最高の卯ノ花烈を始めよう   作:まいちー

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第四章 剣を習う

それから、俺は毎日宗玄のもとへ通った。

 

刀は持っていかない。宗玄に、

 

『刀はいらん』

 

と言われたからだ。

 

先日の一件以来、刀を持たずに流魂街を歩くのは少し怖い。

 

あの日、俺は刀を持っていた。それでも三人の男に囲まれ、殴られ、蹴られ、地面に押さえつけられた。

 

最後は必死に抵抗して、どうにか逃げ延びただけだ。

 

もし刀すらなかったら。

 

そう考えると、腰元が妙に寂しい。

 

だが、宗玄に教えを請うたのは俺である。言いつけを破るわけにもいかない。

 

だから刀は寝床に隠し、今日も宗玄のところへ向かった。

 

 

「持て」

 

「はい」

 

渡されたのは、初日と同じ木の棒だった。

 

「構えろ」

 

「はい」

 

「膝」

 

「はい」

 

「腰」

 

「はい」

 

「肩」

 

「……はい」

 

「そのまま」

 

「…………はい」

 

そして、立つ。

 

ただひたすら。

 

初日もそうだった。

 

最初に棒を振らされ、

 

『全部駄目』

 

と言われ、立ち方からやり直しになった。

 

どうやら今日も、その続きらしい。

 

棒は持っている。構えてもいる。

 

ただし、振らない。

 

横では。

 

――カンッ!

 

「っ!」

 

「遅い」

 

「もう一度!」

 

――カンッ!

 

「足が止まってる」

 

「くそっ……!」

 

先日、俺が宗玄を見つけたときに稽古を受けていた若者がいる。

 

「…………」

 

羨ましい。

 

あちらは振っている。打ち合っている。避けている。

 

叩かれてもいる。

 

最後はいらないが。

 

俺はただ立っている。

 

少しくらい見てもいいだろうか。

 

視線だけを横へ――。

 

「前」

 

「……はい」

 

即座にばれた。

 

「師匠」

 

「何だ」

 

「私も、あちらのような稽古をするのは――」

 

「膝」

 

「…………はい」

 

駄目らしい。

 

宗玄の棒が膝に触れ、位置を直される。

 

「そこ。動くな」

 

「はい」

 

しばらくすると、足が震えてきた。

 

太腿が痛い。腰も痛い。肩まで痛い。

 

刀を百回振る方が楽だった。

 

「師匠」

 

「何だ」

 

「足が痛いです」

 

「そうか」

 

「…………」

 

終わった。

 

助言ではなかった。

 

 

やがて、若者の稽古が終わった。

 

「いってぇ……」

 

頭を押さえながらこちらへ来る。宗玄に何度も叩かれていたからだ。

 

「なあ、清子」

 

「はい」

 

「今日もそれ?」

 

「今のところは」

 

「振らねえの?」

 

「振るなと言われておりますので」

 

「…………」

 

若者が宗玄を見る。

 

「親父。何やらせてんだ?」

 

「稽古」

 

「これ稽古なの?」

 

「お前もやるか」

 

「いや、いい」

 

即答だった。

 

俺もできるなら遠慮したい。

 

「つまんなくない?」

 

「とても」

 

「じゃあ何でやってんだよ」

 

「刀を振りたいので」

 

「今、振らせてもらってないじゃん」

 

「ですから困っております」

 

吹き出された。

 

「変な奴だな、あんた」

 

「そうでしょうか」

 

「普通、そこまでして刀振りたいか?」

 

「振りたいですね」

 

ここは迷わない。

 

前の人生では、公家の娘だった。

 

幼いころ、庭の隅で枝を拾い、両手で握って振った。それだけで楽しかった。

 

けれど、本物の刀には最後まで触れられなかった。

 

死んで、尸魂界へ来て。

 

ようやく刀を拾った。

 

初めて振ったとき、楽しかった。

 

もっと上手くなりたいと思った。

 

