アクションバース “キン肉マンⅡ世VSアクション仮面” 作:速筆魔王LX
さいたまスーパーアリーナの喧騒から少し離れた屋外スペース。
イベントのない日であっても人の絶えないこの場所には、来場者の小腹を満たすためのキッチンカーが何台か停車していた。
その中の一台、お洒落なロゴが描かれたクラフトビールのキッチンカーの窓口に、トコトコと歩いてきた小さな影が近づいていく。
「いらっしゃいませー。お父さんかお母さんのおつかいに来たのかな?」
窓口から顔を覗かせたのは、ボブカットの髪型がよく似合うアルバイトの大学生・四杉遥(20歳)。
自意識過剰な一面を克服するために様々な飲食系バイトを渡り歩いている彼女は、やって来た男の子を見てにっこりと微笑んだ。
その男の子――野原しんのすけは気さくに言う。
「そーそー。万ちゃんにお酒買ってこいって頼まれちゃって」
「ま、万ちゃん?」
幼い声音で堂々と“お酒”を要求するしんのすけに、遥は怪訝な顔をする。
「あのね、ボク」
「オラ、野原しんのすけだぞ。しんちゃんって呼べば~」
それにしても初対面の大人に対して物怖じしない子だ。馴れ馴れしいとも言う。
「あのね、しんちゃん。法律で未成年……子供にお酒は売れないの。たとえそれがお父さんやお母さん、万ちゃんのおつかいでもね」
令和の日本を生きる販売員として至極当然のことを言う遥。
だがしんのすけは口を曲げる。
「え~。昔はもっと楽に買えたのに~」
「そうだね~。某アニメが放送開始した1995年くらいなら自販機も多かったし、お店の年齢確認もそこまで厳しくなかったから買えたかもしれないね~。でも法律的には1922年から買っちゃダメなの~」
まるで90年代に生まれた子供のような感覚で言うしんのすけに対し、遥は言い聞かせるように説得する。
なんだか変な子……という感想を胸に秘め、おとなしく立ち去ってくれることを願う。
だがしんのすけは背中を向けたりはせず、その大きな目をうるうると輝かせた。
「子供のお願いでも?」
「ウッ」
子供特有の純粋無垢な瞳から放たれる、おねだりの眼差し――キラキラ光線。
実際に目からキラキラしたビームでも撃たれているような感覚に陥った遥は、ぶんぶんと首を振って正気を保つ。
ここで負けてはアルバイトの誇りが許さない。
遥は心の中で自分を奮い立たせ、両腕でわかりやすくバツの字を作った。
「こ、子供のお願いでもダメ――ッ!」
「おケチ」
子供の可愛さに頼ったお願いは一刀両断され、しんのすけはやれやれと首を振る。
「はぁ~。あれもダメ。これもダメ。まったく生きづらい世の中になったもんだゾ」
「そうだね。某アニメも昔は問題なかったのに今はできなくなったネタがたくさんあるし……」
「それって大人の都合なんじゃないの?」
「そう、大人の都合……って、なに子供っぽくないこと言ってるの」
いつまでも口の達者なお子様の相手をしているわけにはいかない。
遥は毅然と言い聞かせる。
「とにかく、お酒を買うならお父さんかお母さんか……その万ちゃんって人と一緒に来てね」
「ほ~い」
気のない返事を残し、しんのすけはてくてくと歩き去っていった。
「大丈夫かなぁ……」
キッチンカーの窓口から小さくなっていく背中を目で追う。
と、その小さな背中が遠方にあるベンチの前で足を止めた。
そこにはある人物が座っており――
「え!? あ、あれは……!?」
見覚えのある姿に、遥はドキッとしたのだった。
◇
キッチンカーから見える位置にある、少し離れたベンチ。
