アクションバース “キン肉マンⅡ世VSアクション仮面” 作:速筆魔王LX
ジェイドが放ったベルリンの赤い雨。そこから放出された炎をスカーフェイスのスワロウ・テールに移して放つツープラトン――その名も“レッドレイン・テイル”。
胸部を裂かれ、鮮血を撒き散らしながらリングに落下したマカオとジョマ。
対して、レッドレイン・テイルでの攻撃を成功させたスカーフェイスは堂々たる着地を見せる。
「どうだ――っ! これがスーパー・トリニティーズのスーパー・ツープラトンよ――っ!」
傍らに先に着地していたジェイドを置きながら、スカーフェイスが猛々しく咆哮する。
『マカオとジョマが再びダウ――ン!』
倒れたマカオとジョマに反応はない。
まさに“会心の一撃”と言うべきツープラトンに、リングサイドのマサオくん、イリューヒン、チェック・メイトは喝采を上げた。
「すごいよ! スーパー・トリニティーズ!」
「さすがは
「タッグマッチでもそのスペックは折り紙つきだ――っ!」
黒い球状の檻で助けを待つネネちゃんは目をハートにさせてうっとりする。
「ネネ、もうメロメロ~~ッ」
4人という数少ない現地ギャラリーはもはやスーパー・トリニティーズの勝利を信じて疑わない様子だ。
春日部スタジアム本部席で決着のゴングを前にするイケメン・マッスルも、もういいだろうと木槌を振り上げる。
「トリニティーズの大勝利だ~~っ!」
すかさず振り下ろそうとするが――そこに細い腕を差し込まれ、ウッ、と制止する。
「ジャ……ジャクちゃん!?」
イケメンを止めたのは、隣に座る宇宙超人委員会副委員長である妹、ジャクリーン・マッスルだった。
ジャクリーンは真剣な面持ちで言う。
「ケビンマスクvsアクション仮面戦……そこでお兄様は『我々宇宙超人委員会は判断を誤れない』とおっしゃいました。その言葉を思い出し、よく見極めてください。マカオとジョマはまだ動いています」
妹にそう言われモニターを注視するイケメン。
確かにマカオとジョマに動きがある。
胸部から夥しい量の血を流しながらも、よろよろと立ち上がってきたのだ。
『あ――っとマカオとジョマ、大出血をともないながらも両者立ち上がってきた――っ!』
「な、なかなかやるじゃない……」
「ここまで食い下がるなんて予想外よ」
ふたりは息も絶え絶えの様子だ。
無理もない。鋼鉄の刃による裂傷、そして炎による火傷のダブルパンチをくらったのである。
出血量も鑑みれば今すぐ気絶してもおかしくはない――が、マカオとジョマの雄々しい顔つきに降参の気配はなかった。
「こうなったら……」
「ええ。あれを使いましょう」
互いに頷き合い、それぞれが互いの服の中をまさぐる。
マカオはジョマのチュチュから、ジョマはマカオのタイツから、同時に同じ見た目の“石”を取り出した。
『マカオとジョマが服の下からなにかを取り出したが……これは~~っ!?』
禍々しく輝く宝石――ジェイドもスカーも、春日部スタジアムで……いや。
なんなら少し前の大騒動、“
「あれは……ジェネラル・ストーン!?」
「なぜ服の下から!?」
マカオとジョマ、あるいはス・ノーマン・パー召喚の媒介となったはずの魔の宝石。
それがどうして服の下から、しかもふたつも出てくるのか?
