アクションバース “キン肉マンⅡ世VSアクション仮面”   作:速筆魔王LX

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第003話 春日部にキャパ3万の新スタジアム!?

 某月某日――ついにその日はやってきた。

 

 場所は埼玉県春日部市に新設された多目的スタジアム。

 屋根のないタイプのスタジアムで、主にスポーツ競技などでの使用を前提として作られている。

 

 今日この日、スタジアムの中央には超人レスリング専用の四角いリングが設営されていた。

 さらにそこから続く二本の花道。

 それら闘士たちの決闘場を見下ろすのは、スタンド席にいる多くの観客たち。

 大多数は春日部在住の親子であり、お目当てはもちろん、子供たちのヒーローであるアクション仮面の晴れ舞台だった。

 

『さあ、いよいよこのときがやってまいりました。数ヶ月前に報じられました、みんなのヒーロー・アクション仮面が超人レスラーに転向するという大ニュース! 皆さんご存知“リアル超人レスラー”、伝説超人(レジェンド)ジェロニモ以来34年ぶりにスーパーマンロードの試練を乗り越え人間から超人となりました!』

 

 開戦を間近に控え、実況アナウンサーがこれまでの経緯を振り返る。

 アクション仮面はテレビ番組が作り上げた虚構のヒーロー、そしてその中の人はただの特撮俳優であり、人間だ。

 しかし人間は超人になれる。

 試練を乗り越え、神に認められさえすれば、まさしく人間を超越したパワーを得られ――真に悪と闘うことのできる肉体を手に入れることができるのだ。

 

 悪行超人という絶対悪が人類の脅威として君臨する21世紀の現代。

 アクション仮面はテレビの中のヒーローで収まることを良しとせず、超人となって本物のヒーローになる道を選択した。

 すなわち、今日はその初お披露目の日なのである。

 

『舞台はアクション仮面の祖国である日本! お披露目の舞台には、つい先日完成したばかりの春日部スタジアムが選ばれました。その収容人数は3万人超! ベルーナドームやさいたまスーパーアリーナ(GMOアリーナさいたま)にも負けておりません! いったい春日部のどこにそんな土地があったというのか~~っ!?』

 

 実況の力あるツッコミに、客席の地元民たちがドッと笑う。

 子供たちは大人のジョークがよくわかっておらず、持ち込んだアクション仮面グッズを手に試合が始まるのを今か今かと待ち望んでいた。

 

『さぁ~~っ、開幕まで間もなくですが、ここで春日部スタジアムが誇る超巨大モニターに動画を映しましょう。アクション仮面はなぜ超人になろうと思い至ったのか? 彼の心の内が語られます』

 

 どの席からもよく見える位置に、実況の言う超巨大モニターが設置されていた。

 先ほどまで暗くなっていた画面は、スイッチャースタッフの手により瞬時に映像を映し出す。

 

 現れたのは、青・緑・赤のトリコロールカラーで成るスーツを着込み、口元以外を覆う形のマスクを被った、ヒーロー然とした姿の人物だった。

 

『やあ、よいこのみんな。そしてそのお父さんお母さん。こんにちは。私は正義のヒーロー、アクション仮面だ』

 

 ご存知、アクション仮面の登場である。

 家のテレビよりも何倍も大きなモニターにアクション仮面が映っている!

 長らく待たされ少し飽きてきた子供たちもいる中、会場のボルテージは一気に盛り上がった。

 

『先日の“悪魔の種子(デーモンシード)”が起こした事件……ヒーローを名乗る者としては歯がゆい気持ちでいっぱいだった。新世代超人(ニュージェネレーション)の若者たちが命を削り闘っているというのに、超人ではないこの身はなんと無力なのだろうかと……このままでいいのか、いやいいわけがないと自問自答を繰り返した』

 

 ファンの子供たちの前で、葛藤を口にするアクション仮面。

 その真剣な表情は、騒いでいた子供たちの口を閉じさせた。

 

