アクションバース “キン肉マンⅡ世VSアクション仮面” 作:速筆魔王LX
魔の力を秘めし宝石ジェネラル・ストーンが多次元にアクセスする力を持った秘石アクション・ストーンとリンクした結果、アクション仮面の周囲には4人の超人らしき人物が実体化した。
――赤いモヒカンヘアーと一本の三つ編み、不気味な笑みを浮かべる仮面をつけ、全身を黒マントに包んだ者。
――体を縦2つに分け、右半身を黄金、左半身を毒々しい紫にカラーリングした、ドクロのような頭部をした者。
――まるで爆発したかのような巨大なアフロヘアーに、腹部をむき出しにしたファンキーなファッションの者。
――そして、全身をすっぽり灰色のマントで覆い、頭すらフードで隠した正体不明の者。
「彼らが……私の仲間……」
彼らはアクション仮面を守るかのごとく周囲に立ち、リング周辺の正義超人たちを威圧していた。
「こ……こいつらがアクション仮面の仲間なのか~~っ?」
「どいつもこいつもヒーローってツラじゃなさそうだが……」
スマイリーマスクの怪人などスプラッター映画に出てきそうだし、ドクロ頭はひたすら禍々しい。
巨大アフロは一見コミカルだが、顔つきは強面で鼻の部分には尋常とは思えない傷跡がある。
全身マント男に関しては見るからに怪しかった。
「あ……」
4人を観察していく中で、ある超人がとんでもないことに気づいた。
右肩に“馬”、左肩に“城”のチェス駒を載せたマントの超人――チェック・メイトである。
「あ、あああ~~っ! あいつは――っ!?」
「どうしたんだ、チェック・メイト!? 知ってる顔でもいたのか!?」
チェック・メイトの傍らに立っていたアメリカ超人、テリー・ザ・キッドがいきなり叫び出した友人に驚き問う。
チェックはゴクリと息を呑んでから答えた。
「め……面識があるわけではありません。しかしおそらく、この会場にいる大多数の観客たちは見覚えがあるはずです。あの……体を縦半分に区切ったような男は」
チェック・メイトの指は、金と紫のツートンカラーボディを持つドクロ頭を指し示していた。
「あのあしゅら男爵みたいなやつか」
「どっちかっていうとキカイダーじゃねえか?」
ガゼルマンとセイウチンが各々の印象を語る。
右半身と左半身で異なる特徴を宿しているのは共通しているが……それに付け加えて、ドクロ頭は胸にアルファベットの“Z”を刻んでいるのが印象的だった。
それはどこか、アクション仮面の象徴である“A”の文字と対になっているようにも感じられる。
「わたしは元“
訥々と語るチェック・メイトの後ろで、依然として万太郎の背中にひっついたままのしんのすけが言う。
「なんでいきなり語りだしたの?」
「しーっ。必要な行程なんですよ」
そばにいたミートはしんのすけに黙っているよう伝え、チェックの言葉の続きを待った。
「そんなわたしだからこそ、もちろんアクション仮面の番組もチェックしていました。なのでわかるんです。あいつは……」
チェック・メイトが知るドクロ頭の正体。
それは決して、彼が過去に在籍していた“d・M・p”の関係者などではない。
この会場にいる大多数の観客たち――テレビ番組“アクション仮面”を毎週楽しみに見ていた子供たちは知っているはずだ。
「アクション仮面と敵対する悪の組織“ブラックメケメケ団”首領……メケメケZだ――っ!」
リングに立つ4人のうちのひとりが、アクション仮面最強最大の宿敵であると。
「え……ええ~~っ!?」
チェック・メイトのこの発言には、アクション仮面の番組を見たことがある者もない者も等しく驚愕した。
万太郎とミートは信じられないといった形相で叫ぶ。
「悪の組織の首領って……なんでそんなやつがアクション仮面の仲間として呼び出されたんだ~~っ!?」
「というかそもそも、ブラックメケメケ団は架空の存在のはずですよ! そのボスがいるだなんておかしいです!」
