アクションバース “キン肉マンⅡ世VSアクション仮面”   作:速筆魔王LX

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第033話 “悪魔”と“正義”のハイブリッド!

 チェス・駒(ピース)・チェンジで“城(ルーク)”形態に変身してから、相手をフルネルソンに捕らえ上半身を分離、ロケットのように射出し敵もろとも錐揉み落下させるという荒業。

 チェック・メイトが繰り出した起死回生の一撃は、メケメケZの頭部をキャンバスにめり込ませた。

 

『チェック・メイト、イミテーションの名のとおり……仲間であるイリューヒンの必殺技(フェイバリット)を模倣しメケメケZに炸裂させた――っ!』

 

 頭からキャンバスに突き刺さるメケメケZと、分離状態から再合体し元の“王様(キング)”形態に戻るチェック・メイト。

 まさか飛行能力を持たないチェック・メイトがオレの技を模倣するとは――と、イリューヒンは身を乗り出し叫ぶ。

 

「ビバチェック・メイト!」

 

 共にメケメケZ打倒に乗り出たイリューヒンはもちろん、即席応援団のシンヤとマサオくんもガッツポーズを取る。

 それだけの衝撃的光景、それだけの期待。

 実況も囃し立てる。

 

『ファンの間では“アクション仮面最大の難敵”との呼び声も高いあのメケメケZが、キャンバスに頭を埋め込ませ沈黙している――っ! まさか悪の首領のこんな姿を目にすることになるとは……これで決着か――っ!?』

 

 試合の空気はチェック・メイトの勝利一色。

 だがリングに立っている本人は気を抜かない。

 

「手応えはあった……が」

 

 直前までのメケメケZのダメージを鑑みれば、あの一撃で一発逆転とは思えなかった。

 チェック・メイトの疑念の答えとして、くぐもった声がキャンバスにのめり込んだ部分から響く。

 

「仲間の技なら私が倒せるとでも?」

 

 聞こえた途端、首の力だけで飛び上がるメケメケZ。

 即座に体勢を立て直し、2本の足で再びリングに立つ。

 

「飛行超人ではない貴様では上昇力も加速も足りていない! 私を倒すには不十分だ!」

 

『あ~~っとメケメケZは死んでいない! 自力で脱出し逆襲の構えを取る――っ』

 

 そう、イリューヒンの必殺技“ザ・タービュレンス”は彼の特殊能力である飛行機遺伝子(エアクラフトジェネティック)をかけ合わせてこそ。

 自分なりに仲間へのリスペクトを込めた一撃だったが、やはり付け焼き刃でメケメケZを倒すことはできないか。

 イリューヒン、シンヤ、マサオくんが落胆する中――

 

「結構!」

 

 チェック・メイトだけは表情を変えず、強く言い放った。

 

「わたしも究極奥義を出す前に倒れられてはリングに上がった甲斐がない! お見せしよう……チェス・駒(ピース)・チェンジの最終形態を!」

 

 言いながら両肩のボタンを同時に押し、奥の手を繰り出す。

 

「“王様・馬・城(グランドスラム)”――ッ!」

 

 右肩の“馬(ナイト)”、左肩“城”、中央の“王様”が一斉に体内へ収納されていく。

 全身が“城”形態のように硬質化し、下半身は“馬”形態のような馬体へと変化。

 そして、首の位置には“王様”、“馬”、“城”を三分割したような頭が出現した。

 

『チェック・メイト、今までの王様・馬・城、すべてを複合させたような姿に変身した――っ!』

 

 これこそが、“王様”の明晰な頭脳と“馬”の体のしなやかさ、“城”の体の頑丈さを併せ持つチェック・メイトの奥の手――グランドスラム。

 その明らかな異様に、しかしメケメケZの戦意は微塵も揺るがなかった。

 

「虚仮威しを!」

 

 猛然とした勢いで肉薄し、正面から拳を繰り出す。

 

『かつてアクションパンチと渡り合ったメケメケパンチがチェック・メイトの正中線を射抜く――っ!』

 

 常ならば肋骨を粉砕し心の臓を破裂させただろう一撃は、

 

「グヌ……」

 

 確かな衝撃音を響かせるだけに終わった。

 メケメケZは想定外の感触に顔を強張らせている。

 胸のど真ん中にパンチをくらったチェック・メイトは、平静だった。

 

