入院中なのであまりかけません。
その頃、マンダロア軌道に乗ったHG-44。本社になった拠点には、銀河中から依頼が当然二社に押し寄せていた。
ジェダイ・マスターが個人名で保証した二つの企業。その初仕事が完璧に終わったからである。
ジャビーム運輸会社は、襲われても初めての輸送業務を完璧に成功させた。
マンダロリアン・セキュリティー・コーポレーションは、二十隻の大海賊船団を壊滅させ、依頼人を無事に送り届けた。
しかも、契約金額以上の料金を請求せず、完璧に法に従い動いたのである。
海賊から奪われた貨物は元の所有者へ返還し、手に入れた物資についても共和国法に従って処理して法に則った金銭を手に入れる。誰もが見ても完璧にアウター・リムへの運輸をこなしたのだ。
その事実に、銀河中の商人と政府が反応した。
強い護衛ならば探せばいる。
金さえ積めば、海賊さえ恐れるような傭兵を雇うことも不可能ではない。
だが、契約を守り、依頼人を裏切らず、海賊が来たら殲滅し、きっちり仕事を終えたら取り決めた報酬だけを受け取って帰り、法を犯さない。
そんな護衛と輸送会社が、何処にいるというのか。
戦闘民族マンダロリアンの強さを疑う者は、元々それほど多くなかった。今回初めて証明されたのは、その強さを合法的な契約によって安心して利用できるという事実だった。
サティーン個人に対する信用と、ジェダイ・マスターによる個人的な保証。そして、輝かしい実績を確立した。
マンダロリアンに対する恐怖よりも信用が高まるのは当然だった。
そう、アウター・リムだけでなく末期的な銀河において少しでも助けてくれる相手として。
だから、注文が来た。
物資輸送。輸送船団の護衛。施設の警備。海賊の被害に悩む星系政府からの相談。星系護衛。危険宙域を通過しなければならない商船隊からの見積もり依頼。賞金首捕縛。更には要人警護や遭難船の救難についてまで問い合わせが殺到した。
かくて、ジャビーム運輸会社と、マンダロリアン・セキュリティー・コーポレーションの業務端末は、設立から間もない会社とは思えないほど忙しくなった。
──ことはなかった。
「はい! こちらジャビーム運輸会社及びマンダロリアン・セキュリティー・コーポレーション合同受付でございます!」
──ある一体のドロイド、C−3POによって
銀河各地から届く依頼は、当然ながら共和国公用語だけではなかった。星系政府や企業によって使用する言語に加えて契約書の形式も違う。それらの者たちは、自分たちの母語で交渉したがるし自分たちの形式や文化で契約したがった。
それらに対応できる人材など、設立したばかりの二社が確保できるはずもなかった。
だが、例外がいる。
アナキンが実家から連れてきたこのプロトコル・ドロイドは、六百万を超える言語による意思疎通能力とマネジメント能力を持った「何でこんな凄いドロイドが農業手伝いを何年もしてたの?」と全銀河が突っ込む存在だ。その能力を遺憾なく発揮することで会社は順調に回っていた。
「失礼いたします。そちらのご依頼は輸送船団の護衛でございますね? でしたら弊社の警備部門へお繋ぎいたします。はい、ネイモーディアン語でも問題ございません。契約書につきましてもネイモーディアン語で大丈夫です。共和国公用語の対訳を作成して送りますので、少々お待ちくださいませ」
アナキンに連れられて着いた時には明らかにカタギではない空気を漂わせるマンダロリアンをみて、「ブラスターが! ブラスターの砲火がぁ! アナキン様ぁ! シールド発生器がもう持ちません!」と、タトゥイーン解放時に翻訳の為に同行したハット宮殿での記録をフラッシュバックして混乱していた3PO。
蓋を空けてみればマトモすぎる仕事だったことに、安堵して本領を発揮する彼が書類作って送り通信を切った直後別の端末が鳴った。
「お待たせいたしました! はい、ローディア語でございますね! 鉱石輸送のご依頼でしたら先ずはどのような物品かを……申し訳ございませんが、密輸に該当する貨物の取り扱いは致しかねます!」
速やかに密輸と見いだし共和国当局と会社保安部に報連相が終わるや否や更に別の通信。
「救難依頼ですか!? それは大変でございます! 現在位置と船舶の識別番号をお願いいたします! マンダロア政府が救援いたしますので、ご安心ください」
受け取った情報を確認し、直ちに救難担当者へ転送する。その間にも別の企業から届いた契約書を翻訳し、企業担当部署だけではなくマンダロア政府の審査が必要な案件を分類していた。依頼でマンダロリアン同士が敵対しないようにしながら。しかも、マンダロア政府の名を売りつつ。
まさに八面六臂の大活躍である。
勿論、最終的な契約内容や受注の可否を判断するのは人間だが、その判断に足る情報が、担当者の手元には、共和国公用語による要約と必要書類まで完璧に分かりやすく添えられているのだ。
だから人間は読んでサインすればそれで済む。
これぞプロトコル・ドロイドである!