そこに、肩を落として深々とため息をつく一人のサラリーマンの姿があった。
名は――野原ひろし。
年齢は35歳。
双葉商事勤務、役職は営業係長。
家族構成は妻・息子・娘・飼い犬の4人と1匹。
時刻はそろそろ夕方。
営業マンなら帰社して然るべき時間帯だが、彼は外回りを終えたところで寄り道し、ここさいたまスーパーアリーナを訪れていた。
「はあ~っ。やっちまったぜ」
目的は仕事のミスによる精神的疲労を癒やすためである。
雄大なさいたまスーパーアリーナを望むここなら気分も晴れるかと思ったが、様々な重責を背負う営業係長の心はそう簡単ではないようだった。
と、そこへ。
見覚えのあるじゃがいも頭が近寄ってきた。
「お?」
「お?」
視線を交わすひろしと、じゃがいも頭の少年。
赤い長袖の服に黄色い短パン……ひろしにとって見覚えのありすぎる格好だった。
ふたりは互いの顔をしげしげと眺め合う。
「よっ」
「よっ」
そして、どちらともなく気さくな挨拶を放った。
まるで親子のような馴れ馴れしさ。
しかし当の本人たちは、相手が父親や息子とは思わなかった。
「おじさん、なんか父ちゃんに似てるね」
「そういうおまえはしんのすけに似てるなぁ」
「お~。ドグウですな。オラの名前もしんのすけ~」
「ははっ。それを言うなら奇遇だな」
名前まで同じとは、世の中には妙なこともあるものだ。
ひろしが苦笑いを浮かべると、その息子と同じ名前の少年――しんのすけは彼の隣に腰を下ろした。
「元気ないね。どうしたの?」
「ああ。仕事でちょっと失敗しちまってな」
「それは大変ですな。ところで父ちゃん似のおじさんにお願いがあるんだけど」
「興味なしかよ」
物怖じしない性格まで似ているときた。
しんのすけは言う。
「オラ、万ちゃんのためにお酒を買って届けなきゃいけないんだけど、あそこのおねいさんが売ってくれなくて」
「ま、万ちゃん?」
誰だそりゃと思いつつも、ひろしはしんのすけが指差す方向に停まっているキッチンカーを見やる。
どうやらクラフトビールと軽食を出しているようだ。窓口に店員の女性が立っているのが見える。
「ああ。今はたとえおつかいでも大人が一緒じゃなきゃ酒は売ってくれないからなぁ」
このしんのすけ少年もおそらく息子のしんのすけと同じ5才だろう。お酒は大人じゃないと買えないというルールを知らなくても無理はない。
が、ひろしはそこでハッとする。
それくらいはお店の人が教えてくれるはず。だとすれば――
「うっ。もしかして俺に買ってもらおうとしてる?」
隣のしんのすけは無言で、しかし瞳を潤ませキラキラとした視線を投げてくる。
あからさまなおねだりビームに、ひろしの父性がじわじわとくすぐられていく。
「まあこんだけしんのすけに似た子供の頼み。それくらい別に……」
そう思ったひろしだったが、
「――よ~しおまえら! 次はけやきひろばに繰り出すぞ! 埼玉紅さそり隊の快進撃は止まらねぇ!」
ちょうどキッチンカーの近くを時代錯誤なスケバン風の女子高生たちが通り過ぎていくのを見かけた。
(ハッ! い、いや待てよ)
彼女たちを見て連想したのが――ルールを破って酒を買いかねない“不良”の存在。
(こいつの言う万ちゃんが、本当に20歳以上とは限らねえ。ひょっとしたら悪い不良が子供を盾に未成年飲酒をしようとしているのかも……!)
仕事のミスで脳が疲弊しているためだろうか。悪い妄想が加速する。
(もしそうなら、俺は未成年飲酒の片棒を担いだ犯罪者として逮捕され……会社はクビに! 家のローンも払えず家族が路頭に迷っちまう~~っ!)
