咲に幼馴染がいたら嬉しいし、総受け百合ハーレムだともっと嬉しいすぎだろ……   作:わたっくし

1 / 3
よろしくお願いします


覚醒と脱衣

 

 こんにちは、清澄高校麻雀部1年の丈槍鈴です。突然ですが、私は今窮地に立たされています。勿論命の危機とかではなく、麻雀での話だけど。

 

(咲が現在ラス親の状況で、私と咲の点差は18000。大分絶望的ではあるけど……)

 

 チラリと手元の牌に視線を傾ける。立直、平和、断么九、三色、ドラ1。ここで咲から直撃をとれば一気に逆転出来る。

 視線を前に戻すと対面にはこちらを笑顔でじっとみつめる咲。こ、怖い…!目の奥が全く笑っていないよ……!

 

(でも、ここでいくしかない!)

 

「リーチッ!」

 

 咲に続いての追っかけリーチ。一先ず他家からのロンはないようで一安心。そのまま咲に手番が回る。ここでの問題は咲が何の牌を捨てるか。

 

(二萬!咲!二萬捨てて!お願いします!)

 

 ここで勝てばあの悪魔のお願いから逃れることが出来るのだ。今回こそは逃げ切ってやる……!

 

 咲がツモ牌を握り、そして口元を軽く綻ばせる。……あれ?またなんか嫌な予感が……

 

「ツモ。立直、三槓子、嶺上開花、ドラ3」

「えええっ!?」

「12000オール……これでトビだね、スズちゃん」

「そ、そんなぁ……」

 

 私の淡い期待は咲の豪運ツモによりかき消されてしまった。なんなんだよこの子……いくらなんでも強すぎる……。

 

「あーあ、また咲の勝ちかぁ」

「前回もでしたが、今回も嶺上開花で決めるとは……」

「やっぱ強すぎるよねー…」

 

 両隣の久先輩と和ちゃんが項垂れる。

 

「……和ちゃん達も十分すぎる程に強いでしょ…」

「スズさんが安易に振り込みすぎなんです。少しは我慢というものを覚えてください」

「そうよ?それさえなければ良い線行ってるのに」

 

 だそうで。生憎才能のない私には、どこで我慢してどこで押すのかの判断なんて全くもって分からない。

 

「と、いうワケで、1位の咲がラスのスズちゃんになんでも好きなことをお願い出来ます」

「あの部長、やっぱりこのルール意味わかんな」

「お静かに。ここでは私がルールよ」

 

 私の訴えもあえなく棄却され、満面の笑みを浮かべた咲が近づいてくる。

 

「スズちゃんまた負けちゃったね」

「……みんなが強すぎるだけ」

「ふふっ、拗ねてる姿もかわいい」

 

 拗ねてない……と言いかけた時には既に彼女の胸に抱き込まれていて、言葉を発することは叶わなかった。

 

「もがもが(離れて)」

「えー?聞こえないよー!」

「もーがーもーがー!(はーなーれーてー!)」

「あはははっ!」

 

 いくら抵抗しても私を解放してくれる様子はなさそうなので、途中から諦めて大人しく咲のなすがままになる。咲も楽しそうだしまあいいか。

 

「…お二人は本当に仲が良いですね」

「幼馴染だもん!」

「…ぷはっ!……だからって相手を抱き込んで良い理由にはならない」

 

 呼吸を整えた後、彼女の拘束からスラリと抜け出した私はそそくさと和の元へと向かう。

 

「な、なんで逃げるのスズちゃん」

「そりゃ逃げるよ!危うく咲の胸の中で息絶えるとこだった……」

 

 咲の私に対するスキンシップは年々悪化している。小学生の頃はこっそり手を繋ぐなど可愛らしいものだったが、高校に入ってからは特に断りも入れずにナチュラルに胸やお腹を揉んでくる。

 ちなみにクラスメイトは皆暖かい目で見守ってくれているので、私に逃げ場はないらしい。

 

「お二人は小学生からの幼馴染なんですよね」

「うん。麻雀自体は私の方が早く始めてたんだけどなぁ……」

 

 卓上の牌がカチリと小気味良い音を立てる。その乾いた響きが、ふと私の意識を昔の記憶へと引き戻していった。

 