「“城”の防御力」

 

 効いていない、という意味を込めた言葉を告げる。

 

『“王様・馬・城”チェック・メイト、メケメケZの攻撃を受けながらビクともしない――っ!』

 

 この“王様・馬・城”は、見た目どおりチェック・メイトがこれまで見せた全形態の能力を有するのだ。

 もちろん、馬の下半身にも意味はある。

 

「“馬”の脚力!」

 

 間髪入れず、チェック・メイトの馬脚がしなり、鞭のような一撃がメケメケZの腹部を直撃する。

 

『そしてメケメケZを強烈な馬蹴りでぶっ飛ばす――っ!』

 

 強力な前蹴りでキャンバスを転がったメケメケZは、しかしすぐさま体勢を立て直し身構えた。

 

「なるほど。これが貴様のチェス駒(ピース)戦法……たしかに厄介だ」

 

 馬の機動力と城の防御力。それらふたつを同時に使われてはチェックは難しいだろう。

 もっともそれは、この試合が盤上遊戯ならの話。

 

「だがね。バカ正直にナイトやルークとやり合わなくてもキングは取れる。私もとっておきを出そう」

 

 メケメケZの目が怪しく光り――瞬間、彼の身はチェック・メイトの懐に飛び込んでいた。

 

「なっ!?」

 

 ここにきて速度を上げた!?

 一瞬でゼロ距離まで踏み込まれ、対処に迷うチェック・メイト。

 その致命的なまでの逡巡の間に、メケメケZは両手をチェック・メイトの腹部に当てていた。

 

「くらえ! ゼロ距離ブラックビーム!!」

 

 メケメケZの両手首から開いた砲口が、黒光りする電撃を放つ。

 

『メケメケZ、なんと最大の必殺技であるブラックビームをチェック・メイトの懐から接射――っ!』

 

 チェック・メイトの体が激しい閃光に包まれる。

 ゼロ距離で放たれては体を分離させての回避も通用しない。

 メケメケZはビームの照射を続けながら、勝ち誇った高笑いを上げた。

 

「フハハハハハ! どうだ!? その形態でもこれはさすがに効くだろう!? 詰み(チェック・メイト)だよ!」

 

 勝ちを確信してのチェック宣言。

 優れたプレイヤーであるならば“リザイン(投了)”を告げるものだが――やはりこれは、盤上遊戯(チェス)ではない。

 

 チェック・メイトは両腕を伸ばし、メケメケZの体をひしっと抱きしめる。

 

「は?」

 

 突然の包容に素っ頓狂な声を上げるメケメケZ。

 なんだこれは、格闘技でいうクリンチというやつか、そんな真似をしたところでビームの放出はやめないぞ。

 瞬時にそういった思考が駆け巡るが、チェック・メイトの目的は別のところにあった。

 

 メリメリ……ギチチチッ!

 

「が……がぁ!?」

 

 メケメケZの装甲が悲鳴を上げる。

 チェック・メイトの全身の筋肉が躍動し、メケメケZの腰を粉砕せんと絞り上げていた。

 

『こ……これは……鯖折りだ――っ!』

 

 鯖折り。

 もともとは相撲の技名、レスリングではベアハッグと呼ばれる。

 相手の胴体に腕を回して絞め上げる単純な技だが、超人レスラーが行うそれはそのまま相手の腰骨を粉砕する威力があった。

 

「バカな! 効いていないのか!?」

 

 メケメケZは全身を絞り上げられながらも驚愕の声を上げる。

 城壁すら破壊する破城槌のごとき威力を持ったブラックビームをくらいながら、こんな力任せな技を仕掛けるなど道理に合わない。

 激痛に耐え兼ね血と油を吐くメケメケZに対し、チェック・メイトはくぐもった声で答える。

 

「効いていますとも……ですが、わたしは育ての親だった師に少し特殊な鍛え方をされていましてね。痛みに鈍感なんです」

 

 チェック・メイトは思い出す――生粋の悪魔超人であった師、サンシャインの地獄のようなしごきを。

 師は弟子を10年以上痛めつけ、痛い、苦しい、つらいといったネガティブ概念をことごとく排除していった。

 そうして悪魔超人根性が染みついたチェック・メイトの体は、ちょっとした痛みでは動じない屈強なものへと変わっていったである。

 

「今では感謝していますよ、サンシャインヘッド……あなたが注入してくれた悪魔超人魂が、今ではこうして正義超人としての闘いで活かされている。さあ~~っ、教えてもらいましょうかメケメケZ。イタイとはどういう感情なのか……そんなにも頬が紅潮し、脂汗が出るものなのですか~~っ?」

 

「な……なんだこいつは!? 気色悪い!」

 

 闘いのために痛みといった概念を取り除くなど、ブラックメケメケ団でもそんなことはしないぞ!?

