アクションバース “キン肉マンⅡ世VSアクション仮面” 作:速筆魔王LX
『あ――っとアクション仮面の構えた両腕から電撃のごとき光線が放たれ、ケビンマスクを襲う――っ!』
ビビビビビという音を奏でながらのビーム技。
あの
アクション仮面も例に漏れずオリジナルのビーム技“アクションビーム”を持っていたが、なんとそれを超人レスリングの場で使用したのだ。
客席のミートくんは信じられないと言いたそうな表情で語る。
「アクションビームといえば、誰もが知るアクション仮面の必殺技。これまで数々の強敵を倒してきた彼の代名詞ですが、それはあくまでも特撮ドラマ内での話。あのビームは単なる特撮エフェクトで、本当のアクション仮面はビームなんて撃てないはずです」
人間はビームを撃てない。俳優としてどれだけ演技の練習をしようとも、その理は覆せない。
だから彼が番組内で撃ってきたアクションビームは現代の映像技術を駆使した作り物。
超人レスリングの攻撃手段として成立するはずがない。
「で……でもあれは本物のアクションビームだよ! もしかしてアクション仮面は、人間から超人になったことで本当にアクションビームが撃てるようになったんじゃないか――っ!?」
万太郎はそう言うが、ミートくんの戸惑いは消えなかった。
「いくら超人になったからといって、ビームが撃てるようになるはずが……」
言いながらも、頭の中では記憶というデータベースを検索、様々な可能性を検討する。
眼前のアクションビームを見て、なにか連想するものはないか――と。
「ビームを撃つ超人……ケビンマスクのあの苦しみよう……あ、あああ~~っ!? もしやあれは~~っ!?」
あるひとつの“最悪の可能性”に気づいてしまったミートは、この世の終わりを知ってしまったかのように声を荒げた。
同タイミングで、リングサイドに立っていたアクション仮面のセコンド――ジェロニモも気づく。
前髪で隠れた額からは、一筋の冷や汗が流れた。
「あの懐かしきキン肉星王位争奪サバイバルマッチ……オラはあれと似たビーム技を見た覚えがある。だがなぜアクション仮面がそれを……」
脳内に浮上した謎をセリフにしながら、さらなるひとつの可能性を見出す。
「ゲギョゲギョ」
頭の上から聞こえてきた下卑た笑い声。
落雷とともに途中乱入し、背景と化しながら静かに観戦していた悪魔の領袖。
「ま……まさかサタンが!?」
大魔王がもたらした魔の宝石、ジェネラル・ストーン。
アクション仮面のスーツカラーを黒に変えた不気味なそれが、彼に新たな力を与えたのではないか。
34年前に見た、あの最悪の力を。
「死ね――っ!」
ジェロニモの考察をかき消すほどの声量でアクション仮面が叫んだ。
それに伴い、アクションビームの出力も上昇。
「グオオオ……ッ!」
『ケビンマスク、一歩も動けずただ絶叫するしかないか――っ!?』
ビームの直撃を浴びるケビンマスクはただ耐えることしかできない。
ケビンの体力はまだ十分残っているはず。
戦況を鑑みてもおかしすぎると判断し、ミートくんは答えを導き出した。
「間違いない! あれは……カピラリア七光線です!」
「な……なんだそれ!?」
突然飛び出した固有名詞は、万太郎には聞き覚えのないものだった。
ミートくんは戦慄した様子で説明する。
「キン肉星王位争奪サバイバルマッチにて、キン肉マン・スーパーフェニックスチームのひとりプリズマンが使用していた超人特効の有害物質……人間には無害ですが、超人の肉体は容赦なく焼き尽くしてしまう恐ろしき毒素のことです。あのアクションビームには、カピラリア七光線が含まれているに違いありませんよ!」
名前の挙がった超人、プリズマンは太陽光をこのカピラリア七光線に変質させ必殺“レインボーシャワー”として使っていた。
キン肉マンと激闘を繰り広げたキン肉マンゼブラを一瞬で白骨化させ、ブロッケンJrやラーメンマンといった強豪に対策を強いた、厄介極まりない光線だ。
それがこの21世紀に復活したとして、はたして現代の
「超人特効って……じゃあ、ケビンマスクはあのアクションビームを受けて死んじゃうの~~っ!?」
弱々しい表情でリングを見つめる万太郎。
ケビンマスクは今まさにカピラリア七光線を含んだアクションビームを浴びてしまっている。
まさか本当に、あそこから骨だけ残して消滅してしまうっていうのか――!?
