アクションバース “キン肉マンⅡ世VSアクション仮面” 作:速筆魔王LX
パラダイスキングとの激戦を終え、東武動物公園に平和が訪れた。
リング上に残ったセイウチンとガゼルマン、救出されたボーちゃん、ネプチューンマンは王の去り際の顔を記憶に宿し、戦場をあとにしようとしていた。
そのとき、春日部スタジアムと中継を繋げていたモニターに女性の顔が映る。
「よくやってくれました。ガゼルマンにセイウチン。それにネプチューンマンも」
「あ、ジャクリーン」
怒涛の3試合の審判を務めた宇宙超人委員会副委員長ジャクリーン・マッスルだ。
セイウチンをはじめとした面々はモニター上の彼女と向き合い、労いの言葉を受ける。
「これで
正義超人総勢10名で挑んだミッションの経過報告。
その喜ばしい戦果に、ガゼルマンとセイウチンが前のめりになる。
「おお!」
「オラたちの他にも2組勝利したんだな!」
ジャクリーンとしても安心するところが多いのだろう。微笑みと共に頷く。
「ええ。テリー・ザ・キッド&バリアフリーマン組がハイレグ魔王を撃破し風間トオルくんを……イリューヒン&チェック・メイト組もメケメケZを倒し、マサオくんを助け出しています」
「風間くん、マサオくん……!」
一緒に悪党に連れ攫われた友達の名を聞き、ボーちゃんも笑みをほころばせた。
ガゼルマンは言う。
「ということは、あとは……野原ひまわりちゃんを連れ去ったアクション仮面と、桜田ネネちゃんを連れ去った謎の全身マント男か」
「こっちの残りは万太郎のアニキ&ミートくんと、スカー&ジェイドだな」
消去法で残ったメンバーを挙げるガゼルマンとセイウチン。
横で話を聞いていたネプチューンマンが問う。
「私はまだ事情をよく知らんのだが、アクション仮面が敵になっているのか?」
もともとネプチューンマンが日本を訪れたのは、ジェロニモ以来34年ぶりに人間から超人になった若者がケビンマスクに挑むという驚天動地のニュースを聞きつけたからだ。
結果的に己のポカで試合は見逃し、なんの因果かそこから発展した悪党退治の一助になりはしたが、事のあらましはまだ聞き及んでいない。
ガゼルマンは簡潔に伝える。
「詳細は不明だが、あの大魔王サタンが降臨し彼になにかをした……その結果アクション仮面は暴走、ケビンマスクやジェロニモ先生、さらにオレたち現役の正義超人を堕落した悪行・正義超人と断じ、粛清すると宣言した」
セイウチンもそれに続いた。
「それに乗っかったのがサタンだ。やつは別の世界からアクション仮面と敵対したことがあるというライバルたちを呼び寄せ、アクション仮面の味方……つまりオラたちの敵に仕立て上げた。その上で、春日部に住む人間の子供たちを人質にさらっていったんだ」
ふたりの話を聞き、ふーむと顎を撫でるネプチューンマン。
ガゼルマンとセイウチンはお互いの顔を見合わせ、敵側へと堕ちたアクション仮面について語る。
「しかもアクション仮面は昔猛威を振るったカピラリア七光線という毒素を含んだアクションビームを使う。その威力は超人オリンピック現チャンピオンであるケビンマスクをKO寸前まで追い込んだほどだ」
「んだな……万太郎のアニキにしても、スカーやジェイドにしても、アクション仮面との対決は大苦戦するに違いねえだよ」
ここまでトータルでは勝ち越しているとはいえ、楽観はできない。
アクション仮面こそが最大の難敵――そう認識するふたりに対し、ネプチューンマンは己の見解を告げる。
「私はむしろ、もうひとりのほう……謎のマント男というのが気にかかるな」
それは、語られた中でも人一倍情報の少ない謎の敵。
あるいは、だからこそなのか。ネプチューンマンの警戒センサーがビンビンと反応する。
「これはあくまでも超人界での話だが……自らの正体を隠したがるやつというのは昔からクセ者が多い。何者かは知らんが、アクション仮面のライバルというネームバリューが保証されているのも厄介だ。はたして我々の力が通用するような相手かどうか……」
昔風に言うならば“ミステリアス・パートナー”といったところか。
ネプチューンマン自身も“宇宙超人タッグ・トーナメント”出場時は変装し正体を隠していた。
そういった経験から、そのマント男は想像を絶するような相手かもしれない――と予想を立てる。
熟練の先輩超人が放つ緊張感に、ガゼルマンとセイウチン、そしてボーちゃんもごくりと息を呑む。
「アクション仮面はこれまでにもいろんな敵と闘ってきた」
「別世界のライバルともなると……どんなやつか想像もつかねえだな」
「ボー……」
東武動物公園の晴れ渡る空を見つめる4人。
はたして謎のマント男、そして彼に連れ攫われた桜田ネネちゃんはどこに飛び去ったのか――
◇
シュルラララララ――ッ!