『そこで私は、人間の肉体を捨て超人に生まれ変わることを――正義超人として悪の脅威に備える決心をした』

 

 人間であることをやめる――という一大決心。

 それがどれだけ大きな決断であったかは、子供たちもなんとなく理解できる。

 アクション仮面から伝わってくる真剣さは、それほどのものだったのだ。

 

『我が師、ジェロニモ先生に倣いスーパーマンロードの試練に挑戦しこれをクリア……神に認められ超人となり、さらに正義超人軍への加入を果たすため、先の“悪魔の種子”との闘いで大活躍した超人オリンピック現チャンピオン、ケビンマスクに挑戦状を叩きつけた。すべては私の意志を――正義を示すために!』

 

 モニター上のアクション仮面が力強い握り拳を作ったところで、映像がブツリと切れた。

 子供たちがビクリと肩を震わせる中、実況が次の段取りに移る。

 

『これに対し、挑戦状を叩きつけられたケビンマスクの回答がこちらです』

 

 同じモニターに新たな映像が再生された。

 映っているのは、アクション仮面ではない。

 西洋騎士のようなフルフェイスの仮面を被り、ラフな黒いティーシャツを着る人物。

 先のアクション仮面の発言にもあった、超人オリンピック現チャンピオン――ケビンマスクである。

 

『テレビのイミテーションヒーローがなにやら意気がっているみたいだが……悪行超人との闘いは脚本のあるショーじゃねぇ。夢見がちなボウヤにオレが現実ってものをわからせてやるぜ』

 

 ケビンマスクの物言いはふてぶてしい。

 挑戦者への敬意のようなものは一切感じられず、おもむろに中指を突き立てようとしたところで――映像が再びブツリと切れた。

 

『さ、さすがは新世代超人軍随一のバッドボーイ! 相手がちびっこたちのヒーローだろうと忖度なし! これは新人であるアクション仮面としては厳しい闘いになるかもしれません!』

 

 ケビンマスクの映像が途切れたまま実況が仕事を果たし、会場内がワッと沸いた。

 今回の試合、特筆すべきはやはり『超人レスラーに転向したアクション仮面のデビュー戦』だが、その対戦相手はあの“超人オリンピック・ザ・レザレクション”覇者――全世界の超人レスラーの頂点に立った男、ケビンマスクなのである。

 彼を見るために観光地でもなんでもない春日部を訪れた超人レスリングファンも多く、チケットはあたりまえのようにソールドアウト。そんな盛況ぶりの中、地元の親子を無償招待した春日部市長は相当に懐が深いと評判が飛ぶほどだった。

 

 先日招待状が届いた野原一家も、もちろん観客席にいる。

 野原みさえは赤ん坊の野原ひまわり(0才)を抱っこしながら、隣の野原ひろしに言う。

 

「盛り上げてくれるわねー、ケビンマスク」

「ケビンマスクはあのロビンマスクの息子だからな。実力はもちろんマイクパフォーマンスだって一級品さ」

「ひまも楽しみよねー?」

 

 みさえは腕の中にいるひまわりの頬をつつきながら言うが、

 

「たい」

 

 生まれて一年も経っていない赤ん坊のひまわりには、超人レスリングのことなどなにもわからない。

 ただ無邪気な相槌を返すのみである。

 

 ところで、野原一家は四人家族である。

 みさえは一番騒がしい長男坊が見当たらないことに気づいた。

 

「あれ? そういえばしんのすけは?」

「トイレに行くとか言ってたけど」

「やだ、こんな広い会場で迷子にならないかしら」

 

 0才児のひまわりとは違い、しんのすけはもう5才児。ひとりでトイレくらい行ける。

 それでも、ここ春日部スタジアムは3万人もの人が集まる大型施設。しかも初めて来た場所だ。

 ちゃんと自分たちのところに戻ってこれるだろうか――と、ひろしとみさえは親として当然の心配をし始めるのだった。

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