アクションバース “キン肉マンⅡ世VSアクション仮面” 作:速筆魔王LX
ベルーナドームを舞台にした
しかし試合終了後、リングに倒れ伏したメケメケZが突如爆発。
勝者であるイリューヒンはそれに巻き込まれ深手を負った。
そして正義超人ふたりが困惑するその現場に現れたのは――今しがた爆散したばかりのメケメケZだった。
テレビ番組“アクション仮面”を通してメケメケZの秘密を知る佐藤マサオくんが、未だ開かぬ球体状の檻の中から声を張り上げる。
「メケメケZにはレプリカがいるんだ! アクション仮面も一度倒したと思ったらニセモノだったことがあって……本物はもっと強いんだよ!」
アクション仮面通の少年から語られる衝撃の事実に、チェック・メイトとイリューヒンが顔を見合わせる。
「そこの小僧の言うとおり。レプリカは私の1/10の実力にすぎない」
続けざまに、メケメケZが紫煙を吐き出しながら言ってのけた。
悠長にタバコを吸うその姿は、とても試合直後とは思えない。
腹部にイリューヒンがつけた裂傷がないことを見ても、さっきまで闘っていたのが別人――レプリカロボットというのは事実のようだ。
「グゥ~~ッ」
敵の非道な行いに、チェック・メイトは憤りを覚えた。
「卑怯だぞ、メケメケZ! おまえは宇宙超人委員会の厳粛なレフェリングの下、1対1の公平なルールで決着をつけるという我々の流儀に従ったはずだ! それなのにレプリカに闘わせ、さらに試合終了後に爆破してイリューヒンを襲うなど!」
卑怯な真似をする悪行超人は過去にもいなかったわけではないが、メケメケZのそれはあまりにも度を超えすぎている。
だがメケメケZはチェック・メイトに糾弾されながらも涼しい表情を浮かべていた。
「なにを言う。むしろ私はその公平なルールとやらに貢献してやったんだぞ」
「な……なんですって?」
いけしゃあしゃあとなにを言い出すのか。
チェック・メイトが反論を唱えるよりも先に、メケメケZは己の主張を口にする。
「そもそも1対1というが、貴様たちはふたりで来ているではないか。どうせイリューヒンがやられたら『次は私が!』と消耗している私に連戦を仕掛けるつもりだったのだろう?」
「そ、それは……」
「ズルいものだな、正義の味方というのは。その看板さえあれば数の暴力が正当化されてしまう」
メケメケZの言うとおり、イリューヒンが負けたからといってチェック・メイトがマサオくんの救出を諦めるという選択肢はなかった。
いくら定員2名という制約を課したのが大魔王サタンとはいえ、悪側ひとりに対し正義側がふたりがかりというのは客観的に見れば姑息。
チェック・メイトがぐぬぬ……と閉口する間、メケメケZはさらに続ける。
「イリューヒンは見事に私のレプリカを倒した。だがどのみち連戦は不可能だったろう。あとは残った私と貴様が闘えば実質2対2。どうだ、こっちのほうがよほど公平なルールだろう?」
これは初めから、イリューヒン&チェック・メイトvsメケメケZ&レプリカ・メケメケZのチーム戦だった――たしかに、それならば誰もがフェアな闘いと認め文句も出ないだろう。
「……ああ。おまえの言うとおりだ」
チェック・メイトはメケメケZの主張を認め、一歩前に出る。
イリューヒンは立派に闘い役目を果たした。そして、敵はまだ残っている。
ならば、次は己が責務をまっとうする番だと――
「待て、チェック・メイト……」
その歩みを、息も絶え絶えのイリューヒンが止める。
「やつの言葉が本当なら、本物のメケメケZの実力はオレが闘ったレプリカの10倍……このまま闘うのは分が悪すぎる」
試合後の爆撃を抜きにしても、イリューヒンが負ったダメージは大きい。
つまりそれだけレプリカが手強かったということ。その10倍ともなれば、たしかに絶望的な実力だろう。
しかし、チェック・メイトは前を向く。
「わたしを正義の道に導いてくれた友……その父親である偉大なる
「キ……キン肉マンのことか」
キン肉万太郎の偉大なる父。現代の正義超人ならば、その名を知らぬ者はいない。
超人強度95万パワーである彼は、1000万パワーのバッファローマン、1500万パワーの悪魔将軍などを相手に一歩も引き下がらず闘い抜いてきた。
そしてもちろん、正義超人軍に白星を持ち帰り人類の平和を守ってきたのだ。
「正義超人にとって、数値上の実力差などあってないも同然。21世紀の正義超人……新世代超人を名乗るのであれば、これくらいの壁は乗り越えてみせねば」
キン肉マンの息子にして、チェック・メイトを正義の道に導いたキン肉万太郎ならばきっとこうするだろうから。
……いや、彼ならピーピー泣きわめいた挙げ句、メケメケZに菓子折りを贈って機嫌を取り是が非でも闘いを回避しそうではあるが。
「フッ」
が、己は己。
チェック・メイトは薄く笑い、リングへと進み出す。
「トアッ!」
ウォーミングアップも兼ねた跳躍からの宙返りで、華麗にリングインを果たす。
『あ~~っとチェック・メイト、どうやらこのまま本物のメケメケZと闘うようです!』
春日部スタジアムで静かに動向を見守っていた面々も、もう一試合始まると察し熱を取り戻した。
