ジェダイ評議会から、会社設立そのものに反対する通信は届かなかった。
セラたち共和国実務者から、この会社が何故必要なのかを散々聞かされたメイスが評議会に対して、一先ず推移を見守るという立場を取らせたからである(ヨーダは興味深げに見ていた)。
ただし。『それはそれとして説明しろ。なぜ会社設立支援をしたのかと、マスコミに対する対応についての2点だけは絶対に!!! 一カ月間! 無事を伝える信号だけしか送らず! 詳細については音信不通だったのに! いきなりホロネットに出てきた件も合わせて3点だ!!!』という意思が籠もった通信だけは、大量に届いていた。
「…………」
クワイ=ガンとアナキンが所用でタトゥイーンへ向かっていたため、それらを一身に受け止めることになったオビ=ワン・ケノービは、端末に並んだ未読通信を無表情で眺めた。
そして、全てに以前と同じ返答を送った。
『証拠及び重要参考人の安全確保を最優先と判断し、現在地を秘匿したまま一時的に退避する。情報漏洩を避けるため、本件に関する詳細は通信では報告しない』
嘘は一つも書いていないが、評議会が聞きたいことにも一つも答えていなかった。当然、即座に通信が来た。
『情報漏洩に対する危惧は理解した。ならばオビ=ワンかクワイ=ガンのどちらかが直接来て報告しろ。直ぐに来い。評議会に来い。直ぐにだ』
あまりにも直裁的な通信文に、オビ=ワンは胃が痛くなりながらも、『多忙だから離れられません』という内容の文章を遠回しかつ丁寧に送った。
またも直ぐに返答が来た評議会の通信文に『了解した。速やかに応援を送る』と書かれていたことにオビ=ワンは天を仰いだ。
これまでか。報告していなかったことが全てバレる。せめて、プロ・クーンのような話せる相手が来るようにとだけ祈ろう、と。
だが、どうやら評議会は、応援を送ると発信してから、そもそも応援に出せる人員など一人もいないことが分かったらしい。
『余剰人員なし。待機せよ。これ以上何もするな。何もだ。いいな。会社を見守るだけにするんだ。これ以上何もしないでくれ』
その切実極まりない命令に安堵すると同時に、オビ=ワンは評議会の混乱が人員の現状把握が出来ないほどであることを悟った……もちろん、既にアナキンとクワイ=ガンがタトゥイーンに向かってしまった事を馬鹿正直に報告したりはしない。当たり前だ。沈黙は金。
まあ評議会が混乱するのも当然だろう──
『マスコミにはどういう風に対応すべきだろうか』
『これは完全に仮定の話なんだが、ジェダイ同士で交際している場合はどうなるんだろうか? 本当に仮定だが、昔を前例にして結婚できないだろうか?』
『あなたたちの報道を見たイニシエイトたちが自分たちも出たいと言っているのだけど、どうしたら良いの。指導役の私も出ないといけないわよね』
『私たち、経験全然ないけど取材したいと言われて困っている。どう答えればいい』
『昔の婚姻制度について資料を持っていないか。個人的な興味なんだ。エリシアも気になっているんだ』
『マスタークラスが、台本読み上げるのが報道じゃないのか?』
『今日行った任務内容をマスコミに問われたのだけど、何処まで話をして良いのか分からず当たり障りのないことしか言えなかった。大丈夫でしょうか(※美人ジェダイが救出した子供たちが無事でよかったと心の底から言う報道に大人気)』
『昔は結婚してよかったって事を詳しく教えてくれ。知っての通り、俺はハンナと良い仲なんだが掟で諦めてたんだ。だから、今、ハンナと一緒に昔の資料を片っ端から探してるんだが、それについて書かれた資料がまだ見つからなくて困ってるんだ。マスター・ヨーダすら、昔は婚姻が認められていた時代があったらしい、と聞いたことがあるだけで。いつ、どういう経緯で今の制度になったのか、それが何処の資料に残っているのかまでは知らないんだ』
『オビ=ワン、ジェダイは結婚していいと書かれている資料は何処ですか?』
──こんな個人的な通信文が大量に自分たちに来る有様なのだから、直接対応する評議会、いやジェダイ・オーダーそのものが大混乱なのは当たり前だ。
「内容が、本当に、酷い」
六割がマスコミというか報道対応のアドバイス依頼で、四割くらい恋愛相談が混じっているジェダイからの通信にオビ=ワンは半眼になった。
あらかじめ決まった内容を決まった人が言うやり方しか知らないジェダイたちの世間知らずっぷりや、今の自分に恋愛相談を持ち込む理不尽さに頭が痛くなり。