労働者の悲哀が生んだネガティブ・スパイラルにより、ひろしの顔からスッと血の気が引いた。
「やっぱりダメだ! きちんとその万ちゃんって人と一緒に買いに来なさい」
社会人としての良心、そして自己保身に基づき、ひろしは断固拒否の構えを取る。
だが、しんのすけは真剣な眼差しで引き下がらなかった。
「万ちゃんは今ひまわりを助けるためにがんばってるんだゾ! だからお酒はオラが持っていかなきゃいけないの!」
新たに飛び出した名に、ひろしは息を呑む。
「ひ、ひまわり?」
「オラの妹の名前」
――妹の名前まで、自分の娘と同じ“ひまわり”だというのか。
そして事情はよくわからないが、そのひまわりは助けを必要とするような窮地にあるらしい。
ひろしは真剣味を帯びた目で、しんのすけの顔をまっすぐ見つめ返した。
「……マジなんだな?」
アニメだったら露骨に気合いを入れて作画したような表情で、ひろしが問う。
アニメだったら露骨に気合いを入れて作画したような表情で、しんのすけも答える。
「おケツのでっぱりはイヤんですよ」
「言葉の意味はわからんがとにかくすごい自信だ」
妹のために一所懸命な兄の姿。
同じ年頃の子供を持つ親として、ひろしの中で他人事とは思えない熱いものが込み上げてくる。
「よしわかった! しんのすけによく似たしんのすけくん、俺は君を信じるぜ」
「おお! おじさんも本物の父ちゃんみたいでかっこいいゾ」
「よせやい、照れるぜ……」
恥ずかしそうに鼻を擦るひろし。
妙な連帯感に包まれながら、ひろしは立ち上がり、キッチンカーへと力強く走っていった。
◇
一方、キッチンカーで待機していた遥は、近づいてくるスーツ姿の男を見て心臓が跳ね上がった。
(や、やっぱり~! 私のバイト先にたびたび現れては私にアプローチをかけてくる常連のお客様だ~!)
もちろん、それは遥の過剰な自意識が作り上げた完全な誤解であり、ひろしは彼女の顔などまったく覚えていない。
だがふたりが奇妙な縁で結ばれており、ひろしがアルバイト先を転々とする遥のもとにたびたび現れるのは事実。
そんな彼女の胸中は露知らず、ひろしはビシッと注文を飛ばす。
「クラフトビールを一杯」
ともすれば遥を口説こうとしているようにも思えてしまう、渾身の決め顔だった。
(しかもお酒を頼もうとしてる~!)
妄想癖のある遥でも、今回ばかりは自分へアプローチをかけているのではないとわかる。
思い出すのは、先ほどのしんのすけとひろしが親しげに会話をしていた光景。
チラッと窺った視界の奥では、しんのすけがなにかを待つようにベンチに座っていた。
(あれってさっきの子に頼まれて……ってことだよね。この人が万ちゃん……なわけないか。思いっきり外回り中って感じだし……)
遥は注文に対する応答を返さず、考えを巡らせる。
(ルール的には問題ないけど……もしこのお客様が買ったお酒をあの男の子に渡せば、未成年に売ったも同然。お酒を販売する者として、それだけは看過できない!)
弱冠20歳にして多くの飲食店アルバイトを経験してきた遥である。
アルコール飲料を扱うのはもちろん初めてではなく、それに伴う責任というのも重々理解しているつもりだ。
だからこそ、
「申し訳ございませんが、お客様……」
ここは毅然と断るのみ!
「20歳未満の方にお酒を販売することは法律で禁じられています。仮に20歳以上であるお客様が購入したとしても、それをあちらのお子様に渡すというのであれば同じこと。お売りすることはできません」
◇
ひろしは口をあんぐりと開け、愕然とした。
(エエ~~ッ!? バ、バレてる~~っ!?)
