アクションバース “キン肉マンⅡ世VSアクション仮面” 作:速筆魔王LX
ヘンダー城大広間の特設リングに立つジェイドは困惑していた。
ネネちゃんを攫った真・正義超人軍の一角ス・ノーマン・パー。
彼を撃破したと思いきや、次に現れたのは奇妙なオカマのバレエダンサー2人組。
「奇妙な雪ダルマを倒したと思ったら、今度はオカマ魔女とは……アクション仮面はこんなのとも闘ってたのか?」
テレビ番組“アクション仮面”には詳しくないジェイドではあるが、さすがにヒーロー作品の悪役にしてもイメージとかけ離れている。それとも、案外こういうのが人気なのか?
そんなジェイドの様子を見て、突然現れたオカマ魔女を名乗るバレエダンサー――マカオとジョマも不思議そうに首を傾げる。
「あら、私たちアクション仮面なんて知らないわよ?」
「なんだって?」
アクション仮面のライバルという名目で呼ばれた輩が、アクション仮面を知らない?
マカオとジョマは身を寄せ合い、か弱い乙女のように言う。
「怖いわぁ。勝手に知らない世界の知らない人物のライバルとして呼び出されるなんて」
「そのうえこんな野蛮な試合をしろだなんて。世の中って不条理だわ」
てっきりス・ノーマン・パーの言っていた大将――やつの上司的な存在かと思ったのだが、違うのか?
調子を狂わされるジェイドだったが、その後ろ、リングサイドに立つこの男は違う。
「なら帰れ」
苛立ちと共に言い放ったのは、スカーフェイスである。
「なんの手違いか知らねえが、お呼びじゃねえんだよ」
悪行超人の中にもふざけた見た目の者は多くいるが、この2人組は今まで対峙してきた相手の中でもふざけ具合が段違いだ。
それがスカーフェイスの反感を買ったのだが、
「あらやだ、イジワルな子」
「きっと嫌いな子のトウシューズに画鋲を仕込むタイプよ」
「ああ?」
マカオとジョマは元悪魔超人の怒気などお構いなしの様子だった。
そのまま再度身を寄せ合う。
「残念だけど、お帰りくださいと言われて素直に帰るほどお利口じゃないの、私たち」
「もともとあたしたちは異世界の侵略が目的……この世界はあたしたちが狙っていた世界とよく似ているようだし、せっかくだからこのままいただいちゃいましょう」
「そうね。アクション仮面とかサタンとかいうやつらも私たちの手で踊らせてあげましょ」
「あたしたちはヘンダーランドを手中に収めた無敵のふたり。超人なんて目じゃないわ」
異世界の侵略。
オカマ魔女というふざけた肩書、そしてバレエダンサーのような格好をしているくせに、世界侵略を目論む発言。
どこまで本気かわからない。が、ジェイドはごくりと息を呑んだ。
「あいつら……部外者でありながら一切手を引くつもりはないのか」
敵……には違いないのだろう。
未知の侵略者にどう対処すべきか、ジェイドが悩むその後ろから。
「おもしれえじゃねえか!」
威勢の良い声と同時に、スカーフェイスがリングインを果たす。
「スカー!?」
スカーフェイスはジェイドと違い、明確な敵意を持ってマカオとジョマの前に立ちふさがる。
「敵さんやる気満々のようだ。だったらこちらは受けて立つまで。次はオレもリングに上がらせてもらうぜ」
そうして横に並び立てられれば、ジェイドも自ずとやる気が出てくるというもの。
「勘違いするな。オレだって引き下がるつもりはないさ。おまえには悪いが、ここは引き続きオレが……」
「おいおい、なに寝ぼけたこと言ってんだ?」
先にリングに上がっていたのは自分。
譲る気はなかったが、スカーフェイス自身も奪うつもりはないらしい。
「見ろ」
スカーが対面にいる2人組を指差す。
マカオとジョマは互いに手を取り合い、ぶれることない片足立ちの姿勢を見せていた。
「やつら、お互いあんなにべったりだ。とてもひとりずつなんて雰囲気じゃねえ……だとすれば必然、ここはタッグマッチで勝負するしかねえだろうが」
「タ……タッグマッチ!? オレとスカーで組むというのか!?」
タッグマッチ。
スカーフェイスが提案したのは、超人レスリングにおける試合形式のひとつ。
超人2人がコンビを組み、相手と2対2で協力して闘う。