「気持ちが悪かったから取り外しておいたのよ」
「体に石が埋め込まれてるなんてイヤじゃない」
今さら常識人のような感性で語るふたり。
取り外していたということは、マカオもジョマも今の今までジェネラル・ストーンの恩恵を受けていなかったということ。
そしてそれをこの窮地に取り出したということは――
「このジェネラル・ストーンにはあのサタンとかいう悪魔のパワーが秘められている! 私たちはそれを使わせてもらうわ!」
「さらに! これにはアクション・ストーンなる石の力も宿っている! 別次元に干渉するその力にあたしたちの魔法をかけ合わせれば、あなたたちふたりを倒すにふさわしい力を生み出すわ!」
逆転の糸口を探るために、オカマ魔女が悪魔の力を使う。
なりふり構わぬ宣言、さらにその突拍子もない方法論に、ジェイドとスカーは警戒を強める。
「オレたちを倒すにふさわしい力だと!?」
「なんだそりゃ!?」
疑問をぶつけるが、マカオとジョマはニヤリと笑うのみで言葉では答えず。
それぞれ手に持ったジェネラル・ストーンを左腕に押し当てた。
『なんだこれは――っ!? 2つのジェネラル・ストーンがマカオとジョマ、それぞれの左腕に飲み込まれ、まばゆい光を放ち出す――っ!』
「な、なにをするつもりだあのオカマ共!?」
「わからん! ろくでもないことなのは確かだろうが……!」
スカーフェイスもジェイドもどう対応すべきかわからず観察を続ける。
先の騒動では、あの石は人間に虐げられるほどの弱小超人を極悪強豪超人へと変貌させた。
その理屈で考えれば、狙いはパワーアップ……左腕をピンポイントで強化するつもりか?
「教えてあげましょう! 私たちはアクション・ストーンがもたらした次元干渉の力を使い、無数にある平行世界からあなたたちふたりをKOしたことがあるパワーを検索! その結果をジェネラル・ストーンにダウンロードする!」
「そしてそのジェネラル・ストーンを我が身にインストールすることにより、必勝の
マカオとジョマはトリニティーズの単純な考察を否定するがごとく、またもや突拍子もないことを言い始める。
「へ……平行世界のオレたちがKOされたパワーだと!? そんな世界が……」
「魔女のくせにSFくせぇこと言ってんじゃねえ! ここから逆転なんてファンタジーは存在しねえんだよ!」
意味がわからないが、本能が訴えている――これ以上の静観は悪手。
痺れを切らしたジェイドとスカーフェイスが動き出そうとするが、
「マカオ――ッ!」
「ジョマ――ッ!」
ジョマとマカオが大声で叫び、その動きを制する。
続けてジョマが大きな宙返りでトリニティーズふたりの頭上を飛び越え、リングの端へと着地した。
『ジョマが大きな跳躍でスーパー・トリニティーズの背後を取った! タッグふたりで敵のタッグを挟み撃ちにするようなこの構図は~~っ!?』
「いくわよジョマ! マジックビームパワー・プラス!」
「よくてよマカオ! マジックビームパワー・マイナス!」
マカオとジョマがリングの両端から互いに呼びかけ合い、左腕を上げる。
そしてその左腕……上腕二頭筋のあたりから、謎の光が放たれた。
『マカオとジョマが左腕を高々と上げ……そこから無数の細い光の管が伸びていく――っ』
細い光――そう、本当に細い。ごくごくありふれた、電子機器を繋ぐケーブルのような細さだ。
それらは一瞬とも思える速度で伸び、ジェイドとスカーフェイスを襲った。
『光の管はジェイドとスカーフェイスの体を貫通……い、いや! 単なる光のようなのでこれは透過でしょうか!? なんにしてもふたりを貫いた状態で連結したぞ~~っ!?』
襲い、体を透過したが、ただそれだけで人体への影響はまるでない。
チェック・メイトとイリューヒンはリングの外から怪訝な眼差しを送る。
「な、なんでしょうか、あれ……あの光にいったいなんの意味が?」
「どこか……21世紀の最先端通信技術であるオプティカル・ファイバー・ケーブルを連想させるものがあるが……」
ビームと聞いて一瞬ヒヤッとしたものの、穴が開いたわけでも皮膚が焼けたわけでもない。
本当にただ明るいだけの光――つまり、なんだ、虚仮威しか。
トリニティーズのふたりは拍子抜けする。
スカーがマカオを、ジェイドがジョマをそれぞれ警戒し背中合わせで立つが、これならそんな必要もなかった。
「フッ。なにがマジックビームだ。アクション仮面のアクションビームみたいなのが飛び出すかと思えば、痛くも痒くもねぇ」
「こいつらの茶番につきあうのももうたくさんだ。そろそろフィニッシュといこうぜ」
奇妙奇天烈な魔法の時間はもう終わったのだ。
これはやはり超人レスリング。であるならば、相応しい決着を迎えるべきだろう。
スーパー・トリニティーズがマカオとジョマをKOするべく動き出そうとするが――
「なっ……!?」
「身動きが取れねえ!?」
ジェイドとスカーフェイスはその場から一歩も動くことが適わなかった。
まるで胴体を貫通する光の管によって、体全体が固定されてしまっているかのようだった。
「おあいにくさま。このマジックビームに一度掴まったら脱出は不可能よ」
「平行世界のあなたたちはこの技にかかり、KOされると同時に顔の皮を剥がされた……今からそれを再現してあげる」
このマジックビームなら光は、相手を拘束するためのもの……次なる攻撃への前段階だった!?