渦巻く黒い穴――ワープホールが大きく広がり、中の洞穴を移動していた超人たちを排出する。
勢い良く飛び出た影の数は、ふたつ。
「ハァア――ッ!」
ワープホールは地上から2メートルほどの高さにあったが、問題なく着地を決める両者。
一方は額にドミノマスクを携え燕のような尾を持つ男。
もう一方は頭に緑色のヘルメットを被る男だった。
「フゥー。ずいぶん長いことワープホールの中にいた気がするが、ようやく出てこられたぜ」
そう言ったのは、“蒼白き脳細胞”の異名を取る正義超人、スカーフェイスである。
「さて、鬼が出るか蛇が出るか……ここはどこだ?」
そして彼の隣に降り立ったのは、“
ミートの采配でペアを組むこととなったふたりは、ワープホールが誘った現在地を目視で確認する。
埼玉県春日部市に位置する春日部スタジアムからわざわざ超常の移動手段で飛ばされてきたのだ。
もしやここは地球の裏側か、あるいは遠く離れた宇宙の彼方か……と覚悟してはみたが。
「せ……西武園ゆうえんち!」
目の前にそびえる入場口のようなゲート、そしてそこに堂々刻まれた施設名を確認し、仰天する。
「埼玉県が誇る老舗遊園地!」
「春日部から電車でいける距離じゃねーか! ワープホールなんて大げさな真似しやがって!」
ジェイドもスカーフェイスも拍子抜けしたとばかりに文句を言う。
西武園ゆうえんち――そこは70年以上もの歴史を持つ埼玉県の老舗遊園地だ。
昭和レトロを売りにした、懐かしい世界観に浸れるテーマパーク。
その一方で近年はアニメ系コンテンツとのコラボなども盛んに行われている。
懐かしさと新しさの両立を目指した、新世代の看板を掲げる身からしても見習うべき点が多い施設だが――
「しかしまさか、ここにオレたちの対戦相手がいるってのか? 遊園地だぜ?」
スカーフェイスはここに子供を救出に、そして悪党を退治しに来たのである。
怪訝に思うのは当然のこと。だが傍らにいるジェイドは言う。
「ヘラクレス・ファクトリー一期二期入れ替え戦を思い出せ。こういったレジャー施設に特設リングが設けられることは珍しいことじゃない」
「入れ替え戦……たしかあのときは横浜の八景島シーパラダイスだったな」
「そういうことだ。油断せずにいこう」
互いに頷き合い、ジェイドとスカーフェイスは歩を進める。
入場ゲートを潜り、西武園ゆうえんちへと第一歩を踏み出したのである。
園内に変わった様子はない。
日中ということで各アトラクションも通常どおり営業しているし、スタッフも客もいる。
いたって普通の遊園地――しかしながら、ジェイドには気になる点もあった。
「ウ~ム」
「どうしたジェイド」
訝しむ相方の様子を察したスカーフェイスが尋ねると、ジェイドは胸中の疑問を口にする。
「なんというか……世界観が妙だと思ってな。西武園ゆうえんちってのはこんなだったか?」
西武園ゆうえんちといえば、昭和レトロを売り文句にした昔懐かしい風情の遊園地だったはずだ。
だがこうやって歩く園内の雰囲気はもっと近代的というか、今どきというか……トレンドに則しているような気がする。
たとえばそう、日本の首都・東京の名を冠する某夢の王国のような風情すら感じられた。
「テーマパークなんてのはどこもこんなもんだろう。細かいこと気にすんな」
