フェア・クラネルの嫁作り 作:パーンダ
「弟? あの子が? 初耳なのだけど、どういうことか話しなさい」
蕩けるような美貌を持つ女神、フレイヤ様に呼ばれたので来てみました。
オラリオが誇る超高い塔、
そこでベル・クラネルの話題が出たから弟だって話したら、なんかめっちゃ食いつかれた。どうやらベルのことが気になるみたいだな。魂がうんたら言ってるから惚れたのかもしれない。この女神様は彼氏が何人いてもオッケーな方だから、ありえる。
「いや、だから弟なんです」
「じゃあ、貴方は自分の家名を知っていたのよね。ええ、嘘をついていたのはわかっていたけどね。覚えてないとか言って、話す気はなさそうだったから、しつこくは聞かなかったけど」
フレイヤ様は眉を品良く曲げている。
この美の女神様の仰るとおり、俺はこれまで家名について隠してきた。理由は弟のためだ。
俺は一部ではクズ扱いされているから、風評被害があったら可哀想だと思ったのだ。後は、純粋に先入観なしで都市のみんなから見られて、その上で【ファミリア】を選んで欲しかったから。
これでも実力に関してはそこそこ評価されてるから、兄が俺だっていう前提があると、じゃあとりあえず取っとくかってことになりかねない。
「あらかじめ知っていたら、今頃は私の子にしていたのに。上手くいかないものね」
ほら、フレイヤ様が仰っているみたいなことになるんだ。
「はぁ……まあいいわ。どうせそのうち、私のものになる。それは変わらないわけだし」
「相変わらず凄い自信ですね」
「本当のことだもの。それはそうとフェア、フィルヴィスも今度時間を作って欲しいの。アルフリッグ達があなた達と戦いたがっているから、相手をしてあげてくれない? ああ、ヘイズも貴方を殺したがっていたわ。まとめて相手をしてあげて」
なんか、すごい嫌なお願いされた。
アルフリッグ達とは、都市最強【フレイヤ・ファミリア】幹部の四兄弟だ。全員Lv.5。以前、不幸な誤解からダンジョンで戦うことになり、俺とフィルヴィスさんで返り討ちにしたことがある。
それがよっぽど悔しかったみたいで、定期的に戦いを仕掛けてくるようになった。
「神フレイヤ、我々は構いませんが、そのうちうっかり焼き払ってしまうかもしれません」
「ふふ、フェア。あなたの伴侶は怖いわね?」
「私はこいつの伴侶ではありません」
「怖くても大丈夫です。年上の美人は、むしろ少し怖いくらいがいいんです」
「おい……歯が浮くようなことを言うのはよせ」
フィルヴィスさんはなんか言ってるけど、既に伴侶みたいなもんだろ。ところ構わずデレるのは求めてないから、今のままでいいけど。
「アルフリッグさん達についてはわかりました。近々
「ありがとう、フェア。よろしくね」
「でも、ヘイズさんはなんなんですか。なんで俺は殺意を抱かれているんでしょう」
「あなた、あの子を
言ったな。オラリオにおけるナンバーツーの治療師で、巷では【黄金の魔女】とか呼ばれてる美人に、俺はよろしくないことを言った。
あなたの魔力は全く神聖じゃないから、多分ダメだと思う、とも。何がダメなのかは特に説明しなかったが、なるほどたしかに。怒るわな。比較された上で侮辱されたと思われたかもしれない。
「ヘイズはかつてない殺意を抱いているから、相手をしてあげて」
「嫌です。あの人、延々と再生して怖いし面倒くさいんですもん」
「そう……それなら仕方ないわね。ベルに犠牲になってもらうことにするわ」
「犠牲って……弟ってだけで撲殺するような人じゃないでしょ。普段はまともですし、ヘイズさん」
「そうね。そんなことは私が許さないし、殺すことはないと思うわ」
なら大丈夫じゃないか。
俺は安心して、フレイヤ様のプライベートルームを後にすることにした。
たまにこうして呼ばれるのだ。
目的は情報交換。後は囲い込みだな、多分。団体生活せずにプラプラしてる俺達は、何かあった時に利用しやすい存在だし。ちなみにフレイヤ様にガチで求婚されたことはないよ。そこまでして伴侶にしたいほどではない、っていう微妙な評価を頂いている。
