ここから第1章の始まりです
世界の亀裂へ落ちた彼は、その先で何を見るのか
皆さんがよく知る、あのキャラとの出会いをお楽しみください
原作キャラを知らなくても楽しめるように頑張って作りました
感想はもちろん、文章や描写について気になった点・ご指摘なども残していただけると嬉しいです
今後の執筆の参考にさせていただきます
聞きなれない鳥の声で意識が浮上する
冷たい土の感触
足や頬に残る痛み
生きている……
俺は倒れた姿勢のまま辺りの気配を探る
耳を澄ませ
まぶたを開き
ゆっくりと体を起こす
俺は近くにある木へ触れ、鳥の鳴き声に耳を澄ませる
どれもが知らぬものだった
「違う山か」
だが、やることは一緒だ
風景を頭に叩き込み、近づいてはならない場所、必要なものが取れる場所を探す
とりあえず赤く染まった服を洗わなければ。
音を頼りに水場を探し始める。血の匂いは危険だ
しかし、しばらく歩き続けたが中々見つからない
その上途中から視線を感じる。
獣ではないが……人でもない
気配はまるで獣だが、気配の隠し方がチグハグだ。
俺は、気付かないふりをしながらそのまま森の中へと進んだ。
知らない甘い匂いがした
「美味しそう……」
鼻をヒクヒク動かして、もう一度吸い込む
甘いお菓子とも違う、
焼いたお肉とも違う
でも、噛みつきたくなる匂い
「沢山食べれるといいなのだー」
私はその匂いを追いかけるように、ふらふらと森の奥へと歩き出した
「今日は良い日になりそうなのだ♪」
しばらく森を進んでいたが背筋を伝う視線が外れない。草陰へと走り込み、そのまま岩陰へと飛び込んだ。
視線が外れた。しかし、目の前にそれはいた。
「お前〜人間なのか〜?」
俺は岩陰から飛び出して距離を取る、声の主が続いて岩陰からゆっくりと姿を表した。
ヨダレを垂らし、
黒い服に身を包んだ、
金髪の少女。
その少女は、スンスンと匂いを嗅ぎ
「甘い匂い……見つけたのだ」
心臓が跳ね上がる。
目の前にいる存在は、村の人間より遥かに危険だ。
腹を空かした大型の獣が重なって見える。
いや、それ以上――
俺は相手の視線を切らず、ゆっくりと後ずさり距離を取る。しかし、少女はゆっくりとこちらへ歩み寄った
「早速──」
その先を聞くことなく、走り出していた。バチンと頬を枝の打つ。しかし、構わず掻き分け走り続ける。
右へ左へ、揺さぶりをかけながらとにかく距離を離す。
「あはは待て〜」
だが、後ろから呑気な声が付かず離れずの距離で聴こえる。なのに走る音がない、不気味に風を切り裂く音だけだった。
足音を消すのはそう難しくない。
俺もやる。
……だが、あんな笑いながらできるものじゃない
俺は、走りながら後ろを見てしまった
「逃がさないのだ〜」
飛んでいる
飛躍なんてものではない。
比喩でもなく、空を飛んでいた。
人間が空を飛ぶ光景、そんなはずがない。
ありえていいはずがない
幻覚か?巨大な鳥か虫を人間と見間違えたのか?
夢なら覚めてくれ、悪い夢なら早く。しかし、体から流れる温かいものと足の痺れが嫌でもこれが現実だと叩き込んでくる。
「ふざ……けるなあああ!!」
「あはははは!」
笑い声と絶叫の不協和音が響き渡った。
私は結界の異変を感じ、森へと赴いていた。
結界を無理やりこじ開け、こちらへ来たものがいる
保護か退治か。どちらにせよ確かめなければならない。
見上げた空はいつもと変わらない
なのに、こういう時に限って面倒事はやってくる
「ふざ……けるなあああ!!」
「絶叫……近いわね」
あの森にはルーミアがいる
「ほんっと、面倒くさい」
限界が近い、どれほど走っただろうか?
