BLEACHの世界に転生した俺は、初代剣八になるらしい 作:まいちー
第三十二章 帰る
その日も、いつもと変わらず剣を振っていた。
日が傾く頃になって刀を鞘へ戻し、家へ戻ろうとしたところで、ふと瀞霊廷のことを思い出した。
出てから、ずいぶん長い時間が経っている。
「…………」
そろそろ帰ろうか。
自然とそう思った。
ここでの暮らしに飽きたわけではない。剣を振ることにも飽きていないし、明日も同じように過ごせと言われれば、何の不満もなくそうするだろう。
それでも、一度そう思うと不思議と迷いはなかった。
瀞霊廷へ帰ろう。
そう決めた。
◇
翌朝、必要なものをまとめた。
もともと旅をしていた頃から荷物は多くない。刀と着物、それから道中で必要になりそうなものを少し持てば、それで十分だった。
家を出て、振り返る。
隣には新太の家があり、その向こうには畑がある。少し離れたところからは、いつもと変わらず川の音が聞こえていた。
気づけば、ずいぶん長くここで暮らした。
最初に建てた時は傾いていた家も、何度も直すうちにそれなりの形になった。雨が降るたびに違う場所から漏れていた屋根も、今ではほとんど漏れない。
たぶん。
「…………」
最後に、新太の墓へ向かった。
『剣神様 新玄 ここに眠る』
自分で刻んだ文字は、今見ても少し歪んでいる。
墓の前に座った。
「瀞霊廷へ帰ろうと思います」
もちろん、返事はない。
「長くお邪魔しました」
頭を下げて立ち上がる。
それから、もう一度だけ墓を見た。
「また来ます」
今度はそれだけ言って、新太の墓に背を向けた。
◇
山を下りた。
瀞霊廷へ向かうのは久しぶりだったが、今回は帰る場所が最初から決まっている。山を越え、川を渡り、町を通りながら、瀞霊廷のある方角へ歩き続けた。
急ぐ理由はなかった。
途中で刀を持った者を見かけることもあった。
立ち方を見れば、どんな剣を使うのか気になる。腰に差した刀や身体の使い方を見て、知らない剣かもしれないと思うこともあった。
それでも、足を止めることはなかった。
必要がないからだ。
「…………」
新太に会う前なら、そんなことは考えなかっただろう。
少しだけ笑って、そのまま瀞霊廷へ向かった。
◇
何日も歩いた。
やがて、遠くに見覚えのある白い壁が見えてきた。
「…………」
瀞霊廷。
遠くから見る限りでは、出た時とほとんど変わっていない。
けれど、近づいていくと少しずつ違いが見えてきた。以前にはなかった建物があり、道もいくつか変わっている。
何より違うのは、人だった。
門を抜けてから何人もの隊士とすれ違ったが、知っている顔がほとんどない。向こうも俺を知らないらしく、こちらを見てもそのまま通り過ぎていく。
瀞霊廷を離れてから、どれほどの年月が経ったのか。正確には、もう覚えていない。。
隊舎の場所は大きく変わっていなかった。
昔の記憶を頼りに歩いていると、前から来た隊士が俺を見て足を止めた。
「……あの」
「はい?」
「どちらへ行かれるのですか?」
「総隊長室です」
そう答えると、隊士は少し困ったような顔をした。
「お名前を伺っても?」
「八千流と申します」
「八千流……?」
「卯ノ花八千流です」
「…………」
隊士の顔が止まった。
俺の顔を見て、それから腰の刀へ目を向ける。
「……卯ノ花八千流?」
「はい」
「初代剣八の……?」
「昔は、そう呼ばれていました」
「…………」
どうやら、名前は残っていたらしい。
◇
総隊長室へ向かった。
この道はよく覚えている。周囲の建物が多少変わっていても、迷うことはなかった。
やがて見覚えのある場所へ辿り着き、扉の前で足を止める。
