アクションバース “キン肉マンⅡ世VSアクション仮面”   作:速筆魔王LX

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第054話 禁断のバレエ殺法!

 西武園ゆうえんちあらため埼玉ヘンダーランドを舞台にした新世代超人(ニュージェネレーション)vs真・正義超人の対抗戦。

 その試合はタッグマッチによって行われることとなった。

 

 新世代超人軍はジェイド&スカーフェイスの“スーパー・トリニティーズ”。

 真・正義超人軍はマカオ&ジョマの“マカオとジョマ”。

 

 異色の闘いのゴングを鳴らすのは、もちろん21世紀の宇宙超人委員会委員長イケメン・マッスルだ。

 

「試合開始~~っ!」

 

 軽快にゴングを木槌で叩き、春日部スタジアムより快音が届けられる。

 

『始まった! まずはスーパー・トリニティーズ、先発はスカーフェイスが出るようだが……』

 

 リングにスカーフェイスを残し、ジェイドが一旦リングアウト。

 タッグマッチといえど常に2対2というわけではない。リングで闘うのは基本1対1だ。

 ゆえに、マカオとジョマ側もどちらか一方がリングを下りるべきなのだが――

 

「ん?」

 

 スカーフェイスが顔を顰める。

 対戦相手のふたりが動こうとしなかったためだ。

 

『あ――っとマカオとジョマはどうしたことがか~~っ? マカオもジョマもリングアウトをしようとしない! アティテュードのポーズを維持しながらスカーフェイスと対峙しているぞ~~っ』

 

 優雅に片腕と片脚を上げポーズを取るジョマ。その腰を支え自身もまたポーズを取るマカオ。

 そのまったく悪びれない眼差しはスカーフェイスに向けられている。

 

「おい素人さんよ。タッグマッチってのは選手交代制だ。基本は1対1で闘い、一方はリングの外に出るもんなんだぜ」

 

 スカーフェイスは超人レスリングの基礎を教えるが、マカオは指を振った。

 

「ノンノン。そんなのパ・ド・ドゥとは呼べないわ」

「そうよ。そんなつまらないルールなんかじゃあたしたちを引き離せはしないわ」

「は、はあ?」

 

 ルールをつまらないの一言で拒否するとは何事か。

 困惑するスカーの後ろで、一旦はリングアウトしたジェイドも動きを見せる。

 

「いいじゃないかスカー」

 

 ロープを潜り、再びのリングイン。

 スカーフェイスの横に並び言う。

 

「おまえの言うとおり相手は超人レスリングの素人。プロのオレたちはいくらか譲歩してやるべきだろう」

 

 さらにイケメンやジャクリーン・マッスルが映るモニターを一瞥、次いでマカオとジョマのほうも見て、全員に向けて言うのだ。

 

「よってここは、交代制ではなくタッグそれぞれが常に一緒にリング内にいることを許される変則ルール……『No Tag Rule(タッチなしルール)』で勝負するとしようぜ」

 

 この試合はマカオとジョマに譲歩したスペシャルルールで闘おう――と。

 

『な、なんと~~っ!? ジェイドから提案されたのは、超人レスリングのタッグマッチでは極めて稀なタッチなしルール! 四者入り乱れる混戦必至の恐ろしいルールですが、スカーフェイスやマカオとジョマの返答やいかに~~っ!?』

 

 タッチ交代がなくなるとなれば、危険かつ過激な闘いになることは必至。

 だが、スカーフェイスはむしろ望むところと言わんばかりに口角を上げる。

 

「いいぜ。おもしれぇ」

 

 マカオとジョマも真顔で答える。

 

「ステキ」

「乗りましょう、そのルール」

 

 ジェイドが提案し、他3名が了承。

 よって、この試合――No Tag Rule(タッチなしルール)成立。

 

『しょ、承諾されてしまった~~っ! これにより、ノータッグルール成立! これは早くもとんでもない試合になりそうだ――っ!』

 

「ええ~い、どうにでもなれ~~っ」

 

