オリジニウムをコラボ先にばら撒アークナイツ! 作:まっすァき
この社長室から見える風景は、いつもの十四分街。
地上一階と三十階に社長室を設けてみたけれど、やっぱり高い場所のほうがこの街を見下ろせて、なんだか気分が良くなるなあ、と考えてみる。
こんな設計ができるくらいにお金を稼げた理由としては……私は、やっぱり
私が社長を務める『プリースティス社』、この営利活動を行う重要な資源にもなっているし。
でも、やはり最近の悩みは、あまりにも量が少なく製造工程のボトルネックがたびたび発生してしまうという点。
工場では昼夜を問わず製品が作られるべきだが、まず原材料にする際、前提として
これを欠かす訳にも行かないので、どうやって製造工程を誤魔化そうかという思案が私にはある。
クルビアやリターニア、そしてヴィクトリアでは鉱脈から
しかし彼らを真似することもできない。この『新エリー都』に存在する源石はまだまだ希少の域を出ない資源であり、そもそもコロッサル主鉱脈やタルガンギルス主鉱脈に並べるほどの埋蔵量……というか在庫? と表現するべきなのかは分からないが、まあぜんぜん足りないし、
増やすためにもある程度質量を持った素材が必要で、私もそれほど高度な機械を持っていない。
工事過程で発生した土や廃棄物の処理に源石を用いるという案はあったものの、コレも露呈しやすい。
どうやって、バレずに大量の源石を増やすか。最重要資源である源石に関する情報を漏洩させたりするリスクも考えれば私が逐一管理する方が楽であろうが……そうすれば将来的に源石が足りなくなる。
今はホロウ内部の瓦礫を
電子工学部品にも使用する上に、これが我が社の主力商品なのだから……まず源石は、私にとって営利活動の柱だ。
どれだけ重要なものであるかは数千年を掛けてでも語りたいが、まあいい。
『ホロウ』や『エーテリアス』などの未知の脅威が跋扈する、この異常な世界において我が社の製品は非常に役立つ存在になれる。
輝磁製品の原材料を握るポーセルメックスと並び立つような地位になれたらいいな、という将来への展望が私にはある。
オリジニウムによって成長したと言って良いだろうし、統計では我が社の電子工学部品を購入した人は多くなりつつある。
『テラ・エレクトロニクス社』などの同族会社から基板を納入したり、このプリースティス社の系列として分社化した企業たちによって数多の製品が作られる。
それらはプリースティス社の作る源石によって成り立つ故に、万が一にでも源石の生産が滞れば……という単一障害点を抱える。
そもそもとして、オリジニウムは本質的なことを言えば情報の媒体でもあるし、アーツで加工をすれば物理的に変形させることはもちろん、どんな計算も基本的には容易だ。
私はフリストンのように、それほど専門的なことを知っているわけではない。だが、
まあ、異世界でも変わらず
それにしても転移の時はビックリしたけれど、『私の記憶』を模した源石が生きていてよかった。
オリジニウムに保存された情報は多岐に渡るし。破損でもしたら……それはそれは、もう恐ろしい。
損壊し、断片化した記憶のは皆無であると自認できるが、『私たち』が纏めて破損すれば終わりだ。
一応、こちらの世界でも記憶を源石に保存するなどの保険は取っている。
が、大気中に
私が『ゼプトスター』について、どう考えているとしても、たぶんオリジナルの思考とは程遠いであろう。
テラで過ごした八千年の記憶……その間に抱いた様々な思考を、オリジナルは持たないのだから。
そもそもとして根本的な問いがひとつあるが。
もはや私って、人間と呼べるのだろうか? という答えられない問いが、私の中に生まれた。
プリースティスも、オラクルも、フリストンも……例外なく誰もが記憶を維持している。石棺で眠る人間、眠らない私と差がある上に。
今や私には人間の形をした源石であるという証拠はあれど、人間たらしめる客観的証拠が無い。こういう思考を持つのも、私がオリジナルじゃないせいか? ただの模倣品だからか?