アクション仮面は特撮ドラマだ。
となれば、目の前のメケメケZは撮影用のコスチュームを着た人間……中身はただのスーツアクターか。
もちろん、真相は違う。あの大魔王サタンがわざわざ一般人を召喚するはずもない。
「ゲギョゲギョ……それはこちらの世界での話だろう。こことは異なる次元の世界ではそうではない。ただそれだけのことだ……」
そこにいるメケメケZは正真正銘、ブラックメケメケ団首領メケメケZであると。暗にそう言う。
「異なる次元……あ、ああああ~~っ! そ、そうか――っ! そういうことか――っ!」
その少ないワードだけでも、頭脳派のミートくんが真相にたどり着くには十分だった。
「ど……どういうことなのさミート!?」
まるでついていけないと言わんばかりに、万太郎が問う。
ミートは額の汗を拭いながら言った。
「つまり、あのメケメケZはパラレルワールドの住人……おそらく他の三人も……ボクたちの知らない別の世界から召喚されたというわけです!」
「な……なんだって――っ!?」
驚愕に次ぐ驚愕が、新世代超人の面々を襲う。
「こ、これまで数多くの悪行超人を見てきたが……」
「さすがに別の世界の超人ってのは初めてだぜ」
少し前にアクション仮面に対して敵意を飛ばしていたスカーフェイス、そして彼の隣に立つヘルメットを被った超人ジェイドも、新たに現れた敵の異質さに舌を巻く。
「フハハハハハハハハハハハハハハハハハ」
そんな彼らの驚きを嘲笑うかのごとく、どこか機械的な乾いた笑い声を発する者がひとり。
たった今話題に挙がったブラックメケメケ団の首領、メケメケZである。
「メ……メケメケZが喋った!」
心のどこかで『ミートの考察は大ハズレ、あれはサタンが映像制作会社からレンタルしてきた等身大人形かなにかなんじゃないか』と疑っていた万太郎も、これには閉口せざるをえない。
メケメケZはリングの周囲、自身を取り囲む超人の軍団を見回しながら、興味深そうに喋る。
「いきなりみょうちくりんな連中の前に呼び出されて何事かと思ったが、なるほど合点がいった。どうやらこの私を利用しようという輩がいるようだ」
次に視線を向けた先は、自らの頭上だった。
「大魔王サタンといったか。貴様が寄越したこのジェネラル・ストーンとかいう代物、なかなか悪くない。アクション仮面の仲間をやれというのもおもしろい話だ……せっかくだから楽しませてもらうとしよう」
悪の親玉という肩書きが納得できるだけの、尊大かつ落ち着いた声調。
創作上のメケメケZをよく知るチェック・メイトは生唾を飲んだ。
「声もCV担当の青野武氏とそっくり……やはり本物のメケメケZだ」
「く、詳しいだなチェック」
仲間の意外な一面に戸惑うセイウチン。
有名人であるメケメケZがサタンに協力する姿勢を見せた一方で、無名の他三人も様々な反応を見せる。
「俺は気に入らねえな!」
大声で不満を訴えたのは、巨大アフロの男だった。
戦士の風格漂う疵面を上空のサタンに向け、さらにその双眸を鋭く細める。
「このパラダイスキング様を差し置いて王を名乗るなんざ、驕りがすぎるってもんだ。大魔王だかなんだか知らねえが、どっちが高みから見下ろす存在かわからせてやる」
パラダイスキング――“楽園の王”を名乗ったその男は、自身の巨大アフロに手を突っ込み、中を探るように動かす。
取り出したのは、一本の細い筒。そしてライターだ。
「ショータイムだ」
パラダイスキングはニヤリと笑い、筒の先端についた導火線にライターを使って着火。
この唐突な行動に、飛行機の姿を模したロボ超人イリューヒンがハッとする。
「あれは……まさか!? ダイナマイトか!?」
頭髪の中からダイナマイトを取り出しいきなり着火するなど、正気の沙汰とは思えない。
ゆえに対処が遅れ、もはや大爆発待ったなしという状況だったが――ジュッ!と。