 現地での急なルール変更に戸惑いながらも、イケメンは再び開戦のゴングを鳴らす。

 

『今、宇宙超人委員会委員長イケメン・マッスル氏により、あらためて試合開始のゴングが鳴らされました! スーパー・トリニティーズvsマカオとジョマ、開戦! 本当にいきなり4人リングにいるぞ――っ!』

 

 互いに距離を開けながら、視線のみで意思疎通を図るスーパー・トリニティーズ。

 一方のマカオとジョマは、依然として寄り添いながらポーズを決めていた。

 これは超人レスリングでありバレエの公演ではない――それを早急に思い知らせる必要があるようだ。

 

「このルールにちょこざいな駆け引きはいらねえ!」

「ああ! ここはいきなりフルスロットルでいかせてもらう――っ!」

 

 スカーフェイスとジェイドはまず、マカオとジョマを視界に収めたままバックステップ。

 

『ジェイドとスカー、まずはロープに身を振り……』

 

 背後のリングロープに背後から飛び込み、反動を利用して前方にダッシュ。

 駆けながら飛んだ。

 

『加速をつけてのフライング・クロスチョップだ――っ!』

 

 十字に交差させた両腕を前に突き出す形でのボディダイブ。

 スカーはマカオを、ジェイドはジョマを狙って同時に仕掛けたが――

 

「ピルエット」

 

 マカオとジョマは互いに距離を調節し、片足立ちで旋回し始めた。

 つま先で立つことによる高速ターンはギュルギュルという音を鳴らし、向かってくる敵を跳ね除ける。

 

『なんだ~~っ!? マカオとジョマ、その場でコマのように回転しジェイドとスカーを弾き飛ばしたぞ――っ!?』

 

 まさしく高速回転するコマに弾き飛ばされるがごとく。

 攻撃に失敗したジェイドとスカーフェイスが不格好な体勢で着地する。

 

「グッ……」

「奇妙な動きを!」

 

 フライング・クロスチョップを跳ね除けるほどの旋回は、しかしピタリと動きを止める。

 ジェイドとスカーフェイスは構わず二の矢を放った。

 ジェイドが右、スカーフェイスが左にバラけての、上段蹴りが狙いだ。

 

『スーパー・トリニティーズ、今度は左右からの挟み込むようなハイキックを狙う――っ』

 

 今度こそ命中確実――そう思われたが。

 

「アラベスク」

 

 マカオとジョマは再び片足立ちとなり、上げた片方の脚は後ろへまっすぐ伸ばす。

 その長い脚がジェイドとスカーの胴を押し、ハイキックの射程を外した。

 

『白鳥のごときポーズでそれを制した――っ!』

 

 後退を余儀なくされながら、見たこともない防御方法にたじろぐスーパー・トリニティーズ。

 

「な……なんだこいつら!?」

 

 次の行動が予測できず、ジェイドもスカーフェイスも一瞬動きを止められてしまう。

 マカオとジョマはそんなふたりを嘲笑うように、真顔でまたもや奇怪な動作を始めた。

 

「グラン・フェッテ・アン・トールナン」

 

 片脚によるドゥミ・ポアントで立ち、もう一方の脚を横に大きく振って勢いをつける。

 必然的にその身は回転、さらに軸足も滑るように動き出した。

 つまりマカオとジョマは――フェッテの勢いを利用しアン・トールナンで移動し始めたのである!

 

『あ――っと今度は回転しながらリング内を駆け巡る! なんなんだこのバレエ然とした動きは~~っ!?』

 

 対戦相手が踊るように旋回しながら動き回っている。

 超人レスリングの試合は数多くこなしてきたが、ジェイドもスカーも初めての体験だ。

 

 唖然とするふたりに、マカオとジョマが仕掛ける。

 

「グラン・ジュテ!」

 

 片脚で踏み切り、空中で両脚を前後に大きく開きながら蹴りを放った。

 大きな跳躍とダイナミックな開脚が織り成す必殺の蹴りは、スーパー・トリニティーズ両名の喉を穿つ。

 