◆
突然だが、フィルヴィスさんは可憐だ。
白くしなやかで美しく、
「うん。大丈夫ですね。まあ、確認の必要はないですけど、心配なんで念のため」
純白のストッキングを足首まで下げて、弾力ある太ももを確認する。俺が見ているのは右脚だ。膝の少し上くらいに、可愛らしい♡の刻印が刻まれている。
えっちなやつではない。こいつは結界が正常に機能している証である。
俺の魔法、【シレンティウム・フォール】。あらゆる精神攻撃から守ってくれて、魅了侵犯など心への侵入系は全てガード。なんでこんなものを使っているのかというと、のっぴきならない理由だ。この人、発狂した精霊に魔石を埋め込まれてて……放っておくと話しかけられりするんだよ。
精神がおかしくなってく。だから心は守ってあげないといけないんだ。魔石のせいで強さがおかしなことになってるから、身体的に守る必要はないんだが、精神の方はガードが必要。
「そんなことを言って、お前が見たいだけ……いや、なんでもない。悪いな、助かる」
「それもあるんで、どっちも脱がせちゃいますよ」
「はぁ……お前、私がおぞましくないのか」
魔石を埋め込まれたのは、前いた派閥の団長達が捕食された時だ。27階層で邪神の派閥に嵌め殺されて、モンスターも入り乱れての乱戦になってしまい、血の匂いに惹き付けられて精霊が来た。
古代、神が降臨する前に人々を導いていたとされる、神々の代理人達。その一部はモンスターに食われて怪物化してしまい、俺達を襲ってきた奴もそうだった。穢れた精霊ってアストレアさまは仰ってたな。女神の中では最推しの御方。うるわしく美しい若妻のようだが、未亡人をイメージして見るのもグッド。背徳感って言葉が良く似合う、とても素敵な御方だ。
「おぞましいわけないでしょ。尊敬してる先輩をそんな風には思いませんって。昔はね、ゆくゆくは貴方が団長になって、貴方の下で働きたいと思ってたんですよ」
今言ったことは事実だ。最初からエロい目では見てたけど、ずっと尊敬してるのは誓って本当。
「お前くらいだぞ、私にばかり構っていたのは。今思うと悪くない日々だったが、下心を全く出さなかったのは計算か?」
「そこは計算ですね。手を出すのは一番弱った時にって決めてたんで」
「……しれっと最低なことを言うなっ」
その、一番弱ってた時は下手クソだったのに、数回やっただけで口技がランクアップしたからな。この人はそっち方面でもいい女だ。天国見せてくれるから、本当に。
「あー……癒される」
「おい、やめろ顔を埋めるな……」
今、俺達は隠れ家にいる。オラリオ内には拠点をいくつか構えているのだが、それらは全て周りに知られているから、ゆっくり寝る時はここだ。
何の変哲もない一軒家。置いてあるものは食糧、お風呂、ベッド、後は暇つぶし用の書物だったり、適当に購入した調達品だったり。拠点として公にしている方は、完全に仕事用。主に救援依頼──ダンジョンで仲間が遭難したからタスケテ──が届くので、面倒だがこまめに確認しに行っている。
「今日はもう休みましょうよ。こうやって心は守ってあげてるわけだし、たまにはお願い聞いてくれてもいいでしょう?」
フィルヴィスさんは
勝手に膝枕をしてもらっている俺を、上からしかめっ面で見つめてくる。
「お前の言う『たまに』は、三日に一度か? それとも機会があればいつでもか?」
「いつでもですね。どんだけ抱いても飽きないんで」
「尊敬している先達に対する態度とは思えない」
「尊敬してるからこそですよ。フィルヴィスさんにイライラぶつけてる時、背徳感がやばい」
「……はぁ、倒錯するのもほどほどにしてくれ。…………変態め」
先輩エルフの真っ白な手が腰に触れた。
しばらくされるがままに甘えさせてもらい、その後は朝方までヤった。そっち方面の防御力はめちゃくちゃ低い人なので、ヘロヘロになってるとこ叩き潰すの超楽しい。