だから、立つくらい何でもない。

 

いや。

 

足はかなり痛いけど。

 

「ふうん」

 

そこで、ふと思った。

 

「あの」

 

「ん?」

 

「そういえば、私はあなたのお名前を伺っておりませんでした」

 

「今さら?」

 

「はい」

 

「今まで何て呼んでたんだよ」

 

「心の中では『あの若い方』と」

 

「それで済ませてたのかよ」

 

「特に不便はありませんでしたので」

 

「ひでえな」

 

「そうでしょうか」

 

「普通、何日も顔合わせてたら気になるだろ」

 

「稽古を見る方が重要でしたので」

 

「やっぱ変だわ、あんた」

 

若者が呆れたように笑う。

 

「新太」

 

「?」

 

「俺の名前。新太」

 

「新太殿」

 

「殿はいらねえよ」

 

「では、新太さん」

 

「それも何かむず痒いな」

 

「…………では、新太」

 

「急に雑になったな」

 

「難しいですね」

 

「好きに呼べよ」

 

これでようやく、若者の名前を知った。

 

 

翌日も、稽古はほとんど変わらなかった。

 

「構えろ」

 

「はい」

 

「右足」

 

言われた通りに動かす。

 

「行き過ぎ」

 

戻す。

 

「戻し過ぎ」

 

「…………」

 

「腰が浮いてる」

 

「はい」

 

細かい。

 

ものすごく細かい。

 

言われた通りに直しても、しばらくするとまた崩れる。そのたびに宗玄の棒が飛んできた。

 

その横では、新太が棒を振っている。

 

――ヒュッ。

 

「…………」

 

見たい。

 

ほんの少しだけ視線を向けようとすると。

 

「前」

 

「……はい」

 

やはり駄目だった。

 

そんな稽古が数日続いた。

 

立ち方を直され、構えを直され、また立ち方を直される。

 

そして、ある日。

 

「歩け」

 

「…………!」

 

思わず宗玄を見る。

 

「何だ」

 

「いえ」

 

ようやく動いていいらしい。

 

「はい」

 

一歩踏み出す。

 

「違う」

 

「…………」

 

一歩で終わった。

 

「何がでしょう」

 

「全部」

 

「…………」

 

この人。

 

俺に対して「全部」という言葉を使いすぎではないだろうか。

 

「足を上げるな。腰を揺らすな。上体を残すな。下を見るな」

 

「はい」

 

一歩。

 

「違う」

 

戻って、もう一度。

 

「違う」

 

また一歩。

 

「違う」

 

「…………」

 

歩くって。

 

こんなに難しかったのか。

 

普段なら何も考えずにできる。

 

だが、構えたまま、いつでも刀を振れる状態を保って動くとなると、まるで違った。

 

横を見ると、新太が一歩踏み込み、棒を振っている。

 

――ヒュッ。

 

身体が揺れない。

 

「新太」

 

「ん?」

 

「今のをもう一度お願いできますか」

 

「これ?」

 

一歩。

 

――ヒュッ。

 

「はい。もう一度」

 

――ヒュッ。

 

「もう一度」

 

「おう」

 

――ヒュッ。

 

足。

 

腰。

 

肩。

 

腕。

 

棒。

 

全部が繋がっている。

 

「もう一度――」

 

「清子」

 

「はい」

 

「前」

 

「…………はい」

 

また怒られた。

 

だが、少し分かった気がする。

 

一歩。

 

「違う」

 

気のせいだった。

 

 

それからは、立つだけではなく、歩く、止まる、下がるといった動きが加わった。

 

毎日同じことの繰り返しだったが、少しずつ宗玄に直される回数は減っていった。

 

その間も、新太は横で俺よりずっと先の稽古をしている。

 

最初はただ羨ましかった。

 

だが、見ているうちに気になるところが変わってきた。

 

足。

 

腰。

 

距離。

 

新太が踏み込む。

 

宗玄が半歩ずれる。

 

新太の棒が空を切り、宗玄の棒が肩に触れた。

 

「痛っ!」

 

「遠い」

 

「入ったと思ったんだけどな……」

 

「思っただけだ」

 

「…………」

 

何で?