ここは、あまり変わっていない。
「総隊長、失礼します」
「入れ」
聞き覚えのある声だった。
扉を開けると、部屋の奥には山本重國がいた。
「…………」
久しぶりに見る。
瀞霊廷は変わっていた。
知らない建物が増え、知らない隊士が歩いている。
それでも、山本重國は変わらずそこにいた。
こちらに気づいた山本重國が顔を上げる。
しばらく俺を見ていたが、やがて口を開いた。
「戻ったか、八千流」
「はい」
山本重國の前まで歩き、頭を下げる。
「ただいま戻りました」
「うむ」
顔を上げると、山本重國はしばらく俺を見た。
「長かったのう」
「そうですね」
「満足したか」
「…………」
少し考えた。
新太に会い、剣にはまだ別の道があることを知った。
「いいえ」
少しだけ笑った。
「剣の頂は遠く、まだまだ長く楽しめそうです」
「そうか」
「はい」
山本重國はそれ以上、何も聞かなかった。長く留守にしていたことを咎めるでもなく、どこへ行っていたのかを尋ねるでもない。
しばらくして、山本重國が口を開いた。
「十一番隊のことは、見たか」
「いいえ」
「そうか」
「何かありましたか?」
「お主が十一番隊を退いてから、隊長は幾度か代わった」
「…………」
「剣八の名も、今は十一番隊隊長が継いでおる」
「そうですか」
知っていた。
いずれ、そうなることは。
俺の後にも剣八が現れ、その名は十一番隊隊長へ受け継がれていく。原作を知っていた俺には、分かっていたことだった。
けれど、実際に自分の後を継いだ者たちがいると聞くと、少し不思議な気分だった。
「今は、何代目ですか?」
「五代目じゃ」
「…………」
五代目。
俺が初代だった。
なら、俺が旅をしている間に、三人の剣八がその名を継ぎ、今は五人目が十一番隊を率いていることになる。
「随分と、長く留守にしていたようですね」
「今さら気づいたか」
「…………」
否定はできなかった。
「強いですか?」
「帰って早々、それか」
「気になりましたので」
「自分で確かめるがよい」
「はい」
それなら、そのうち見に行こう。
山本重國が小さく息を吐いた。
「それと、お主には今、隊も役職もない」
「そうですね」
「旅に出る前にも言うたはずじゃ。戻れば、また護廷で働いてもらうとな」
「ええ」
「しばらくは瀞霊廷におれ」
「はい」
「その後のことは、追って、沙汰を出す」
「承知しました」
それで話は終わったらしい。
立ち上がり、頭を下げる。
「では、失礼します」
「八千流」
「はい?」
振り返る。
山本重國は、昔と変わらない顔でこちらを見ていた。
「よう戻った」
「…………」
少しだけ笑った。
「はい」
今度こそ頭を下げ、総隊長室を出る。
廊下へ出ると、知らない隊士が向こうを歩いていく。
知らない隊舎。
知らない顔。
俺の知らない剣八。
以前とは、随分違っている。
それでも。
「…………」
ようやく。
帰ってきたのだと思った。
◇
総隊長室を出た後、しばらく瀞霊廷を歩いた。
隊舎の位置は大きく変わっていないが、建て直されたものも多く、歩いている隊士もほとんど知らない顔ばかりだ。
「…………」
五人目の剣八。
どんな剣を使うのだろう。
少し気になった。
十一番隊へ向かおうかとも思ったが、やめた。
帰ってきたばかりだ。
そのうち会うこともあるだろう。
それより、もう一つ顔を出しておきたい場所があった。
◇
四番隊へ向かった。
隊舎へ近づくにつれて、見覚えのある景色が増えていく。
ここも変わっていた。
建物が増え、以前より多くの隊士が行き来している。それでも、十一番隊ほど知らない場所には感じなかった。
中へ入る。
「失礼します」