『高く飛翔するような蹴りでジェイドとスカーが宙に舞った~~っ!?』

 

 あまりの美技に防御や回避はおろか受け身も間に合わない。

 ジェイトとスカーフェイスが背中からキャンバスに落ちた。

 

「ゲホッ」

 

 喉を打たれたことによるダメージは乱れた呼吸によって示される。

 落下したふたりに対し、マカオとジョマは優雅に着地。

 体幹のぶれない見事なバランス感覚を見せた。

 

『スーパー・トリニティーズ、早くもダウンだ――っ』

 

 ダメージの蓄積していた終盤に繰り出されていたとしたら、決着もありえた一撃。

 だが幸いにも試合は始まったばかり。ジェイドとスカーフェイスは呼吸を整えながら立ち上がる。

 

「見かけどおりのおかしな動き……しかし見かけによらぬ高威力の蹴りはどういうカラクリだ?」

 

 あの“蒼白き脳細胞”と呼ばれたスカーフェイスが戦慄する。

 奇妙奇天烈な攻撃方法に理解が追いつかない……というより、脳が理解を拒む。

 それは相棒も同じかと思われたが、ジェイドには思い当たることがあるようだった。

 

「それはおそらく、やつらがバレエダンサーだからだ」

「バレエ?」

 

 ジェイドは修行時代のことを思い出しながら語り出す。

 

「師匠(レーラァ)に聞いたことがある……バレエダンサーというものは見た目こそ優雅で格闘技などとは無縁の印象だが、軽やかに踊るためには格闘家顔負けの肉体鍛錬が必要となる。特に脚の鍛え方は一流格闘家のそれを凌駕するものがあり、その鍛え抜かれた脚がダンスではなく蹴り技を放とうものなら一撃必殺の破壊力を生むだろう……と」

 

 それは無意味な仮定の話と一笑に付すこともできよう。

 しかし、武道の世界でも“バレエダンサーとは決して闘うな”と語る達人がいるという逸話がある。

 スカーフェイスは馬鹿にしたりなどせず、むしろ納得した。

 

「なるほどな。バレエダンサーってのはよくつま先足立ちをするが、ありゃ相当脚を鍛えてなきゃできねえ芸当だ。おまえの師匠の話も頷けるってもんだぜ」

 

 鍛えられた脚。ゆえに最優先で警戒すべきは蹴り。

 視線を鋭くするスーパー・トリニティーズ。

 一方のマカオとジョマは、再びアティテュードの姿勢で身を寄せ合っていた。

 

「格闘技なんて野蛮だわ」

「あなたたちも一緒に踊りましょう? きっとステキな舞踏会になるわ」

 

 彼らが求めるのは武ではなく舞。

 超人レスリングを舐めた発言はスカーとジェイドの怒りを買い、しかし我を忘れたりはせずニヤリと笑みを纏った。

 

「いいぜ――っ! その舞踏会に参加してやるよ――っ!」

「ただし、踊るのはおまえたちだけ……オレたちがきりきり舞いにしてやる!」

 

 そう宣言し、再び左右に分かれた。

 今回は単純に挟み込むのではなく、撹乱が目的だ。

 

『スーパー・トリニティーズ、円の動きでマカオとジョマを囲み、翻弄する――っ』

 

 マカオとジョマの位置取りはリング中央。

 十分に開けられた周囲のスペースを利用し、スピードに差をつけてマカオとジョマの混乱を誘う。

 さあ、攻撃はどこから来るかな? 右か左か、それとも正面か後ろか?