「やめろ――っ! アクション仮面!」
新人デビュー戦で飛び出した非情な技に、待ったの声がかかった。
叫んだのは――リングの一番近くにいた超人、ジェロニモである。
「この試合はおまえさんの超人レスラーデビューを華々しく飾るためのフェアな試し合い……殺し合いじゃねえ! おめぇは同じ正義超人であるケビンマスクを殺す気か――っ!?」
ジェロニモはアクションビームの危険性を力いっぱい訴えるが、アクション仮面からはなおもビームが放たれ続けている。
「なにをバカなことを……」
アクション仮面はフッと笑った。
背後のジェロニモには一瞥もくれず、苦しむケビンマスクを正面に据えながら言う。
「殺す気に決まっているでしょう! あの男は殺人歴を持つ悪行・正義超人! 真・正義超人であるこの私が、速やかに殺処分しなければ――っ!」
サタンが登場してからというものの、暴言が目立っていたアクション仮面。
試合を盛り上げるための演出かとも思ったが、違う。
彼がケビンマスクに向ける敵意は正真正銘の――殺意。
アクション仮面は……ケビンマスクを殺す気なのだ!
「アクション仮面……おめぇ、なんてことを!」
愛弟子の真意に気づいたジェロニモは愕然とし、言葉を失った。
アクション仮面はそんな師の様子など気にも留めず、アクションビームの出力を上げる。
「さあケビンマスクよ! 正義の一撃の前に爆散しろ――っ!」
ケビンマスクを抹殺するために!
この試合はチャンピオンの死亡KOという形で終わり、チャレンジャーは華々しいデビューを飾るのだ!
――ひらり。
そのときだった。
アクション仮面の殺意を遮るように、彼の足もとに白い“なにか”が落とされる。
『あ……あ~~っとこれは――っ!?』
白く長く、薄いそれは……一枚の布。
『タ、タオルです! リングの外からリング内へ、タオルが投げ込まれた――っ!』
アクション仮面はアクションビームの放出を止め、背後を見やる。
そこには、切羽詰まった表情で右腕を突き出すジェロニモがいた。
まるでたった今、リングになにかを投げ入れたようなポーズだった。
『投げ込んだのは……アクション仮面のセコンドであるジェロニモです!』
春日部スタジアム中の視線を一身に集めながら、ジェロニモが言う。
「超人レスリングの試合において、セコンドがリングにタオルを投げ入れることは降参の合図……おめぇが真の正義超人を名乗るなら、ルールには従ってもらうぞ」
これ以上の試合継続はケビンマスクの命に関わる。
ジェロニモはそう判断したからこそ、強引にでも試合を終わらせるべくタオルを投げ入れたのだ。
たとえそれで、弟子の敗北が決まったとしても――ケビンの命には変えられない。
アクション仮面はジェロニモのほうを見ながら、冷静に口を開く。
「なるほど。たしかに真・正義超人を名乗る以上、ルールは無視できません。ここはおとなしく、セコンドであるあなたの判断に従いましょう」
圧倒的優位な状況にありながら、セコンドの身勝手で負けにされた。
本来なら怒り狂っても不思議ではないが、アクション仮面は肩を竦めてケビンマスクに向き直る。
アクションビームの脅威から解放されたケビンマスクは――キャンバスに伏していた。
「もっとも、この惨状を見ればどちらが真の勝者であるかは明白でしょうがね」
超人レスリングの勝者とは、最後にリングに立っていた者。
超人レスリングの敗者とは、最後にリングに倒れていた者。
完全に力尽き、うつ伏せで動かぬケビンマスク。
それを見下ろし、余裕で微笑むアクション仮面。
これで決着と言われても、どちらが勝者かを断じるのは難しいものがあった。
「さあ! 宇宙超人委員会の諸君! 負け犬の勝利を宣言するがいい! みっともなくリングの上で這いつくばっているチャンピオンの名をな!」
アクション仮面はそう言いながら、誰もが知るポーズを取った。
右拳を胸に当て、左腕はその対角線上にビシッと伸ばす。
多くの子供たちが真似をした、アクション仮面の勝利ポーズである。
「ワーハッハッハ! ワーハッハッハ!」
そう、アクション仮面の勝利は必ずこのポーズと高笑いで締めくくられてきた。
これが正常な勝利であるならば、春日部スタジアムの子供たちがアクション仮面の真似をするように笑い出したはずだ。
しかし、観客席の答えは――沈黙。
敗者であるアクション仮面に続く笑い声はひとつもなかった。
――ゴングが鳴る。
『こ……ここで試合終了のゴングです! 勝利したのはケビンマスク……しかし当の本人はキャンバスに伏し、敗者であるはずのアクション仮面がお決まりのポーズで高笑いをしている~~っ! いったい誰がこんな結末を予想できたでしょうか!? アクション仮面の超人レスラー史は波乱の幕開けだ――っ!!』