近くにいた隊士が振り返った。
「はい。どのようなご用件でしょうか」
「麒麟寺隊長はいらっしゃいますか?」
「隊長に?」
「はい」
「お名前を伺ってもよろしいでしょうか」
「卯ノ花八千流と申します」
「…………」
隊士は俺を見て、それから腰の肉雫唼へ目を向けた。。
「少々お待ちください」
「はい」
隊士が奥へ消えていった。
待ちながら周囲を見る。
負傷した隊士が運ばれ、別の場所では薬が運ばれている。
忙しそうなのは昔と変わらない。
「卯ノ花?」
聞き覚えのある声に振り返ると、天示郎が立っていた。
「お久しぶりです」
「てめえ……いつ帰ってきやがった」
「先ほどです」
「先ほど?」
「はい。総隊長へ挨拶をして、こちらへ来ました」
「帰って早々かよ」
「覚えたことを忘れていないか、確認されるかと思いまして」
「…………」
天示郎が鼻を鳴らした。
「言うようになったじゃねえか」
「そうでしょうか」
「で」
天示郎が俺を見る。
「忘れてねえだろうな」
「もちろんです」
「ならいい」
「…………」
懐かしい。
少しだけ笑った。
◇
話していると、廊下の向こうが騒がしくなった。
「道を開けろ!」
数人の隊士が、腹部からかなりの血を流した男を運んでくる。
天示郎の顔が変わる。
「こっちへ運べ!」
「はい!」
寝台へ乗せられた男の傷を、天示郎が見る。
「深えな」
俺も横から傷を見る。
刃物によるものだった。
「卯ノ花」
「はい」
「手ぇ貸せ」
「分かりました」
傷の反対側へ回る。
「出血を頼む」
「はい」
手をかざして霊力を流し、傷の状態を確かめながら出血している箇所を見極める。
必要な場所へ。
必要なだけ。
細く絞った霊力を流し続ける。
天示郎も隣で処置を進めていく。
やがて、出血が止まった。
「よし。奥へ運べ」
「はい!」
隊士たちが男を運んでいく。
天示郎がこちらを見る。
「卯ノ花」
「はい」
「旅の間も、人を治してたのか」
「ええ。怪我人や病人がいれば」
「ずっとか?」
「できる範囲では」
「…………」
天示郎が黙る。
「旅に出る前、言われましたから」
「あ?」
「人を救え、と」
「…………」
「それに、せっかく教えていただいたものを、使わないのは勿体ないでしょう」
天示郎が鼻を鳴らした。
「そうかよ」
「はい」
それだけだった。
けれど、天示郎は少しだけ笑っていた。
◇
天示郎とともに、隊長の執務室へ入った。
「座れ」
「はい」
向かいに座る。
「で、今度はどれだけいるつもりだ」
「分かりません」
「また出てくのか?」
「今のところ、そのつもりはありません」
「総隊長には?」
「しばらく瀞霊廷にいるように言われました。その後については、追って沙汰を出すと」
「そうかよ」
天示郎が腕を組む。
「旅はどうだった」
「楽しかったですよ」
「そういうこと聞いてんじゃねえ」
「何か得たか、ということでしょうか」
「ああ」
「…………」
少し考える。
「得たものは、多かったと思います」
「そうか」
「はい」
「なら、長いことほっつき歩いた甲斐はあったみてえだな」
「そうですね」
天示郎が鼻を鳴らした。
「まあいい」
天示郎が立ち上がる。
「今日はどうすんだ」
「特に決めていません」
「なら手伝ってけ」
「よろしいのですか?」
「暇なんだろ」
「はい」
「だったら働け」
「承知しました」
久しぶりに、四番隊で一日を過ごした。
◇
その日の夕刻。
天示郎は総隊長室を訪れていた。
「失礼するぜ」
「入れ」
天示郎が中へ入り、山本の前に座る。
「決めたかの」
「ああ」
「そうか」
短いやり取りの後、山本が天示郎を見る。
「四番隊の後任は」