チェック・メイトは黒い球体に囚われたマサオくんに笑みを向ける。
「もう少し待っていてください、マサオくん。君はわたしが必ず助け出してみせます」
新世代超人の中でも礼儀正しく温厚なチェック・メイトの微笑は、絶望しかけていたマサオくんの心に安堵をもたらす。
「チェ……チェック・メイト~~ッ」
少し前まで怖くて泣いていた顔が、今度は嬉し涙を流す。
「フハハハハ、大した勇気だ」
メケメケZはチェック・メイトの闘志を感じ取り、口に咥えていたタバコを投げ捨てる。
そして彼に倣い、助走からの宙返りで鮮やかにリングインを果たした。
「さあ、2戦目のゴングを鳴らしてもらおうか!」
「待て! その前に今ポイ捨てしたタバコを拾え!」
「知ったことか! 試合開始だ!」
ポイ捨てを注意するチェック・メイトには取り合わず、メケメケZは急速で近づき肘を突き出した。
強烈な肘打ちがチェック・メイトの胸部を刺す。
『メケメケZの不意打ちエルボ~~ッ! 悪辣な一撃にチェック・メイトがいきなり尻もちをつく――っ』
ゴング前の奇襲。これぞ悪役と言わんばかりの一撃だった。
「ええーい! 試合開始~~っ!」
放送席のイケメンが慌ててゴングを叩く。
春日部スタジアムとベルーナドームに開戦の音色が鳴り響いた。
『さあ~~っ、今イケメン・マッスルの手により2戦目のゴングが鳴らされた――っ! 対戦カードはチェック・メイトvsメケメケZ! 先ほどイリューヒンが倒したレプリカ・メケメケZの10倍の実力を有するという真・メケメケZに対し、チェック・メイトははたしてどう立ち回るのか――っ!?』
奇襲に対応できず尻もちをついてしまったチェック・メイトだったが、ダメージは軽微。
即座に立ち上がり、腰に手を当てる余裕っぷりを見せるメケメケZを睨んだ。
「が、がんばれチェック・メイト――ッ!」
チェック・メイトの言葉に勇気をもらったマサオくんは、精一杯応援しようと力を込める。
だが、その子供特有の甲高い声がメケメケZの癪に障った。
「やかましいぞガキ! 耳障りだから黙っていろ!」
「ひぃいいいいい! ごめんなさいいいいいいいいい!!」
ドスの効いた声に凄まれ、マサオくんが一転して大泣きする。
「子供を大声で怒鳴って怖がらせるとは……許せん!」
チェック・メイトがメケメケZの蛮行を止めるべき仕掛けた。
『チェック・メイト、まずはストレートパンチを繰り出す――っ!』
初手はひねりなしの真っ向勝負。
相手の力量を計る意味合いもあった拳は、しかし。
『あ――っとメケメケZ、チェック・メイトのパンチを片手でキャッチした――っ』
「なんだこれは? アクション仮面のアクションパンチの足元にも及ばないな……」
想定を遥かに上回る容易さで防がれ、チェック・メイトの表情を凍りつかせる。
「フン!」
メケメケZはチェック・メイトの拳を握りしめたまま、がら空きのボディに足を突き刺す。
『メケメケZ、前蹴りでチェック・メイトをぶっ飛ばす――っ!』
大きく後退するチェック・メイトだったが、ブレーキはかけない。
『しかしチェック・メイト、ぶっ飛ばされた勢いのままロープの反動を利用し……』
相手の強力な攻撃は利用する。それが培ってきたテクニックだ。
ロープの跳ね返す力を味方につけ、前へ駆け出す。
「トア――ッ!」
敵との間合いを見極め、キャンバスを蹴ると同時に両脚を突き出した。
『加速式ドロップキックだ――っ!』
全体重を乗せたドロップキックは防御が通用する代物ではない。
ならば避けるか――といった思考は、悪の組織を束ねる首領の頭にはなかった。
「ぬるいわ!」
メケメケZは胸を張り、チェック・メイトの蹴りを受け止める。
『メケメケZの胸板がチェック・メイトのドロップキックを弾き返す――っ! この男、フィジカルもハンパじゃないぞ~~っ!』
ドロップキックを弾かれたチェック・メイトは不格好にキャンバスへ落下。
すぐさま体勢を立て直すが、目の前に立つメケメケZがノーダメージでいるのを見て愕然とした。
「どれ、私の実力がレプリカとは違うということをわかりやすく視覚で示してやるとしようじゃないか」
首をコキコキと鳴らすメケメケZ。
発言からもなにか技を繰り出す予兆を感じ、チェック・メイトが身構える。
「な、なにをするつもりだ?」
セコンドとしてリングエプロンに位置したイリューヒンが動向を窺う。
対峙しているチェック・メイトももちろんそうしていたが、メケメケZはなかなか動かない。
動かない――正しくは、“動いていないように見える”。
『ん……んんん!?』
棒立ちにも見えるメケメケZの姿が、横にスライドしていく。
右と左――ふたつに分かれる形で。
『こ……これは――っ!? メケメケZがふたりに分身した――っ!?』
チェック・メイトの正面に立っていたメケメケZが、左右に分かれふたりとなったのだ。
まるで最初から後ろにぴったり重なったもうひとりがいたかのように。
「ゲェ――ッ!? ぶ、分身~~っ!?」
チェック・メイトは目の前の光景が信じられず、滝汗をかいた。