 この世界の悪党、悪魔超人とはそこまでするのか――メケメケZが精神的にも押され始めた。

 それを、チェック・メイトは最大の好機と見た。

 

「さあ~~っ、次はわたしの必殺技をくらっていただこう!」

 

 ベアハッグを解き、力を失ったメケメケZの体をリバース・フルネルソンに捕らえる。

 

『チェック・メイト、メケメケZを空中に放り投げた――っ!』

 

 上空への投げ。直前まで全身を痛めつけられていたメケメケZでは姿勢制御もままならないだろう。

 

「タァ――ッ!」

 

 チェック・メイトはそんなメケメケZを追いかけて飛び、すぐに追い越した。

 

『そして自身も飛び上がり、メケメケZの真上にポジショニング――ッ!』

 

 メケメケZは空中で逆さまになっている。

 チェック・メイトはその真上に位置し、馬の前足を標的の両足裏にピタリと合わせた。

 

「この技は……!」

 

 イリューヒンが思い浮かべるのは、チェック・メイトがモナコ代表を勝ち取った際の新聞記事の写真。

 

「チェック・メイトのフィニッシュ・ホールド!」

 

 彼の試合をすべて追っているシンヤは間違えようがないと表情を輝かせる。

 

「決め時だ! 気合い入れろ、チェック・メイト――ッ!」

 

 マサオくんは腹に力を込め、全力でチェック・メイトの名を呼んだ。

 

「“王様・馬・城(グランドスラム)”……」

 

 チェック・メイトは真下にメケメケZを捕らえたまま降下。

 凄まじい加速がドームの空気を切り裂く。

 全体重を乗せ、相手を首からキャンバスへ叩き落とす――これぞ、チェック・メイトの必殺技。

 

「馬式誉れ落とし――――っ!!」

 

 ドーム全体を揺るがす天地開闢の激突音。

 白いキャンバスが陥没したかのように歪み、メケメケZの体が沈み込んだ。

 

「ゴ……ゴブァッ」

 

 口からは血のような油のような液体が飛び散り、関節の隙間から煙が上がる。

 それを見届けたチェック・メイトは、“王様・馬・城”形態を解除。

 三位一体となった頭部が胴体に収納され、元の“王様”の首がせり上がってくる。

 

 戦闘モードを解いたチェック・メイトと、倒れたまま沈黙するメケメケZ。

 明確な勝者と敗者の構図に、春日部スタジアム本部席のイケメン・マッスルが木槌を振り上げた。

 

「ゴングだ!」

 

 怪人に改造されなくてよかった~~っ!という意気を込めながら、けたたましくゴングを連打する。

 

『け……決着~~っ! 圧倒的な力を見せつけていたメケメケZですが、チェック・メイトのグランドスラム馬式誉れ落としをくらい、ついに沈黙! 新世代超人(ニュージェネレーション)の実力派コンビがブラックメケメケ団の野望を打ち砕きました――っ!』

 

「やったー! チェック・メイト!」

「お見事!」

 

 シンヤとイリューヒンが勝利を称える歓声を上げる。

 リング上空では、メケメケZの完全敗北に伴い、マサオくんを閉じ込めていた黒い球体の檻がパッと霧のように消滅した。

 

「ハーッ!」

 

 上空から投げ出されたマサオくんは、しかし空中で華麗に三回転半の宙返りを決める。

 

「ホッ!」

 

 そして猫のようなしなやかさでリングに着地。

 愛しのあいちゃんが見ていたらときめいてしまうだろう男らしい顔つきで、倒れているメケメケZの相貌を睨み据えた。

 己を人質にしていた悪の権化はピクリとも動かず、ボロ雑巾のように転がるのみ。

 

 この世に悪の栄えた試しなし――マサオくんは正義を胸に言い放つ。

 

「ヘッ! 口ほどにもねぇぜ!」

 

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