「それで来た」
「副隊長はどうじゃ」
「まだ早え」
「そうか」
山本はそれ以上聞かなかった。
天示郎がそう判断したのなら、それなりの理由があるのだろう。
「他に当てはあるのか」
「ああ」
「誰じゃ」
「卯ノ花」
「…………」
山本が天示郎を見る。
「お主が八千流を推すか」
「ああ」
「意外じゃな」
「俺もそう思うよ」
天示郎が鼻を鳴らした。
「…………」
山本はしばらく黙っていた。
「今日、卯ノ花が四番隊に来た」
「聞いておる」
「怪我人が運ばれてきたから、手ぇ貸させた」
「腕は」
「問題ねえ」
天示郎は迷わず答えた。
「旅の間も、人を治してたらしい」
「ほう」
「怪我人や病人がいりゃ、診てたとよ」
「…………」
「腕は十分だ。それに、十一番隊を長く率いてた実績もある」
山本は何も言わない。
「四番隊を任せるなら、悪くねえと思うがな」
やがて、山本がゆっくりと目を閉じた。
「本人には」
「何も言ってねえ」
「そうか」
「決めるのは俺じゃねえからな」
「無論じゃ」
天示郎は推薦する。
だが、四番隊隊長を決めるのは天示郎ではない。
しばらくして、山本が口を開いた。
「考えておこう」
「ああ」
天示郎が立ち上がり、そのまま扉へ向かった。
「天示郎」
「あ?」
「八千流でよいのじゃな」
「…………」
天示郎が足を止め、振り返らないまま答えた。
「昔のあいつなら、推してねえよ」
「…………」
それだけ言って、天示郎は部屋を出た。
◇
数日後、総隊長室へ呼ばれた。
「失礼します」
「入れ」
中へ入ると、山本重國のほかに天示郎もいた。山本に促されて前へ座ると、少し離れたところで腕を組んでいた天示郎がこちらを一瞥する。
「天示郎が四番隊を離れる」
「はい」
「零番隊へ昇進することになった」
零番隊と聞いて、前世の記憶とようやく繋がった。俺が知っている麒麟寺天示郎は零番隊にいたが、いつそこへ上がったのかまでは知らなかった。
どうやら、それが今らしい。
「後任を置く」
山本が続ける。
「お主に四番隊を預ける」
いずれ四番隊隊長になることは知っていたので、そこに驚きはない。ただ、その経緯までは原作でも描かれていなかった。
「理由をお聞きしても?」
「天示郎がお主を推した」
その答えには、思わず隣を見た。
「天示郎が、私を?」
「ああ」
「それは意外ですね」
「うるせえな。任せられると思った。それだけだ」
天示郎が自分の後任に俺を推したことの方が、四番隊を預けられることより意外だった。
「そうですか」
それなら、それ以上聞く必要はなかった。
「一つ、よろしいでしょうか」
「申せ」
「私は、剣を捨てません」
山本は少しも表情を変えなかった。
「捨てろとは言うておらん」
天示郎も横で鼻を鳴らした。
考えてみれば、この二人を前に確認するようなことでもなかった。山本も天示郎も隊を率いながら自ら刀を握り、必要とあれば戦場へ出てきた者だ。
「それに、四番隊とて戦場から離れるわけではない」
山本が続ける。
「戦となれば、負傷者は待っておってもここへは来ぬ。四番隊も戦場へ入り、傷ついた者を見つけ、運び出さねばならん」
十一番隊にいた頃とは、戦場で見るものが変わる。敵を斬るために人を動かしていた俺が、今度は傷ついた者を生かすために人を動かすことになる。
それでも、戦場に立って人を見て、その場で判断することは。
護廷十三隊の隊長格の責務だ。
「なら、問題ありません」
「返答は」
「お引き受けします」
山本が一度頷いた。
「四番隊を預ける」
「はい」
それで話は決まった。
◇
その日から、引き継ぎが始まった。
治療については、今さら教わることは少ない。問題は、その外側だった。