「そもそも、愛することを奨められ教えられるジェダイが、恋愛や婚姻を基本的に禁じるという制度そのものに無理があるだろう。何故そんな改悪をしたんだ、昔の人たちは? ルーサン改革前後でそんな大変更をしたのなら、せめてイニシエイトの教育で教えてくれ。千年以上前だぞ。マスター・ヨーダが生まれる前じゃないか」
よりによってサティーンと一緒に行動している時に「昔のジェダイは結婚してたから前例あるよ」なんて師に明かされた自分に恋愛相談しなくても良いじゃないか。という意思を込めて悪態をつく。
「まあ、やむを得ないか」
とりあえず恋愛相談は置いておいて、オビ=ワンはマスコミ問題の根っこを考えた。直ぐ出てきた。
共和国と長い付き合いを持ち、外交交渉や司法活動にすら関わる組織でありながら、ジェダイが報道に自分たちの言葉で語る機会は驚くほど少ないというか無かったのが問題なのだ。
重要案件なら共和国政府や元老院が発表する。ジェダイ側で説明が必要なら、議長府ことパルパティーン議長が用意した内容を評議会が承認(※マスコミ経験無いから素通り)し、決められた者が読み上げるだけ。
これがジェダイの広報である……頭が痛い。
「今までは『そういうものだ』で済ませてきたが、済ませていい問題じゃないな。我々は何をしていたんだ」
結果として一人一人のジェダイは、犯罪者を追跡したり紛争地帯で交渉したりする技能は持っているくせに、記者からマイクを向けられると途端に『え? 何で私にインタビューが? 私から何を聞きたいのだろう? これは何処まで話していいのだろう? そもそも何で私の言葉が聞きたいのだろう?』となってしまったのだ。
──思えば自分たちもそうだった。今回のマスコミ関連のノウハウは、マンダロア政府とヴァン達共和国エージェントに出してもらった……自分でやるから大丈夫だと断言したクワイ=ガンのインタビューを除いて。
「だから、経験が不足しているのは仕方ない。仕方ない、が……どう考えても組織として問題があるだろう。これは。評議会はどうするつもりなんだ」
そんな風に呻くオビ=ワンが、コルサントの今を知れば崩れ落ちるだろうが。
今回、クワイ=ガンがマスコミのインタビューに答えた結果、当然押し寄せてきたマスコミに対する対応に評議会は混乱していた。いや、一番混乱している。混乱しかしていない。
ブッチギリでマイクを向けられたのは、今現在、司法省などと共に元老院議員を逮捕し続けている評議会ナンバー2、メイス・ウィンドゥだった。そして、その対応が以下の有様である。
「元老院議員であろうと罪があれば逮捕されなくてはなりません」
「復讐? 元老院議員の復讐が怖いと? それが彼らの犯した罪による逮捕と、何の関係があるのでしょうか」
「私が市民に支持されていると? 何故です? 私はジェダイとして各省庁の調査に協力しているだけなのに」
かのごとくだった。
素だった。マスコミ対応イロハとか一切無しの素である。
そう、素でしか応えられていないのだ。ジェダイナンバー2が。
その結果、《寡黙な愛国者》《共和国の法に例外を認めない男》《無償で共和国に奉仕するジェダイの鑑》としてマスコミや市民に大人気になったことに、本人含めた評議会がどうしてなのか分からないくらいには大混乱しているのだから、オビ=ワンが知れば崩れ落ちるだろう。
頼みの評議会も、報道対応に関しては他のジェダイと同じく完全な無能というか、一般社会との認識のズレを露呈していたのだ、と。
一番巧くマスコミ対応したのが、途中から記者が人生相談始めたヨーダという事が全てを物語っている! 更にオビ=ワンが知ればショックを受けただろうが、応援というか「あの問題児どもを纏めてください」という理由で監督しに来る予定だったヨーダが押し寄せる取材と様々な人生相談に捕まって身動きが取れなくなった!! 奴隷解放から雪だるま式に大事になったこの状況を理解して、応援してくれるほどに話が通じるジェダイ、それもトップなのに!!!
オビ=ワンが知らぬ間に、問題を色々な意味で纏めてくれるヨーダが来れなくなったことは兎も角、ジェダイに人気が出たのは結構なことだが、何故人気が出たのかが分からない。そんな、組織としては極めて不味い状況だった。
ちなみに、企業後見人云々については、一先ず後回しとなった。『我々も依頼できるのか』という様々な星系や企業、団体からの問い合わせまで殺到し、人員不足で到底対処できないため、現在調整中となった。