 

「嫌ねぇ、アツい男って」

「ホント。どうせならもっとクールな男の相手がしたかったわ」

 

 しかしふたりは動じず、正面を向いたままピクリとも動かなかった。

 余裕の態度にカチンと来たスカーフェイスが仕掛ける。

 

「ほざきやがれ――っ!」

 

『スカーフェイスが背後から延髄斬りを仕掛けにいく――っ!』

 

 相手の後頭部を打つ上段蹴り、それが延髄斬りだ。

 マカオとジョマは相変わらず身を寄せっている。スカーの長い脚なら一撃でふたりの延髄を打つこともできるだろう。

 が、

 

「カンブレ・アリエール」

 

 オカマ魔女のふたりは上体を後ろへ弓なりに反らした。

 

『あ~~っとしかしマカオとジョマ、後方に大きく上体を反らしスカーの一撃を見事にスルー!』

 

 延髄斬りは飛びかかりながらのジャンプキック。そしてこのカンブレ・アリエールはプロレスのブリッジに近いムーブ。

 スカーは攻撃を空振る結果となったが――目論見どおりである。

 

「バカが~~っ!」

「オレたちの狙いはそれだ!」

 

 狙いは同時攻撃ではなく連続攻撃――ノータッグルールならではの戦法。

 

『続けざまにジェイドがローリング・ソバットだ――っ!』

 

「その大げさなムーブでの回避ではこういった波状攻撃は避けられまい――っ!」

 

 ブリッジ体勢のジョマの横っ腹を空中後ろ回し蹴りで叩く。

 衝撃はそばにいたマカオにも伝わり、ふたりまとめてぶっ飛ばした。

 

「やん!」

「ああん!」

 

『クリーンヒット~~ッ! スーパー・トリニティーズ、見事な連携攻撃でマカオとジョマからダウンを奪い返した――っ!』

 

 女性的な悲鳴を上げ、キャンバスを滑るマカオとジョマ。

 

「ヤッター! カッコイイー!」

 

 チームワークの発揮とでも言うべき連携に、ネネちゃんも喜び手を叩いた。

 

「イタ~イ! もうヤダ~ッ」

「蹴るなんてひどい! 乱暴なのは嫌いよ!」

 

 攻撃を食らったマカオとジョマは倒れたまま、キャンバスに手をつけやはり女性的な仕草で暴力反対の抗議をする。

 ジェイドもスカーフェイスも試合中にそんなことを言われたのは初めてだった。

 

「な、なに言ってるんだあいつら?」

「調子が狂うぜ……」

 

 これはやつらの素なのか、それともこちらを油断させるための演技なのか。

 

「やっぱり野蛮な闘いってあたしたちには合わないわ」

「勝負ならもっと平和的で楽しいものがいいわよね」

 

 ジョマはマカオに、マカオはジョマに言い、両手の指を絡ませ合う。

 

『互いに身を寄せ合い、指を絡ませながら手を組むマカオとジョマ! 超人レスリングの試合ではまずお目にかかれない珍しい体勢ですが、ここからなにを繰り出すつもりか~~っ!?』

 

 バレエというよりは恋人がそうするような仕草……頬まで寄せ合い不気味に微笑みを向けてくる姿に、ジェイドとスカーフェイスは冷や汗を流した。

 マカオとジョマはそのまま、重ねた手と手を水平に掲げた。

 

「ンン~~ッ、ハァ~~~~ッ!」

 

 気合いを入れるような、あるいは気の抜けるような一声。

 次の瞬間、マカオとジョマの手から黒いモヤのようなものが吹き出した。

 

「な、なんだ!?」

 

 未知の現象に困惑するスーパー・トリニティーズ。

 

「えっ!? なになに!?」

 

 なにが起こったかわからず動揺するネネちゃん。

 黒いモヤはあっという間にリング全体に行き渡り、ネネちゃんを捕らえる黒い球体まで含めてドーム状に広がった。

 

『な……なんだ~~っ!? マカオとジョマの重ね合わせた手から突如、黒いモヤのようなものが吹き出し、ネネちゃんも巻き込んでリング全体を覆い隠した――っ!』

 

「こ、これではなにも見えない~~っ!」

 

 春日部スタジアムで試合の行方を見守っていたイケメン・マッスルは異常事態に声を荒げる。

 今回は完全安全圏で平和にレフェリングできると思ったのに、これはどうすればいいんだ~~っ!?

 

『さあ~~っ、異例のタッグマッチは早くも波乱の展開! 戦場はレフェリングも実況も困難な有り様となってしまったが、この先いったいどうなるのか~~っ!?』

 

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