オリジニウムをコラボ先にばら撒アークナイツ! 作:まっすァき
『αスクワッドはその場で投降した讃頌会関係者の移送準備を整え、命令を待機せよ』『βスクワッド、交戦地域における致死性発砲を許可する。資料の保護を優先事項から削除した。資料室に立て篭もる研究員を速やかに処分せよ』『Δスクワッド、クラスA重火器の使用を許可する。治安局と共に鎮圧行動を行い、実験室を捜索し、未探索領域に潜伏する敵に細心の注意を払え』
様々な声を、イヤーマフから聞き、命令する者がいた。
プリースティス社の特別総合作戦部所属、指揮隊長という明らかに特別な肩書きを持つ知能機械人。それがミンスター・プログレイの、一般的な視座による見方だ。
プログレイが見るモニターは、数十秒単位でラグが発生し、受信する音声に至ってはノイズ除去が随所に挟まる影響で一分はズレている。
リアルタイム通信は、現状の技術では不可能とはいえ、もしも実現できたのなら夢のごとき技術だろう。
ホロウ内部の無線通信がいかに困難かが察せられる。
指揮の結果生じた責任の過半はプログレイに宿る。少なくともプリースティス社内部の責任構造はそうなっている。
プリースティス社はホロウ内部の秩序を取り戻すため、エーテリアスに関連する事案を治安局より請け負っており、これらの合同作戦の総指揮も名目上はプログレイである。
彼の所属する総合作戦部は、公共の為を掲げたイメージアップ戦略としての側面を持ちつつも、収益としては不採算に両足を突っ込むどころか頭まで沈めた部門である。
社長は、会計局とのやり取りにおいて『特別総合作戦部』に関連する莫大な内部留保、そして予算に対して公式な回答を行った。部隊がキャロットの作成を行うことはもちろんとして、民間人を救護し、ホロウ内部の調査を進めるための予算であると。
プログレイは管制を行う立場である。救護部隊と鎮圧部隊が連携する為の……いわば、二つの分かたれた部門を繋ぐ橋である。
エーテリアス、あるいは讃頌会などの要注意団体に武力で対抗する鎮圧部隊は、プリースティス社が保有する戦力である。
装備の多くは近代化されており、激しい傾斜地での移動であっても、彼ら全員が特性の人員輸送車両に乗って迅速に行動ができる。
輝磁で作られていない箇所を探す方がもはや難しいという豪華さの車両で、医療品や弾薬箱などには抗エーテル剤が塗布された状態にある。
包括的な装備の共通性を目指しているが、その理由として、加工費がとてつもなく膨らんでいることはもちろん、自動小銃の有効性がエーテル弾頭にて証明されているからだ。鎮圧部隊が所持する弾薬は、ほぼ全てが特殊な金属である輝磁を使用し、スクワッドを編成するために札束が飛んでいくのではと思うほどに、高価だ。
予備の弾薬とプレートキャリアを足し、ヘルメットなどの各種装備を含めれば……携行する装備だけで、兵士一人の全身に八百万ディニーもの金額が掛けられている。
エーテリアスの群れに機関砲を撃たなくとも、交戦するだけで札束が飛び交う。
「ふう、まさか十四分街の共生ホロウに讃頌会の研究施設があるだけでなく、エーテリアスが二十体以上とは……」
マイクを繋いでいない、完全な独り言をプログレイが発した。
(サクリファイスの実験を行っている可能性を考慮すれば、治安局の戦力は温存すべきだ)
プログレイの思考は、実に真っ当な考えである。
エーテリアスの広域鎮圧を請け負っている以上、スクワッドたちが治安局員を護衛しきれず、さらにはホロウ内部における民間人を避難させられなかった場合、それはプリースティス社の汚点となるだけに留まらない。
救護部隊が赴くホロウでエーテリアス化していなかった民間人は、総じてエーテルに対する耐性が非常に強靭である。
そして、救済された民間人は平穏無事な安寧の詰まった一般人として暮らすか、プリースティス社の募集要項を見て、オペレーターとして志願するという好循環が生まれる。
……尤も、実際にはミッチリとした訓練を受けてから配備されるが、こうした面などから部隊の多くは士気が非常に高い。
自らが異化してしまう恐怖に打ち勝ち、他者のためにホロウへ赴くという強靭な意志は、それ単体で武器となりうる。
プログレイがモニターを見つめていると、治安局より、作戦終了の合図がやってきた。
「αスクワッドへ告ぐ。我々はホロウ外部へと通じる道を特定した。αスクワッドは朱鳶治安局員と協力し、帰還せよ」
「βスクワッドへ告ぐ。讃頌会残党に注意を払いながら、厳重に移送を警護せよ」
「Δスクワッドへ告ぐ。αスクワッドと合流し、青衣治安局員に随伴し帰還せよ」
█████:side
「はあ、はあ、はあ、はあ!」
肺胞が焼き切れるような錯覚を覚える。吸い込む空気に混じる高濃度のエーテル粒子が、サクリファイスの傷ついた肉体を内側から直した。
もはや呼吸は酸素を取り込むためではなく、崩れかけた形を辛うじて維持するための儀式にすぎない。
「俺は投降するって言ったじゃないか……一体どうしてそんなことが出来るんだ! この化け物め!」
(頭が痛い。企業の兵士め、いくらなんでも撃ちすぎだ……資料室に擲弾を投げ込んでくるし、『針』が当たれば確実にエーテリアスになるはずだったのに……あいつら本当に人間か!? 信じられん! 全部避けやがる! 許せない……許せない!)