ジェイドの抱いた違和感を、しかしスカーフェイスはバッサリと切って捨てる。
「それより見ろ、ジェットコースターだぜ」
その一方でスカーが指し示したのは、遊園地の王道アトラクションだった。
「知っているかジェイド。オレたちが闘った八景島シーパラダイスもここと同じ西武グループ……一部アトラクションは同系統機種が導入されている。そんな場所にオレたちふたりが足を踏み入れたのもなにかの縁」
スカーフェイスは口元で笑み、体の向きを眼前のジェットコースターへ変える。
「どれ、いっちょ横浜の八景島シーパラダイスにあったループコースターとどっちが怖いか乗り比べてやろうじゃねえか」
「お、おいスカー。今オレたちは重大なミッション中だぞ。遊んでいる暇は……」
制止しようとしたジェイドだったが、スカーフェイスはチッチッチッと指を振る。
「あまいぜジェイド。ここはすでに敵のシマ……ビビってる姿ばかり見せてちゃナメられちまう。むしろ遊ぶ余裕を見せつけ相手を逆にビビらせてやるくらいじゃないとな」
正義と悪の闘いというのは単純な力と技の押しつけ合いではなく、プライドの押しつけ合いでもある。
精神面での駆け引きも得意とするスカーならではの論調に、ジェイドは自然と頷いてしまうものがあった。
「一理あるか……」
そう口に出し、彼のあとを追いかける。
ジェットコースターは幸いにも待ち時間なく乗ることができ、ジェイドとスカーフェイスは係員の指示に従いながら横並びのシートについた。
安全バーを下ろし、ジェットコースターが動き出すのに備える。
「超人レスリングに比べりゃ屁でもねぇ」
ジェイドの横で、スカーフェイスは得意げな笑みを浮かべる。
スカーフェイスは八景島シーパラダイスのループコースターも余裕で攻略してみせた豪胆無比な男。
昭和の香りが漂う古臭いジェットコースターに遅れを取るなど、ありえはしない――
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
――ジェットコースターはふたりの超人の予想を遥かに超える速度とムーブで爆進、そして停止。
あっという間の一周だったが、スタート地点に戻ってきたジェイドとスカーの頬には冷や汗とのあとがあった。
「おもしろかったぜ」
安全バーが上がるのを確認してから外に降り、不遜に腕組みしながら感想を語るスカーフェイス。
ジェイドも同じようにし、ぷるぷると震えている足に力を入れてからその場をあとにした。
「八景島シーパラダイスのループコースターとどっちが怖かった?」
「オレに言わせりゃどっちも子供騙しだな」
スカーフェイスは悲鳴飛び交うジェットコースターを背にしながらそう豪語する。
もし敵がこちらの様子を見ていたとしたら、その度胸に思わずビビってしまうことだろう。
精神的なアドバンテージはすでに得たも同然。このあとに待ち受ける闘いでもきっと有利に働くに違いない。
ジェイドとスカーフェイスがそんなふうに園内を歩いていた――そのときである。
「ン!?」
「な、なんだ!?」
目の前に――否、周囲全体に。
異形の“怪人”が現れた。
体躯に見合わぬ巨大な頭部。
尖った耳。
ギョロリとした目。
剥き出しの歯。
どこを取っても人間ではありえない外見。
それらが複数人、ジェイドとスカーフェイスを取り囲み狂気的な笑みを向ける。