アクションバース “キン肉マンⅡ世VSアクション仮面”   作:速筆魔王LX

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第001話 春日部に超人が来るゾ

「えーっ!? 春日部で超人レスリングの試合をやるの!?」

 

 野原みさえ(年齢・29歳、職業・専業主婦)は、仕事から帰宅した夫の話を聞き、わっと驚いた。

 

「そうなんだよ。俺も最初聞いたときはびっくりしてさ~」

 

 仕事用のスーツを脱ぎながら語るのは、野原ひろし(年齢・35歳、職業・サラリーマン)。野原一家の大黒柱である。

 

「ちょーにんじんレスリングって?」

 

 夫婦ふたりの話に割って入ったのは、じゃがいもに似た頭をした幼い少年。

 野原しんのすけ(年齢・5才、職業・幼稚園児)だった。

 

 ――時代、21世紀。

 ――場所、埼玉県春日部市。

 

 ここはごくありふれた一般家庭“野原一家”の住まうマイホーム(ローンあり)。

 家族構成は父・ひろし(35)、母・みさえ(29)、長男・しんのすけ(5)、長女・ひまわり(0)。

 そして愛犬・シロを加えた4人+1匹から成る、本当にありふれた春日部在住の一家である。

 

 そんな野原一家は、家族揃っての夕飯前、話に花を咲かせる。

 話題は、慣れ親しんだ街である春日部で超人レスリングの試合が行われるというものであった。

 

「ちょーにんじんレスリングじゃなくて、超人レスリングよ」

「ま、平たく言えばプロレスだな」

 

 しんのすけの5才児ならではの言い間違いを微笑ましく思う両親ふたり。

 それほど特色がある街というわけでもない春日部で超人レスリングの試合が行われるというのは、かなりのビッグニュースと言えた。

 

「じゃあ新世代超人(ニュージェネレーション)も来るのかしら」

 

 超人レスリングの試合と聞いて、みさえが真っ先に思い浮かべたのはその一団の名前だった。

 しかし息子のしんのすけはその方面には明るくなく、直感的な印象で問う。

 

「なにそれ、お笑いコンビ?」

「もう、違うわよ」

 

 テレビっ子のしんのすけにとってはいかにも芸人っぽい名前に聞こえたのだが、みさえは苦笑しながら否定する。

 息子に知識を授けるのは父親の役目――ひろしはここぞとばかりに鼻を鳴らし、解説を始める。

 

「説明しよう! 新世代超人ってのは、地球の平和を脅かす悪行超人の魔の手から、俺たち人間を守護するために結成された新世代の正義超人集団なんだ。今から約30年前に活躍した伝説超人(レジェンド)と呼ばれる正義超人たち……キン肉マンやロビンマスクたちの意志を継いだ、現代の精鋭さ」

 

 超人――それは、人間を超越したパワーを持つ、人間とは異なる種族である。

 その多くは宇宙人であり、外見も人間と変わりない者もいれば、獣のような者、無機物を模した者など様々。

 さらにそれらは正義・残虐・悪魔・完璧(パーフェクト)などいくつかの属性に分かれ対立していた歴史を持つが、現代ではシンプルに正義超人と悪行超人の二種類にのみ分かれている。

 21世紀と呼ばれる現代。新世代超人は、その超人の中で最も有名な一団と言えよう。

 

 我ながらいい説明ができたと悦に浸るひろしだったが、そのどこか子供向けアニメのナレーションがテレビの前のお子様に説明するような口ぶりは、しんのすけに胡乱な眼差しを向けさせた。

 

「誰に説明してるの父ちゃん」

「おまえにだよ」

 

 ノリの悪い我が子に呆れた顔をしつつ、ひろしはよりわかりやすいよう補足する。

 

「要するに、正義超人は地球の……いや、宇宙のヒーローってことだ」

「なんでヒーローがプロレスするの?」

「それは……な、なんでだろうな?」

 

 ひろしは子どもの純粋な疑問に答えることができなかった。

 他のヒーロー、たとえばウルトラマンや仮面ライダーがやっているのもプロレスといえばプロレスだが、正義超人の場合はより本格的に、四角いリングの上でルールに則った試合をする。

 悪行超人――“悪”と呼ばれる輩もその流儀に背くようなことはせず、必ず試合結果に準ずるのだ。

 あらためて言われるとおかしな話である。

 

「あら、春日部在住で未就学児童がいるご家庭は無料でご招待ですって。宇宙超人委員会か春日部市長か知らないけど太っ腹なことするわね~」

 

 ひろしが頭をひねる横で、みさえは彼が持ってきたパンフレットを読み込んでいた。

 パンフレットにはたしかに招待状が同封されており、もちろん野原一家も対象になっている。

 

「最近、春日部にでっかいスタジアムができただろ? そこを使うんだとさ」

「春日部スタジアムね。一度行ってみたかったのよ」

「春日部のどこにそんな土地があったんだか」

 

 長く春日部に住んでいるしんのすけだったが、春日部にそんなスタジアムと名のつく施設ができたなど聞いたこともない。イマイチ信用できない話だった。

 

「しんちゃんも楽しみよね?」

 

 みさえは我が子の微妙な気持ちなど理解せず、子供ならイベントごとはわくわくして当然、と言わんばかりの笑みを見せてくる。

 だがしかし、子供がプロレスに興味を持つかどうかは親や周辺環境の影響によるところが大きく、しんのすけはどうかといえば……やはりそれほど興味は持てなかった。

 

「う~ん。オラ、アクション仮面に操を立ててるしぃ。他のヒーローには浮気できないゾ」

「どこで覚えたんじゃそんな言葉」

 

 しんのすけにとって、ヒーローといえばアクション仮面。次いでカンタムロボやぶりぶりざえもんだ。

 五才児ながら、軽率な推し変は『カッコ悪い』と考えるしんのすけにとって、正義超人に惹かれる要素はなかった。

 

 そんな、父親としては張り合いのない息子であるしんのすけに対し――ひろしはもったいぶるような笑みを作る。

 

「ふっふっふ。そんなしんのすけにビッグニュースだ」

 

 ひろしには確信があった。この続報で息子のテンションがバクアゲになるという確信が。

 だからこそ、ひろしは話に飽きて離れようとしていたしんのすけに芝居がかったセリフを突きつける。

 

「なんとその試合には……アクション仮面が出るんだよ!」

「ええ~~っ!?」

 

 しんのすけの口からもれた、純真無垢な子供の驚き。

 その様子を見て楽しげに微笑む両親。

 0才ゆえ話を理解できずまどろみの中にいる赤子。

 庭の犬小屋でおとなしくしている愛犬。

 

 埼玉県春日部市のありふれた一般家庭、野原一家の日常。

 

 それがまさか、あんな“正義超人同士の抗争”に巻き込まれることになるとは……夢にも思わなかったのである。

 

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