アクションバース “キン肉マンⅡ世VSアクション仮面” 作:速筆魔王LX
しんのすけが父・ひろしから「アクション仮面が来る!」という話を聞いた翌日。
彼が通うここ、ふたば幼稚園ではその話で持ち切りだった。
「ねぇ聞いた!? 春日部にアクション仮面が来るんですって!」
そう言ったのは、情報通の桜田ネネちゃん(5才)である。
見た目可愛らしい少女であるネネちゃんの話には、仲の良い男の子たちが乗った。
「もちろんだよ! まさかアクション仮面が超人レスラーに転向するなんてね!」
幼稚園児にしてエリートの風格を感じさせる利発そうな少年は、風間トオルくん(5才)。
彼の言葉には、おにぎりのような頭をした気弱そうな少年が続く。
「スーパーマンロードの試練を乗り越え超人になったってニュースを見たときは驚いたなぁ」
佐藤マサオくん(5才)は子供らしい素直な感想を口にし、その横にいる鼻水を垂らした少年――本名不明の愛称『ボーちゃん』(5才)は、短く一言。
「ジェロニモの再来」
とコメント。
盛り上がる友人たちに対し、しんのすけはしかし落ち着いた様子で言う。
「みんな詳しいね」
話に出てきた『スーパーマンロードの試練』も『ジェロニモ』も、しんのすけはよく知らない。
そもそも超人レスラーという単語も昨日初めて両親に教えてもらった程度。
それを考えたら、むしろ幼稚園児である彼らの知識が“進んでいる”と捉えるべきだろう。
「あたりまえだろ!」
「テレビでいっぱい報道されてたでしょ」
「しんちゃん知らないの?」
「ワイドショーでも特集してた」
風間くん、ネネちゃん、マサオくん、ボーちゃんは興奮気味にしんのすけを取り囲む。
春日部在住の幼稚園児にとってはそれほどのビッグニュース。
しかししんのすけは腕を組み語る。
「オラ、普段はYouTubeとインスタとTikTokのチェックで忙しくてテレビのニュースとか見ないから」
「令和か」
近くで見ていた幼稚園教諭、吉永みどり先生(25歳)がツッコミを入れる。
作中の時代設定は一応平成である。
「アクション仮面、勝てるかなぁ」
「いや、さすがのアクション仮面も相手がケビンマスクじゃ無理だと思うよ」
「あら、こういうのは新人に花を持たせるものよ。アクション仮面はデビュー戦だもの」
「ケビンマスクは、そういうことしない」
いろいろな悪と戦う正義の味方――いわゆる『特撮ヒーロー』であるアクション仮面が、超人レスラーに転向しここ春日部で試合をする。
話によるとその対戦相手が『ケビンマスク』という名前らしいが、もちろんしんのすけに覚えはなかった。
「誰そのケバケバマスクって」
「ケビンマスクだよ」
風間くんは呆れたふうにしんのすけの間違いを指摘し、ネネちゃんとマサオくんが続く。
「超人オリンピックのチャンピオンよ!」
「今一番強い超人なんだよ!」
今一番強いチャンピオン――その肩書きは、無知なしんのすけにも十分な“すごそう”という印象を与えた。
しかしながら、すごそうなレスラーといえば他にもいろいろ名前が思い浮かぶ。
「ほーほー。今年引退した棚橋より?」
「だから令和か」
近くで見ていた幼稚園教諭、吉永先生がツッコミを入れる。
プロレスラー・棚橋弘至が引退したのは2026年。作中の時代設定は一応平成である。
「棚橋より……つよい!」
無表情のまま力強く言い放ったのは、ボーちゃんである。
その妙に説得力のある発言はしんのすけを「おおっ」と唸らせた。
ケビンマスクというレスラーが強い、そしてその強いレスラーにアクション仮面が挑む。
強敵に挑むアクション仮面はいつだって格好良く、そしてその闘いはいつだって見ていて楽しいものだ。
しんのすけの表情に確かな興味の色が出てきたのを察し、風間くんが訊く。
「しんのすけのうちも観に行くんだろ?」
「え~。風間くんがどうしてもって言うんなら」
「別に頼んじゃないわ」
しんのすけは体をくねくねさせながら言うものの、心の中ではしっかりと“行きたい”という感情が芽生えていた。
「オラ、ちょっとだけワクワクしてきたかも~」
しんのすけは後ろを向いて目を見せず、ニヤ~~ッとした笑い方で地元にアクション仮面が訪れるのを待ち望んだ。