思考の端々が激痛と焦燥によって黒く染まっていく。
再生のためのエーテル吸収が追いつかない。周囲の空間に満ちていたはずのエネルギーはすっかり枯渇しつつあった。
「ふざけるな! 俺はこのままじゃ、終われないんだ────!」
サクリファイスは、幾度もの被弾によってボロボロに欠けた剣を無理やり握りしめ、執念だけで振り下ろそうとする。
しかし、肉体の各所にはすでに穴が開き、復元しようとした端から新たな銃弾が組織を抉り取る。再生能力は確実に、そして急速に死へと向かっていた。
踏み込みはボロボロで、むしろその衝撃で右膝から下が完全に千切れ転倒する。
最大の好機を逃す訳もない。βスクワッドのありとあらゆる武装を結集した追撃が、サクリファイスの視界を埋め尽くす。
「フラグアウト!」
(突然、目の前が暗くなっただと!? 閃光弾か──っ!)
爆音が頭に轟き、強烈な光が視界を白く染め上げる。
コアの直撃を狙ったグレネードの破片が、胸や腹を狙ったフレシェット弾の群れが、徹甲榴弾の重い衝撃がありとあらゆる方向からサクリファイスを襲った。
さらに追撃として、隊員の小銃弾が肩や膝といった関節部を正確に撃ち抜き、もはや両腕は曲がることすらできない。それは死の淵に立たされているというよりも、すでに死体の寸前で踊らされている……と表現した方が適切なのではと思うほど、死に体に等しかった。
もはや、何一つ技を繰り出すことすら不可能な状態。
「う、うおおおおおあああああ!!!」
理性を投げ出し、本能的な恐怖に突き動かされて逃走を始めた。
弾頭が膝の裏や背中を抉るたびに鈍い痛みが走るが、肉体の痛みなどもうどうでもよかった。ただ、走る。
(この通路だ! この通路さえ抜けられれば……!)
ホロウから出られるという、掠れた希望。なぜなら、それだけが生存へと繋がる唯一の道だったからだ。
ホロウを出れば一時的に治療が困難になるかもしれないが、構わない。また別の、より深いホロウへ潜り込めばいいだけの話だ。
「出られると思っていたのか?」
だが、冷酷な現実が、その執念と、一本足の足音を断ち切った。
通路の先に立ちはだかったのは、治安局員──セスだった。
「ふ、ふざ、ふざけるな───!! どけっ!」
最後の足掻きを込めた突撃は、しかし、交差する閃光の中に掻き消えていく。
こうして、讃頌会の極秘施設に巣食う最後のサクリファイスは、鈍い音と共に存在を消し去られた。
鎮圧部隊の心得
秩序の敵対者に対して、我々が率先して脅威の心臓を止める───我々は包括的な脅威に対して迅速に対応し、より多くのエーテリアスを殲滅しなければならない。
救護部隊の心得
秩序の味方として、我々が率先して幸福の心臓を復活させる───我々は秩序の味方であり、全ての市民の生命を守り、より多くの規範を持って行動せん。