隊士の配置。
薬や道具の備蓄。
負傷者を受け入れる場所。
人手が足りなくなった時に、どこから動かすのか。
他隊から救護を求められた時、何人出せるのか。
机の上に積まれた書類を見る。
「…………」
「嫌そうな顔すんな」
「していましたか?」
「してる」
天示郎が一枚、こちらへ投げる。
「これは?」
「薬品庫の記録だ」
「ずいぶんありますね」
「当たり前だ。戦になってから足りねえじゃ済まねえ」
受け取ってめくっていく。
種類、数、使用量、補充の時期。その一つ一つが記されている。
剣なら、見れば分かることが多い。だが、これは違う。積み重ねないと見えないものばかりだった。
「覚えられるか?」
「覚えます」
「全部自分でやろうとすんなよ」
「…………」
顔を上げると、天示郎がこちらを見ていた。
「お前は、自分でやった方が早えと思ったら全部持ってく癖がある」
「そうでしょうか」
「ある」
即答された。
「十一番隊なら、それでも回ったかもしれねえ。お前が前に出りゃ済む場面も多かったからな」
「はい」
「四番隊は違う」
天示郎が机の上の書類を指で叩く。
「一人で治せる数には限りがある。物資も、人も、場所もだ。自分がどこまでやるかじゃねえ。隊全体でどこまで救えるかを考えろ」
「…………」
「お前が隊長なんだ。全部抱えるんじゃなく、使え」
しばらく黙ってから頷く。
「分かりました」
「本当に分かったか?」
「今のところは」
「ならいい」
天示郎が鼻を鳴らし、また別の書類を寄越してくる。
「次」
「まだあるのですか」
「山ほどある」
「…………」
剣を習い始めた頃より大変かもしれない。
◇
引き継ぎは数日続き、その間、四番隊の中を何度も回った。
治療区画、薬品庫、負傷者を運び込むための入口、隊士たちが休む場所、記録をまとめる部屋。
どれも以前ここで働いていた頃から知っている場所なのに、今は見え方が違った。
あの頃は、自分が治す側として動けばよかった。今は、ここで誰かが倒れれば代わりを置き、薬が減れば次に必要になる前に補い、負傷者が一度に押し寄せた時にはどこへ流すかも決めておかなければならない。
一つの場所を見るだけでは足りない。
全体を滞りなく動かす。
それは、思っていた以上に難しいことだった。
◇
やがて、隊長羽織が用意された。
袖を通すのは初めてではない。十一番隊を率いていた頃にも着ていた。
ただ、背にある数字は違う。
四。
鏡の前で一度だけ後ろを見る。
「どうですか?」
後ろにいた天示郎へ聞く。
「似合わねえ」
「そうですか」
「ああ」
「では、返しましょうか」
「馬鹿言え」
天示郎が笑う。
「もうお前のだ」
「そうですね」
もう一度、鏡を見る。
四番隊隊長。
前世で知っていた卯ノ花烈も、ここにいた。
けれど、俺は原作をなぞってここへ来たわけではない。
更木と斬り合い、天示郎から回道を学び、四番隊で人を治した。その後も剣を振るい続け、新太と再び剣を交えた。
その全部の先に、今がある。
「天示郎」
「あ?」
「ありがとうございました」
「まだ早え」
「そうでしょうか」
「お前が四番隊をまともに回してから言え」
「では、その時にもう一度」
「いらねえよ」
天示郎が歩き出す。その背を見ていると、数歩進んだところで足を止めた。
「卯ノ花」
「はい」
「人を救え」
以前にも聞いた言葉だった。
あの時より、少し意味が重く聞こえる。
「はい」
天示郎はそれだけ言って、再び歩き出した。
俺も呼び止めず、姿が見えなくなるまで見送ってから羽織の襟を整える。
今日から、四番隊は俺の隊だ。
名はまだ。
卯ノ花八千流だった。