「何という……」
その仕事ぶりを見ていたサティーンが、思わず感嘆の声を漏らした。
あのドロイド、マンダロア政府に欲しいなあと。
「なんて素晴らしいドロイドなのかしら。何処で手に入れたのアナキン?」
「僕が作ったんだよサティーン」
何時の間にか姉弟の口調になっている二人。誇らしげに胸を張る義弟アナキンに、義姉サティーンは感心の声を出した。
「……あなたが?」
「うん。タトゥイーンにいた頃にね。だから、今回は母さんたちの所から連れてきたんだ」
「そうなの」
義弟に感心しながらサティーンは改めてC=3POを見た。
現在、極めて優秀なプロトコル・ドロイドは、通商連合から届いた大量の問い合わせを処理しながら、別の端末でジャビーム運輸会社へ貨物輸送を依頼してきた企業の担当者と会話していた。しっかりとかつ完璧に予算や経費の見積もりをしながら。
武器への信仰で予算を投げ捨てる財務官僚、だけでなくせっかく手に入れたHG-44の生産設備で軍需品作ろうとしたマンダロア政府官僚共──「民需品優先しろ!?」と咆哮する羽目になった──に、頭を悩ませるサティーンはウットリした。
「素晴らしいわぁ」
あぁ、あんなドロイドが居てくれたら私の苦労は半分くらい、いやもっと減るのに、どいつもこいつも戦いばかり達者で統治が出来ない連中ばっかり、ジェダイのオビ=ワンに手を貸してもらってやっと回せてるのを当然としやがって。なにが「「「政府はちゃんと仕事してるなヨシ! マンダロア社で稼ぐぞ!! それで税金納めりゃ国民の義務果たしたな!!!」」」だよ。どいつもこいつもこっちの苦労も知らずに。
という羨望と疲弊の眼差しの義姉に家族を愛するアナキンは当然申し出た。
「C=3POは僕の家族だから渡せないけど、よければサティーン用に作ろうか?」
「いいの!? アナキン!?」
「もちろん、サティーンの為だからね」
ありがとう、とサティーンは、家族の手助けをすることを当たり前に考えるアナキンを姉として優しく抱きしめる。
ああ、昔のジェダイが結婚していた、つまり前例があったと知ってから更に二人きりになろうとしないヘタレオビ=ワンと比べてなんて可愛い少年だろうか。この少年なら思い人が居たならジェダイ云々気にせずに口説いてくれるのに。
その様子を見ながらクワイ=ガンは満足そうに頷いていた。何しろ、自慢の弟子なのである。
最近、サティーンがあまり好きでない髯を全て剃りながら何かやってる兄弟子もだが。
「アナキン様! 今度はハット語で依頼書が送られてきました! しかも内容はスパイス密輸でしたぁ!」
「それは断っていいよ。あ、共和国には通報してね一応」
「当然でございます! 共和国にもマンダロア政府にも連絡いたしました」
そんなやり取りを聞きながら、会社の初仕事が成功し信用が高まる中、サティーンは既に成立している次の契約が気になった。これほどの問い合わせが押し寄せる前に、いったい何処が契約を結んだのだろうか。と。
「救援などはともかく、護衛付き輸送任務の次は何処の依頼です3PO?」
「はい、通商連合からの依頼となっております公爵閣下。しかも、ヌート・ガンレイ総督直々の依頼です。既に貨物を受け取り輸送完了しております。今は復路、輸送した惑星の特産物を通商連合の港に運んでいるところです」
「なるほど、流石は銀河有数の企業たる通商連合、動きが速いですね」
「「「………………はい?」」」
感心するサティーンはともかく、クワイ=ガンやアナキン、そして、先に掟改革してからサティーンとの仲を進めようとして、まるで何らかの秘密活動をしている如く無言で端末を操作していたオビ=ワン(髯無し)はその依頼主には目が点となった。