 

 

---------------------------------------------

 

 

 

 宮永咲。私の幼馴染。

 小学1年の時に隣の席になってからというもの、何かをするには常に咲が隣にいた。登下校も、遠足も、遊ぶ時も、ずっと咲がいた気がする。

 

 咲の家族は麻雀が好きだったそうで、家でもよく麻雀をしているらしい。それを聞いた私は彼女の家に遊びに行って、よく家族麻雀に混じって遊んでいた。結構前の事ではあるけど、咲のお姉ちゃんが半端なく強かったことだけは鮮明に覚えている。

 

 そして小学5年生の時、咲の家族がバラバラになってしまったことは、少なからず11歳の私には衝撃すぎる事態だった。あんなに仲の良かった家族が別れてしまうなんて、今でもちょっと信じられない。

 

 それ以来、しばらく咲は麻雀を打とうとはしなかった。麻雀が原因で家庭が崩壊してしまったのだから、仕方がないことなのかもしれない。

 

 勿論私が誘っても咲は麻雀を打とうとはしなかったのだが、私があんまりしつこく誘うので、珍しく咲が私に対してしっかりキレた。

 

「スズちゃんしつこい!!!……いいよ、一局だけ打ってあげるから、私が勝ったら金輪際話しかけてこないで」

「良いけど……本当に良いの?咲、私以外に話せる人いる?」

「……い……ないから、やっぱり、一緒にいよう。で、でも!二度と麻雀の話はしないで!」

 

 そう言って咲は私の腕を引っ張って近くの子供雀荘へと連れて行った。

 

 ちなみに言うと、当時私は一度も咲に勝ったことはなかった。息抜き程度の麻雀も、家族麻雀も、全ての対戦を含めて。というか、咲が私に振り込んだことすらなかった気がする。

 

「ロン。12000」

 

 でも、勝った。

 

「も、もう一回!」

「いいよ」

 

 勝ったし、一度も振り込まなかった。

 

「ロン。18000」

「…………」

 

 結局、その日は10局対戦して、咲に対して振り込むことは一度もなかった。咲はまだまだ打つ気だったのだろうが、他家2人が疲弊しきっていたので切り上げることにした。

 

 雀卓に残された私と咲。ちょっと気まずい。わ、私も帰ろうかな……

 

「……今まで、ずっと手を抜いてたの?」

「……いや、ずっと本気だったけど」

「嘘つかないで。じゃあなんで今日に限って、こんなに……」

 

 咲が物凄い剣幕でこちらを見つめる。怒りの表情の中に涙も混じっている。何連勝することはあっても、何連敗することは今までになかったんだと思う。

 

 ……でも、ぶっちゃけなんで勝てたのかは私も分からない。しかし何故か今日に限って、他家のツモ牌や手牌、待ち等の全てが視えてしまった。

 

「ねえ、他の人誘ってもう一局やろうよ。あと一局だけ」

「ダメ。もう暗いし、それに絶対あと一局じゃ終わらないでしょ」

「うう……」

 

 咲のことだから絶対私に勝つまで終わる気はない。そして生憎、今の私は咲に全く負ける気がしないので勝負が無限に続いてしまう。

 

「……なんで今日だけ咲に勝てたのかは分からないけど……」

「……けど?」

「これからも咲と一緒に麻雀をしていけば、いつかは分かる気がするな」

「……うん」

 

「だからさ、これからも一緒にやろうよ。麻雀!」

「……うん!」

 

 そんなことがあって、咲はまた元のように麻雀を打つようになった。始めの内は私が勝ち越していたが、それもいつの間にかまた咲が圧勝するようになった。

 

 なんで私があの時咲に勝てたのかは今でも謎のままだけど、また咲が麻雀を好きになってくれたのでもうどうでも良いことだ。

 

 

 

「……そんなことがあったんですね」

「その鈴が咲に連勝したっての、正直信じられないわね」

「まー、私にも全盛期があったってワケですよ」

「ふふっ。いつか私にもその姿を見せてくださいね。むにむにー」

「なにひゅるののどかひゃん」

 

 いつの間にか和ちゃんの膝の上に乗っていた私は、背後からほっぺをこねくり回される。わずか身長145センチにしか満たない私は、よくこうやって身体を弄ばれてしまう。

 