目の前に立つキッチンカーの女性店員が言う“あちらのお子様”というのは、もちろんベンチで待っているしんのすけのことだろう。
滝のような冷や汗を流しながら、ひろしはヘラヘラした顔を作って必死に取り繕った。
「や、やだな~。これは俺が飲むんですよ。ほら、俺20歳以上」
「失礼ですが、お仕事中にお酒はよくないと思いますが」
「ウウッ」
正論で完璧に殴られ、ひろしは言葉に詰まる。
「そ、そうですよね~。あ、じゃあこっちのサイダーにしようかな~。一緒にサンドイッチも。ね?」
「…………」
苦し紛れに法律もモラルも一切引っかからない健全なメニューに変更するひろし。
遥はジトーッと冷ややかな視線を向けながらも、淡々と会計処理を進めた。
「ありがとうございましたー」
ひろしは購入品を手に、すごすごとしんのすけの待つベンチへと引き返す。
そして、申し訳なさそうにサイダーとサンドイッチを差し出した。
「……サイダーでもいい?」
「おじさんにはガッカリだぞ」
容赦ない5才児の辛辣な一言に、ひろしはがっくりと項垂れた。
と、そのときである。
スーツのポケットから、スマートフォンの着信音が鳴り響いた。
「はい、野原です。あ、部長……えっ!? 川口が先方を怒らせた!?」
後輩がやらかしたと聞き、ひろしの顔が青ざめる。
ひろしは慌てた様子で手元のサイダーとしんのすけを交互に見やった。
「すまん! 今すぐ会社に戻らなきゃいけなくなった! これじゃ不足かもしれんが、万ちゃんとやらによろしく言っておいてくれ!」
「お~。がんばってねー」
「ありがとよー!」
ひろしはそのまま疾風のごとくダッシュし、さいたまスーパーアリーナの敷地から走り去っていった。
「ふぅ。まったくオトナは大変ですな」
ひとり残されたしんのすけは、もらったサンドイッチを美味しそうにパクつき、サイダーの喉越しをンフーッと楽しむ。
と、今度はその真横から聞き馴染みのある声が聞こえてきた。
「あー! しんのすけ!?」
反射的に振り向いた先に立っていたのは、ひとりのお友達とふたりの超人。
同じ幼稚園に通う、一言では言い表せない関係の風間トオルくん――それに、金髪アメリカ人風のお兄さんとオムツ姿のおじいちゃんだった。
「おお、風間くん。お久しぶりぶりざえもん」
「な、なんでおまえがこんなところに?」
呑気にサンドイッチを頬張るしんのすけと、目を丸くして驚く風間くん。
「君はたしか、万太郎と一緒にいた迷子の子じゃないか」
そう言う金髪のお兄さん――テリー・ザ・キッドは、以前しんのすけと少し言葉を交わしたことがある。
そう、あれは春日部スタジアムで行われたケビンマスクvsアクション仮面の試合直前のことだ。
「そーゆーあんたはハンターのお兄さん。HIKAKIN捕まえられた?」
「だから逃走中はやってねえよ」
テレビっ子の子供にとって、あのとき着ていた黒尽くめのスーツは鬼ごっこの鬼役の象徴的コスチュームなのだった。
調子を狂わされたテリー・ザ・キッドに代わり、オムツ姿のおじいちゃん――バリアフリーマンが説明を始める。
「ワシらはここSSAから近い大宮ソニックシティでハイグレ魔王と闘い、風間トオルくんの救出に成功したんじゃ」
そこにキッドと風間くんが続いた。
「その後、SSAで万太郎とミートがアクション仮面と闘っていると聞き、応援に駆けつけたわけさ」
「そしたらしんのすけを見かけてびっくりしたんだよ。いったいなんでおまえがここに?」
3人はしんのすけが万太郎の背にくっついて一緒にワープホールを通過したことなど知らないだろう。
しんのすけはもぐもぐとパンを飲み込みながら、お決まりの文句で彼なりの説明を始める。
「実はかくかくしかじかで」
5才児が語るその内容は非常にざっくりとしたものだった。
しかし“万太郎にお酒のおつかいを頼まれた”という一点で、彼と付き合いが長いテリー・ザ・キッドにはピンとくる。
「……なるほどな。万太郎の考えそうなことだぜ」
仲間の意図を察し、キッドはキッチンカーのほうを向く。
「よし、だったらここはしんのすけに代わってオレが」
そう言って一歩を踏み出すが、バリアフリーマンがサッと手を出した。
「待ちなさいキッド。おまえさんもまだ未成年じゃろう。ここは誰がどう見ても20歳以上なワシが買いに行こう」
いくら体格がいい超人レスラーといえど、キッドの顔つきにはまだ幼さが残る。法律の遵守はもちろん、店員さんに年齢確認の手間を省かせるためにも、ここは老超人である己の出番だ。
バリアフリーマンがキッチンカーへと進んでいく。
「頼りになるぜ、バリアフリーマン」
感心したように見送るテリー・ザ・キッド。
仲間に見送られながらキッチンカーまでたどり着いたバリアフリーマンは、ちょうど別作業をこなしていた店員の遥に声をかけた。
◇
「もし」
「あ、いらっしゃいま――」
遥は声のしたほうを見て、ぎょっとする。
そこに立っていたのは、上裸にオムツを履いただけの――ほぼほぼ素っ裸のおじいちゃんであった。
(えええええ~~~~っ!? 裸にオムツ姿のおじいちゃん!?)
