アクションバース “キン肉マンⅡ世VSアクション仮面”   作:速筆魔王LX

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第005話 アクション仮面の師匠超人!

 春日部スタジアム内、アクション仮面の控室。

 試合開始を間近に控え、ひとりの男がウォーミングアップに励んでいた。

 

「フン! フン! フン!」

 

 青、緑、赤のトリコロールカラーのスーツを着込む彼こそ、話題の人物であるアクション仮面だ。

 ダイナミックなヒンズースクワットで汗を流し、キリの良い数字に到達したところで停止。

 タオルで汗を拭い、水の入ったボトルを一気に煽る。

 

「フゥ――ッ」

 

 水分補給を終えたそのタイミングで、控室のドアがガチャリと開く。

 ノックを必要としないのは、縁者が来訪した証。

 アクション仮面は慌てることなく訪問者を出迎える。

 

「コンディションは万全みてぇだな」

 

 現れたのは、ジャージを着た長髪の男だった。

 特に前髪が長く、目元まで綺麗に覆い隠されている。

 

「あなたは……マスタージェロニモ先生!」

 

 突然の来訪者に、アクション仮面はその場に跪いて頭を垂れた。

 彼こそ、偉大なる伝説超人(レジェンド)のひとりにして、あの正義超人養成大学校“ヘラクレス・ファクトリー”の講師のひとり――ジェロニモである。

 

「おいおい……先生はまだしもマスターはやめてくれ。オラは別におまえさんの師匠ってわけでもねえんだからな」

 

 かしずくアクション仮面に反し、ジェロニモは謙遜した態度で彼を立ち上がらせた。

 しかしながら、アクション仮面が持つジェロニモへの尊敬の念は衰えない。

 

「なにをおっしゃいますか。あなたはヒーローとしての在り方に悩む私に、超人になるという道を示してくれた」

 

 今回の事の発端――“アクション仮面が超人になった”という出来事のきっかけは、なにを隠そうこのジェロニモにあるのだ。

 

「私にスーパーマンロードの試練に挑む機会を与えてくれ、晴れて超人になってからもヘラクレス・ファクトリー生でもない私に超人格闘技のイロハを教えてくれた。師匠も同然です」

 

 “スーパーマンロードの試練”――それはかつて、人間だったジェロニモが超人になるために神から課された試練。

 アクション仮面は日本人でありながらジェロニモの部族に伝わるその試練を乗り越え、見事に超人へと生まれ変わった。

 

「人間から超人になりたいと願う男……かつて同じ道を目指した者として、親近感を感じずにはいられねぇ。それに超人格闘技の技術に関しても、もともとおまえさんは空手、柔道など多数の武術を修めていた。オラの指導なんて些細なもんだ」

 

 言葉とは裏腹に、ジェロニモはアクション仮面のことを実の弟子のように思っている。

 己と似た道を進もうとする若者――夢の成就を願い、サポートしてやりたいと思うのは先人、あるいは年寄りとして当然の心理だった。

 

「しかし意外だったのはおまえさんの行動だ。まさかデビュー戦の相手にケビンマスクを指名するだなんて」

 

 アクション仮面が超人になった動機。それは悪行超人の魔の手に対抗する力を得たいがためだったはずだ。

 必ずしもこんな大規模な試合を組む必要はない。もちろん、対戦相手にチャンピオンを指名する必要も。

 ジェロニモの指摘に、アクション仮面はフッと笑う。

 

「私はこの日本では子供たちに大人気のヒーローとして通っていますが、超人レスラーとしてはぺーぺー。せっかくなら頂点を体感してみたいと思いましてね。宇宙超人委員会も私のネームバリューに期待してくれているのか、このような大きな舞台を用意してくれました」

 

 強い相手と闘いたい――それはヒーローではなく、格闘者としての本能。

 ジェロニモは目の前のアクション仮面と若かった頃の自分を照らし合わせ、フッと笑い返した。

 

「あいつらはただ儲けたいだけだと思うがな」

 

 超人オリンピックチャンピオン、ケビンマスクをリングに上げるならそれ相応の舞台が必要。

 現代の超人レスリング興行を取り仕切る宇宙超人委員会としては、大きな会場で集客しチケット代や関連グッズの販売でガッポガッポ……といった考えだろう。

 アクション仮面は言う。

 

「挑戦を受けてくれたケビンマスクくんには感謝してもしきれない。しかし、新人がなにを生意気なと言われてしまうかもしれませんが……やるからには勝つつもりです」

 

 チャンピオンとの対戦を控え、今日デビューのレスラーが自信たっぷりに胸を張る。

 大言壮語の枠を越えた、無礼とも言える発言だった。

 

「新人がなにを生意気な」

 

 そんな弟子の態度に、しかしジェロニモは師匠として嬉しくなる。

 

「さっきはマスターなんてよしてくれと言っちまったが、オラとしてもおまえさんにかける期待は大きい。打倒チャンピオン、打倒ケビンマスクというジャイアントキリング……為し遂げてくれたら、酒の席の自慢話として擦らせてもらうだ」

 

 ヘラクレス・ファクトリーの講師として、“ジェロニモ先生”と慕われたジェロニモではあるが――誰かの特定の師として称賛を浴びるようなことはなかった。

 もし“チャンピオンを倒した男の師”という栄光を得られたならば、すでに現役を引退した超人としてこれ以上の喜びはない。

 

「ジェロニモ先生を何度も同じ話をする面倒な酔っぱらいにするのは心苦しいですが、必ずそのとおりにしてみせますよ」

 

 アクション仮面もまた恩師の期待に応えたいという思いから、ケビンマスク戦への闘志を高めた。

 開戦はもうまもなく――――

 

 

 

 ――――一方その頃。

 試合前にアクション仮面に会いに行こうと考えていたキン肉万太郎一行は、春日部スタジアムの広い施設内をひた走っていた。

 

「ちょっとⅡ世! アクション仮面の控室がわからないどころかボクたちが今どのへんにいるかもわからなくなってるじゃないですか――っ!」

「仕方ないだろ――っ! ここ広くて迷いやすいんだよ――っ!」

「まーまー。生きてりゃそーゆーこともあるよ」

 

 試合開始まで時間がなく焦る万太郎、怒るミートくん、事の発端にも関わらず呑気なしんのすけ。

 そんな3人とはまた別の場所で。

 

「どこだしんのすけ――っ!」

「こんな広い場所で迷子なんて冗談じゃないわよ――っ!」

「たたたたたーい!」

 

 迷子の我が子を探し、ひろしとみさえの野原夫妻と赤ん坊のひまわりもまた春日部スタジアム内を走り回っていた。

 この二組が合流を果たすのは、試合開始直前のことである。

 

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