いや、私はただの模倣品じゃない! こうして人間を辞めてから良かったことは無数にある!
そうだ、石棺にいないからこそ八千年もの時を過ごし、隆盛する文明を見て、命の美しさを知ったのではないか?
あの日に描いた絵画に、あの日に見た海、あの日に語った星々の巡り、あの日に見つけた天災の風景。
オリパシーだって悪いことじゃない。
テラの人々は源石がなければ幸せになれはしない。そうだ、プリースティスがそう言っていたしオラクルもそう……いや? うん。
ケルシーとか言ったか? AMa-10と交流してからおかしくなった。
石棺から予定より早く起きていたから、オリジナルの私がオラクルと話をしたんだ。……ああ懐かしい。
うん? 今の思考は懐古的だな。リンチピンの影響か? まあいい、それよりも異世界でどうするかを決めなくては。
源石が足りない、足りない。増やさなくては…… オリジニウムを最大限活かして資本の基盤を整え、クリーンな企業活動を続けたからこそ、『プリースティス社』は成長できたのだ。
新エリー都で最も勢いのある新興企業として数えられるほどに!
すると資金に余裕が生まれたわけで……エーテルなどの特異なエネルギーに対する研究活動を行う必要性が『私たち』の間で生じた。
基礎研究は既に新エリー都で行われているが、私の欲するところは『空間』に関連するエネルギーであるかということと、諸原理は何か、ということ。
惑星間の空間転移を引き起こしたであろうエネルギーとして、私はエーテルを見ている。
実用化さえできれば
それには、源石の身体を持たない……つまるところ現地の協力者を必要とした。私が赴けないホロウ内部を探索することが可能な協力者は裏社会には沢山いたが、『ホロウレイダー』のような連中はいつ裏切るか分からないし、クリーンなイメージとは遠く掛け離れてしまう。
伝説のプロキシという存在も気にはなるが、『虚狩りの七人目』より優先度は低い。
私は、この護衛に関する需要に対処する為、特務部隊を設立し、自由に動かせる武装組織を持った。研究者たちを守るためのだ。
一般的な警備員は……エーテリアスと戦う想定などしなくてもいいが、私の特務部隊たちはホロウを活動の主とする。
彼らがエーテリアスに対して弱くては困る。
特務部隊が弱かったせいで研究者たちがエーテリアスに襲われてしまい全滅しました、だなんてことは避けたいし、アーツを使えるようになって欲しい。
よって、オリパシーに罹患させる必要があると確認できた。
源石液の詰まった注射器を刺し、さらにアーツユニットを装備させてみると……身体能力が見るからに伸びたし、何よりこれでやっと精神感応が使える。
これで私の特務部隊は身体能力の強化を含め、アーツの恩恵を最大限受けられるようになった。
血液中源石濃度は0.12から0.29に達し。
訓練では、媒介にして私がアーツを展開した。
ここからが精神感応の使いどころだ! 思考を誘導するだけじゃない。一通りの使い方を超高速で覚えさせ、訓練を加速させる。
私が経験した、あるいは感染者が経験したことは、双方向に経験として共有できる。だから全くの初心者でもアーツの感覚が覚えられた。
もちろん『アーツユニット』というか、源石の活用方法を秘匿しているとはいえ、彼らの武装については出し惜しみをしてはならない。
エーテリアスの掃討についても関わらせているが、あまり特務部隊たちを動かすのも稀だ。
彼らは大多数が『旧都陥落』の際、防衛軍として勤めていた経歴を持つし、『讃頌会』に関連する武装勢力を鎮圧する時に使いたいと考えている。
しかし……! しかし! エーテリアスや敵対勢力を相手にするには特務部隊の戦闘能力がまだ不足しているなと私は分かった。
讃頌会という勢力とホロウ内部で遭遇し、特務部隊員の一人がエーテリアスになってしまったという。