「エトペンの代わりに鈴さんを持っていきたいです……」

「即刻退場だから絶対やめてねー」

 

 和ちゃんのことだから本当にやってしまいそうな迫力がある。

 

「そういえば、さっきの試合は咲が勝ったけど鈴に何をお願いするの?キスとか?」

「それも捨てがたいですけど、もっと良い案があります!」

 

 ナチュラルにキスを当然の選択肢として捉える二人が凄く怖いです。

 

「良い案って?」

「それは……脱衣麻雀です!」

 

 脱衣麻雀。負ける度に着ている衣服を一枚ずつ脱いでいくというアレ。漫画やアニメでしか見たことがないけど……

 

「……つまりそれって」

「合法的に鈴さんの生まれたままの姿を……!」

「なんで私が脱ぐ前提なの!?」

「いいよね?スズちゃん。勝者の命令は絶対だよ?」

 

 始めから私に選択肢なんてなかった。咲は麻雀でも現実でも押す時は押してくる。そして私にはそれに抗うだけの力がない……

 

「それに、スズちゃんのヌードを見れる以外にもメリットがあります」

「ヌード言うな」

「最後の1枚になったスズちゃんは必死の抵抗を見せるはずです。つまり……」

「絶対に負けたくない鈴は、覚醒する可能性があるってわけね。小学生の時みたいに」

「流石咲さん……!」

 

 先生、3対1のイジメが発生しています。しかも脱がされそうです。

 

「そうと決まれば、早速対局開始よ!」

 

 

 

---------------------------------------------

 

 

 

 一局目。

 

(……うう……お願い通って!)

「ロン!8000!」

「うう……」

 

 一局目は部長にトドメを刺されあっけなく敗北。

 

「ほら、脱いで脱いでー」

「目がガチじゃないですか……」

 

 自分で脱ぐ前に部長が私の三角タイをしゅるりと取り外す。まあこれは全然大丈夫かな。問題はここから……

 

 

 二局目。

 

(まだ三巡目だし、流石に通るよね……)

「ロン。7700です」

「ええー……」

 

 二局目も私の甘い捨て牌を、和ちゃんにしっかり捉えられてあえなく敗北。

 

「はい、バンザイしてくださーい」

「自分で脱げるってば……」

 

 和も勝手に私の両手を上げて、制服を脱がせに来た。下着姿となり一気にアウトな感じが増していく。

 

 

 三局目

 

(……これは厳しそうだし、一旦オリて……)

「ツモ。6000オール」

「…あはは……」

 

 ツモは防ぎようがないじゃんね……。咲の一発ツモにより三局目も敗北。

 

「インナーとスカート、どっちがいい?」

「靴下」

「怒るよ?」

「……スカートで」

 

 

 四局目

 

(コイツらめっっっちゃ見てくるんだけど!)

 

 両隣の和ちゃんと部長は限界まで眼球をこちらに寄せながら手牌を整えていく。盲牌って絶対そこで使う技じゃない。対面の咲に至っては普通に下から覗き込んでくる始末。対戦に集中しろ!!

 

「鈴、顔赤いわよ。大丈夫?」

「誰のせいだと思ってるんですか!」

 

 完全に集中を切らしてしまった私は、気づかずに危険牌の三索を手放してしまい……

 

「ロン!12000」

「ず、ずるいですって……」

 

 勿論ロン。なんで私のパンツを見ながらロンできるんだろう。

 

「インナーかショーツ。選ばせてあげるわ」

「…………」

「オッケーパンツね。はい脚閉じてー」

「インナー!インナーでお願いします!……さ、流石に自分で脱がせてください……」

 

 細心の注意を払いながら、インナーを脱いでいく。なぜ私がここまで慎重になっているのかというと……

 

「す、鈴さん!?ブラはどうしたんですか!?」

「あはは……朝急いでてつけ忘れちゃった……」

 

 今ここにショーツ1枚と手ブラの女子高生が誕生してしまった。これは誰かに見られたら本当にまずい。

 

「和ちゃん、ドアの鍵閉まってるか確認してきて……」

「は、はい!」

 

 

 五局目

 

 

