
通常、任務の連絡ならば高専の代表番号か補助官の携帯電話から連絡が入るので、一応はアドレス帳に登録してあるモノの総監部から直接連絡を貰う事は無い。
そもそも総監部は1呪術師に対して直接何かを言ってくる様な組織では無いのだ。
「五条1級突然のご連絡申し訳有りません、総監部補佐官の辻と申します。この度は貴方にお見合いの話が持ち上がっておりまして、出来れば予定を詰めて頂きたくご連絡差し上げました」
総監部補佐官と言う役割は聞いた事が無いが、総監部の事務所にある筈の代表電話から掛けて来ているのだから、まず間違いなく総監部のご老人達を補佐する役目の人なのだろう。
「見合い……ですか? その手の話は御主人……失礼、五条特級に丸投げしているんですけれども……‥」
「はい、既に五条特級術師には連絡済みです。曰く『本人が良いなら良いよー』との事だったので、早急にこちらからご連絡を差し上げた次第でして……」
御主人も呪術師と大学生の二足わらじで忙しいのは分かるが、報連相はしっかりして欲しい。
「と言う事は、以前上げていた『人語を解する』『俺の子を産んでも良いと言っている』『相応の呪力がある』の3条件を満たした雌猫が見つかったと言う事ですか?」
最初の人語を解するに関しては探せばそれなりに居るとは思っていた、ラーメン赤猫でも『喋る猫は兎も角、働きたい猫はそうそう見つからない』と言う様なセリフが有った様に、喋る猫はそれなりに居るのだ。
「いえ、今の段階ですと『人語を解する』と『相応の呪力がある』を満たしている状況ですね、最期の五条1級の子どもを生むかどうかはちゃんと会って確かめたい……‥と先方が」
ああ、成る程な確かに言葉が話せて呪力があるまでは探すの段階で済む事だが『俺の子を産んでも良い』かどうかは実際に会って見なけりゃわかりゃしないわな。
「一応、確認ですが俺の体格の事なんかは相手には話しましたか? 小さなサイズの猫種だと致す前に押しつぶして仕舞う可能性が高いんですが……」
「ソレは勿論大丈夫です、調べた所に依ると喋る猫は五条1級同様に大体体格が大きいモノだそうで、件の雌猫も一般的な猫と比べたら比較的大きな部類になるので体格的な問題は無いかと」
……ちょっと待て! ついさっき俺はこの世界に小林まこと漫画が混ざっていると言う事に気が付いたんだぞ?
その上で体格の良い雌猫……まさかとは思うが『ニャジラ』ではあるまいな!?
「最期にもう一点、その猫は三毛猫ですか?」
いや、ニャジラも可愛いとは思うぞ? 猫好きとしては。
でもアレを嫁にしたいかと言えば絶対にNo! だ!
俺の好みは可愛らしい少女の様な女の子であり、猫だとしてもあんなふてぶてしいタイプを相手にするのは御免被る!
「いえ、毛色としては黒と白のハチワレですね。メインクーンが混ざったミックスの元野良で、今は九十九特級が保護し一緒に生活しているそうです」
……を? 世界を旅して回っている筈の九十九由基特級呪術師が猫を飼っているだと?
いや、でも今の時期なら東堂葵を弟子にして居る頃だった気がするし、彼女が日本に腰を落ち着けていても不思議では無いのか?
「九十九特級からも『可愛い子を見つけて来たよ? フラレない様に気をつけてね。あと猫は一夫多妻もOKらしいよ』と言う伝言を承っています」
この辻って言う補佐官、やたらと口真似が上手いな……さっきの御主人の口真似といい、今の九十九特級の口真似といい、完全にCVが変わってる奴じゃねぇか……いやリアルな世界だし所謂ミックスボイスとかその手の特技なんだろうが。
「了解しました、先ずはお互い顔を合わせて話をしてみなけりゃ始まりませんね。任務との兼ね合いも含めて調整をお願いします」
そう俺が答えると、電話の向こうから露骨にホッとした様な声で
「畏まりました、五条1級の子孫繁栄に関しては天元様も気にしていますし、呪術師の殉職率低下を維持するにはその術式を引き継いだ子孫が絶対に必要ですからね。総監部の御歴々もかなり気になさっていたんですよ……いやぁ肩の荷が下りました」
等と言ってきた、どうやら俺の子作りは想像していた以上に呪術界にとって大問題に成っているらしい。
その後、日程の調整を軽くしてから電話を切った……どんな娘なのか不安と興味が入り混じった感情が胸を締め付け、その日は猫のクセに中々寝付けないのだった。