距離を離すことができず、弄ばれ続けた俺の視界は滲んでいた
「しまっ……!!」
足へ走る鈍い痛みと共に俺の視界は反転していた。足が痺れて立ち上がる気力すら湧かない、ゆっくりと仰向けになる。顔を腕で覆い視界を塞ぐ。
「こんなところで終わるのか?」
「追いかけっこは終わりなのだ?」
腕をどかし相手を睨みつける。汗ひとつ流していない少女はにんまりと笑いながらこちらをのぞき込んでいた
あいつらと全く同じ笑顔。不愉快だ
「土まみれで嫌なのだ。水で洗うのだ!」
偏食な割には味にはこだわるらしい。人間を食べたがる偏食とは恐れ入ったが俺の命はもう少しだけ残されたらしい
「人間を食べる人間がいるとはな」
しかし、少女はキョトンとした顔で
「人間?多分お前以外居ないのだ」
こいつどこまで俺を弄ぶつもりだ
「ふざけるな!お前も人間だろうが!!」
鳥がいしつぶてをくらったような顔をする。さらに少女はお腹を抱えて笑いだした
「プッ……アハハハハハ!!おかしい奴なのだ!私は妖怪なのだ!」
「名前なんてどうでもいい!!」
「何言ってるのだ!私は人食い妖怪っていう存在なのだ!」
「他の人間と同じ姿をしてて何意味わからんことを言ってやがる!!いい加減にしろ!!」
俺は混乱しながらも少しでも生きながらえるために叫び続けた
「むーなかなか信じないのだ……まぁいいやとりあえず水場へ連れていくのだ!」
少女は軽々と俺を持ち上げ、鼻歌を歌いながら連れ去る。いくら抵抗しようともビクともしない、本当に何者なのだこの少女は?
なにか手立てはないかと必死に考えていたが
ゴチン!!
と凄まじい音が響き渡った。俺は地面へ叩きつけられ呼吸が途切れる
「あいたぁー!!!」
そちらを向けばそこには赤と白い服に身を包んだ別の少女が立っていた
「何するのだー!!霊夢!!」
霊夢と呼ばれた少女はこちらを一瞥すると人食い少女の方へ視線を戻す
「それ食われたら困るのよ」
「なんでなのだ!!一口だけでいいから!」
「ダメなものはダメ」
「嫌なのだ!!あんな美味しそうなのは久しぶりなのだ!!」
「ルーミア」
「ムグッ……わかったのだ」
あれだけのことをやってのけるルーミアを黙らせる実力者
逃げるのは難しい。その上に俺に用事があるときた
殺しに来たか……それとも別の思惑があるのか?
俺はじっと見ていたが、霊夢がこちらへと振り向く
「なによ」
なによとはこちらのセリフだ
だがバカ正直にそんなこと言えばどうなるかが分からないわけではない
「なんの用事だ」
「あんた?博麗大結界をぶち破ってきたの」
「知らん」
「しらばっくれる気?」
霊夢の顔が険しくなる。言葉を選ばなくてはならないようだ
「知らないものは知らない。そもそもここがどこだかも知らない」
くどいと思わせるほどの否定。これでどうだ?
霊夢の顔から険しさが消えた
しかし、こちらを探るような目は変わらない
地面の土を掴み、拳の中へ忍ばせる
だが、隙が見つからない
手の中の土を離した
「そう、なら事故かしらね?」
霊夢の視線は俺の額へと移る
「鬼の妖怪かしら?」
相手を睨みつけて叫んでしまっていた
「違うっ!!俺は……!!俺は……!!!」
霊夢が目を丸くした
やってしまった
まずい
なんとか逃げ出さなければ。
「あなた人間だったの……ごめんなさい」
視界が揺れた
何を言われたのか分からなかった
霊夢が不思議そうにこちらを見ていた
怒鳴らない、殴らない
ルーミアすら従える女が何をしたのか、俺は理解できなかった
「な、なによ」
はっと我に返り、俺は顔を背ける
「わ、わかれば……いい」
そういうのが精一杯だった
「私は霊夢、あなたは?」
「私はルーミアなのだー!」
「…………」
人食い少女とそれを制する少女。人間が二人揃って俺に自己紹介をしている。奇妙な光景だった
「名前」
「そう名前」
俺にも名前はあったはずだ
愛してくれなかった最低な親から貰ったはずの名前
その名前は……なんだったか?
思い出せない
代わりに、一つの言葉が溢れ出した
「……ヤタ」
「ヤタね」
なぜこの名前を名乗ったのか俺にも分からない。だが……思い出せない名前を使うよりかは幾分かマシだろう
そして、疑いすら向けぬ霊夢という少女。本当によく分からない
村で言うところの村長とか言うやつだろうか?
「着いてきなさい。お風呂とご飯ぐらいは出してあげる」
餌付け……と言うやつだろうか。背中を見せた今でも逃げ出せる気がしない。大人しく従う他無いだろう
だが、なぜかその背中は今まで見てきたの人間に比べると少し大きく見えた
俺の見上げる空はどこまでも知らない色をしていた
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
ようやく幻想郷での最初の出会いとなりました。
ヤタから見た幻想郷がどう映っていくのか、そして彼が霊夢やルーミアたちとどう関わっていくのか、これから少しずつ描いていければと思います。
次話は、第1章-2「博麗の巫女と忌み子」。
感想はもちろん、文章や描写について気になったところ、「ここが好き」「ここは少し分かりにくかった」なども残していただけると嬉しいです!
今後の執筆の参考にさせていただきます
それでは、次話もよろしくお願いします!
Ps:ルーミアの無邪気さがしっかり出てると嬉しいなぁ