アクションバース “キン肉マンⅡ世VSアクション仮面”   作:速筆魔王LX

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第032話 チェック・メイトの正義超人魂!

 ベルーナドームに響き渡るふたり分のチェック・メイトコール。

 たかがふたり、されどふたり。

 熱意の籠もった発声に、チェック・メイトの心が震え上がる。

 

『たったふたりの応援団がチェック・メイトにエールを送る――っ! その熱量は西武ライオンズの応援団に勝るとも劣らない! ベルーナドームの熱は今、完全にこのふたりが支配している――っ!』

 

「チェック! チェック!」

 

 シンヤが声を張り上げ、手に持ったフィギュアを力一杯振りかざす。

 

「メケメケZがなんだ――っ! おれがついてるぞ、チェック・メイト――ッ!」

 

 先ほどまでの臆病だった性格を潜め、男らしさ全開で叫ぶマサオくん。

 ふたりの呼応する大声援がドームの天井で反響し、リングへと降り注ぐ。

 

「ヌウ……!」

 

 思わぬ伏兵の妨害に、メケメケZは苦々しく歯噛みした。

 

「ええい、目障りだ! 戦闘員共よ! あの人間を黙らせろ!」

 

 苛立ちを隠せないメケメケZが、リングの周囲に控えていた黒ずくめの部下たちへ指図を飛ばす。

 

「ビー!」

 

 これぞ悪の組織の戦闘員というべき掛け声で応え、100人はいようかという黒服が一斉に振り返る。

 “B”と書かれた顔面が向く先は、もちろんスタンド席――そこにいるシンヤだった。

 

「させるか!」

 

 危機を察知したイリューヒンが軋む体に鞭を打ち、飛び上がる。

 

「ヴィタルリオート遺伝子(ジェネティック)――ッ!」

 

 体を様々な飛行機に変形させる“飛行機遺伝子(エアクラフトジェネティック)”。

 今回選んだのは、ブレードローターが鋭く回転する空戦機体だった。

 

『高くジャンプしたイリューヒン、そのまま空中でAH-64アパッチ……攻撃ヘリコプターに変身した――っ!』

 

 機体を前傾にしながら飛行し、ブレードローターを前に向ける。

 そのまま戦闘員たちの群れに特攻し、黒色の団員服を切り裂いていった。

 

「シベリアンタルラーナ!」

 

『プ……プロペラの大回転でブラックメケメケ団戦闘員を蹴散らしていく~~っ!』

 

 特撮番組“アクション仮面”ではただのやられ役に過ぎないブラックメケメケ団戦闘員。

 殺人ヘリコプターの特攻にできることなどなにもなく、情けない悲鳴を上げることしかできない。

 

「ビ、ビ~~ッ!」

 

 ズタズタにされたのは10人ほどだが、その惨状を見た他の戦闘員たちは恐怖で一歩も動けなくなる。

 イリューヒンは再び空へと舞い上がり、元の姿に戻りながらシンヤの前に降り立った。

 

「激闘の直後だが、ザコの相手ができないほど疲れちゃいね~~っ」

 

 シンヤを背中側に回し、ブラックメケメケ団に対しては睨みを効かせる。

 

「人間を守るのが正義超人の使命」

 

 かつて“悪魔の種子(デーモンシード)”に対抗するため、スカーフェイスやバリアフリーマンと共にアイドル超人軍を結成したイリューヒン。

 もはや己はロシアの尖兵ではない――21世紀の新世代超人(ニュージェネレーション)、そしてヒーローとしての誇りを背負って立つ。

 

「オレの目の前でシンヤに手出しはさせん!」

「イリューヒン!」

 

 感極まるシンヤ。

 その光景を見届けたマサオくんは、リング上の手負いの超人へ向けてさらに激を飛ばす。

 

「イリューヒンが根性見せたぞ! おまえはどうなんだチェック・メイト!」

 

 キャンバスに突っ伏していたチェック・メイトの口元から、フッと微笑がこぼれた。

 

「フフフ……ハハハッ」

 

 微笑はやがて大きな笑い声となり、傷ついたチェック・メイトの身に活力を与える。

 

「今ようやくわかりましたよ。万太郎……あなたはいつもこんな気持ちで闘っていたんですね」

 

『チェ……チェック・メイトが立った――っ!』

 

 火事場のクソ力修練(チャレンジ)、超人オリンピック・ザ・レザレクション決勝、そして対アシュラマン等……リング上の友に声援を送る側であったことのほうが多いチェック・メイトだった。

 だが、今この場にキン肉万太郎はいない。

 闘っているのはチェック・メイト本人。

 マサオくんを救い、シンヤのエールに応えることができるのもチェック・メイトしかいないのだ。

 

「チッ。正義の味方というのは三文芝居が好きだな」

 

 立ち上がってきたチェック・メイトを不快そうに眺め、メケメケZは構えを取る。

 さらに構えるだけでなく、その姿が横にぶれ、スライドするようにもうひとりの自分を作り出した。

 

「立ち上がってくるならば、もう一度叩きのめすまで!」

 

 超スピードによる分身殺法で、チェック・メイトに再びの苦しみを与えようとほくそ笑む。

 

『メケメケZ、再度分身して構える――っ』

 

 昇技トライアングル・ドリーマーをくらったイメージが頭に残るチェック・メイトは、しかし怯まない。

 淀みない手つきで左肩――“城(ルーク)”の駒が載る位置のボタンを押した。

 

「チェス・駒(ピース)・チェンジ!」

 