ダイナマイトの導火線を指で摘み、火を消す者が現れた。
「あ~~ん?」
思わぬ妨害に、パラダイスキングが顔を顰める。
火を消したのは、真横に立っていた人物――笑い面で顔を隠した、モヒカン黒マントの男である。
「なんだてめぇ。この俺に楯突く気か?」
パラダイスキングはモヒカン黒マントを睨みつけるが、当人は笑い声で返す。
「ホホホ、別にいいじゃない。大魔王のひとりやふたり」
どこか女性的にも聞こえる男声。
見た目とのギャップを感じさせながら、黒マントは続ける。
「王なんて肩書き、世界……いいえ、宇宙ではありふれたもんよ。かくいう私も王を名乗っていてね。邪険にしないでもらえると助かるわ」
大魔王サタンに続く“王”。
パラダイスキングは舌打ちし、使い物にならなくなったダイナマイトを捨て問う。
「てめぇの名は?」
「ハイグレ魔王」
モヒカン黒マントの名は、ハイグレ魔王。
新世代超人側に聞き覚えはない。メケメケZの名を知っていたチェック・メイトもノーリアクションだ。
だがただひとり――全裸にオムツを履いた姿の老超人、バリアフリーマンが見当違いの反応を示す。
「ハ……ハイレグ~~ッ? おいセイウチン、あやつ今ハイレグと言ったのか?」
「ボケねえでくれジイちゃん。ハイレグじゃなくてハイグレ魔王だよ」
セイウチンがボケ老人を相手にするように言う。
バリアフリーマンはスケベジジイだ。きっとハイグレをハイレグと聞き間違え、あの股の部分が鋭角にカットされたレオタードを着る女性の姿でも想像したのだろうと切って捨てる。
「ケッ! なんともまあ奇妙なパーティーに招待されちまったもんだぜ」
大魔王にハイグレ魔王、さらに王ではないにしても悪の組織の首領。
キングであることに誇りを持つパラダイスキングとしては、あまりおもしろい状況とは言えない。
しかし――自分たちを取り囲む、複数名の正義の味方らしき集団を見れば考えが変わってくる。
「が、まあ……退屈はしなそうか」
パラダイスキングは小さくそうこぼし、不気味に舌なめずり。
真横のハイグレ魔王も、愉快げに肩を揺らした。
「あたしとしては、アクション仮面と共に闘うってのがそそるわぁ。お久しぶり」
アクション仮面に対して親しげにボディタッチする姿は、口調も相まってとても魔王とは思えない。
「あいにく私は君のことを知らないが……」
アクション仮面も困惑した様子だったが、ハイグレ魔王は気にしたふうでもなく頬に手を添える。
「あら残念。イイ仲だったのよ、あたしたち」
嘘か真か、ハイグレ魔王が別世界の住人であるというならアクション仮面に確かめる手段はない。
「それに、そっちのあなたも……」
声色をやや変え、ハイグレ魔王は唯一発言していない4人目――灰色のマント男に語りかける。
「シャイみたいだけど、あたしの直感が告げているの。あなたとは仲良くできそうだってね」
その言い方はどこか、相手の正体を探っているようでもあった。
マントの男は、
「…………」
無言。
ハイグレ魔王の投げかける友好的な言葉にも反応を示さず、ただその場に立つのみ。
三者三様ならぬ四者四様――アクション仮面の味方として召喚された4人の超人らしき人物たちは、それぞれ異なる意思、異なるスタンスを持ちながらも、召喚者の思惑どおりアクション仮面の味方役を務めるつもりのようだった。
「ゲギョゲギョ……彼らは皆、元はアクション仮面と敵対していた者たち……つまりはライバルだった。しかし激闘を経たことでわかりあい、友と呼べるだけの間柄になった……いい設定だろう? おまえたち正義超人の
大魔王サタンは古くから続く正義超人の定番パターンを皮肉るように笑う。
アクション仮面、メケメケZ、パラダイスキング、ハイグレ魔王、そして謎の灰色マント。
この5人こそ、アクション仮面を旗印にした“真・正義超人軍団”――新世代超人の敵となる集団である。