 

新太はちゃんと踏み込んでいる。

 

宗玄も大きく下がってはいない。

 

なのに、新太は届かず、宗玄は届く。

 

面白い。

 

何をやっているんだ?

 

「清子」

 

「はい」

 

「前」

 

「……はい」

 

最近。

 

こればかり言われている気がする。

 

 

さらに日が過ぎた。

 

「止まれ」

 

ぴたりと止まる。

 

宗玄は何も言わない。

 

「もう一度」

 

「はい」

 

一歩、二歩。

 

「止まれ」

 

止まる。

 

また何も言われない。

 

「師匠」

 

「何だ」

 

「今のは?」

 

「まし」

 

「…………!」

 

まし。

 

最初の素振り以来、初めて言われた。

 

「ふふ」

 

「何笑ってんだ?」

 

新太が聞く。

 

「褒められました」

 

「褒めてねえだろ」

 

「初めて『違う』以外の言葉をいただきました」

 

「基準低すぎない?」

 

「昨日より進歩しております」

 

「まあ……そうだけど」

 

たった一歩。

 

でも、昨日できなかったことが今日は少しできた。

 

楽しくない稽古だったはずなのに、いつの間にかそれが嬉しくなっていた。

 

 

その翌日。

 

「振れ」

 

「…………」

 

俺は宗玄を見る。

 

「何だ」

 

「振ってよろしいのでしょうか」

 

「そう言った」

 

「はい」

 

来た。

 

ようやく。

 

初日に振って以来、ずっとこれを待っていた。

 

木の棒を握り、構える。

 

足。

 

腰。

 

背。

 

肩。

 

握り。

 

まだ全然できていないけれど、何も知らなかったあの日とは違う。

 

「振れ」

 

「はい」

 

一歩。

 

振る。

 

――ぶんっ。

 

「違う」

 

「…………」

 

まあ。

 

そう簡単ではない。

 

もう一度。

 

――ぶんっ。

 

「手で振るな」

 

「はい」

 

「肩」

 

「はい」

 

「足が遅い」

 

「はい」

 

何度も振る。

 

以前、一人で刀を振っていたころは、ただ上から下へ振っていただけだった。

 

今は違う。

 

足、腰、身体、腕。

 

全部を使い、それを一つの動きにする。

 

「新太」

 

「ん?」

 

「一度、振っていただけますか」

 

「いいぞ」

 

新太が構える。

 

一歩。

 

――ヒュッ。

 

「もう一度」

 

――ヒュッ。

 

「もう一度」

 

「何回やるんだよ」

 

「分かるまででしょうか」

 

「俺が疲れるわ」

 

「申し訳ありません」

 

「まあいいけど」

 

もう一度。

 

――ヒュッ。

 

見る。

 

足。

 

腰。

 

肩。

 

腕。

 

違う。

 

順番じゃない。

 

全部が一つ。

 

真似する。

 

一歩。

 

――ぶん。

 

「違う」

 

もう一度。

 

「違う」

 

さらにもう一度。

 

――ヒュッ。

 

「…………」

 

今。

 

少し。

 

「もう一度」

 

宗玄が言った。

 

「はい」

 

振る。

 

――ぶん。

 

「違う」

 

「…………」

 

戻った。

 

でも。

 

さっき、一度だけ違った。

 

「…………ふふ」

 

「また笑ってる」

 

新太が言う。

 

「はい」

 

「ほとんど駄目って言われてんのに?」

 

「一度だけ上手くできました」

 

「一回だけだろ」

 

「それでも、できたことに変わりはありません」

 

「お前、剣のことになると妙に前向きだな」

 

「好きですので」

 

新太が宗玄を見る。

 