髪がなく、顔がしわくちゃで、腰が曲がり骨が浮き出た……どう見てもおじいちゃんだ!
い、いや、ここは外。しかも天下のさいたまスーパーアリーナのお膝元。尋常のおじいちゃんならば服を着ているはず……つまり目の前にいるのは、尋常ならざるおじいちゃんだ!
(なんで!? どうして!? 近くの老人介護施設から抜け出してきちゃったの!?)
だとしたら保護しなければ、いやまず通報か、それより先に出かけている店長に連絡!?
青ざめた顔であたふたする遥に、老人バリアフリーマンは好々爺のような笑みを見せる。
「ホホ……そうびっくりなさるな。こんなナリをしているが、ワシャ客じゃ。缶ビールを一本もらおうかい」
意外としっかり話せている。
もしかして、介護施設のお世話になるようなおじいちゃんではないのだろうか……?
「あっ……し、失礼いたしました」
赤面しながらも、普段どおりの業務をこなそうと我に返る遥。
(うう……話している分には普通っぽいけど、大丈夫かしら。警察とかに通報したほうが……)
葛藤を内に秘めながら、オーダーどおり缶ビールを用意する。
「お待たせいたしました」
「ありがとう」
会計もスムーズだ。やはりボケてはいないのかもしれない。裸だけど。
このまま素直に帰宅してくれればなにも心配はいらないか。遥はそう思うのだが、
「ところでお嬢さん。ええ人はおるのか?」
「は、はい?」
会計を終えたバリアフリーマンは雑談でもするように遥に話を振る。
おじいちゃんおばあちゃんにありがちな、買い物にかこつけて若い人とお話がしたい衝動だろうか。
一瞬そう考えたものの、目の前のバリアフリーマンは表情だけを若々しく――獲物を狙うように目をギランと輝かせた。
「フリーならどうじゃ、バイト終わりにワシとワンナイトなぞ。女の悦びを教えてやるぞ」
エネルギッシュなものを感じる情熱的な視線。
それはほかでもない、遥かに向けられていた。
(ええ~~っ!? 私、オムツ姿のおじいちゃんから夜のお誘い受けちゃってる~~っ!?)
今まで多くのお客さんから熱烈なアプローチを受けてきた(※自意識過剰による妄想)遥だったが、ここまでストレートな物言いをされたのは初めてだった。
どう答えるべきかわからず困惑する遥。
そこへ――
「仲間が大変なときになにナンパしてんだエロジジイ――ッ!」
「ギョエオワ~~ッ!?」
駆け寄ってきたテリー・ザ・キッドがバリアフリーマンを容赦なく蹴っ飛ばし、首根っこを掴んで引きずっていった。
「さっさと戻るぞ!」
「ひえ~、かんにん!」
ともすれば老人虐待の現場を見てしまったような衝撃。
遥はぽかーんとしたままなにも言えず、キッチンカーの中で立ち尽くした。
わかったことがあるとすれば、ひとつ。
「……バイト変えよう」
さいたまスーパーアリーナに憧れてキッチンカーのアルバイトを始めてみたが、自分には合わなかったかもしれない。