マカオとジョマが語る技の解説、そしてあとに続いた平行世界とやらの情報に、ジェイドとスカーは表情を強張らせる。
「か、顔の皮を剥がすだと~~っ!?」
「ここからなにをどうすればそんなことになる!?」
平行世界の自分たちはいったいどんな目に遭ったというのか!?
「それは今から!」
「身を持って知りなさい!」
答えを知るマカオとジョマは、有言実行とばかりにキャンバスを蹴った。
もちろんマジックビームを放つ左腕は上げたままだ。
『マカオとジョマが左腕を掲げながらジェイドとスカーめがけ駆け出した――っ!』
明らかな突撃の予兆。
繰り出すのはタックルか、それとも蹴りか……いずれにしても棒立ちでいるのが悪手なのは間違いない。
「逃げてジェイド! スカー!」
「ダメだ~! 逃げられないよ~!」
ネネちゃんは声を張り上げるが、マサオくんはすでにピンチを受け入れ諦めの言葉を吐く。
危険な兆候を感じたイリューヒンとチェック・メイトは声もなく技の行く末を見守った。
そして肝心のジェイドとスカーフェイスは、やはり動けない。
防御も回避もままならない状態で、マカオとジョマの接近を受け入れる。
繰り出されたのはタックルでも蹴りでもなく――パワーを増幅させた左腕による豪腕ラリアット。
「マジックビーム・クロスボンバ――ッ!」
肉と骨を打つ快音がヘンダー城の大広間に轟き、リングが揺れた。
背中合わせに立つジェイドとスカーを、前後からラリアットで挟み込む同時攻撃。
ヒットしたのは双方共に喉元。
相手タッグをサンドイッチにするこのツープラトンの正体は――
『マ……マカオとジョマが放ったラリアットがジェイドとスカーフェイスの首を前後からサンドする形で命中~~っ! わ、我々はこの技を知っている~~っ!』
マイクに驚愕の声を乗せる実況者。
それの正体を知識として知るイリューヒンとチェック・メイトも、驚き目を見開いた。
「あの技は……20世紀の超人レスリング界を代表する伝説的ツープラトン!」
「
――クロスボンバー。
タッグふたりで前後から同時にラリアットを仕掛け、ターゲット超人の首を挟み込むように打つ連携技。
その破壊力は名だたるマスク超人の仮面をふっ飛ばすほどであり、マスク狩りの代名詞とされてきた。
そして、クロスボンバーを成立させる上で不可欠なのが、磁力の引き合う力を技に利用した“マグネット・パワー”。
しかしその力は34年前に行われた“宇宙超人タッグ・トーナメント”で封印されている。
そこでマカオとジョマが持ち出したのが、マジックビームと名づけられた魔法の光。
その正体こそ――21世紀の最先端通信技術を元にした、“オプティカルファイバー・パワー”。
この世界では日の目を見るはずがなかった、平行世界由来の禁断の力である。
「グゥ~~ッ」
クロスボンバーをくらってしまったジェイドとスカーが揃って苦悶の声を上げる。
マジックビームが誇る脅威の伝達速度はラリアットのスピードを増幅させ、技の破壊力を何倍にも跳ね上げた。
幸いと言えるのは、ふたりともヘル・ミッショネルズのネプチューンマンが大好物としていたマスク超人ではない。仮面を剥ぎ取られる心配はないだろう。
しかし、いやだからこそ――仮面の代わりに別のものが剥がれようとする。
たった今、それがベリリッ!と音を立てて剥がれ始めた。
