アクションバース “キン肉マンⅡ世VSアクション仮面” 作:速筆魔王LX
負傷したケビンマスクとジェロニモが病院に運ばれ、いよいよ
ミッション内容は、風間トオルくん、佐藤マサオくん、桜田ネネちゃん、ボーちゃん、そして野原ひまわりちゃんら5人の子供たちの救出。
名乗りを上げた超人は、テリー・ザ・キッド、ガゼルマン、セイウチン、ジェイド、スカーフェイス、チェック・メイト、イリューヒン、バリアフリーマン、そしてキン肉万太郎である。
リングの上に浮かぶ5つの黒い歪み――どこかへと繋がるワープホール。
周囲には闘いに赴く新世代超人たちの身を案じる観客たちも集まり、ざわざわとした喧騒の中でアレキサンドリア・ミートくんが一歩前に出た。
「定員は10名。ワープホールは5つ。ここは2人1組で各ホールを攻略するのが最適でしょう。采配はボクに任せてもらえますか?」
直前に万太郎の覚悟を見届けたミートの言葉には熱が籠もっている。
誰よりも小さな体を持ちながら、その実体は冷静沈着な正義超人軍の軍師。
この土壇場において、ミートの知略ほど頼りになるものはない。周囲の若き超人たちも異論なく頷いた。
「ミートはオレたち新世代超人のブレーンだ」
「不満はないぜ」
ジェイドとスカーフェイスが口々に承認の言葉を述べる。
一同の全幅の信頼を受け止め、ミートは力強く指揮を執った。
「では!」
ミートはビシッと宙を指を差し、順々にパートナーを発表していく。
「1組目! テリー・ザ・キッド&バリアフリーマン!」
「おう!」
「よっしゃ!」
若き熱血漢のキッドと、百戦錬磨の大ベテランであるバリアフリーマン。
血気走りがちなキッドを熟練の技と老獪さが補う好ペアだ。
「2組目! ガゼルマン&セイウチン!」
「任せとけ!」
「気張るだよ!」
ヘラクレス・ファクトリー一期生の同期コンビ。
互いの手の内を知り尽くした二人は、力強く拳と拳を突き合わせる。
「3組目! ジェイド&スカーフェイス!」
「イエッサー!」
「暴れてやるぜ――っ!」
かつては死闘を繰り広げたこともあるライバル同士。
特にジェイドは死にかけるほどの致命傷をスカーに負わされた経験がある。
一見水と油に見えるが、だからこそ爆発的な破壊力を秘めた異色コンビである。
「4組目! チェック・メイト&イリューヒン!」
「はい!」
「ラジャー!」
変幻自在の技を持つチェック・メイトに、圧倒的な機動力を誇るイリューヒン。
この万能チームならば、異世界からの召喚者という異色の敵が相手でも上手く立ち回れるだろう。
「この布陣で真・正義超人軍の対応に当たります!」
完璧とも言えるチーム分けに、若き超人たちが気勢を上げる。
しかし、指名されたメンツと自分の位置を交互に見比べていた万太郎が、焦ったように手を挙げた。
「ちょっとちょっと、ミートくん? ボクの相方は? っていうか、10人と言いつつまだ9人しかメンバー揃ってないよ?」
万太郎の至極当然な疑問に対し、ミートはメガネの位置をクイッと直しながら言った。
「Ⅱ世にはボクが付きます」
「え~~っ!? ミートが~~っ!?」
予想外すぎる申し出に、万太郎は目玉が飛び出さんばかりに驚愕する。
かつてキン肉マンのセコンドとして数々の激闘を支えた天才参謀とはいえ、ミートは戦闘要員ではない。
2人組で挑むなら闘いは相方に任せて自分は楽できるじゃ~ん――とか考えていた万太郎の前に、ミートは真剣な眼差しで歩み寄った。
「超人オリンピック・ザ・レザレクション決勝……そして先の“
かつて万太郎が孤独な戦いを強いられたとき、病院から見守ることしかできなかった悔しさ。
悪魔の策略にハマり、肉体をバラバラにされ迷惑をかけてしまったトラウマ。
そしてなにより、主人の力になり切れなかった申し訳なさ。
ミートの胸には、ずっと残り続けていた強い情念があった。
だからこそ、万太郎の前で跪き、頭を垂れた。
「どうか、このミートめに名誉挽回……いや、捲土重来の機会をお与えください!」
「ミート……」
自分を想う従者の溢れんばかりの忠義と決意。
万太郎は胸を強く打たれ、言葉を失う。
そこへ、横からキッドがニッと笑って万太郎の背中を力強く叩いた。
「おまえの一番の理解者がここまで言ってるんだ。答えてやらなきゃ男じゃないぜ」
「キッド」
友の言葉に背中を押され、万太郎は鼻の頭をこする。
そして、ミートに向かってカラッと笑って見せた。
「わかったよ、ミート。一緒にいこう!」
「Ⅱ世!」
がっしりと固い握手を交わす万太郎とミート。
ニュージェネレーション陣営の結束が、いま完全にひとつとなった。
ミートは自分たちの周囲で固唾を呑んで見守る春日部市民たちへ向かって叫ぶ。
「それでは春日部のみなさん! 吉報をお待ちください!」
「子供たちは必ずや、ボクたち新世代超人チームが救い出してみせる!」
頼もしく言い放つ万太郎たちの姿を、野原夫妻はしかし心配そうに見つめていた。
「万太郎くんたちに任せて大丈夫かしら……」
「信じようぜ、21世紀の正義超人を」
不安がるみさえを、ひろしが肩を抱き寄せながら宥める。
さらわれてしまったのはまだ0才のひまわり。いろいろな意味でたくましい長男しんのすけならともかく、楽観することなどできないが――おや、とひろしは違和感を覚えた。
いつもならこういうドサクサに紛れて自分勝手に騒ぎ立てる、我が家の“台風の目”の気配がない。
「ところで、しんのすけは?」
「そういえば静かね」
首をかしげるみさえ。
しかし、視線をリング上の新世代超人たちへ戻した瞬間、彼女の顔が驚愕で歪んだ。
「ああ~! あれーっ!」
みさえが指さした先――リングの中央でワープホールへ飛び立とうとしている万太郎の背中に、赤い服と黄色の短パン姿の小さな幼稚園児がピタリとコバンザメのようにへばりついていた。
◇
シュララララ……!