 カチリと音が鳴り、首の“王様(キング)”パーツが体内に引っ込む。

 それと同時に、左肩の“城”も体内へ。

 

「お馬さんごっこならもう見切ったよ!」

 

 またケンタウロスになるつもりだろうと読んでいたメケメケZは、チェック・メイトの左右にバラける。

 しかしながら、チェック・メイトが押したのは“馬(ナイト)”が位置する右肩ではなく左肩のボタン。

 それが意味するところを、外の世界から来たメケメケZは知らない。

 

「チェスの駒は馬だけではない!」

 

 チェック・メイトの首があった位置に“城”が、左肩に“王様”の頭部がポジションチェンジ。

 それに合わせて全身が堅牢な城壁を思わせるかのように硬質化していった。

 構わず、メケメケZは左右別方向からチェック・メイトの首めがけてハイキックを叩き込む。

 

『メケメケZ、電光石火の仕掛けでクロス延髄を決める――っ!』

 

 一撃でも致命傷となりうる頚椎への打撃を、分身体とふたりで同時に決めたのだ。

 大ダメージは必至。“馬”のような馬蹴りによる反撃もなし。KOは確実だ。

 そう思ったのだが――

 

「か、硬い!?」

 

 メケメケZはすぐに思い直す。

 足に伝わる衝撃、肉を打ったとは思えない歪な打撃音、そしてなによりチェック・メイトの異様。

 これは先ほどの“馬”とはまた異なる特性を持った変身体なのだと、瞬時に理解した。

 

『あ――っとしかしチェック・メイト、微動だにしていない! 頑強なレンガボディに変身し、メケメケZの攻撃を防いでいる――っ!』

 

「防御特化の“城”形態! いくら分身しようが、この堅牢な城を攻略することは不可能だ!」

 

 咄嗟に飛び退き十分な距離を取るメケメケZ。

 “馬”が文字どおり馬の脚力と重量を得るならば、“城”もそのとおり城のごとき防御力を持つのだろう。

 

「では破城槌を用意するとしよう!」

 

 パンチやキックで城壁を壊すのは無謀――だがメケメケZには科学の粋を結集した武器がある。

 両腕を突き出し、手首から展開されし砲口が黒光りする電撃を放った。

 

「ブラックビーム!」

 

 一直線に伸びる破城槌どころではない破壊エネルギーに、しかしチェック・メイトは動かない。

 どんなに硬い城とて砲撃を受ければひとたまりもないが、その城が“移動可能”だとしたら?

 

「オープン・ザ・ルークゲート!」

 

 直撃の瞬間、チェック・メイトの胴体が上下に分割された。

 

『な……なんとチェック・メイト、“城”のボディを上半身と下半身に分け、生じた隙間にブラックビームを通過させることでこれを回避してしまった――っ!』

 

「な……なにィ!?」

 

 体をバラバラにしてブラックビームを避けるなど、宿敵アクション仮面ですら不可能な芸当だ。

 驚愕するメケメケZの隙を逃さず、分離したチェック・メイトの上半身が宙を滑るように前方へ突き進む。

 

「セヤタ――ッ!」

 

 “城”駒のデザインを活かしたヘッドバットでメケメケZの腹を抉る。

 

『上半身はそのままメケメケZを捉え……』

 

 相手の腹部に“城”をめり込ませた状態で角度を変更、ロケットのごとく空へと向かう。

 

『天高く上昇――っ!』

 

 宙を浮くチェック・メイトの上半身とメケメケZ。

 残された下半身も、ジャンプで続いた。

 

『下半身もそれを追う――っ!』

 

 十分な高さまで飛んだところで体勢を天地逆転、重力に従いながら地に向かう。

 その際、落下地点をリングの端に微調整する。

 

『双方逆さになり……コーナーの鉄柱に落ちようとしているぞ――っ!』

 

 リングの中で最も硬い部分であり、攻撃に利用されることもままあるコーナーの鉄柱。

 その座標がメケメケZの背中に重なり、腹部にめり込んだ“城”の上半身にサンドされる形で衝突。

 さらに追いかけてきた下半身が上半身と連結、合体の衝撃も加わった2連撃を叩き込んだ。

 

「ルーク・スカイツイスタ――ッ!」

 

 “城”チェック・メイトの必殺技(フェイバリット)、ルーク・スカイツイスターの完成である。

 

「ガガゲホッ!」

 

 衝撃でメケメケZの口からオイル混じりの黒い煙が噴き出す。

 大打撃を受けた体はリング内に落下。

 “城”チェック・メイトは好機と見て畳み掛ける。

 

「“城”の攻勢はまだまだこんなものではない!」

 

 メケメケZのダウンを許さず、後ろから両脇を抱え込むフルネルソンの体勢になる。

 そして再び、先ほどのオープン・ザ・ルークゲートの要領で上半身と下半身を分割させたのだ。

 

『メケメケZを捕らえた上半身が再び空へ射出され……逆さ状態で錐揉み落下してくるぞ――っ!』

 

 今回、下半身は上半身を追わずなりゆきを見守っている。

 この技は上半身だけで完成するからだ。

 

「あの技は……まさか!?」

 

 イリューヒンが息を呑む。

 チェック・メイトが狙っているのは――相手を羽交い締めにし、天高く上昇してからの錐揉み落下による激突技。

 それは先の試合でも繰り出したイリューヒンの必殺技と同じ形であった。

 

「イミテーション・ザ・タービュレンス――――ッ!!」

 

 友の技を模倣した一撃により、メケメケZの頭部がキャンバスに叩き込まれた。

 

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