『あ……あああ――っ!? ジェイドとスカーフェイスの顎先に裂け目が入り、顔の皮膚が剥がれようとしている~~っ』
顔面の皮膚、である。
顎先からめくれた皮は生々しい血肉を覗かせていた。
「ま、まさか本当に!」
「仮面狩りならぬ……顔面狩りを!?」
クロスボンバーの衝撃に囚われていたイリューヒンとチェック・メイトが戦慄する。
一方で、マサオくんとネネちゃんがハッとなにかに気づいた。
「い……いや! でも見て!」
「マカオとジョマも苦しそうよ!」
幼いふたりの気づきどおり、苦しげな表情で唇を噛むマカオとジョマ。
左腕は依然としてジェイドとスカーの首を挟み込んでいる。
技は完璧ともいえる形で成功した――が。
「ど、どうやらこのクロスボンバーという技の威力……」
「強すぎる必殺技というのも考えものね……」
ジェネラル・ストーンの魔力により、マジックビームという光を放出し続けていたふたりの左腕。
それが、電池切れを起こしたかのように徐々に弱くなっていく。
さらに――
『マカオとジョマの左腕が輝きを失い……体内にあったはずのジェネラル・ストーンが外に排出された――っ』
ふたりの左腕から、ジェネラル・ストーンが勢い良く飛び出したのだ。
その色はもはや宝石とは呼び難いくすんだ色になっており、
『そして、ジェネラル・ストーンは木っ端微塵に砕け散る――っ!』
すぐに粉々になった。
リング内に破片が散らばっていく様子を見て、ざわつく春日部スタジアムの観衆たち。
あの“悪魔の種子”軍団に力を与えた魔性の石が、こうも簡単に砕けるとはという驚きだった。
マカオとジョマは語る。
「なんてことはないわ。私たちが生み出したマジックビーム・クロスボンバーの破壊力に、ジェネラル・ストーンが耐えきれず自壊しただけのこと」
「けれどすでに技は完成されている。あたしたちの勝利を決定づけるのに十分すぎるほどね」
事実上の勝利宣言をするジョマ。
ジェネラル・ストーンがキャパオーバーしたことで技の威力が想定を下回ったのか、剥がれかけていたトリニティーズの顔の皮膚は顎先で止まった。
だが直後に、ジェイドの被るヘルメットとスカーの額のドミノマスクが弾け飛ぶ。
『あ――っと、ジェイドとスカーフェイスの顔の皮が剥がれるのは止まったが……かわりにジェイドのヘルメットとスカーフェイスの
顔面狩りは為らなかった。
もとより、マカオもジョマもそんなグロテスクなフィニッシュは趣味ではない。
フィニッシュ――終演の瞬間というのはやはり、美しくあるべきだ。
ジェイドとスカーの首からゆっくりと左腕を離し、クロスボンバーを解除。
立ち姿勢だったトリニティーズの下半身にもはや力はなく、ふたり共どさりと崩れ落ちる。
白目を剥くライバルのダウンを見届けたマカオとジョマは、構えを変えた。
ジョマが片脚を後ろへ大きく上げ、さらに片腕を前方へ大きく突き出す。
マカオはその腰を支え、ビタリと静止。
「アラベスク・オン・ポワント」
――美しき白鳥のポーズ。
これぞ、ヘンダーランドの支配者たる無敵のパ・ド・ドゥ。
『スーパー・トリニティーズ、痛恨のダウ~ン! マカオとジョマはまるで一公演終わらせたかのような堂々たるポージングでその存在感を示している~~っ! ま、まさか……これで決着なのか――っ!?』