「あなたたちもパ・ド・ドゥを?」
「ステキ。楽しい勝負にしましょ」
マカオとジョマはそれをどう解釈したのか、詳細すら訊かず軽く承諾してみせる。
「だ、そうだぜ」
ジェイドの顔色を窺うスカーフェイス。
その口角がニヤリと上がった。
「オレは先の“
たしかに、ジェイドが師であるブロッケンJr.から教わったのは基本的にはひとりでの闘い方のみ。
しかしスカーのこの挑発的な態度。素直に認めるのは敬愛する師匠を侮辱されたようで癪に障る。
「言いやがる」
ジェイドは一歩前に出た。
スカーもやる気になった相方を見てほくそ笑む。
「いいぜ! タッグ結成だ!」
「そうこなくっちゃ!」
ジェイド&スカーフェイスがタッグマッチに挑む。
この大ニュースは中継カメラを通して春日部スタジアムにももたらされた。
『あ――っとこれは驚きの展開! ス・ノーマン・パーを撃破したのもつかの間、新たに現れたマカオとジョマなる2人組に対し、あのジェイドとスカーフェイスがタッグを結成して挑むこととなった~~っ!』
ジェイド&スカーといえばヘラクレス・ファクトリーの二期生同士。
しかもかつては壮絶な死闘を繰り広げ、ジェイドなど命に関わる重傷を負わされた過去がある。
そんな因縁のライバル同士とも呼べるふたりがタッグを組むなど、両者のファンにとっては驚天動地といったところだろう。
「ジェイドとスカーのタッグが見れるなんて、ネネ感激――っ!」
ネネちゃんも囚われの身であることを忘れて大興奮。
「お、おもしろくなってきた~~っ!」
春日部スタジアムのイケメン・マッスルも、ふたりがタッグを組むならそれに合わせた新たなグッズ展開、メディア展開などで稼げるじゃないか~~っ、と商魂を滾らせた。
が、隣から妹のジャクリーン・マッスルに睨まれる。
こほん、と咳払い。
「ではこの勝負、引き続き我ら宇宙超人委員会がジャッジさせていただく! 異存はないな!?」
離れた地よりヘンダーランドにいる4名に問いかける。
「いいわよ」
「お願いね」
マカオとジョマはやはり即答で返し、
「オレたちももちろんオーケーだぜ!」
「さっさと始めやがれ!」
ジェイドとスカーフェイスも快く答えた。
4名の承諾が得られたところで、イケメンがさらに勝負を取り仕切るために必要な要素を問う。
「ならば双方、タッグチーム名を発表してもらおう!」
両者を言い表す上でのチーム名。
それは実況を盛り込む超人レスリングの試合においては必須要項と呼べるだろう。
「私たち二人を言い表すのに余計な言葉はいらないわ」
「“マカオとジョマ”。そう呼んでちょうだい」
マカオとジョマは逡巡もなくそう告げた。
タッグ名としては些かシンプルすぎるきらいもあったが、それもまた良し。
「タッグ名か……」
一方のジェイド・スカー側は即決とはならず、考える間を作った。
ジェイドがスカーフェイスに問う。
「オレたちの共通点といえば、やはりヘラクレス・ファクトリーの二期生同期。ここは“花の二期生コンビ”なんてどうだ?」
「悪くはねえが……」
スカーは宙に浮かぶ球体、その中のネネちゃんを見やり、ニヒルに笑む。
「今日は小さなファンガールが見てるんだ。ここはもっとおしゃれなネーミングにしようぜ」
「というと?」
タッグ名を決めるならば、やはりそのふたりを象徴するような要素を取り入れるのがいいだろう。
しかしスカーフェイスとジェイドを象徴し、共通する要素は軽く思いつくだけでも3つある。
「オレたちふたりは顔・技・力……三位一体揃った王道実力派コンビだ。よってここは……」
フェイス、アーツ、パワー。
どれも捨てるのは惜しい。
ならば、全部ひっくるめる。
「“スーパー・トリニティーズ”でいかせてもらうぜ――っ!」
その子供心にも響く格好いい名は、ネネちゃんの瞳を輝かせた。
「スーパー・トリニティーズ……! ジェイドとスカーがネネのために結成したチーム!」
気分はふたりの王子様を侍らすプリンセス。
幼い少女の恐れや不安を吹き飛ばし、“スーパー・トリニティーズ”は燦然とリングに立つ。
『さあ~~っ、出揃いました!