『針』と呼称される武器によって異常存在に変貌した隊員は、その場で鎮圧された。
しかしエーテリアスがホロウ外部に出られないという特性によって、ホロウ消滅に伴って死亡したと考えられる。
私の大切な大切な隊員たちに対して、重大な心的損傷を齎した讃頌会は、私の研究活動を護るためだけでなく、今後の被害を考えれば徹底的に破壊すべき組織である。
一人の死によって、ここで特務部隊たちと共に脅威を認識できた。
生存者バイアスの極たる例というか、特務部隊たちは元よりエーテル浸蝕耐性は高い方だった。が、針という武器はそれすら貫通してエーテリアスに異化させた。
調査をするのは念の為というより、これ以上のエーテリアス化はミイラ取りがミイラになるようなものだし、『ポーセルメックス社』からエーテル浸蝕耐性を持つ金属、輝磁を購入し、防御力を見直すのは既定路線だった。
エーテル適応体質として診断されている人についても再三の調査を施し、防護服を輝磁製のものにアップグレードする。
これでやっと、やっと安心してホロウ内部でアーツが使える兵隊を手に入れた。
エーテルに関する研究を止められない理由はいくつもあるし……それに武力は持てば持つだけ嬉しいものだ。
テラから私が転移できたのだから、彼らとはこの地で巡り会える可能性もある。
彼らの転移はいつの事になるかは分からない。が、ならば受動的になるのではなく積極的に行動するべきだ。
ホロウ内部で空間が歪んでいるというのなら、エーテルとホロウが複合的に転移の原因なのではないか、という……『転移に関する有力な仮説』として考えている。
いつの日になるかは分からないが、早く転移に関する調査を完了し、この惑星に同胞を転移させなければならない。
論理的に考えれば転移を引き起こした要因は必ず存在するはずだし、時系列は辻褄が合わないものの『旧都陥落』という事件を引き起こした零号ホロウが怪しい。
しかし零号ホロウに研究員を送ろうにも、出入りの説明が非常に難しい……どうしたものか。
余程のことが無ければ立ち入りができないし。
転移について探っていて、とか理由を正直に話せば確実に頭がおかしい人物として信頼が失われる。
しかし、この別世界は残酷極まりない。ある日突然、旧都の人々はホロウに巻き込まれ、空間の歪みによって脱出すること叶わず。
零号ホロウでは、今や数十万人がエーテリアスへと異化しているだろう。
であるならば、まず
そうすれば
エーテリアスには源石が浸蝕対象にできない何かしらの要因があるものの、周辺の物質がすべて粉瘤状の粉になれば……あとはアーツを撃ち込むだけだ。
零号ホロウの無力化を実現するためには膨大な手順が必要だが、それよりも簡単に人々から恐怖を無くす事ができる手段がある。
『源石クラスターロケット』を無事に打ち上げ、新エリー都で炸裂させることさえできれば、この世界は恒久的平和を達成できなおかつテラと同じような環境に整えられる。
少なくとも、本人の自己連続性を保つためには説明が後で必要だが、源石で身体を再構築すれば、ホロウに巻き込まれない体質になるし、嬉しい事ばかりだ。
そして、これ以上人間がエーテリアスという化け物になる事も存在しない世界になり。ホロウの掃討も簡単になる! いやあ、彼らにとっての理想郷に違いない!
私と同じように源石で身体を再構築し、永遠の生を達成した人はどう思うのだろう? まず最初に幸福だと感じるだろうか?
源石と人々が完全に融合し、源石として変わらない生を過ごす……そんな理想郷に転移させたい。
彼らにも第二のテラとなった世界で
転移を解明するまで、私は全ての手段を持ってしてでもプリースティス社を存続させなければならない。
待ち受けているのは、栄光の未来だ……!
しかし、そんなことを社長室で思ったのも束の間。ノックが、鳴った。