渦巻く黒いワープホールへと飛び込んだ瞬間、万太郎たちの視界は色鮮やかで怪しげな時空のねじれに包まれた。
「うひゃ~~っ! これがワープホールの中か! まるで宇宙空間みたいだ~~っ!」
無重力空間のような浮遊感に大騒ぎする万太郎。
それぞれ別々のワープホールに飛び込んだため、そばにはペアを組んだミートの姿しかない。
と思いきや、背後から聞き覚えのある能天気な歓声が聞こえてきた。
「おほ~~っ! きんもちぃ~~っ!」
万太郎の背中にガッチリとしがみついている野原しんのすけを見つけ、ミートがズコーッとずっこけた。
「なっ……なんでしんのすけくんがここに!?」
まったく予想していなかった事態に声を荒げるが、しんのすけは呑気に答える。
「本田翼が隠れてるかと思って」
「いるわけないでしょう!」
時空の歪みの中で鋭いツッコミを飛ばすミート。
万太郎も背中を振り返りながら冷や汗を流す。
「もしかして……ずっとボクの背中にくっついてたの?」
「ひまわりやアクション仮面たちをおたすけするならオラもいくゾ」
おちゃらけた態度の中にも、譲れない真っ直ぐな瞳。
しんのすけは本気だった。
「ダメだよ危険すぎる! 君は人間で、しかも5才児なんだから!」
さすがの万太郎もこれには青筋を立てて制止しようとするが、しんのすけはむ~っと口を尖らせた。
「でもオラはひまわりのお兄ちゃんで、風間くんやマサオくんやネネちゃんやボーちゃんやアクション仮面の友達だゾ!」
ここに飛び込む前の作戦会議の段階で、さらわれたのが全員しんのすけの知人であることは把握している。
だがそれよりも、万太郎にとって意外だったのはしんのすけがアクション仮面の名を出したことだ。
「しんのすけくん……君はあの子供たちだけでなく、豹変したアクション仮面とも友達だって言うのか」
危険も顧みず、奪われた家族や友人、そして自分たちに牙を剥いたはずのヒーローのことまで“友達”と言い切る5才児。
その根底にある純粋すぎる思いに、万太郎の胸が熱くなる。
「そうだゾ。オラ、アクション仮面とはチクビの友なんだから」
「それを言うなら
ミートは呆れている様子だったが、万太郎はニッと口角を上げた。
「わかった。ならしんのすけくんも一緒にいこう!」
「Ⅱ世!? 本気ですか!?」
仰天するミートに、万太郎はワープホールの先を指差しながら困り顔で叫んだ。
「だってここから引き返す方法とかわかんないし、どうしようもなくない!? っていうかこれどこに繋がってるのさぁ~~っ!」
「知りませんよ! アクション仮面に訊いてください!」
「ほっほーい! 出発おしんこー! きゅうりのぬかづけーっ!」
大騒ぎする3人の体は、光の束となって異次元のバトルフィールドへと吸い込まれていく。
はたして彼らがたどり着く場所はどこなのか――
――一方、その頃。
ワープホールの先に広がる、異様な気配を孕んだバトルフィールド。
漆黒のマスクに身を包んだアクション仮面は、腕を組みながら静かに佇んでいた。
「新世代超人たちは素直に挑戦を受けてくれたか」
手応えを感じ取るように低くつぶやく。
その目は、ジェネラル・ストーンの邪悪な光を宿しながらも、どこか狂気じみた純粋な正義感に燃えていた。
「そして私が最も断罪しなければならぬ巨悪……“彼”も参戦を表明したようだ。それが彼の超人人生の終わりとも知らずにな」
この場に現れるのが誰になるかはまだわからないが――アクション仮面にはひとり、春日部スタジアムにいた正義超人の中に強く敵視する存在がいた。
願うことならば、やつは私が直々に鉄槌をくだす!
「来るがいい! 私は逃げも隠れもしない……どちらが真の正義か、決着をつけようじゃないか!」
決戦の地で刺すような殺気を放つアクション仮面。
異次元の闇の向こうから、新世代超人たちの足音が刻一刻と近づいていた――