「親父。こいつやっぱ変だぞ」

 

「知ってる」

 

「…………」

 

失礼な師弟である。

 

 

それから、俺の稽古にも本格的に素振りが加わった。

 

立ち、歩き、振り、止まり、また構える。

 

新太と並んで振ることも増えた。

 

「振れ」

 

――ヒュッ。

 

――ぶんっ。

 

新太の方が速く、安定している。

 

十回振れば十回、ほとんど同じ軌道を通る。

 

俺はまだ、いいときと悪いときがある。

 

それでも、振るたびに飛んできた宗玄の「違う」は、少しずつ減っていった。

 

ある日。

 

構える。

 

振る。

 

――ヒュッ。

 

「…………」

 

宗玄は何も言わない。

 

もう一度。

 

――ぶん。

 

「違う」

 

やはり、まだ安定しない。

 

それでも、できるときはできるようになった。

 

「ふふ」

 

「また笑ってる」

 

新太が言う。

 

「はい」

 

「今の、次は駄目だったじゃん」

 

「ですが、一度目は何も言われませんでした」

 

「それだけで嬉しいの?」

 

「はい。上手くできたということでしょう?」

 

「まあ……そうだけど」

 

「でしたら、嬉しいです」

 

「ほんと剣のことになると前向きだな」

 

もう一度、構える。

 

さっきの感覚を思い出しながら振る。

 

――ヒュッ。

 

「…………」

 

宗玄は何も言わなかった。

 

「ふふ」

 

「またかよ」

 

少しずつだが、正しい振り方が身体に馴染み始めていた。

 

 

そして、ある日の稽古終わり。

 

「清子」

 

「はい」

 

「明日は刀を持ってこい」

 

「…………」

 

一瞬、反応できなかった。

 

「聞こえなかったか」

 

「いえ」

 

聞こえた。

 

だから。

 

嬉しい。

 

「はい」

 

「嬉しそうだな」

 

新太が言った。

 

「そう見えますか?」

 

「めちゃくちゃ」

 

「…………」

 

外面も、まだまだ修行が必要らしい。

 

 

翌朝。

 

久しぶりに刀を腰へ差した。

 

ずしりとした重さがある。

 

「…………」

 

これだ。

 

歩くたびに腰に重さを感じる。それが不思議と安心する。

 

宗玄のところへ着くと、新太はもう来ていた。

 

「お。やっとか」

 

「はい」

 

「抜いてみろよ」

 

「師匠が来てからにいたします」

 

「真面目だな」

 

「当然です」

 

本当は今すぐ抜きたい。

 

ものすごく。

 

しばらくして宗玄が来た。

 

俺の腰を見る。

 

「抜け」

 

「はい」

 

刀を抜く。

 

錆も刃こぼれも相変わらずだ。

 

それでも、久しぶりに握ると懐かしい。

 

「振れ」

 

「はい」

 

構える。

 

最初に拾った日を思い出す。

 

重かった。

 

刀に振り回され、止まることもできなかった。

 

一人で何度も振って、少し上手くなったと思った。

 

そして、人を相手に何もできなかった。

 

宗玄に会い、立ち方からやり直した。

 

歩いた。

 

止まった。

 

木の棒を何度も振った。

 

そして今。

 

もう一度、本物を握っている。

 

足。

 

腰。

 

背。

 

肩。

 

握り。

 

振る。

 

――ヒュンッ。

 

「…………!」

 

自分で驚いた。

 

軽い。

 

いや。

 

刀は以前と同じ重さだ。

 

俺の身体が、刀の邪魔をしていない。

 

刃がまっすぐ走った。

 

「もう一度」

 

「はい」

 

――ヒュンッ。

 

もう一度。

 

――ヒュンッ。

 

思わず口元が緩む。

 

「すげえな」

 

新太が言った。

 

「最初に見たときと全然違うじゃん」

 

「ありがとうございます」

 

嬉しい。

 

ずっと横で見ていた新太に言われると、本当に変わったのだと思える。

 

「師匠」

 

「何だ」

 

「いかがでしょう」

 

「駄目だ」

 

「…………」

 

相変わらず。

 

「ただ」

 

宗玄が続ける。

 

「ようやく刀を振る準備ができた」

 

「…………」

 

これで。

 

準備。

 

「ここからだ」

 

「はい」

 

不思議と、がっかりはしなかった。

 

むしろ胸が高鳴った。

 

ここまでやって、まだ入口。

 

なら。

 

この先にはどれだけある?