 片手が塞がっているせいで理牌もおぼつかない。無駄に胸も成長してしまったせいでいつポロリしてしまうか気が気でない。3人はこっちばっか見てないで早く自分の理牌を急いでください。

 

 ……いつにも増して、咲たちの気迫が鋭い。雀卓を照らす蛍光灯の光が、彼女たちの瞳に異様なハイライトを宿している。今すぐにでもお前の最後の衣服を消し去ってやるという、凄まじい執念のオーラ。

 そこで、ふと気づく。先程まで見えなかった彼女たちの手牌が今はかすかに浮かんで見えていることに。

 

 あの時の力が、復活している。

 

 そして更にまた一つ、新たな推論が私の脳裏に浮かぶ。

 

「……今回も私が負けたら写真も撮っていいよ」

「!!!!!」

 

 私の発言により更に3人の気迫が増す。同時に、微かに浮かんでいた手牌がよりはっきりとした輪郭を帯びて視界に焼き付く。

 

 ……これではっきりしたが、恐らく私の能力は、「相手が本気であればあるほど」発現能力が高くなるっぽい。こんな場面で気づきたくなかったけど。

 

 なにはともあれ3人の本気度は現在最高潮。つまり私にとって彼女たちの手牌は文字通り手に取るように分かる。

 

 1巡目、3巡目、7巡目、10巡目と進んでいく内に、彼女たちの顔色も少しずつ変化していく。明らかに私の雰囲気が変わったからであろう、和ちゃんも部長もこちらを見る余裕がなくなっていた。

 

「……スズちゃん。あの時の力だね」

「うん。おかげさまで戻ってきたみたい」

「対局が終わったら、何が起きたか説明してね」

「いいよ。まあこの局で終わっちゃうけどね。リーチ!」

「ふふっ。私だってスズちゃんの裸がみたいなぁ!リーチ!」

 

 爽やかな雰囲気ながら言っていることはなかなか最悪である。裸がみたいなぁ!じゃないんだよ。

 

 しかし、いくら能力が発動しているからといって、牌山の中まで見える訳ではない。つまり、ここからは私と咲のガチ勝負だ。

 

 一巡、二巡と牌が廻っていく。残りの牌は10を切る。ここで咲が手を動かす。

 

「カン!」

 

 東の暗槓。

 

「もいっこ、カン!」

 

 四萬の暗槓。

 

「もういっこ、カン!」

 

 一索の暗槓。この流れは……

 

「ツ……!……あれ?」

 

 ツモ……とはいかなかった。普段の咲なら間違いなくツモる場面だが、何らかの力が働いたのか、目当ての牌を引くことは叶わなかった。

 

 と、いうわけで。

 

「ふふっ、ツモ!12000オール!」

 

 私の勝ちだ。何年振りだろう、咲に勝ったのは。

 

「あーあ、負けちゃったぁ」

「凄いわね。最後、全く勝てる気しなかったわ」

「……後で私にも教えてくださいね。鈴さんの能力とやらを」

 

 よくよく考えてみれば部長と和ちゃんの二人に勝ったのも今回が初めてだ。今まではずっと負けっぱなしだったから。そう思うと、やっぱり嬉しい。麻雀って、楽しい!

 

「…いやったーーー!!!」

 

 高校生になっての初勝利。両手を上げて盛大に喜ぶ。

 

 そしてひとしきり喜んだ後……ふと、空間から一切の音が消えた。

 雀卓を囲む3人が、無言のまま、一点を見つめて固まっている。その視線の先にあるのは――。

 

「って!!!」

 

 気づいた私は即座に屈んで大事な部分を隠す。しかしもう今更すぎる行為ではあった。

 

「いやー、負けちゃったけど最後にいいもの見れたねぇ」

「も、もうお嫁にいけない……」

「私がいくらでも貰ってあげますよ?なんなら今すぐにでも」

「貰わなくていい!……ああ〜…」

 

 折角気分よく終わったというのに全てが台無しだ。私っていつもこうだ……。

 すると、ポンと肩に手が。

 

「……スズちゃん」

「咲……」

「綺麗だったよ」

「…………」

 

 この先二度と脱衣麻雀はしないと心に決めた。

 

 




ありがとうございました
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。