 

宗玄が新太を見る。

 

「新太」

 

「ん?」

 

「明日から清子の相手をしろ」

 

「俺が?」

 

「ああ」

 

俺も宗玄を見る。

 

「打ち合うのでしょうか」

 

「まだだ」

 

「新太が打つ。清子が避ける。次は受ける。その次は清子が打つ」

 

「はい」

 

「勝手なことはするな」

 

「承知いたしました」

 

いきなり試合ではない。

 

少し安心した。

 

「清子」

 

「はい」

 

「素振りと同じだと思うな」

 

「…………はい」

 

その言葉で、あの日が蘇った。

 

男が動く。

 

避ける。

 

掴む。

 

殴る。

 

蹴る。

 

刀を振っても、そこにはもういない。

 

身体がほんの少し固くなる。

 

宗玄はそれ以上、何も言わなかった。

 

「まあ」

 

新太がいつものように笑う。

 

「俺が相手なら大丈夫だろ。親父の言う通りにやるだけだ。いきなり斬りかかったりしねえよ」

 

「……ありがとうございます」

 

「ただ」

 

「はい」

 

「避けるの下手だったら普通に痛いぞ。木の棒でもな」

 

「…………先ほどの安心を返してください」

 

新太が笑った。

 

俺も少し笑った。

 

怖さはまだある。

 

でも、今度は違う。

 

逃げるためではない。

 

生き残るためでもない。

 

学ぶために、人の前に立つ。

 

「よろしくお願いいたします、新太」

 

「おう」

 

俺は新太を見る。

 

立ち方。足。構え。握り。

 

「…………」

 

「何だよ」

 

「明日のためです」

 

「怖えよ」

 

「?」

 

学ぶのだから、見るのは当然だと思う。

 

明日は初めて、人を相手に剣を学ぶ。

 

怖くないと言えば嘘になる。

 

それでも。

 

それ以上に楽しみだった。

 

 

二人が帰ったあと。

 

宗玄は一人、その場に残っていた。

 

地面には、清子が何百度と足を運んだ跡が残っている。

 

最初は酷いものだった。

 

立てない。歩けない。握れない。振れない。

 

剣を習ったことがないのだから当然だ。

 

初めて棒を振ったときも、技はなく、力もなく、足すら使えていなかった。

 

だから、

 

『全部駄目だ』

 

そう言った。

 

嘘ではない。

 

本当に全部駄目だった。

 

――技だけは。

 

「…………」

 

初めて刀を握る者は、刀を怖がる。

 

重さを怖がる。

 

刃を怖がる。

 

振ることを怖がる。

 

清子には、それがなかった。

 

それだけなら、ただの無鉄砲だ。

 

だが。

 

一度振り、宗玄が「違う」と言えば、二度目には僅かに変わった。

 

三度目には、また変わった。

 

何が違うのか教えてすらいないのに、自分で探していた。

 

そして何より。

 

振るたびに楽しそうだった。

 

「剣が好き、か」

 

宗玄が小さく呟く。

 

清子は、自分がどれほど奇妙なことをしているのか、まだ分かっていない。

 

「さて」

 

宗玄は立ち上がった。

 

「どこまで行く」

 

明日。

 

初めて清子に人を相手にさせる。

 

そこで、もう少し分かる。

 

あれがただ剣を振るのが好きなだけの女なのか。

 

それとも――。

 

宗玄は続きを口にしなかった。

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